著者
藤田 晴啓
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-38, 2014-04

クスコ、ヴィルカノタ川沿いの聖なる谷からマチュ・ピチュ遺跡にかけてのインカ時代遺跡群の調査を行い、遺跡群の地理的特徴、マチュ・ピチュ遺跡の立地、都市建築の歴史的背景、遺跡の劣化状況および保存施策について報告した。マチュ・ピチュ遺跡は、南北に連なるふたつの峰、ワイナ・ピチュ峰からマチュ・ピチュ峰に連なる尾根の鞍部に立地し、急斜面の段々畑およびヴノカルタ川まで落ちる断崖絶壁に囲まれた立地環境にある。建築様式からインカ時代隆盛期に建築されことはほぼ確かと考えられるが、都市建設や存在に関する記録が全く残っていない。最近の考古学調査の物証および大規模な糧食備蓄機能が存在しない事実から、王の保養地とする説が最も合理的と考えられた。遺跡の中で特に神聖な場所とされる太陽神殿大塔部およびインティワタナの劣化状況の調査を実施し、状況を報告した。マチュ・ピチュ遺跡への交通等の観光概況についても報告した。
著者
藤田 晴啓
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.83-91, 2015-04-01

インドネシア・ボゴール市における最近の調査では、家庭からの廃食油は生活排水あるいは土壌に投棄され、水系・土壌汚染等の環境被害を引き起すばかりでなく、温室効果ガス排出の増加をもたらしている。日本の家庭からの廃食油は年間10 万トンでるといわれ、その大半は燃焼ゴミとして廃棄され、再利用されるのは1 割にも満たない。新潟市およびボゴール市において実施されている廃食油再生化事業の比較検討を行った。回収される廃食油量や再生エネルギーの60%しか公用車両稼働に利用されていないこと等、両者には共通点が多いことが明らかとなった。食用油の温室効果ガス排出量としてのライフサイクルインパクトを、実際の製造所データや報告されているデータを使用して推定した。廃食油の排水・土壌の投棄、あるいは完全消費と比較した再生化の場合の環境的有利性は、経済的あるいは技術的な制約により、必ずしも再生活動を助長するものではないことが明らかとなった。日本における高い人件費による制約よりも、ボゴール市での技術的な制約は比較的安易に解決できるであろう。
著者
板垣 正敏 河野 一隆 藤田 晴啓 Masatoshi ITAGAKI Kazutaka KAWANO Haruhiro Fujita
出版者
考古文化財ディープラーニング研究会

本研究では高精細の文化財画像に無相関ストレッチおよび機械学習による図像解析を加え、褪色して見えなくなった文字や文様などのモチーフを鮮明化する、文化財に特化した画像解析技術の理論構築と実践を目的とする.デジタル画像の利用が一般化してからは、画像の鮮明化には画像編集ソフトウェアを用いてトーンカーブを修正するなどの手法や、ヒストグラム平坦化などによるコントラスト強調の手法が採られてきた.手動によるトーンカーブ修正などの方法は、経験や試行錯誤による職人的なもので一般化は困難な一方、ヒストグラム平坦化では一定の効果は得られるものの、鮮明な復元は困難である. 本研究では、人工衛星による資源探索などの領域で開発され、考古学でもロックアートなどの分野で活用されている無相関ストレッチと呼ばれる手法を用いて画像の鮮明化を行うとともに、深層学習技術を活用したCycleGANと呼ばれる手法で無相関ストレッチ手法によって生じた色相の変化の復元を試みた. 無相関ストレッチは,主成分変換とKarhunen-Loeve変換という2つの密接に関連したデータ変換技術を適応,拡張したものである.Karhunen-Loeve変換は,多次元空間における線形変換(回転)であり,変換ベクトルは元のデータの共分散行列の固有ベクトルとして定義される.本研究では、オープンソースの画像編集ソフトImageJのプラグインDStretchを利用する.DStretchでは画像のRGB色空間を別の色空間に変換してから無相関ストレッチを適用することで画像の鮮明化の効果を強化しているが、結果として色空間に変化が生じるため、画像復元の目的にはそのまま用いることができない.そこで我々は深層学習を用いた画像生成技術であるCycleGANに注目した.深層学習による画像生成は、画像の高精細度化や白黒画像のカラー化などにも活用されているが、pix2pixなどこれまで利用されている技術では、その学習に変換元の画像と変換後の画像のペアが必要であった.しかしながら、文化財復元の目的では、褪色前後の画像をペアで用意することはほぼ不可能である.CycleGANは順方向と逆方向の変換器を同時に学習させることで、学習に1対1の対応画像を不要にしたものである. 最初の対象物としては木簡を使用した.汚れや褪色などによって判読不可能となっている木簡から文字を判読可能な状態に復元できれば意義が大きいだけではなく、本研究の手法の有効性を判断するのに適していると考えたからである.今回は、少量の木簡画像を用いて、無相関ストレッチによる画像鮮明化の効果を確認し、CycleGANによって色相の復元が可能かどうかの実験を行い、その効果と課題を検証した.
著者
北川 源四郎 椿 広計 藤田 利治 津田 博史 西山 慶彦 川﨑 能典 佐藤 整尚 土屋 隆裕 久保田 貴文 藤田 晴啓 奥原 浩之 村上 政勝 片桐 英樹 宮本 道子 曽根原 登 冨田 誠 笛田 薫 蓮池 隆 宮原 孝夫 安藤 雅和
出版者
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,科学的情報収集に基づく社会価値選択,価値を決定する構造モデル導出,価値のモデル上での最適化,最適化された価値の社会への還元からなる情報循環設計を科学的政策決定の統計数理科学的枠組みと位置づけ,政策の科学的決定に資する統計数理体系構築を目的とした.本研究を通じて,公的ミクロ情報分析統計基盤の確立,情報循環加速ツールの開発,時空間可視化ツールの開発を達成し,同成果を自殺予防対策研究,観光政策研究,産業環境政策研究に応用し,それぞれの政策立案に資する新たな知見を得るとともに,データに基づく政策を提言した.