著者
大山 篤之 津田 博史
出版者
一般社団法人 日本金融・証券計量・工学学会
雑誌
ジャフィー・ジャーナル (ISSN:24344702)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.55-69, 2022 (Released:2022-06-08)
参考文献数
4

本研究では,HFTの実態を把握すべく,東証の板再現データ(2010年1月から2015年9月までの全数調査約256億件の注文情報)からHFT業者の日本市場への参入の軌跡や,市場シェア,取引スタイル等を分析した.先行研究では,コロケーション経由に基づくHFT判定が主流であったが,各仮想サーバに対して,これまで行われなかった膨大な注文情報を細かく集計する探索型の分析を通じて,①手動注文と成行注文が顕著に含まれない仮想サーバと含まれる仮想サーバに分類された点,②HFT特有の高頻度性を有する仮想サーバが前者であるという点の2つの新たな知見が得られた.そこで,本研究では,この新たな知見に基づきアルゴリズム化基準(「取引自動化」と「仮想サーバの専有」を基準とした『アルゴリズム化基準』)を提案することで,これまで把握されてこなかったHFTの全貌や実態を下記通り明らかにすることができた.(1)この提案したアルゴリズム化基準によって,典型的なHFT(高頻度かつ高速の注文を行う者)の取引グループを捕捉できた,(2)特に,2014から2015年の観察期間では,仮想サーバの約65%,注文総数の約70%,売買代金の約45%がHFTによって占められていること,(3)HFTはザラバで注文を行う一方,信用取引を行わないこと,(4)IOC注文を行うのは,HFTの中でも特にアルゴリズム化度合が高いグループに限定されること,(5)HFTの中でも特にアルゴリズム化度合及び高頻度性の双方が高いグループで,空売り注文を駆使し,マーケットメイク(メイク注文が多くテイク注文が少ない)を行っていること,がそれぞれ判明した.
著者
山本 俊樹 津田 博史 ヤマモト トシキ ツダ ヒロシ Yamamoto Toshiki Tsuda Hiroshi
出版者
同志社大学ハリス理化学研究所
雑誌
同志社大学ハリス理化学研究報告 = The Harris science review of Doshisha University (ISSN:00368172)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.29-40, 2015-04

観光産業は、日本の主要産業であるが、平成18年度に旅行消費額が30兆円に至ったものの、平成22年度は、約24兆円へと低下した。そのため、日本政府は、観光産業の活性化を図るため「平成28年度までに国内における旅行消費額を30兆円に拡大する。」という観光立国推進計画を平成24年3月30日に発表した。一方、昨今、ネット社会が急速に広がる中、cyber worldを利用したビジネスが急速に拡大してきており、観光産業においても例外ではない。ここ最近では、各旅行会社が企画・運営している旅行プランに満足できず、旅行会社に企画してもらうのではなく、自分で旅行プランを立てる人の数が増加してきている。このような人々は個人旅行者と呼ばれ、個人旅行者の多くはインターネットを利用して宿泊場所や宿泊プランの予約を行いつつある。今後のIT産業の発展を考慮に入れると、このようにインターネットを通して宿泊予約をする個人旅行者の数が増加することが予想される。そこで、本研究では、世界的な観光都市である京都の宿泊施設に焦点を当てた。京都を訪問する観光客は個人旅行者の割合が多いのが特徴である。Webサイトから収集した京都市内の宿泊施設の宿泊プランの空室数と価格のデータを用いて、京都市内の宿泊施設の客室稼働率と経済規模を日次で推定することを試みた。推定した客室稼働率と経済規模から季節変動や曜日効果などを見出したと共に、京都駅からの距離や宿泊施設の規模などで宿泊施設を分類することにより、新しい知見が得られた。Tourism is a key industry in Japan. However, although domestic travel expenditure reached 30 trillion yen in fiscal 2006, it subsequently declined to approximately 24 trillion yen in fiscal 2010. For this reason, on March 30, 2012, the Japanese government announced a tourism nation promotion plan to stimulate the tourism industry with the objective of increasing domestic travel expenditure to 30 trillion yen by fiscal 2016. At the same time, the rapid spread of the Internet in society has brought a rapid expansion of business conducted utilizing the cyber world, with the tourism industry being no exception. In recent years, the number of people who are not satisfied with tours planned and operated by travel agencies and who construct their own travel plans instead of relying on travel agencies has been increasing. Many of these people, called free independent travelers, are using the Internet to book lodgings. Taking into account future developments in the IT industry, an increase in the number of such individual travelers is expected. Accordingly, the present study focuses on lodging facilities in Kyoto City, a global tourism destination. A large proportion of the tourists who visit Kyoto are individual travelers. Using data on the number of room vacancies and prices for accommodation packages at lodging facilities in Kyoto City collected from websites, we estimated the daily occupancy rates of lodging facilities and the economic scale of Kyoto City. From these estimates, we could also gain such information as seasonal variations and day-of-the-week effects. Additional information was obtained by classifying lodging facilities according to factors such as their distance from Kyoto Station and the number of rooms of lodging facility.
著者
津田 博史 多田 舞 山本 俊樹 一藤 裕 曽根原 登 椿 広計
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.442-451, 2013-12-07 (Released:2014-02-07)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本研究の目的は,地域観光の政策実行主体である自治体やホテルなどの宿泊施設事業者が,データに基づいた合理的な観光政策,事業経営を実施するための情報収集・データ解析理論,方法を研究することである.本研究では,Webサイトから収集したホテル空室データや観光情報を用いて,日次で宿泊施設の稼働率を推定し,また,宿泊施設であるホテルの人気の要因を分析した.今回の研究目的の1つ目として,京都市の観光政策の経済波及効果を捉えるために,京都市内のホテルの客室稼働率を推定することとした.2つ目の目的として,人気ホテルの要因を解明することとした.実証分析結果により,京都市内のホテルの客室稼働率,および,ホテルの人気の要因に関して新しい知見が得られた.
著者
北川 源四郎 椿 広計 藤田 利治 津田 博史 西山 慶彦 川﨑 能典 佐藤 整尚 土屋 隆裕 久保田 貴文 藤田 晴啓 奥原 浩之 村上 政勝 片桐 英樹 宮本 道子 曽根原 登 冨田 誠 笛田 薫 蓮池 隆 宮原 孝夫 安藤 雅和
出版者
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,科学的情報収集に基づく社会価値選択,価値を決定する構造モデル導出,価値のモデル上での最適化,最適化された価値の社会への還元からなる情報循環設計を科学的政策決定の統計数理科学的枠組みと位置づけ,政策の科学的決定に資する統計数理体系構築を目的とした.本研究を通じて,公的ミクロ情報分析統計基盤の確立,情報循環加速ツールの開発,時空間可視化ツールの開発を達成し,同成果を自殺予防対策研究,観光政策研究,産業環境政策研究に応用し,それぞれの政策立案に資する新たな知見を得るとともに,データに基づく政策を提言した.