著者
白 志星 藤井 英二郎 仲 隆裕 浅野 二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.203-213, 1992-03-25
被引用文献数
2

李朝における宮闕は中国周代からの宮闕制度に従うかたちをとりながら,一方では周りの地勢を重視する風水地理の思想が加わったかたちで構成されている.この宮闕に見られる宮苑における植栽は象徴性と装飾性,それから実用性を念頭に置きながら配植されている.外朝は宮闕のアプローチの空間であり,重要な見せ場として扱われ,ここでは多彩な植栽がなされている.治朝では行事に伴う機能的な面が重視された空間造りがなされ,植栽が排除される.
著者
三島 孔明 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.201-207, 1991-03-01
被引用文献数
2

植物のもつ心理的効果について調べるために,植物の視覚的構成要素の一つである色と脳波の関係について分析した.視覚対象として色布を用い,黄,緑,白,青,黒,赤,紫,灰の順に被験者に呈示し,それぞれの対象物をみているときのα波,β波,θ波の発生量を比較検討した.その結果,ほとんどの色においてα波とβ波,α波とθ波の間には比例的関係がみられた.このことは,ある色を見たときの脳波を構成するα波とβ波,ないしはα波とθ波の割合が多くの人でほぼ一定であることを意味している.各色におけるα波とβ波,θ波の相関係数を検討すると,黄では男女ともにそれらの相関係数が高く,逆に灰ではα波とθ波の相関係数が男女とも低くなった.このことは,黄を見たときのα波とβ波,θ波の割合が男女それぞれにおいて被験者間にばらつきが少なく反応に個人差が少ないことを意味しており,逆に灰をみたときは男女ともα波とθ波の割合に個人差が大きいことを意味している.次にα波に対するβ波,α波に対するθ波の回帰直線の傾きについてみると,ほとんどの色で男女ともα波に対するβ波の傾きがα波に対するθ波の傾きに比べて大きくなった.このことは,α波はβ波が増加してもあまり増えないがθ波が増加すると大きく増えるようになることを示しており,α波はβ波が多く出ている状態では出にくく,θ波が多い状態で出やすいことを意味している.青,白,緑ではα波に対するβ波の傾きが女性で大きく,男性で小さくなった.また,α波に対するθ波の傾きは黄,白,黒で男性が大きく,女性が小さくなった.黄,白,黒については,現時点でθ波の意味やα波とθ波の関係がほとんど研究されていないことからさらにその意味を考察することは困難である.しかし,緑と青でみられた性差については,α波やβ波の一般的傾向を合わせ考えると,これらの色をみたとき男性は女性に比べてより緊張感が少ない状態にあるものと考えられる。
著者
村上 朝子 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.97-102, 1993-03-24
被引用文献数
1 1

本研究は,いけばなと盆栽の取り扱いについて,庭園植栽意匠との関係に注目し,考察した。いけばなの取り扱いについて中世の絵巻物や花伝書等を用いて検討した結果,「真の花」であり,座敷の押板飾りに欠かせない「三具足の花」が仏前の供花から派生し成立する過程が推察された。また,花伝書の記述から,特に「草の花」は自然の美を表現しようとするもので,このとき,当時の庭園植栽の姿が想定されていたことが指摘された。一方,盆栽については絵巻物から,縁や庭先に置かれる盆栽は庭の景を構成する一要素となり,これを考慮した植栽意匠がなされた場合があったこと,また,盆栽が植栽の整姿に影響した可能性について考察された。
著者
須田 歩 趙 ひゅん珠 李 宙営 藤井 英二郎
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.465-470, 2009 (Released:2010-06-24)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

The effects of pair planting of Italian Cypress on the visual characteristics of geometric garden are discussed with the analysis of eye movements of 16 subjects. The distribution of eye fixation and eye movement speed inspecting French Garden from its east end are compared before and after the planting of pair trees which locate symmetrically at the western extension of east and west axe of the garden. The center of eye point distribution tends to concentrate on the central area including flower base after the planting of pair tree. And, the number of eye movement in the upper part of central area significantly increased in the male subjects. Contrarily, the number of eye movement in the lower part of central area significantly increased in the female subjects. Therefore, the characteristics of eye movement mentioned above are considered to indicate that the pair planting has a visual effect to conceive the axe of geometric garden.
著者
増田 絹子 岩崎 寛 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.27-40, 2007-03-31

本研究では,日本でみられる多様な植物との関わりについて検討するために,植物由来の色名について,その意味や成立背景に基づいて把握し,そして戦前から近年におけるこれらの色名の推移を調査し,植物との関わりが色名の推移にどう反映されているのかを分析した.日本の植物由来色名は染料植物由来色名に始まり,植物様態由来色名,染法用語由来色名,欧米起源の植物由来色名で構成されることが確認された.染料植物由来色名については,アイ,クレナイ以外の植物に由来する染めの程度を示す色名や重ね染めを意味する色名,染料植物の婉曲表現の色名が衰退していたことから,植物を染料として利用する機会やこれらの染め色を目にする機会が減少していることが示唆された。植物様態由来色名については,微妙な色の差異を示し,より細かい季節を象徴する色名が衰退していたことや,植物の俗称や別名の色名が衰退していたことから,身近な植物への関心の低下や身近な植物の減少が示唆された.欧米起源の植物由来色名においては,盛んに交替する性質があり,植物名から色がイメージされるまで定着しているものが少なかったことから,色名の対象となった植物の存在が軽視されていることが示唆された.
著者
藤井 英二郎 辰巳 修三 陣内 巌
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.273-279, 1979-08-25

常磐線沿線地域のマツ平地林16群落を調査し, 草本層構成種の積算優占度からGLEASONの類似度指数を求め, これをもとに因子分析し, 因子軸上に各群落を因子負荷量によって位置づけた結果, よく下刈りされた群落グループと下刈り放棄後遷移が進んだグループ, それらの中間にあるグループの三つに区分された。そして, 偏向遷移系列と正常遷移系列の2因子が推定された。3グループ間で優占度による生活型組成を比較すると休眠型でMMとM, 生育型でb, 散布型でD_4が遷移の進行につれて増加し, 逆に休眠型でCh, 生育型でt, 散布型でD_1が減少した。また生活型ごとに構成種の相対優占度-順位関係を3グループ間でくらべると, 遷移が進むにつれて生活型の構成種数は減るが優占度は増える建設型(休眠型でM, 生育型でb, 散布型でD_4が該当)と, 構成種数も優占度も減るが種数がより急激に減る衰退型I(生育型でtが該当), 優占度がより急激に減る衰退型II(休眠型でCh, 散布型でD_1が該当)とがみられた。
著者
藤井 英二郎 陣内 巌
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.76-82, 1979-03-25
被引用文献数
5

常磐線沿線地域のマツ平地林16群落を調査し, 草本層の種組成の類似性をJACCARDの共通係数で判断し, この共通係数行列をもとに直接バリマックス法で因子分析した結果, 下刈りによる偏向遷移系列と正常遷移系列の2因子が推定された。これら2因子軸上に各群落を因子負荷量によって位置づけた結果, よく下刈りされ遷移の退行を起こした群落グループA(このなかには上層のマツが高密な群落も含まれた)と下刈り強度の弱い, あるいは下刈りを放棄して数年を経た群落グループB, さらに下刈りを放棄して10年以上経た群落グループCとに区分された。A, B, Cの間で種数による生活型組成を比較するとA, B, Cの順, すなわち下刈りによって退行遷移した群落から下刈り放棄によって林床植生が発達するにつれて, 休眠型でMとG, 生育型でeと1,散布器官型でD_2が増加し, 逆に休眠型でChとH, 生育型でtとpr, 散布器官型でD_4が減少する傾向がみられた。
著者
浅野 二郎 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.69-78, 1986-03-30
被引用文献数
1

わび茶が創始され,多くの人たちがそれを継承するなかで,わび茶は大きく発展する.わび茶が発展するなかで,やがて,遊芸の茶ともいえる贅と華美に流れる茶が流行する時期を迎える.この時流のなかで,わび茶本来の姿へ立ち戻るべし,とする人達があらわれる.本報告では,このような人達の中から,資料によってその事績を比較的明確にとらえることのできる藤村庸軒と井伊直弼の茶と茶庭について取り上げ,検討した.特に茶庭については現存する西翁院・澱看席と,埋木舎・〓露軒および茶湯一会集を中心にして考察を加えた.そこでは,いずれも,わび茶の原点への回帰を希う真摯な姿勢が,具体的な作例あるいは著書・諸記録を通してうかがい知ることができる.
著者
安蒜 俊比古 浅野 二郎 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.85-92, 1988-03-18

築山庭造伝前編と後編に於ける役木を対象として,役木の配植位置と注視部位,庭園構成の格(真・行・草)に於ける役木の取扱いについて検討した.同一の配植位置にあっても,役木に対する注視部位が細部,局部,全形と役木によって異っている.真・行・草の庭園構成に於ける役木の取扱いは,庭園構成の格に関らず取扱われるものと,格によって取扱いが省略される役木がある.配植位置や庭園構成の格によって異なった傾向が見られるのは,とくに近景と中景の役木である.これは庭園構成の主景的な立場としての役木であるか,装景的な立場としての役木であるかによるものと考えられる.
著者
冲中 健 山内 啓治 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.102-107, 1988-03-31
被引用文献数
3 6

我が国の主要な壁面登はん性つる植物としてのナツヅタについて,その壁面付着に関する圃場実験を行った。設定した実験因子は,つるの傾斜角度・日照条件,つるの太さとジベレリンの散布である。実験の結果,つるの傾斜角度・日照条件とつるの太さは,ナツヅタのつるの付着性に大かな影響を与えるか,シベレリンの散布はあまり大きく関与をしないことがわかった。
著者
浅野 二郎 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.109-122, 1987-03-30
被引用文献数
1

紹鴎から利休へとつづくわび茶の草創の時期において,わび茶の先達たちが求めた世界は,一座建立の世界であり,それは,茶の場において亭主の座と客の座がもつ格差の否定につながるものであった.而して,利休が求めるものは,四畳半,三畳あるいは二畳といった,いわゆる小間の茶に佗びすますところのものであった.しかし,うき世の外の道を目指したこのわび茶も,終いにうき世の外のものではあり得ず,やがて,それは客のための茶へ,さらに客のもてなしのひとつとしてとらえる茶へと変容する.わび茶に対する意識のこのような転換に伴って,茶室の空間構成にも,新たな展開が起る.この際立ったひとつとして茶室における台目構があげられる.一方,露地についてみるとき,露地もまたおそらく茶室のたどった道筋と無縁のものではあり得なかった筈である.つまり,台目構の茶室に対応する露地は,台目構を構想する意識と深くかかわりつつ造形されていったものとみてよいのではあるまいか.本論文では,特に台目構の茶室をとらえながら,それに対応する露地の形態がどのように展開したかを,指図(平面図)が確認できる史料を手がかりとして,検討を加えた.即ち,織部がかかわった松屋久好の露地,細川三斎の露地および金森宗和の露地を事例的にとりあげ,関連資料を活用しつつ,これらの露地が辿った道程を見極め,それぞれの茶匠たちが求めた造形をとおして,わび茶における伝統の継承と創造の問題について論じた.
著者
細野 哲央 三島 孔明 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.489-494, 2005-03-31
被引用文献数
3 3

This research aims at clarifying proper management of planting demanded from a legal viewpoint. First, Article 2 of State Redress Law and Article 717 of Civil Code are set as keywords, and the judicial precedent is searched, using the Internet database "law information database LEX/DB Internet". And then, the examples in connection with roadside planting were taken up out of the searched examples. The acquired judicial precedent was classified, observing the concrete mode of the accident. And five examples that the accident occurred when the victim collided with planting directly were summarized in the table, observing the regarded fact in the decision. Consequently, the relation between the legal responsibility for manager and the contents of planting management on the judicial precedent for the collision with roadside planting could be clarified and expressed to the figure.