著者
針原 素子 青田 萌花
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-173, 2021 (Released:2022-03-30)

ぬいぐるみを主役に写真を撮り,SNS上でそれを投稿する「ぬい撮り」について,投稿内容の分析から文化比較をおこなった。具体的には「日本人は欧米人に比べて,ぬいぐるみを物体ではなく,生きている存在として扱うのではないか」「日本人は欧米人に比べて,ぬい撮りのぬいぐるみを自分の分身として用いるのではないか」という予測を立て,インスタグラムの投稿内容を比較した。調査1では,日本語アカウントと外国語アカウントのインスタグラムに投稿された写真を分析し(ぬいぐるみで検索した493枚,plushで検索した473枚),日本語アカウントの写真のほうが,生きている存在として扱われる割合が高いことが分かった。調査2では,“ぬい撮り”,“plushielife”などで検索した「ぬい撮り」を意図して投稿しているインスタグラムのアカウントについて分析した。その結果,外国語アカウントでは,ぬいぐるみは持ち主とは別の人格として描かれることが多いこと,日本語アカウントでは,ぬいぐるみを自分の代わりの主体として,自分語りをする「ぬい撮り」が行われることが多いことが分かった。
著者
辻 竜平 針原 素子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.15-31, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
参考文献数
21
被引用文献数
5

ばったり出会った人々が共通の知人を持つ(「小さな世界」現象)確率はどのくらいなのか。この問題を解く鍵になるのは、人口、知人や友人関係の広さ、友人関係の重なりの程度といった下位問題である。これらを総称して、「小さな世界問題」と呼ぶ。Wattsら(Watts and Strogatz 1998; Watts 1999)は、レギュラーネットワークからランダムネットワークまでネットワークのランダムさを変化させて、「小さな世界」現象が生じるかを独自のシミュレーションで確認した。このシミュレーションは、より広範囲の問題に応用できる。本稿は、小集団における相手不明条件1回囚人のジレンマで、信頼関係の推移性が高い場合に協力率が高まるという発見(Tsuji 1999; 辻 2000)を、Wattsらのシミュレーションを応用して、より大きな社会に対して適用した。その結果、集団/社会の規模が大きくなるほど、信頼する人の数が減少するほど、また、ランダムさが増加するほど、推移的な関係が減少する(協力率が低くなり社会秩序の維持が難しい)ことが分かった。これと日米の知人数の違いをもとに、日米において、社会秩序維持のためにどのような構造のネットワークが築かれているかを議論する。
著者
石川 由香里 加藤 秀一 片瀬 一男 林 雄亮 土田 陽子 永田 夏来 羽渕 一代 守 如子 苫米地 なつ帆 針原 素子
出版者
活水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度を総括して述べれば、来年度への調査実施に向けた準備を順調に進めることができた年度と言える。中学生と高校生向けの調査票は、昨年度においてすでに完成していたが、それに加え5月に実施した研究会において、大学生に対する調査票を確定することができた。過去7回の調査結果の分析に際しては、独立変数に設定できる質問項目が少ないことが反省材料であった。とくに家庭の社会経済的背景についてたずねることについて、学校側の抵抗感が大きく、最近ではとくに質問項目として盛り込むことが難しくなってきた。しかし、一昨年および昨年度に行われた大学生対象の予備調査において、大学生であれば親の学歴や職業についての質問項目に答えることへの抵抗はほとんど見られず、分析に耐えるだけの回答を得ることができていた。したがって本調査においても、大学生対象の調査票の項目には、親の学歴や生活状況を尋ねる質問を含めることとした。今年度のもう1つの大きな取り組みとしては、調査先の決定があった。そのために協同研究者はそれぞれ、調査候補となっている都道府県及び区市町村の教育委員会ならびに対象校へ調査の依頼のために手分けしてうかがった。その結果、年度末までには、かなり理想に近づく形での調査協力を取り付けることができた。年度内に3回実施された研究会においては、調査協力依頼のための文書を作成し、またそれぞれの調査先から調査実施の条件として示された個別の案件についても審議した。また実査に加わる調査員に対するインストラクションの内容、保険、旅費の配分など、調査に必要なすべての事柄について確認を行った。
著者
針原 素子
出版者
東京女子大学比較文化研究所
雑誌
東京女子大学比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.1-13, 2019

Does the experience of connecting with strangers make us happy? To answer this question, Epley & Schroeder (2014) instructed American commuters on trains and buses to have a conversation with a stranger, to remain disconnected, or to commute as normal. They showed that participants reported a more positive experience when they connected with strangers than when they did not.Given some cross-cultural evidence that Japanese people are less likely to interact with strangers than Americans (e.g., Patterson et al., 2007), this study aims to investigate whether the consequence of connecting with strangers is the same in Japan as in the U.S.We instructed Japanese university students to connect with strangers during their commute (connection condition), to remain disconnected (solitude condition), or to commute as normal (control condition). The results showed that participants in the connection condition experienced a relatively more positive mood than those in the other conditions, but the difference was not significant. Further analyses showed that the more responses the participants received from others when they talked to them, the more positive a mood they experienced.The results indicate that the Japanese often fail to have positive interactions with strangers due to their implicit norm that they should not disturb others, but they also have positive experiences when they are successfully able to interact.
著者
辻 竜平 針原 素子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-47, 2010-03-31 (Released:2010-10-03)
参考文献数
20

成人までの発達段階の途中にある中学生に,さまざまな人間関係についての認知と評価を問う質問紙調査を行った.認知については,9つの人間関係のカテゴリについてトライアド・テストとコレスポンデンス分析を,評価については,それらのカテゴリについて「身近さ」と「信頼」という側面から評価する尺度を,それぞれ用いて測定した.その結果,第1に,トライアド・テストとコレスポンデンス分析によって得られる「第1次元」が,特に「身近さ」や「信頼」の評価と関係が強く重要であることが示された.第2に,その「第1次元」・「身近さ」・「信頼」と「一般的信頼」との相関を見たところ,「友だち」「クラスメイト」「中学校」のカテゴリにおいて強い正相関が見られた.ここから,中学生という発達段階においては,いわゆる「還元アプローチ」の過程によって一般的信頼が形成されていることが示唆された.