著者
西村 公雄 宮本 有香 樋笠 隆彦
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.605-615, 2004-08-15
被引用文献数
6

75℃で真空調理加熱した鶏ささ身は, 100℃で加熱したものより有意に収縮が弱くかつ,やわらかく仕上がった.両試料のヒドロキシプロリン量に,有意な差はなく,走査電子顕微鏡観察においても微細構迫間に顕著な差は観られなかった.ミオシンを両温度で加熱後その凝集状態を透過電子顕微鏡で観察したが,状態に差は認められなかった.しかしながら,接触しているタンパク質同士を結合する試薬1-ethyl-3-carbodiimideを用いて得られたミオシン凝集体の電気泳動パターンは,明らかに100℃加熱した方が75℃加熱したミオシンより重合化が進んでいることを示していた.このことは, 100℃加熱で形成されたミオシン凝集体がよりコンパクトな構造を持っていることを示している.
著者
西村 公雄 後藤 昌弘
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.713-721, 1999-07-15
被引用文献数
1

90℃加熱中に生じる鶏もも肉浸出液によるホワイトソースの分離は,2.4 m_M N-ethyl-maleimide (NEM)または,10 m_M ethylendiaminetetraacetic acidの添加により抑えられた.一方,浸出液中のタンパク質は,ホワイトソースのクリーム層と結合せず,また,加熱凝集した浸出液をホワイトソースに加えて再加熱しても分離は生じなかった.以上のことは,加熱中に浸出液中のタンパク質分子間にSS結合と2価カチオンが関与する相互作用が生じ,その結果ネットワークを形成する際にカゼインミセルや油滴をトラップすることが,分離の原因であることを示している.さらに,浸出液中のタンパク質表面疎水性の加熱による増加にNEMは影響を与えなかった.このことは,NEMが存在してもしなくても,浸出液中のタンパク質の凝集が同程度であることを示している.
著者
後藤 昌弘 西村 公雄 中井 秀了
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.282-288, 2004-03-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

真空調理による肉じゃがの最適減塩調理条件をランダム・セントロイド法 (RCO法) を用いて最少実験回数で決定することを試みた.肉じゃがは, プラスチック袋に一定量の野菜 (ジャガイモ, タマネギニンジン) と牛肉及び調味液を入れ, 真空包装し, スチームコンベクションオーブンを用いて100℃で加熱した. まず, 一般的配合の調味料を用いて20, 30, 40分加熱し, 官能検査 (順位法) で最も好まれる調理時間を調べた. その結果は40分であった.次に, 加熱時間40分, 加熱温度100℃, 風味調味料重量を一定 (1.2g) として醤油重量 (0~19.5g) 及び砂糖重量 (0~8.4g) の2つを要因としてRCOプログラムによって示された条件で調理を行い, 官能検査の総合評価が最も高くなる条件を求めた. この場合, 醤油重量16.6g, 砂糖重量4.2gが最適条件で, 普通調理品 (一般的配合の調味料で約20分間鍋で煮たもの) と比べ約33%の減塩効果があった. また, 官能検査の総合評価は, 普通調理品肉じゃがと比べほとんど差がなかったさらに, 醤油重量 (0~16.6g), 砂糖重量 (0~8.4g), 風味調味料重量 (0~3.0g) の3つを要因としてRCOプログラムで同様に調理条件を求めた. その結果, 醤油重量13.4g, 砂糖重量5.5g, 風味調味料重量1.7gが最適条件であった. この時は普通調理品と比べ38%の減塩効果があった. この場合の官能検査の総合評価も普通調理品肉じゃがと比べほとんど差がなかった.
著者
小切間 美保 西野 幸典 角田 隆巳 鈴木 裕子 今木 雅英 西村 公雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-87, 2001-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

鉄剤を緑茶で服用しても影響はないとする報告がある。しかし, これらの報告は年齢, 栄養素摂取状況などを十分に考慮した検討ではない。そこでわれわれは, 18-24歳の若年女性のべ50名の対象者を, 無作為にミネラルウォーターのみ服用 (Control 群), 市販緑茶飲料のみ服用 (Tea群), 鉄剤をミネラルウォーターで服用 (Fe群), 鉄剤を市販緑茶飲料で服用 (Fe+Tea群) の4群に分け鉄剤吸収実験を行った。また, 実験前2週間の食事調査も行った。鉄剤にはクエン酸第一鉄ナトリウム製剤 (鉄として100mg相当量) を, 緑茶ば市販の缶入り飲料を用いた。鉄吸収の指標として血清中の鉄 (Fe), 総鉄結合能 (TIBC), 不飽和鉄結合能 (UIBC), フェリチンの測定を行った。実験により, Fe群どFe+Tea群の間には有意な差はなかったが, これら2群は他の2群より血清鉄濃度は有意に上昇し, 血清不飽和鉄結合能は有意に低下した。これらの結果から, 若年女性においてクエン酸第一鉄ナトリウム製剤を市販緑茶飲料で服用しても鉄吸収が阻害されることはないと考えられた。
著者
後藤 昌弘 西村 公雄
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1159-1165, 1995-12-15
被引用文献数
1 1

16.6gのホワイトソース,40gの鶏もも肉,33.4gのブイヨンスープから真空調理法を用いてクリームシチューを作ったところ,クリームシチューのソース部分が分離した.この現象は,減圧処理のいかんに関わらず60分間90℃で調理することにより生じたが,鶏もも肉を材料から除いたものでは起こらなかった.タンパク質は鶏もも肉から調理時間とともに溶出し,調理終了後約300mgに達していた.鶏もも肉の代わりに200mgまたはそれ以上の牛血清アルブミンあるいは卵白アルブミンを添加すると,クリームシチューのソース部分の分離が生じた.これらのことから,真空調理中に生じるクリームシチューのソース部分の分離は減圧処理によるものではなく,調理中に肉より溶出してくる筋漿タンパク質によるものであることが判明した.
著者
小切間 美保 西野 幸典 角田 隆巳 鈴木 裕子 今木 雅英 西村 公雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-87, 2001-04-10
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

鉄剤を緑茶で服用しても影響はないとする報告がある。しかし, これらの報告は年齢, 栄養素摂取状況などを十分に考慮した検討ではない。そこでわれわれは, 18-24歳の若年女性のべ50名の対象者を, 無作為にミネラルウォーターのみ服用 (Control 群), 市販緑茶飲料のみ服用 (Tea群), 鉄剤をミネラルウォーターで服用 (Fe群), 鉄剤を市販緑茶飲料で服用 (Fe+Tea群) の4群に分け鉄剤吸収実験を行った。また, 実験前2週間の食事調査も行った。鉄剤にはクエン酸第一鉄ナトリウム製剤 (鉄として100mg相当量) を, 緑茶ば市販の缶入り飲料を用いた。鉄吸収の指標として血清中の鉄 (Fe), 総鉄結合能 (TIBC), 不飽和鉄結合能 (UIBC), フェリチンの測定を行った。実験により, Fe群どFe+Tea群の間には有意な差はなかったが, これら2群は他の2群より血清鉄濃度は有意に上昇し, 血清不飽和鉄結合能は有意に低下した。これらの結果から, 若年女性においてクエン酸第一鉄ナトリウム製剤を市販緑茶飲料で服用しても鉄吸収が阻害されることはないと考えられた。
著者
西村 公雄 宮本 有香 樋笠 隆彦
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.605-615, 2004

75℃ で真空調理加熱した鶏ささ身は, 100℃で加熱したものより有意に収縮が弱くかつ, やわらかく仕上がった.両試料のヒドロキシプロリン量に, 有意な差はなく, 走査電子顕微鏡観察においても微細構造間に顕著な差は観られなかった.ミオシンを両温度で加熱後その凝集状態を透過電子顕微鏡で観察したが, 状態に差は認められなかった.しかしながら, 接触しているタンパク質同士を結合する試薬 1-ethyl-3-carbodiimide を用いて得られたミオシン凝集体の電気泳動パターンは, 明らかに 100℃ 加熱した方が75℃加熱したミオシンより重合化が進んでいることを示していた. このことは, 100℃ 加熱で形成されたミオシン凝集体がよりコンパクトな構造を持っていることを示している.
著者
後藤 昌弘 彼末 富貴 西村 公雄 中井 秀了
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.521-525, 2000-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

真空調理法の条件設定は, 経験と勘に基づく試行錯誤によって決められることが多い.本研究では, 少ない実験回数で最適値を決定することができるRCO法を用いて, 真空調理によるリンゴコンポートの最適調理条件を求めた.リンゴ果実は, 高知県佐川町産 “ジヨナゴールド”, “ふじ” を用いた.まず, 一般的調理書5冊の調理条件の平均値を用いて普通調理と真空調理を行い, 評点法によりどちらのコンポートが好まれるかを調べた.その結果, 真空調理品が有意に好まれた.次に, シロップの糖濃度10~50% (w/w), 加熱時間0~60分の範囲でRGOプログラムにより示された調理条件で調理を行い, 官能検査の総合評価が最も高くなる条件を最適調理条件とした.その結果, シロップの糖濃度37%, 加熱時間32分が最適調理条件であることがわかった.