著者
小笠原 健 荒川 史博 穐山 浩 合田 幸広 小関 良宏
出版者
Japanese Society of Food Chemistry
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.155-160, 2003-12-12 (Released:2017-12-01)
参考文献数
19

さまざまな大豆加工食品における組換え遺伝子の音量とDNA断片化の程度を調べることにより、厚生労働省により通知された公定法記載の定量PCR法の加工食品への適用可能性について検証した。豆腐のように100℃程度で加熱加工された場合は、適用できることがわかった。しかし、市販されている加工食品のように加熱され、物理的力が更にかかるオートクレーブ処理などが行われた場合、あるいは発酵食品の場合、100bp程度までDNAの厳しい断片化が引き起こされることが明らかとなった。従って、これらの加工食品中の遺伝子組換え大豆の定量を行うには95bpより短いプライマー、プローブを開発する必要があると考えられた。
著者
穐山 浩 五十鈴川 和人 張替 直輝 渡邊 裕子 飯島 賢 山川 宏人 水口 岳人 吉川 礼次 山本 美保 佐藤 秀隆 渡井 正俊 荒川 史博 小笠原 健 西原 理久香 加藤 久 山内 淳 高畑 能久 森松 文毅 豆越 慎一 村岡 嗣朗 本庄 勉 渡邉 敬浩 坂田 こずえ 今村 知明 豊田 正武 松田 りえ子 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.120-127, 2004-06-25
参考文献数
16
被引用文献数
2 12

特定原材料である牛乳タンパク質測定のELISA法の確立のために10機関による検証評価試験を行った.カゼイン,β-ラクトグロブリンおよび牛乳タンパク質を測定する3種類のELISA法とも同時再現性はおおむねCV値10%以下と良好であった.10機関で牛乳標準溶液を添加した5食品の各食品抽出液を分析した際の平均回収率は,3種類のELISA法とも数種類の食品抽出液を除きおおむね40%以上であった.しかしカゼインキットでは,回収率が極端に低いソースの抽出液の場合,抽出液のpHを中性に調整した後に測定すると回収率が改善された.また牛乳エライザキットでは,クッキー,シリアル,パスタソースの抽出液において,回収率が低かったが,プレート上の抗体量を増加させることにより改善された.3種類のELISA法の検出限界は,測定溶液の濃度で1 ng/mLであった.
著者
渡邉 敬浩 片岡 洋平 荒川 史博 松田 りえ子 畝山 智香子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.7-16, 2020-02-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

トータルダイエットスタディ(TDS)は,食事を介した化学物質の摂取量推定に有効な方法論であり,有害物質の摂取量推定にも用いられる.TDSにおける試料の分析には,摂取量推定の目的に合致した方法を選択すると同時に,その妥当性を確認することが勧告されている.しかし,妥当性確認に必要な具体的な考え方や方法論は示されていない.そこで本研究では,まず摂取量推定の目的で使用される分析法の性能を評価可能な試料(Samples to estimate methods performance; SEMPs)を開発した.次いでヒ素やカドミウム,鉛を含む元素類の摂取量推定の目的で使用する一斉分析法の妥当性を確認するために,SEMPsにおける各元素濃度を明らかにした.さらに,明らかにした各元素濃度を考慮した添加量を決定し,添加試料と未添加試料のそれぞれを5併行分析した結果から真度と併行精度を推定する,分析法の性能評価方法を確立した.性能評価によって推定した真度と併行精度をCodex委員会のProcedural Manualに収載されているガイドラインに基づき設定した性能規準と比較した結果,検討した一斉分析法が対象とする14元素と14食品群の組合せの多くで性能規準の値を満たしたことから妥当性を確認した.
著者
荒川 史博 小園 正樹 石黒 智子 山口 耕作 井原 安洋 大石 泰之 森松 文毅
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-7, 2014

トランス脂肪酸は、分子内にトランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸の総称であり、天然では反芻動物のルーメンにて生成し、乳や肉中に移行・蓄積することが知られている。欧米での大規模な疫学的調査から、トランス脂肪酸の過剰摂取は冠動脈性心疾患のリスクを高めることが示唆されている。本研究では、国内に流通する畜肉のトランス脂肪酸含量の網羅的調査を行い、畜肉に含まれるトランス脂肪酸の実態把握を行った。その結果、通常喫食する脂肪を含んだ牛肉のトランス脂肪酸含量は、0.33〜1.87g/100gであることが明らかになった。また、牛脂では1.43〜9.83g/100gであることが明らかになった。内臓では牛の第一胃(ルーメン)において1.70g/100gと一番高い値を示した。牛肉の調査の結果、同一の部位においても、生産国が異なることによりトランス脂肪酸含量に差があり、飼料の種類および給餌期間によって蓄積する量に違いが生じることが推察された。一方、豚肉および鶏肉の調査結果から、トランス脂肪酸量が0.3g/100gを大きく超える部位は無かった。今回の調査から、以前の報告通り反芻動物の食肉中からトランス脂肪酸が検出された。しかし、最も多くトランス脂肪酸が存在した穀類を200日以上給餌した米国産のバラ肉で1.87g/100gであり、畜産物の摂取に起因する健康へのリスクは低いと考えられた。