著者
藤本 昌代
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

この研究は低流動性社会としての日本、高流動性社会としての米国シリコンバレー、中流動性社会のフランスで就業する人々の組織間移動、就業観の比較を行ったものである。本研究の対象者は科学技術系の研究者・技術者である。頻繁な転職が多く、世界中で注目を集めるシリコンバレーでは起業する成功者だけでなく、解雇や倒産に不安も抱える人々も多かった。しかしながら、分析の結果、組織と長期的な関係を築く日本の研究者、技術者より、解雇が多いシリコンバレーや中流動性社会のフランスの研究者、技術者の忠誠心の方が高いことが明らかになった。このことから組織に対する忠誠心は勤続の長さでは規定されないことが発見されたのである。
著者
藤本 昌代
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.96-107, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

本研究は,学会など外部の職業集団に準拠し,所属集団へのコミットメントが低く,コスモポリタン的とされるプロフェッショナルを,多元的な組織・集団の中の個人という視点から分析するものである.本研究のアプローチは,産業組織の構造,専門分野,所属組織での自己の位置づけなど,それぞれの組織・集団での自己評価が,移動可能性の逓減,認知的不協和を引き起こし,組織準拠性に影響を与えるというものである.これらの現象を多峰性関数のローカル・マキシマムという概念を用いて説明を行う.
著者
藤本 昌代
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.7-12, 2018 (Released:2018-08-17)
参考文献数
14

This report analyzes about the graduates of the French high-level engineering schools who were given the "engineer" qualification (the advanced profession or people who go on senior management career). We surveyed about the industrial field where they work, the industrial field with high income, the tendency of the overtime hours, work satisfaction and norms. They were employed not only in fields where high incomes were obtained, but also in public institutions, government agencies, and international organizations, with less incomes. It was seen that the height of the social position of the organization was given priority over economic rewards. They were not only preferential in status and income, but also worked very long hours. However, young people tend to join in high-income fields such as the financial insurance business. They are in a harsh working situation, except that they can control the work time themselves, and their spirits are not altruistic, they work selfish, and the oblige seems to collapse. It is necessary to reconsider their way of working which is exhausted. In France, there is an educational inflation in the humanities, but educational investment is not rewarded by the way of working like a science profession in Japanese manufacturing industry.
著者
藤本 昌代 Masayo Fujimoto
出版者
同志社社会学研究学会
雑誌
同志社社会学研究 = The Doshisha Shakaigakukenkyu (Doshisha review of sociology) (ISSN:13429833)
巻号頁・発行日
no.25, pp.17-44, 2021-03-31

本研究は新型コロナウイルスによるパンデミックのもと、日本での第1波直後に私たちがおかれた就業状況について企業組織を中心に調査・分析を行ったものである。本稿で用いるデータは2020年4月実施の全国大企業を中心とした調査、同年5月実施の京都市中小企業調査、同年7月実施の中小企業経営者へのインタビュー調査である。分析の結果、危機的状況では企業規模が小さくなるほど耐性が低く、反対に企業規模が大きくなるほど組織内コミュニケーションの齟齬による混乱が大きくなることが明らかになった。
著者
藤本 昌代
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.73-80, 2011-06-30 (Released:2015-05-13)
参考文献数
9
著者
藤本 昌代 池田 梨恵子 フジモト マサヨ イケダ リエコ Fujimoto Masayo Ikeda Rieko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.130, pp.107-141, 2019-09

本研究は1940年代の尾高邦雄の職業研究を起点に,社会学における職業研究,職場の人間関係,職業集団,職場での労働者意識等の観点から再確認し,日本の社会学におけるホワイトカラーの研究経緯について2000年以降の傾向をまとめたものである。分析の結果,社会階層研究などの個人の職業に関する研究が1950年代から継続され,後続する研究者が育成されているのに対し,尾高や同時代の多くの社会学者が盛んに行ってきた企業調査や同業者組合,職人集団等の職業研究は徐々に減少し,2000年以降も減少し続けていることが確認された。その一方で,ホワイトカラー職,専門職の働き方に関する個別の調査では,丁寧なフィールドワークや多様な方法を用いた重厚なものが多く,研究内容の充実度は継続しているといえよう。論文(Article)