著者
三浦 要
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

哲学のあり方という根本的な部分で対比されるプラトン(ソクラテス)とソクラテス以前は、その思索のあらゆる点において対立するわけではないし、むしろ、プラトン独自の哲学観の枠内で積極的に受容されることにより、その哲学の形成において非常に大きな影響を与えており、また、たとえ対立するとしても、その対立自体が今度はプラトンの新たな思索の形成の契機となっている。例えば、継承という点で言えば、何よりもまずエレアのパルメニデスを挙げなければならないだろう。プラトンは彼を父親と呼び、真理と思わくの二分法や、真実在についての概念など、彼に多くのものを負っているし、後期対話篇では彼との対話を試みている。そこでは「父親殺し」と称される有論が展開されているが、それは決して「父親」の教説を全否定するものではなく、むしろプラトンの有論の揺るぐことのない基盤となっているのである。また、プラトンの認識論における知性と感覚(そして真理と思わく)は、言うまでもなくプラトンにおいて初めて明確に表明された対立概念ではない。むしろ、クセノパネス以後の認識論の展開の中で、慣習的通念や経験の曖昧さ(その対局には神的知識が想定されている)が徐々に自覚され、ピロラオス、そして原子論者のデモクリトスにおいてようやく明確な形で価値的に峻別されることになったのであり、プラトンの感覚と知性に対する見解はその延長線上にあるのである。さらにまた、アナクサゴラスの自然学がプラトンの魂や分有概念に与えた影響も見逃せない。このように、プラトン哲学の基底においてソクラテス以前哲学者は、肯定的な形であれ、否定的な形であれ、きわめて重大な要素をなしているのである。
著者
三浦 知之 三浦 要 富岡 宏 佐伯 めぐみ 三橋 利恵
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.51-68, 2012-02-24

宮崎県門川湾の庵川東西入り江(32°29'N,131°41'E)は,干潟域14haおよび藻場域がおよそ7haであり,アマモ,コアマモおよびノトウミヒルモの群落が見られる。両入り江から57科120種の貝類と46科86種の甲殻類および腕足類1種が確認された。庵川東入り江から98種の貝類と69種の甲殻類が,庵川西入り江から55種の貝類と54種の甲殻類が記録され,貝類33種と甲殻類37種は両入り江に共通であった。さらに腕足類のカサシャミセン類の1種は庵川東入り江の転石下に生息し,宮崎県では他の海岸でも見つかり,今後も生息地の確認は増える可能性がある。庵川東入り江は東側を縁取る岩礁域がほぼ自然のまま残されており,庵川西入り江に比べて,干潟面積が2.8倍,海草群落の面積が1.6倍広いため,出現種が多くなったものと思われる。
著者
三浦 要一 増井 正哉
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.317-328, 2005-05-15

Using the Ochiai District of Higashiiyayama Village in Tokushima Prefecture, this paper discusses how the plans of farmhouses and the living styles of the inhabitants have changed in mountain districts. Ochiai is situated in a remote mountainous area. The steep slopes of the mountainsides were cleared and farmhouses were built in a way that complements the unique landscape of the surrounding farmlands. We found quite a few farmhouses whose history could be traced back to the Edo period. Plans of those houses could be classified into two categories. It was found that, while the houses still maintained many traditional aspects or characteristics, most had been remodelled considerably by adding lavatories, baths and other modern facilities as well as constructing entrance and remodelling rooms. The authors also studied the temporal attributes and the effect of social demands as the reasons that the residents decided on additions and alterations of their farmhouses, most of remodelling took place between 1975 and 1985 when the occupants were reported to change their vocation.
著者
三浦 要
出版者
金沢大学人間科学系紀要編集委員会
雑誌
金沢大学人間科学系紀要 (ISSN:18835368)
巻号頁・発行日
no.1, pp.37-56, 2009-03-31

デモクリトスの倫理学説は,多くの著作断片が残っているにもかかわらず,その自然学説ほど顧みられない.だからといってそれが考察に値しないものであるわけではない.たしかに彼の倫理学的著作断片の多くは伝承の過程でアフォリズムの形へと縮約改変を受けており,一定の学説として再構成することには困難がともなうため,彼を,体系的な倫理学説をもたない,処世訓を与えてくれるだけのモラリストと見なす研究者も多い.しかし,それは彼の思想に対する過小評価と言わざるをえない. むしろ彼は,ソクラテスよりも前に,生の目的を魂の善としての「明朗闊達さ」と措定し,行為の普遍的な規範を規定しようとしており,そのかぎりで彼は体系的な倫理学説を志向した思想家と言える. Although the bulk of the extant fragments of his works deal primarily with ethical matters, Democritus has not received the attention he deserves in his ethics; some scholars merely take his ethical fragments to be a collection of wise saws, and others think of them as a pre-theoretical recipe for happiness; at any rate, such an interpretation places too low a value on his ethical view. My concern in this paper is with Democritus' ethical doctirne which can fully be described as a coherent ethical system. Indeed, it may safely be said that, in spite of the absence of the word telos in his fragments, Democritus offered euthymie or cheerfulness just as telos or the final goal of human life. Euthymie of the soul is identified with well-being and happiness. In Democritus' view, all human actions seek (or should seek) to fulfill a state of cheerfulness, tranquility of mind and self-sufficiency, and the rational choice of particular pleasures in terms of usefulness does produce this cheerfulness, which is itself a pleasure but a supreme one; in this sense, particular pleasures are the necessary condition of the attainment of the cheerfulness. Democritus clearly sets up a single ethical goal and shows the way to achieve it. His ethical theory thus can be called a moderate hedonistic eudaimonism.
著者
三浦 要一 北村 眞一 花岡 利幸 清水 浩志郎 木村 一裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.499-504, 1990-10-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
13

THE STUDY DEALS WITH THE CASE OF THE COMPREHENSIVE DEVELOPMENT PLAN FOR THE CITY OF AKITA. THIS MASTER PLAN WAS MADE ORIGINALLY AND SYSTEMATICALLY IN 1954 FROM THE SURVEY OF THE ACTUAL CONDITION OF CITY WITHOUT USING STANDARDS OF THE CITY PLAN. THE PLANNING WAS SUCCEEDED IN REMOVING GOVERNMENT OFFICES FROM CENTRE TO SURBURBIA AND STRUCTURING THE CITY AXIS. BUT THE HOUSING AREAS HAS SPREAD OVER THE SURBURBIA OF AKITA.
著者
三浦 要
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

古代ギリシア快楽主義の検討を通じ,特に,原子論者デモクリトスの快楽主義が一般的解釈に反し倫理的理論として肯定的に評価できること,同じ快楽主義のキュレネ派との相違点が顕著であるエピクロスの規範的倫理学説が,個人の閉じた生での幸福の実現を目標にしているかぎりで公的倫理の基礎を与えない点で限界を有すること,そして,快楽と人間とが親和的であるという快楽主義的洞察が真理であるからには,快楽主義が個人倫理の源泉を考える上で依然として有効性をもっていることを考察した。
著者
三浦 知之 三浦 要 富岡 宏 佐伯 めぐみ 三橋 利恵
出版者
宮崎大学農学部
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 = Bulletin of the Faculty of Agriculture, University of Miyazaki (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.51-68, 2012-02-24

The faunal composition of benthic mollusks, crustaceans and a brachiopod was investigated in the East and West inlets (32°29'N, 131°41'E) of Kadogawa Bay, on the East central coast of the Kyusyu island, Miyazaki Japan. There are sea-grass bed areas consisting of Zostera marina, Z. japonica and Halophila nipponica in the East and West Iorigawa inlets. The sea-grass bed of the East inlet is wider than that of the West. The former is fringed by a natural rocky shore in its eastern margin, however the latter is guarded by the concrete embankment and situated between a small fishery port and a public park of buried sea bottom. The benthic communities were investigated 26 times from November 2006 to July 2011 and their components were compared and discussed.In total, 206 benthic animal species including 87 gastropods, 30 bivalves and 50 decapod crustaceans were recorded. Among these benthic species, 97 were known only from East inlet and 70 species were known from both inlets. We could recognize the benthic community richness in the Fast inlet and it thought to be resulted by the wider area and rich environments, such as, the rocky shore without artificial concrete constructions.
著者
多治見 左近 三浦 要一
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.219-230, 2001

本研究は大阪都市圏を対象とし,明治期以降の住宅地形成過程を巨視的・構造的に明らかにすることを目的としている。都市発展の指標として1905~1930年の人口統計を用い,大阪市,東大阪,阪神間臨海・内陸が住宅地形成上典型的地域であることを確認し,これら地域が職業や職住関係の独特の性質をもつことを明らかにした。また宅地開発が活発な地域で農業事情を背景として地主が開発に果たした役割を明らかにした。さらに明治末期大阪近郊の土地所有を記録する『大阪地籍地図』の分析から宅地化の方面別相違を把握し,土地所有形態について江戸期新田開発の系譜をひく地主の存在や耕地整理,スプロールなどの開発への影響を明らかにした。
著者
三浦 要一
出版者
高知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

明治30年の古社寺保存法の制定後は、特別保護建造物の資格あるものが定められ、保存修理事業が開始された。明治以降に解体修理が竣工した古社寺建造物は、建立当初の建築形式を解明するために、文献資料から検討を加えることが必要になる。本研究は四国地方の4つの寺院を事例に、文化財修理の方針とその内容を明らかにした。本研究は古社寺建造物の修理に関する文献研究の有用性を提示し、今後の基礎資料になるものである。
著者
岡崎 文明 一ノ瀬 正樹 小浜 善信 伊集院 利明 谷 徹 榊原 哲也 杉田 正樹 日下部 吉信 須藤 訓任 赤井 清晃 柏端 達也 塩路 憲一 古田 智久 三浦 要 菊地 伸二
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の課題は<西洋古代から現代に至る二千六百年に及ぶ哲学史の統一的理解・再構築は可能か?>である。我々は共同研究を通じて再構築は可能であると結論することができた。これは「実存的歴史観」(vde.渡邊二郎『歴史の哲学-現代の思想的状況-』講談社、1999)によって支えられる。その具体的な姿は本研究グループの各メンバーによって各に示される。研究代表者の見解を要約すれば、西洋哲学史には2伝統、即ち古代ギリシア哲学(=ヘレニズム=善の優位性の思想)の伝統と西洋中世以降の哲学(=ヘブライズム=存在の優位性の思想)の伝統とが存存する。両伝統における「万有の根源の解釈」は根本的に異なる。しかし両者は新プラトン主義(原型)の第2段階「存在者-生命-知性」(三一)を或る仕方で共有することによって相互影響を受け、中世以降に新たな思想を生む。その結果、中世では存在論が、近世では認識論が、現代では生命論、新たな認識論と存在論がそれぞれ中心となった新しい哲学生まれる。中世から現代に至る諸哲学は1セットとして、ギリシア哲学に対峙し得る。その内容は下記の研究成果に示される。我々の研究成果の一部はまず第1の共同研究成果論文集『西洋哲学史の再構築に向けて』(1999)に示される。この外にもメンバー21人の各の研究論文等においても示される。その成果総数は学術論文209本、國内外の学会・研究会口頭発表87回、図書(単著)9冊である。更に平成15年中に第2の共同研究成果論文集『西洋哲学史観と時代区分』を公刊しようとしている。続く第3の共同論文集『現代の哲学-二千六百年の視野において-』は平成15年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)に申請中である。さらに第4の共同論文集『西洋哲学史再構築試論』も平成16年度科究費(研究成果公開促進費)に申請する予定である。以上が研究成果概要である。