著者
近藤 純正
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.465-470, 1994
参考文献数
13
被引用文献数
4

東北地方の1993年夏は1913(大正2)年以来の80年ぶりの大冷夏であった.これは1991年6月のピナツボ火山の噴火と関係があると思われる.最近158年間の大規模火山噴火と冷夏,米の収量との関連から,概略50年ごとに起こる冷夏大凶作の頻発時代の存在を示した.現在は昭和末・平成初期大凶作の頻発時代にある.宮城県の江の島における海面水温と金華山における気温の年平均値は,互いに高い相関関係を持ちながら長期変動をしている.両者の長期変動にはジャンプ・アップとダウンを伴う傾向が見られる.最近の1980年以後,海面水温と気温は低温の状態が続いている.
著者
近藤 純正
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.336-343, 1993-12-10 (Released:2009-10-22)
参考文献数
6
被引用文献数
2 4

降雨に伴う表層土壌の含水率の鉛直分布の時間変化を液体水輸送の数値計算から求めた.この計算では,降水量と降水継続時間との間の統計的経験式を用いた.「砂」「ローム」「粘土」についての結果は降水量ごとに分類して表に示してある.このデータは降雨後の土壌面蒸発の計算を行なうときの初期条件として利用できる.
著者
山崎 剛 田口 文明 近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.71-77, 1994-02-28
被引用文献数
18

積雪のある森林小流域(山形県釜淵)における熱収支を評価した.融雪モデルと流出モデルを組み合わせ,融雪過程と流出過程を再現した.その際,森林内の積雪直上の放射条件に対する植被の影響を考慮した.また,森林小流域を巨視的に,それぞれ一層の植被層と積雪層からなる系と考えることによって,森林から大気への顕熱フラックスを見積もった.その結果,枝葉上に雪がなければ真冬の2月下旬でも40〜60Wm^<-2>の顕熱フラックスが大気へ供給され,大気は加熱されることがわかった.さらに熱収支の様子が,植被の有無によってどのように変わるかについても調べた.
著者
石井 哲雄 近藤 純正
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.310-324, 1993-05-31
参考文献数
5
被引用文献数
3

東シナ海・黄海・ボッ海における熱収支の季節変化を調べた.海洋運搬熱の発散値F_&ltDIV&gtの季節変化を重点的に調べた(F_&ltDlV&gt&gtOは流出,F_&ltDIV&gt&ltOは流入).その結果によれば,海洋運搬熱の発散値F_&ltDIV&gtは2~5月の期間には,九州西方から久米島を通り石垣島にかけての帯状のメッシュに負の最も大きな値を持ち,そのメッシュから北西に遠ざかるにつれて,黄海の西側から正になりはじめ,しだいに正の領域が増える.それに呼応して貯熱量Sが正になりはじめて,しだいに大きくなってくる.従って貯熱量Sの大きな値の分布と海洋運搬熱の発散値の負で絶対値の大きな分布領域とが,大体一致している.この2~5月の期間,貯熱量を支配する因子は海洋運搬熱の発散値とみなすことが出来る.7~8月の期間,海洋運搬熱の発散値は九州南方と西方の狭いメッシュだけ負となり,ここに海洋運搬熱が収束するため,貯熱量はここが一番大きな値を示す.海洋運搬熱の発散値は九州南方と西方以外は,全域で正の値を示し,その絶対値は黄海西部とボッ海で大きい.貯熱量が九州南方と西方のメッシュで最大になる理由は前報告(石井・近藤,1987)で示したように7~8月は海面が大気から正味吸収する熱が黄海とボッ海で一番大きいために,大気から海洋へ正味入った熱量が海洋運搬熱として黄海とボッ海から東シナ海へ流出してここで収束するのに加えて,この海域自体が大気から正味吸収した熱量(大きな量ではないが,黄海の半分程度の熱量)が追加されるためである.このようなメカニズムで夏の期間に大量の熱収束が九州南方と西方のメッシュに起こるので,このメッシュの貯熱量が最大になり,このメッシュを含む東シナ海に大量の熱が貯えられる.しかし10月以後,海洋運搬熱の発散値は,ほとんどのメッシュで負となり始め,1月に南西諸島北方海域に負の最大値ができる.秋から冬にかけて(9~1月),海面が大気から正味獲得する熱が負で絶対値が大変大きくなるので,海洋運搬熱の流入があっても,貯熱量は減少し続ける.年間を通してみると,対象とする全海域に海洋運搬熱として周辺から入ってくる熱量は年平均値で7.4×10^13Wとなり,前報告(石井・近藤,1987)で求めたように海面が大気へこれだけの熱量を年平均で失う.
著者
近藤 純正
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-13, 1990-12-01 (Released:2009-07-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
近藤 純正 桑形 恒男
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.13-27, 1992
被引用文献数
9

全国66地点の気象官署のデータを用いて, 放射量および浅い水面からの蒸発量の季節的地理的分布を計算した.年蒸発量は緯度が高くなるほど減少し, 北日本・北陸地方では500mmy<SUP>-1</SUP>前後, 関東以南では700mmy<SUP>-1</SUP>前後となった.これは年降水量の30~50%にあたる。<BR>一方, 日本各地における年平均日射量はほぼ130~160Wm<SUP>-2</SUP>, 有効長波射出量は50~70Wm<SUP>-2</SUP>の間に分布している.
著者
近藤 純正 本谷 研 松島 大
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.821-831, 1995-12-31
被引用文献数
10 15

面積13km^2の宮城県秋山沢川流域について,「新バケツモデル」を用いて土壌水分量,流出量,積雪水当量の季節変化を計算し,さらに河川の熱収支式の解から河川水温を求めた.この研究では,山地の気象は平地のアメダスデータに基づいて,標高の関数として推定した.各標高の積雪量は雨雪判別式で計算し,融雪量は各標高の気温の関数とした.計算結果は河川の日々の最高水温の観測値がよく再現でき,また積雪水当量の標高分布の調査結果ともよく対応する.春期の山地における積雪水当量は500mm程度もあり,融雪期以後の地下水タンクの貯留水量の増加と,夏の流出量に大きな影響をもつ.1994年夏の渇水は,春の積雪水当量が他の年に比べて小さかったことも一因であると思われる.
著者
桑形 恒男 住岡 昌俊 益子 直文 近藤 純正
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.625-638, 1990 (Released:2007-10-19)
参考文献数
24
被引用文献数
23 25

ルーチン観測データから複雑地形上における大気一地表面問の熱収支を見積る新しい解析方法を開発した。この解析手法を用いて、春期の弱風晴天日の中部日本域(東北•関東•中部地方)の気象官署55地点における日中の大気境界層(下層大気)の熱収支を評価した。弱風晴天条件においては、中部日本全域で熱的な局地風が発達し、下層大気の熱収支はそれら局地風系によって支配される。地形的な特徴に応じて各気象官署を岬、浩岸平野(海岸から20km以内)、内陸平野、内陸盆地(盆底)、山岳の5つのカテゴリーに分類し、地形別に下層大気の昇温がどのように異なるかを調べた。その結果、内陸盆地と内陸平野で下層大気の昇温量が大きく、岬と沿岸平野および山岳で昇温量が小さいという結果が得られた。内陸盆地や内陸平野で昇温量が大きくなるのは、局地的な沈降流による断熱昇温が原因である。この沈降流は、側斜面で発生した斜面上昇風(谷風)による大気流出の補償流として生じたものである。逆に、山岳では顕熱によって暖められた空気が谷風によって流出し、昇温量が小さくなる。一方、岬や浩岸平野などでは海風によって海上の寒冷気塊が侵入し、昇温量が抑えられる。この効果は海岸に近い地点ほど顕著である。このように日中の下層大気の昇温量は、局地循環による局所的な移流によって大きく左右される。そして、この昇温量に比例して地上気圧の低下がひきおこされ、昇温量が大きな内陸部を中心として日中に熱的な低気圧が形成されることになる。
著者
和田 範雄 泉 岳樹 松山 洋 近藤 純正
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.13-22, 2016-01

測器近傍の障害物の有無が気温に与える影響を定量的に評価するため,放射による観測誤差が最大で0.04℃の高精度な測器による気温観測を行い,空間広さ(「周囲の障害物と測器との距離」と「障害物の高さ」との比)に注目して解析した.観測は,首都大学東京南大沢キャンパスの陸上競技場の芝地上6地点において,2014年8月22日~9月17日に行い,その内1地点では不織布の囲いを設置して,空間広さが小さい状態を人工的に作り出した.その結果,日中は,空間広さが小さくて天気がよいほど気温が高くなり,いわゆる日だまり効果(測器近傍の障害物による風速の減少に伴う地上気温の上昇)の影響が示唆された.一方,夜間は,空間広さが小さい地点ほど気温が低くなった.これは,囲いによる風速減少により上空大気との熱交換が抑制されるとともに,囲いの中に冷気がたまりやすくなることで放射冷却の効果が強められたことが原因と考えられる.また,日中と比べて夜間には地点間の気温差は小さくなったが,これは日中と夜間の正味放射量および風速の違いを反映したものと考えられる.
著者
菅原 広史 近藤 純正
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.440-443, 1994-01-20 (Released:2009-10-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
近藤 純正
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.223-229, 1993-09-10 (Released:2009-10-22)
参考文献数
8

裸地面蒸発の計算モデルを考えた.土壌は,厚さ0.02m, 0.04m, 0.08mの3層からなる.モデルでは各層内の小空隙で気化した水蒸気が土壌間隙を通って出てくることが考慮されている.
著者
近藤 純正
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.184-196, 1995-03-05 (Released:2009-10-22)
参考文献数
11
被引用文献数
9 11

河川の水温を予測する計算モデルを示した.このモデルでは,水面・大気間の熱交換および河床の地中伝導熱が考慮されている.計算に必要な気象データは入力放射量,最高・最低気温,日平均比湿,日平均風速である.河川のパラメータは水深,流速,源流からの距離である. 日平均水温は,水温のレスポンス時間τ0と源流からの経過時間τを用いた指数関数で表される.τ0は水深に比例する.十分な経過時間後,日平均水温は平衡水温T*に漸近する.日変化の振幅は源流からの距離と共に増加し,平衡時の振幅δT*に漸近する.
著者
近藤 純正
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-13, 1990
被引用文献数
1
著者
近藤 純正 徐 健青
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.613-622, 1996-09-30
被引用文献数
8

小型蒸発計からの蒸発量が日射量に敏感であることを利用して, 中国大陸のルーチン気象資料から日射量と大気放射量の日平均値を推定する方法を示した. この方法は, 黄砂などの砂塵で太陽の散乱光は強いが直達光が弱くて, 日照計 (中国ではジョルダン日照計, またはカンベル日照計) が感じにくいときに利用できる. 中国乾燥域における日射量の観測値と, 本研究による計算値との比較では, 観測誤差や場所による違いの範囲内でほぼ一致した. しかし, 大気放射量では, 観測値が大きい場合と小さい場合がある.
著者
菅原 広史 近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.813-818, 1995-12-31
被引用文献数
7 10

都市の各種地表面について,熱収支モデルを用いて地表面温度と気象条件,地表面のパラメータとの関係について調べた.気象条件では日射量が地表面温度に与える影響は大きく,建物の日陰の地表面温度は日向と比べてかなり低い.一方,気温や大気の比湿は地表面温度にあまり影響を与えないことがわかった.都市と郊外(アスファルト面と芝生面)を比較すると地表面温度には地表面の湿潤度が最も大きな影響を与えている.また地中の熱物理係数は地表面温度の位相,振幅を変化させ,場合によっては日中にクールアイランドが形成される可能性があることを示した.
著者
近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.165-170, 2012-03-31
被引用文献数
2