- 著者
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田中 恭子
荒井 茂夫
白石 昌也
黒柳 米司
真栄平 房昭
田中 明彦
中田 睦子
- 出版者
- 南山大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1996
計画研究「中国とアジア太平洋の広域世界」は、研究分担者6名、公募研究者6名、研究協力者2〜3名による共同研究を進めてきた。3年間にあわせて15回の研究会を行い、そのうち2回は領域研究の他の班(中華世界班、社会班)と、1回は特定領域研究「南アジアの構造変動とネットワーク」の世界システム班と合同で開催し、学際的研究を進めた。また、第5回研究集会において「アジア太平洋世界と中国」セッションを主宰し、班の研究成果を領域研究全体で共有するよう努めた。3年間の研究活動の結果、次のような共通認識を持つに至った。(1)冷戦の終結は、米ソ中3極構造を崩壊させ、中国を「地域化」させた。中国の影響力および経済関係は、アジア太平洋地域にほぼ限定され、その外交戦略もまた、近隣のアジア諸国との関係緊密化によって、平和な環境を維持し、アメリカの「脅威」に対処するものである。(2)東南アジア諸国には新たな「中国脅威論」が浮上しているが、これは、中国の「建設的関与」促進によって緩和可能と考えられていること、華人はもはや争点でないことの2点において、冷戦期の「脅威論」とは質的に異なっている。(3)経済的には、香港・台湾を含む華人ネットワークが中国の発展の重要要因となっている。とくに、広東・福建の僑郷(香港住民・海外華人の出身地区)の発展は、ほぼ全面的に彼らに依存してきた。このため、北京も僑郷地区も海外華人との連係強化に懸命である。(4)これらの動向は、いずれも何らかの構造的変化を示すものであり、1997年の香港返還およびアジア経済危機がさらなる構造変動を促すことかどうか注目される。