著者
遠藤 愛
出版者
筑波学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,エリートテニス選手の生育史に関する調査結果にもとづいて,世界レベルの選手になるために必要な発育発達過程における運動遊びと,テニスの技術・体力トレーニング方法,および指導方法を提示することを目的として研究を進めた.運動遊びについては,調査対象者全員が,かくれんぼ,鬼ごっこ,竹馬,野球,サッカー,木登りなどに親しんでいた.選手らは,日常の運動遊びを通して,「相手の裏をかく,相手をだます(松岡修造氏)」,「年上の相手にいかに勝つか(井上悦子氏)」といった知恵を働かせる習慣を養っていた.幼少時の運動遊びにおける工夫は,テニスプレーヤーとしての勝負の駆け引きや,独自の技術・戦術の開発にも貢献したと述べている.また,テニストレーニングにおいては,「自分の性格に適したプレースタイル(沢松奈生子氏,錦織圭氏)」の習得を重視していた.選手,指導者らは,自らの特徴を認識し,「なぜその練習をするのかを納得してから(沢松氏)」,トレーニングを行っていた.トレーニング方法としては,「テニス中継のラジオを聞きながら素振りをする(坂井利郎氏)」,「スピンをかけて壁を越える練習(長塚京子氏)」など独創的なものも認められた.本調査の結果から,一流選手は,幼少時から運動に親しみ,その中で体を使った遊びの楽しさだけではなく,勝負の駆け引きや知恵を働かせる楽しさも学んでいたこと,テニストレーニングにおいては,自らの性格とそれに適したプレースタイルを追求していたこと,独自のトレーニング方法を開発,実践していたことなどが明らかになった.また,指導方法においては,指導者が,選手の精神面,肉体面における特徴を理解し,その選手独自のプレースタイルを開発,習得させることが重要であろう.
著者
遠藤 愛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.224-235, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究では, 境界領域の知能と年齢に不相応な学力を有する中学生を対象に, 算数文章題の課題解決を目指す学習支援方略を検討した。アセスメントの手続きとして, (a)WISC-IIIによる認知特性と, (b)つまずいている解決過程の分析を実施し, それらを踏まえ案出した2つの学習支援方略(具体物操作条件とキーワード提示条件)を適用した。その結果, 対象生徒の課題への動機づけが具体物操作条件にて向上し, 立式過程におけるつまずきがキーワード提示条件にて解消し, 効果的に課題解決がなされた。しかし, 計算過程でのケアレスミスが残る形となり, プロンプト提示を工夫する必要性が示唆された。以上から, 算数文章題解決のための学習支援方略を組む上で踏まえるべきポイントとして, 生徒が示す中核的なつまずきを解消する方略を選択すること, 学習支援方略を適用したときのエラー内容をさらに分析して別の過程における課題解決状況を確認することの2点が示された。
著者
遠藤 愛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.116-126, 2008-03-30

本研究では,特殊学級の教師を対象に,自閉性障害と診断された生徒に対する指導行動を改善する上で有効なフィードバックの検討を行った。具体的には,教師の抵抗感を高めないことを考慮し,教師の指導行動を評価対象とせず,教師の指導場面に類例した「放課後支援」を実施する学生支援スタッフの指導場面を評価対象として,教師に対し2種類の間接的フィードバック(書面によるフィードバックとビデオによるフィードバック)を実施した。その結果,ビデオによるフィードバックの導入後,教師の指導行動が肯定的に変容し,対象生徒の行動も改善した。同時に,教師が行った特定の生徒への指導により,指導効果が期待されていなかった他生徒にも積極的な授業参加が認められた。
著者
鳥屋 智大 遠藤 愛 野中 由紀 山田 幸雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.247_1-247_1, 2016

<p> 現在、男子テニスのダブルスの世界ランキングにおいて、日本人選手は200以内に1名も入っておらず、ダブルスの強化が課題となっている。ダブルスでは、サービス、ネットプレー、コンビネーションなどが重要であると言われているが、これらの要素について具体的なデータは乏しい現状にある。そこで、ダブルスにおいて最初にみられるサービスとネットプレーによるコンビネーションに着目し、世界の現在(World群)と過去(Past群)のトップ選手、現在の日本(Japan群)のトップ選手を対象に、その特徴および日本のダブルスの課題を明らかにすることを目的とした。その結果、① World群の特徴は、Iフォーメーションからペアによるネットプレーのコンビネーションであった。② Japan群の特徴は、雁行陣によるストロークとネットプレーによるコンビネーションであった。③ Past群の特徴は、雁行陣からペアによるネットプレーのコンビネーションであった。④日本のダブルスの課題として、第2サービス時のポイント獲得率を上げ、ネットプレーミスを減らし、状況によって様々なフォーメーションを使い分けることの必要性が示唆された。</p>
著者
遠藤 愛
出版者
筑波学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の結果から,国内トップレベルのジュニア選手、国内,および世界トップレベルのプロ選手らは,フォアハンドにおいて,平均70%以上の割台でオープンスタンスを使用していることが明らかになった.また,後ろ脚に体重をため,その脚を軸として体幹を捻る動作を取り入れたオープンスタンスを習得することによって,パフォーマンス(ショットの正確性,ボールスピード)の向上に寄与する可能性が示された.
著者
遠藤 愛
出版者
筑波学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

テニスのストローク局面における後ろ脚技術に着目し,以下の研究課題を検討した.「研究課題1.習得方法に関する研究-自己の経験をもとにして」では,後ろ脚の使い方を重要な技術として位置づけ,後ろ脚技術の習得者と未習得者との比較から,習得者に見られる特徴および後ろ脚技術の役割について整理した.続いて,著者の経験に基づき,後ろ脚技術の習得方法および習得のコツを示し,効果的・合理的にこの技術を習得するための方法論を提示した.「研究課題2.習得方法に関する研究-トップ選手を対象とした調査」では,グランドスラム大会シングルスへの出場,およびシングルス世界ランキング100位以内の経験を有する日本女子プロテニス選手10名を対象として,ストローク局面における後ろ脚技術をどのように捉えているのか,実際にストローク局面においてどのように後ろ脚技術を活用しているのか,また,その習得方法や習得のコツについての調査を行った.調査結果から,世界レベルで活動した10名の日本女子テニス選手は,全員が後ろ脚技術の重要性を認め,自らに適した各種後ろ脚技術を習得・活用していたことが明らかになった.しかし,各選手が習得していた後ろ脚技術や習得のコツについては個人差が認められた.(体育学研究投稿中)「研究課題3.後ろ脚技術の優劣がパフォーマンスに与える影響」では,世界レベルでの活動経験を有するプロ選手2名と,学生選手3名を対象として統一条件下のヒッティングテストを行わせ,ショットの正確性,ボールスピード,スイング動作に見られる両者の相違点を比較した.その結果,ボールスピードに有意差は見られなかったが,プロ選手はショットの正確性において学生選手を上回っていた.また,スイング動作の比較を行った結果,両者には後ろ脚技術の活用に差が認められたことから,後ろ脚技術の習熟度がショットの正確性などに影響を及ぼしている可能性が示唆された.
著者
遠藤 愛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.224-235, 2010-06-30

本研究では,境界領域の知能と年齢に不相応な学力を有する中学生を対象に,算数文章題の課題解決を目指す学習支援方略を検討した。アセスメントの手続きとして,(a)WISC-IIIによる認知特性と,(b)つまずいている解決過程の分析を実施し,それらを踏まえ案出した2つの学習支援方略(具体物操作条件とキーワード提示条件)を適用した。その結果,対象生徒の課題への動機づけが具体物操作条件にて向上し,立式過程におけるつまずきがキーワード提示条件にて解消し,効果的に課題解決がなされた。しかし,計算過程でのケアレスミスが残る形となり,プロンプト提示を工夫する必要性が示唆された。以上から,算数文章題解決のための学習支援方略を組む上で踏まえるべきポイントとして,生徒が示す中核的なつまずきを解消する方略を選択すること,学習支援方略を適用したときのエラー内容をさらに分析して別の過程における課題解決状況を確認することの2点が示された。