著者
滝澤 恵美 山口 麻紀 岩井 浩一 伊東 元
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.1-8, 2014 (Released:2014-06-24)
参考文献数
25

本研究は児童における蹲踞姿勢の実態調査を行い,生活様式や運動習慣との関連性を調べた。対象は小学校1~6年生の68名(男子36名,女子32名)とした。姿勢観察は自由課題(床の高さで絵を描く際に選択する姿勢)と指示課題(踵を接地した蹲踞の可不可)の2課題とした。生活様式(便座の種類,寝具の種類,他),特定の運動習慣の有無は保護者から情報収集した。関節可動性は足関節の背屈角度と長座体前屈を計測した。結果,自由課題で蹲踞を選択した者は6割,指示課題で踵を接地した蹲踞が可能だった者は7割だった。多重ロジスティック回帰分析の結果,選択する姿勢は寝具の種類(調整オッズ比:3.6,95%信頼区間:1.2–11.5,p < 0.05)と学年(調整オッズ比:5.2,95%信頼区間:1.4–18.9,p < 0.01)が関係した。踵を接地した蹲踞の可不可には特定の運動習慣の有無(調整オッズ比:9.2,95%信頼区間:1.8–47.7,p < 0.01)が関係した。児童の蹲踞姿勢において,性や関節の可動域は有意な関係を示さなかった。生活様式や運動習慣は,多様な姿勢の1つである蹲踞に影響を与える。
著者
鈴木 徹 伊東 元 江原 皓吉 齋藤 宏
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.409-413, 1986-10-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
2

健常成人22名の利き手を対象に手関節測定肢位を掌背屈および橈尺屈の組み合わせで13肢位に定めて握力を測定し,手関節肢位と握力の関係について検討した。最大握力を発揮する手関節肢位は背屈20゜前後で,橈尺屈0゜より軽度尺屈位であった。この肢位を力の頂点とし,手関節をいずれの角度に偏位しても握力は減少し,とくに掌屈位では著明な減少を示した。手関節肢位の違いによって握力差が生じるということは,握力の測定や増強訓練時において,その点に十分留意する必要性を示唆している。
著者
滝澤 恵美 鈴木 雄太 伊東 元 鈴木 大輔 藤宮 峯子 内山 英一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100534-48100534, 2013

【はじめに、目的】股関節内転筋群の内転作用以外は諸説あり不明な点が多い。これは,関節の肢位によって筋の作用が変化することが関係している。本研究は股関節の角度変化に伴う股関節内転筋群のモーメントアームの変化を調べ,その作用を検討した。なお,本研究ではDostalら(1981,1986)の方法(モーメントアーム・ベクトル,以下MAV)を用いてモーメントアームの各成分(屈曲/伸展,内転/外転,外旋/内旋)を算出した。【方法】1. 材料:死亡年齢84 〜98 歳(平均90 歳)の未固定標本5 体の右下肢を用いた。神経筋疾患を有した遺体,関節拘縮が見られる下肢は除外した。標本は骨盤〜大腿骨部分を使用し,関節包および恥骨筋(PE),短内転筋(AB),長内転筋(AL),大内転筋(AM)を残して計測した。なお,AMは大腿深動脈の貫通動脈を基準に4 つの筋束(AM1-AM4)に分けた。2. 計測:骨盤を木製ジグに固定し,大腿骨を屈曲・伸展方向に同一験者が動かした。その際,磁気式3D位置センサー(Polhemus社製)を用いて,骨および筋の参照点の座標変化を記録した。参照点は,筋の起始部と停止部,上前腸骨棘,恥骨結合,大転子,外側上顆,大腿骨頭上の3 点とした。また,筋の起始部と停止部の直線距離を計測し,筋腱複合体の長さ(筋長)とした。3. データ処理:大腿骨頭上の座標と骨頭の半径から骨頭中心の座標を非線形最小2 乗法で求めた。骨頭中心座標と参照点を用いて直交座標系を構成し,関節座標系を定義した。骨盤側の座標系を絶対座標系(GCS),大腿骨側を移動座標系(LCS)とした。GCSとLCSの関係から関節角度を求めた。筋の張力方向は,停止部から起始部へ向かう単位ベクトルとした。更に単位ベクトルと筋の停止から骨頭中心に向かうベクトルの外積から3 軸(屈曲/伸展,内転/外転,外旋/内旋)のMAVを求めた。MAVは,筋が1Nの張力を発揮した時の各軸周りの関節トルクの大きさと向きを示す。4. 分析:大腿長で標準化されたMAVおよび筋長と股関節屈曲角度の関係を2 次式で近似した。得られた近似式を用いて,15 度間隔で股関節屈曲-15°から75°の範囲におけるMAVと筋長の値を求めた。最大値を示したMAV成分を主成分,主成分の50%以上の値を示した成分を二次成分とした。【倫理的配慮、説明と同意】使用した遺体は,本人および家族が未固定遺体として使用されることを同意している。なお,本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】股関節屈曲-15°から75°の範囲で,AM4 を除く全ての内転筋群の主成分は内転成分であった。一方,AM1 とPEを除き,外旋/内旋成分は常に小さな値を示した。屈曲角度の増加に伴い,AM4 を除く全ての筋の屈曲/伸展成分が屈曲から伸展に転換した。AM2 とAM3 は,それぞれ股関節屈曲45 度,75 度以上で伸展成分が二次的成分になった。AM4 の伸展成分は屈曲0 度以上で二次成分,さらに45 度以上では主成分となった。ALは股関節伸展15°で屈曲成分が二次成分となった。AM1,PE,ABでは二次成分を認めなかった。いずれの筋束も二次成分を示す股関節肢位で筋長は伸長位にあった。【考察】全屈曲角度を通じて,AM4 を除く股関節内転筋群の主成分は内転であったが,屈曲/伸展成分は各筋で異なる特徴を示した。大内転筋のAM2-AM4 は股関節屈曲位において伸展作用を有すると示唆される。特に,AM4 は股関節屈曲45 度以上では主成分が伸展になることから,股関節伸展筋としての要素が強い。ALは従来股関節屈曲位において股関節伸展作用を持つとみなされていたが,股関節屈曲位におけるALの伸展成分はそれほど大きくなく,また筋が弛緩する肢位のため,伸展作用は小さいと考えられる。ALは股関節伸展位で二次成分に屈曲を示し,加えて筋も伸長位にあることから,股関節伸展位近傍で屈筋作用を持つ筋であると考えた。【理学療法学研究としての意義】股関節内転筋群は下肢を内転させるだけの筋ではない。股関節に対する長内転筋の屈曲作用や大内転筋の伸展作用は,腸腰筋やハムストリングスのサブモーターとして機能していると考える。このため,内転筋群は効果的な運動療法を行う上でもっと考慮すべき筋である。
著者
滝澤 恵美 鈴木 雄太 伊東 元 鈴木 大輔 藤宮 峯子 内山 英一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100534, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】股関節内転筋群の内転作用以外は諸説あり不明な点が多い。これは,関節の肢位によって筋の作用が変化することが関係している。本研究は股関節の角度変化に伴う股関節内転筋群のモーメントアームの変化を調べ,その作用を検討した。なお,本研究ではDostalら(1981,1986)の方法(モーメントアーム・ベクトル,以下MAV)を用いてモーメントアームの各成分(屈曲/伸展,内転/外転,外旋/内旋)を算出した。【方法】1. 材料:死亡年齢84 〜98 歳(平均90 歳)の未固定標本5 体の右下肢を用いた。神経筋疾患を有した遺体,関節拘縮が見られる下肢は除外した。標本は骨盤〜大腿骨部分を使用し,関節包および恥骨筋(PE),短内転筋(AB),長内転筋(AL),大内転筋(AM)を残して計測した。なお,AMは大腿深動脈の貫通動脈を基準に4 つの筋束(AM1-AM4)に分けた。2. 計測:骨盤を木製ジグに固定し,大腿骨を屈曲・伸展方向に同一験者が動かした。その際,磁気式3D位置センサー(Polhemus社製)を用いて,骨および筋の参照点の座標変化を記録した。参照点は,筋の起始部と停止部,上前腸骨棘,恥骨結合,大転子,外側上顆,大腿骨頭上の3 点とした。また,筋の起始部と停止部の直線距離を計測し,筋腱複合体の長さ(筋長)とした。3. データ処理:大腿骨頭上の座標と骨頭の半径から骨頭中心の座標を非線形最小2 乗法で求めた。骨頭中心座標と参照点を用いて直交座標系を構成し,関節座標系を定義した。骨盤側の座標系を絶対座標系(GCS),大腿骨側を移動座標系(LCS)とした。GCSとLCSの関係から関節角度を求めた。筋の張力方向は,停止部から起始部へ向かう単位ベクトルとした。更に単位ベクトルと筋の停止から骨頭中心に向かうベクトルの外積から3 軸(屈曲/伸展,内転/外転,外旋/内旋)のMAVを求めた。MAVは,筋が1Nの張力を発揮した時の各軸周りの関節トルクの大きさと向きを示す。4. 分析:大腿長で標準化されたMAVおよび筋長と股関節屈曲角度の関係を2 次式で近似した。得られた近似式を用いて,15 度間隔で股関節屈曲-15°から75°の範囲におけるMAVと筋長の値を求めた。最大値を示したMAV成分を主成分,主成分の50%以上の値を示した成分を二次成分とした。【倫理的配慮、説明と同意】使用した遺体は,本人および家族が未固定遺体として使用されることを同意している。なお,本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】股関節屈曲-15°から75°の範囲で,AM4 を除く全ての内転筋群の主成分は内転成分であった。一方,AM1 とPEを除き,外旋/内旋成分は常に小さな値を示した。屈曲角度の増加に伴い,AM4 を除く全ての筋の屈曲/伸展成分が屈曲から伸展に転換した。AM2 とAM3 は,それぞれ股関節屈曲45 度,75 度以上で伸展成分が二次的成分になった。AM4 の伸展成分は屈曲0 度以上で二次成分,さらに45 度以上では主成分となった。ALは股関節伸展15°で屈曲成分が二次成分となった。AM1,PE,ABでは二次成分を認めなかった。いずれの筋束も二次成分を示す股関節肢位で筋長は伸長位にあった。【考察】全屈曲角度を通じて,AM4 を除く股関節内転筋群の主成分は内転であったが,屈曲/伸展成分は各筋で異なる特徴を示した。大内転筋のAM2-AM4 は股関節屈曲位において伸展作用を有すると示唆される。特に,AM4 は股関節屈曲45 度以上では主成分が伸展になることから,股関節伸展筋としての要素が強い。ALは従来股関節屈曲位において股関節伸展作用を持つとみなされていたが,股関節屈曲位におけるALの伸展成分はそれほど大きくなく,また筋が弛緩する肢位のため,伸展作用は小さいと考えられる。ALは股関節伸展位で二次成分に屈曲を示し,加えて筋も伸長位にあることから,股関節伸展位近傍で屈筋作用を持つ筋であると考えた。【理学療法学研究としての意義】股関節内転筋群は下肢を内転させるだけの筋ではない。股関節に対する長内転筋の屈曲作用や大内転筋の伸展作用は,腸腰筋やハムストリングスのサブモーターとして機能していると考える。このため,内転筋群は効果的な運動療法を行う上でもっと考慮すべき筋である。
著者
滝澤 恵美 鈴木 大輔 伊東 元 藤宮 峯子 内山 英一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1332, 2012

【はじめに、目的】 大内転筋は,大腿四頭筋や大殿筋に次ぐ大きさを有する扇形の筋である。しかし,その大きさに反して大内転筋を含む股関節内転筋群の機能や役割は,はっきりとわかっていない。筋の形態は張力特性を反映するため筋の機能と関係がある。そこで本研究は,大内転筋を任意の筋束に分けて筋の形態を詳細に調べ機能について検討した。【方法】 1. 材料:男性のホルマリン固定遺体7体(左2肢,右3肢)を使用した。死亡時の平均年齢は80歳(75~90歳)であり,神経筋疾患を有した遺体,関節拘縮,著明な筋萎縮および過剰筋が見られる下肢は除外した。大内転筋を剖出し,大腿深動脈の貫通動脈を基準に大内転筋を4つの筋束(AM1-AM4)に分けた。2. 形態計測:AM1-AM4の各筋束の体積,筋長,筋線維長,生理的断面積(PCSA)を計測した。さらに比較群として恥骨筋(PE),長内転筋(AL),短内転筋(AB)についても同様の項目を計測した。なお,内転筋群のうち外閉鎖筋は他の内転筋と明らかに異なる走行と作用を示すため,薄筋は二関節筋であり他の内転筋と異なる特徴を持つため比較群から除外した。大内転筋の筋束および比較群の筋は骨付着部をメスで切離し,表面の結合組織,血管,神経を除去した後に次の計測を行った。体積は,水を入れたメスシリンダーに筋または筋束を入れ増量分を計測した。筋長および筋線維長は,筋を伸長させ起始から停止までの距離を定規で計測した。筋長は腱および腱膜を含む筋の最大部分,筋線維長は中間部分の長さを用いた。PCSAは筋腹の最大部を筋線維に対して垂直に切断後,断面をデジタルカメラで撮影し画像解析ソフトを用いて求めた。 3. 解析:各標本の大腿骨大転子から外側上顆までの長さを大腿長とし形態計測値の標準化を行った。標準化後の体積,筋長,筋線維長,PCSAの平均値を用いて主成分分析を行った。また主成分分析で分類されたグループ間で形態値を比較するためにScheffeの線形対比を用いて多重比較を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本人および家族の同意のもと札幌医科大学に献体された遺体を用いた。なお,本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 AM1-AM4,PE,AL,ABの総体積は362.7±74.4cm3,総体積に占める大内転筋の割合は65.3±5.1%だった。大内転筋の筋束のうちAM3およびAM4が大きく,それぞれが大内転筋総体積の約30%を占めた。AM1 は一番小さく12.9%であった。AM1-AM4とPE,AL,ABから得られた体積,筋長,筋線維長,PCSAの計測値を用いて主成分分析を行った。固有値が1以上を示した主成分は第一主成分のみで,固有値3.64,寄与率は91.1%であった。計測した筋群は,第一主成分スコアが負のAM1・PE・ABと正のAM2-AM4・ALの2つのグループに分類された。 異なるグループに属したAM1とAM2-AM4で各計測値をScheffeの線形対比を用いて多重比較した結果,筋長と筋線維長(p<0.01),体積(p<0.05)で有意差を認めたが,PCSAでは有意差は認められなかった(p>0.05)。神経支配はAM1とAM2が閉鎖神経後枝,AM3は閉鎖神経後枝と脛骨神経の二重神経支配,AM4は脛骨神経であった。【考察】 筋線維は定まった長さのサルコメアからなるため,筋線維長が長い程,サルコメアが多く並び関節を大きく動かすことが可能である。一方,PCSAは筋線維の数と太さを反映するため,PCSAが大きい程,発揮される力が大きい。本研究の結果,大内転筋は筋束ごとに異なる筋の形態と支配神経を示した。これより,筋線維長がAM1より有意に長いAM2-AM4は股関節に大きな可動域や運動性をもたらす筋束であると推察された。一方,筋線維が短く関節近くに配置されているAM1はより細かい動きを素早く行うことに優位性を持つと推察され,関節の動的安定性を担う筋束であると推察された。【理学療法学研究としての意義】 筋の質量は機能的な重要性を示す1つの指標である。しかしながら,大内転筋はその質量に反して驚くほど情報が少ない。本研究では,大内転筋の約7割に相当する筋束が表面筋電図では評価が難しい深部に存在すること,さらに深部の筋束は形態的にも神経支配の上でも差異があることを示した。これらは,一般的に重要視される中殿筋のみならず,対側にある巨大な大内転筋の潜在的役割を探索することの必要性を示しており関節障害の治療において意義のある情報となりうる。
著者
伊東 元 岩崎 富子 山田 道廣 矢崎 潔 田中 繁 飯田 勝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
臨床理学療法 (ISSN:02870827)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.23-36, 1976-10-31 (Released:2018-07-25)
被引用文献数
1

The electormyographic study of right latissimus dorsi muscle was performed in 19 men (10 healthy and 9 paraplegic) with the surface electrodes to clarify the functional difference of the 6 parts of the muscle.   The 26 kinds of movements were employed for the experiments as followed; extension, adduction and internal rotation of the shoulder joint, lateral tilting of the pelvis, push up exercise and transfer (wheelchair-bed), etc….   The location of the electrodes on each part of the muscle was determined with the anatomical remarks.   The electromyographic signals were processed through the rectifying and smoothing net work for the quantitative study and compared after standerization.   It was found that two parts, namely upper and lower part of latissimus dorsi muscle have apparent functional difference each other; the former showed marked activities in hyper extension, the latter in lateral tilting of the pelvis; and it was also found that the characteristics of activities were similar on the healthy and the paraplegic subjects.
著者
伊東 元 橋詰 謙 齋藤 宏 中村 隆一
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.164-165, 1985-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
7
被引用文献数
11 3

健常男性20名に最大速度で歩行を行わせ,速度,歩幅,歩行率と大腿四頭筋の最大等尺性収縮トルク(MVC)およびMotor time(MT,急速膝伸展時の筋活動開始から運動開始までの潜時)との連関を検討した.速度の有意な決定因は体重,MVCで,体重が軽くMVCが大きいと速度が速かった.速度は歩幅,歩行率と正の相関を示すが,歩幅と歩行率との間には負の相関があった.この歩幅と歩行率の両者にとって有意な決定因はMTで,MTが短いと歩幅は大きくなり,MTが長いと歩行率は大きくなった.
著者
滝澤 恵美 岩井 浩一 伊東 元
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.19-26, 2003-03
被引用文献数
3

転倒経験と高齢者自身の主観的な歩行評価を調査し, 時間的・空間的歩行変数が示す歩行パターンとの関係を検討することを目的とした。対象者は屋外独歩可能な65歳以上の高齢者39名とした。主観的歩行評価は歩行中に「よくつまずくと思いますか?」「転びそうだと思いますか?」の2項目を質問した。転倒は「過去1年間に何回転びましたか?」と質問し, 転倒経験が1回以上の者を転倒経験有りとした。時間的歩行変数は自由歩行速度と最大歩行速度, 空間的歩行変数は歩幅, 重複歩距離, 歩隔の平均値, 歩幅と重複歩距離のばらつき(変動係数)を計測した。転倒経験が有った者は11名(28%)であった。転倒経験は有るが現在「つまずきそうにない。」「転びそうにない。」と感じている者は転倒経験者の約半数存在した。しかし, この様なケースを特微づける時間的・空間的歩行変数は存在せず, 転倒経験と高齢者自身の主観的な歩行評価が歩行パターンに影響を与えるとは言えなかった。
著者
衣笠 隆 長崎 浩 伊東 元 橋詰 謙 古名 丈人 丸山 仁司
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.343-351, 1994-10-01
被引用文献数
60 30

高齢者用の運動能力テストバッテリーを確立するために, Fleishmanの運動能力のモデルに準拠し, 高齢者でも安全に行えるテストを選び, 若年者から高齢者までを対象として, 運動能力の加齢変化を調べた.<BR>被験者は男性150名 (年齢: 18歳から83歳) であった.運動機能は8項目を測定した. (1) 握力と等尺性膝伸展力. (2) ステップテスト. (3) 開眼時と閉眼時の重心動揺距離と重心動揺面積. (4) 立位体前屈. (5) 指タッピング (最大タッピングと2Hz, 3Hz, 4Hz, 5Hzの音に合わせるタッピング) . (6) ペグボードテスト. (7) 視覚単純反応時間. (8) 通常の速さの歩行 (自由歩行) とできるだけ速い歩行 (最大歩行) .自由歩行の速度と5Hzの指タッピングの変動係数を除いて, すべての運動機能に加齢に伴う低下がみられた.20歳を100%とした時の, 80歳の主な運動能力の低下は, 仮定した運動能力ごとに以下のような特徴がみられた.手指巧緻性や反応時間は30%以内の低下, 筋力, 持久性および歩行に関する運動能力は40~60%の低下, 柔軟性や平衡性は70%以上の低下であった.以上の結果より, 運動能力の加齢変化の総合的な評価ができ, かつ安全性の面からも適切な運動能力テストバッテリーとして, 体前屈, 握力, 膝伸展力, 最大速度歩行, 閉眼重力動揺距離, ステップテスト, 指タッピングが上げられる.
著者
伊東 元 橋詰 謙 齋藤 宏 中村 隆一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.164-165, 1985-05-18
被引用文献数
15

健常男性20名に最大速度で歩行を行わせ, 速度, 歩幅, 歩行率と大腿四頭筋の最大等尺性収縮トルク(MVC)および Moter time(MT, 急速膝伸展時の筋活動開始から運動開始まどの潜時)との連関を検討した.速度の有意な決定因は体重, MVCで, 体重が軽くMVCが大きいと速度が速かった.速度は歩幅, 歩行率と正の相関を示すが, 歩幅と歩行率との間には負の相関があった.この歩幅と歩行率の両者にとって有意な決定因はMTで, MTが短いと歩幅は大きくなり, MTが長いと歩行率は大きくなった.
著者
伊東 元
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 1988-01-10

本協会学術誌編集協力者 小島 泉先生(東名古屋リハビリテーション学院教官)は昭和62年10月13日交通事故の為39歳の若さで死去されました。先生は国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院を卒業後, 下呂温泉病院に勤務され, 日々の臨床に励む傍ら大学に通い, その後米国ロングアイランド大学修士課程を終了し, 帰国後東名古屋リハビリテーション学院の教官として後輩の指導にあたっておられました。臨床, 教育だけでなく本協会の財政基盤検討委員会委員長として, 所帯の大きくなった本協会の財政基盤の見直し作業を精力的に行ってこられました。向学心, 研究心が旺盛で, 後輩の面倒をよくみられ, 将来にむけた視野の広かった先生に無理をお願いして, 本年度から本誌の編集協力者になっていただいておりました。ご多忙のなか, 投稿論文の査読を快く引き受けて下さり, 的確なコメントをつけて下さいました。本誌の編集方針に関して, 「本誌に対する若手会員の注意, 関心を向かせるような編集を!・・・・・・」等, 常に後輩や, 将来の理学療法に目を向けた意見を寄せて下さった小島先生の急逝は誠に残念です。本編集委員会は先生のご意見をこれからの編集の中に生かすべく取り組んでまいりたいと考えております。ここに生前のご指導に深く感謝し, ご冥福をお祈り申しあげます。
著者
滝澤 恵美 岩井 浩一 横塚 美恵子 伊東 元
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.61-68, 2002-03
被引用文献数
1

歩行パターンの変動が高齢者における将来の転倒を予測するという報告がある。そこで, 本研究は歩行パターンの変動と身体運動機能の関係を調べ, 歩行の安全性や安定性の観点から運動指導する糸口を検討することを目的とした。地域在住の65歳以上の健康な高齢者90名を対象に, 自由歩行時における重複歩距離と歩幅の連続10歩の変動を変動係数(CV)で算出した。身体運動機能は, 筋力, 平衡性, リズム形成, 可動性の4項目を測定し, 歩行パターンの変動との関係を調べた。歩幅CVは, 開眼片足立ち時間と負の関係を認めたことから, 歩幅CVが示す歩行パターンの変動は身体運動機能4項目のなかで平衡性の低下がより関係していることが推察された。今後, 平衡性に注目した運動プログラムの実施, 杖や装具の利用による歩行パターンの変動の変化について検討する必要がある。
著者
伊東元
雑誌
理学療法
巻号頁・発行日
vol.11, pp.295-302, 1994
被引用文献数
2
著者
西澤 哲 古名 丈人 杉浦 美穂 奥住 秀之 長崎 浩 伊東 元 藤田 祐樹 荻上 真理 上田 裕
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム
巻号頁・発行日
vol.15, pp.131-140, 2000
被引用文献数
6 4

Introduction: The gait of older adults is characterized by such gait parameters as slow walking velocity and small range of change in joint angle. The effect of aging on these parameters has been analyzed independently, but the strength of the aging effect on each parameter has not been determined in detail. In the present study, using principal component analysis and analysis of variance, we clarified the strength of the aging effect on gait parameters. Method: The participants were 616 older adults (65 to 91 years old) living in Nangai Village located in northern Japan and 45 young adults (20 to 39 years old). The participants were classified by gender and into five age groups (aged 20 to 39 years, 65 to 69 years, 70 to 74 years, 75 to 79 years, and 80 years or above). They walked on an 11-meter straight walkway at their preferred speeds. The coordinates of markers attached to participants' iliac spines, knees, ankles, toes, and heels were measured using a Vicon-370 system (Oxford Metrics, Oxford, England) during 5 meters near the middle of the walkway. The sampling frequency was 60 Hz. From this three-dimensional data, we calculated 34 representative gait parameters. For these parameters, through principal component analysis and two-way analysis of variance by gender and age groups, we determined aging-related principal components and parameters belonging to each component. Results and Discussion: Through principal component analysis, we detected ten components with over one point of eigen value. After two-way analysis of variance for component score, we classified components according to whether they were age-related or not. The age-related components were the first principal component, with 26.0% of contribution rate. In the first component, stride length, toe height on heel contact, peak extension angle around the hip joint, and magnitude of vertical sway had a high component score; we labeled this component the "stride length" component. The parameters of cadence, single stance time, and magnitude of lateral sway had a high score in the second component (11.0% of contribution rate), which we labeled the "stride duration" component. In the second component, we detected significant gender difference. Components with less than 5% explanation of variance were mainly related to parameters on relative time in one walking cycle, such as timing of maximum knee extension. These results suggest that parameters related to stride length may strongly characterize the gait of older adults. In other words, the gait of older adults may be recognized mainly from their short stride length. The low explanation of variance for timing parameters may suggest that the pattern of kinematic change in one gait cycle is determined strictly, whereas kinematic magnitude is strongly affected by aging.
著者
伊東 元 長崎 浩 丸山 仁司 橋詰 謙 中村 隆一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.123-125, 1990-03-10
被引用文献数
17

健常老年男性15名 (64-84歳) に最大速度で歩行を行わせ, 速度・歩幅・歩行率と重心動揺距離との関係を検討した。歩行速度の有意な決定因は重心動揺距離であり, 重心動揺距離が小さいと速度が速かった。歩行率の決定因は重心動揺距離であり, 重心動揺距離が大きいと歩行率が小さかった。歩幅に対しては有意な決定因はなかった。