著者
菱田 雅晴 天児 慧 高原 明生 厳 善平 唐 亮 Wank David 朱 建栄 大島 一二 諏訪 一幸 趙 宏偉 加茂 具樹 小嶋 華津子 福田 円 油本 真理 南 裕子 中岡 まり 岡田 実 鈴木 隆 呉 茂松 毛里 和子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、パラドキシカルな中国の腐敗現象を対象として、1)刺激・行為間の誘引/制約に関するインセンティブ・システムおよび市場体制・行政機構の未発現情況に焦点をあてた制度論に依る実態論分析と2)腐敗学構築のための一般分析ツール開発とその検証・適用の両者から構成される。本年度にあっては、既往年度と同様に、研究分担者、連携研究者および研究協力者等から構成される研究組織(=廉政研究会)を法政大学中国基層政治研究所内に設置し、研究計画の全体調整および班別研究組織体制の再確認を行った上で、各種腐敗現象のビジネス領域との関わりに焦点をあてることを本年度課題の核として設定し、各国・地域における経済腐敗、不正ビジネスの構造の検討を行なうこととした。併せて、中国的腐敗の具体的個別事案の事例蒐集を進めると同時に政治社会学的手法に基づく腐敗関知度/寛容度に関する広範なアンケート調査を実施すべく調査票の設計等準備作業を本格化させた。また、中国の腐敗現象に関わる事案、データを中国内外から広く蒐集し、事例研究を進めると共に党・国家による反腐敗のさまざまな法律、制度規定類を併せ蒐集分類することで、公権力の行使に関わる公務員、党幹部らの内部昇任、賞罰制度、登用制度、各級党組織間の関係、更には、“党政関係”(党と行政機関との関係)、“党企関係”(党政機関と市場諸組織・アクター間の関係)等々のあらゆる組織内規定、規則、ルールを検討した。これらの作業を通じ、腐敗現象そのものをどのように把捉すべきか、腐敗研究の原点を再確認することができた。
著者
菱田 雅晴 毛里 和子 天児 慧 加藤 弘之 高原 明生 大島 一二 趙 宏偉 南 裕子 WANK David 唐 亮 小嶋 華津子 朱 建榮 加茂 具樹 諏訪 一幸 鈴木 隆 阿古 智子 中岡 まり 中居 良文 林 載桓 福田 円 呉 茂松 弓野 正宏
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

中国共産党を組織集団として捉えようとの目的から、中国側カウンターパートの協力の下、党および党員に関する認識をめぐる広範なインデプス・インタビューおよびアンケート調査を実施した。国家社会論フレームに基づくクロス解析結果から、「党政関係」、すなわち,党・国家体制の揺らぎおよび「党群関係」、すなわち,党に対する公信力の低下が観察された。だが、その一方で、政府、とりわけ中央政府に対する信任は依然として高位にあるところから、党信任の脆弱性は国家信任の強靱性によって補完されており、党のサバイバル戦略が依然として機能しているものと推測される。
著者
趙 宏偉 下斗米 伸夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本国内での研究活動のほかに、中国、ロシア、台湾を訪問し、研究活動をこなし、主な成果物として『東アジア地域統合の歩み-文献・考察・年表』をまとめ上げた。東アジア地域は、狭義的には日本、中国、朝鮮半島、及び関連地域を指し、広義的にはそれに東南アジアのアセアン10力国を加える地域を指すが、2005年12月に開かれた第1回東アジア首脳会議に上記の諸国のほかに印度、オーストラリア、ニュージーランドも加わった。東アジア地域統合ないし東アジア共同体は、1990年12月にマハティールマレーシア首相が最初に呼びかけたとき、「夢物語」と思われるほどであったが、その15年後に前述したように現実のプロセスとなっている。東アジア地域統合のプロセスには、アセアン諸国が先頭に立ってきたが、日米中印露など大国の思惑も交錯してきた。例えば日本が米、豪、印との連携を作ろうとしてきたのに対して、中露は「新国際秩序」を唱えて印度を巻き込む中露印協調体制の構築を目指してきた。この研究は1990年12月〜2007年1月の東アジア地域統合のプロセスを詳しく調べ、文献・考察・年表という形に纏め上げた。趙宏偉は研究代表として指導、監修等を担当したほか、関連分野の論文及び発表等をも行った。趙ゼミの学部生8人は「現代中国と東アジア研究会」メンバーとして資料の収集、字習と研究、年表の作成を取り組んだ。上記のほか、ロシアで講演とロシア語の論文発表を行った。講演は中ロ印協調体制の始動とその後の紆余曲折について分析を行い、ロシア語論文は中国の外交理念という視点から上海協力機構、中ロ印協調体制、日中日ロ関係について論じた。
著者
趙 宏偉
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度〜17年度、中国の北京、上海、天津等都市、ロシアのモスクワ、台湾に学術調査や研究会とシンポジウムの参加に赴き、日本では合計11回の研究会のほかに、日本現代中国学会、アジア政経学会、中国研究所、環日本海研究所、日本対外文化協会、及び愛知大学と早稲田大学のCOEプロジェクト等が主催した研究集会で発表や講演を行った。そして日本現代中国学会誌等に論文を発表した。中華人民共和国は、その成立してからほぼ1990年代の半ばまで旧ソ連と短期間の同盟関係を持っていた以外、非同盟を貫いていた。これを「中国式孤立主義」と呼ぶ。1994年9月、江沢民党総書記は最高実力者〓小平から全権力の譲渡を受けてから、外交戦略を集団安保主義へと根底から転換しはじめた。96年4月に江沢民の主導で創設された第1号の集団安保組織として「上海ファイブ」が結成された。それから江沢民政権は「新安全観」(97年4月)として総括された外交理念を掲げ、中国の北では「上海ファイブ」を「上海協力機構」に発展させ、南ではアセアンとのFTA体制を進みながらそれを梃子に全面協力体制を作り、北東アジアでは北朝鮮核問題を課題に6カ国協議の開催に努力しながら北東アジア安保体制の将来像を模索した。江沢民は米中関係の安定化を図りながら、周辺地域で集団安保外交を推し進めていた。2002年12月から、江沢民の後を受けた胡錦涛は、江沢民外交を継承しながら守りから攻めへと集団安保外交を強めていった。胡錦涛は中国の「平和的台頭」、それによる「国際関係の多極化」を外交戦略の目標としている。(1)03年から、中ロ印協調体制の構築を取り組んでいる。3カ国外相会議は年2回に定例化され05年まですでに5回もの開かれた。3カ国協調で東ユーラシア大陸集団安保体制を結成し、アメリカとEUに相対する第3の極の構築を目指している。(2)上海協力機構の強化と拡大を図っている。05年にインド、パキスタン、イランを新規オブザーバーとして受け入れた。(3)中国とアセアンを軸として東アジア首脳会議を主導することを図っている。中ロ印は上海協力機構と東アジア首脳会議の両方に加わるが、両組織ともアメリカを除外するものである。(4)胡錦涛中国は北東アジアにおいて北朝鮮核問題を取り扱う6力国協議を主導し、そして05年に「北朝鮮大開発」に乗り出した。米中は「利害相関責任者」(筆者訳)として将来6カ国による北東アジア安保体制の構築に合意し、また「台湾問題」と「日本問題」(歴史問題と領土領海問題)を米中共同管理とすることになっている。
著者
菱田 雅晴 毛里 和子 天児 慧 加藤 弘之 唐 亮 高原 明生 小嶋 華津子 朱 建榮 趙 宏偉 諏訪 一幸 阿古 智子 南 裕子 中岡 まり 加茂 具樹 中居 良文 呉 茂松 白 智立 鄭 永年 景 躍進 趙 秀梅
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

1978年末以来の中国の改革が"私利"を核とした社会システム全体の転型であることに呼応して、中国共産党自身にも"私化"傾向が著しく、組織としての私人性に加えての"私利性"は"領導核心作用"なるレトリックの正統性に深刻な影を落としている。最終的には、この党組織は、内外の環境変化から危機的様相を強め、存続そのものが危殆に瀕しているかの如く見えるものの、これら変化を所与の好機として、この世界最大の政党にして最大規模の利害集団はその存在基盤を再鋳造し、新たな存在根拠を強固なものとしつつあるものとの暫定的結論を得た。