著者
鈴木 俊幸 齋藤 真麻理 小林 一彦 田中 大士 中嶋 隆 入口 敦志 海野 圭介 栁瀬 千穂 岩橋 清美 荒木 仁朗 粂 汐里 滝澤 みか 小林 健二
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-16, 2019-01-23

●メッセージ継承と蓄積●研究ノートホノルル美術館蔵『塵滴問答』について●エッセイ一期一会●トピックス第11回日本古典文学学術賞受賞者発表第11回日本古典文学学術賞選考講評中世日本の写本文化をめぐる研究集会肥前島原松平文庫における合同古典籍研修会日本古典籍セミナーUniversity of California, Berkeley 2018公開研究会「古典籍画像に対する文字認識と内容解析への取り組み」大学共同利用機関シンポジウム2018「福島県浜通りの歴史と文化の継承―『大字誌ふるさと請戸』という方法―」平成30年度古典の日講演会第42回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介『かみよ物語絵巻貼付屏風』六曲一隻
著者
粂 汐里 Shiori KUME クメ シオリ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.11, pp.19-39, 2015-03

説経、古浄瑠璃は、近松門左衛門以前の、日本の中世末期、近世初期に盛んであった語り物文芸である。従来の文学史、芸能史において、説経・古浄瑠璃のテキスト研究は、近世初期の古活字版や万治寛文以降の半紙本など、版本を中心に進められてきた。しかし、説経・古浄瑠璃は、絵巻、絵入り写本、挿絵の多い草子本などのかたちでも数多く伝わっている。これらは本文研究において正本と同等の有益な資料群であると考えられ、いまは現存しない正本の復元など、多くの可能性を秘めている。にもかかわらず、説経、古浄瑠璃の絵巻、絵入り写本をめぐる総括的研究は、同時代の芸能―能、狂言、幸若舞曲―に比し、いまだ十分とはいえない。本稿では、説経、古浄瑠璃の絵巻、絵入り写本の重要性を示す一事例として個人蔵『しゆつせ物語』を取り上げ、その特徴と意義を報告する。『しゆつせ物語』は森鴎外の著作で知られる『さんせう太夫』の一伝本で、未紹介のテキストである。装丁に着目すると、初期説経正本と同じ三冊本形態である点、説経のテキストとしては珍しい列帖装の豪華絵入り写本である点が注意される。本文もまた、初期のテキストである寛永末年頃刊行の天下一説経与七郎正本、明暦二(一六五六)年刊行の佐渡七太夫正本と同時代の、古態をとどめたものである。しかし個人蔵本は、これら同時代のテキストにはない特徴を有している。まず挿絵をみると、豪華な絵入り写本という形態にふさわしく祝言性を強調し、残忍な描写を回避する傾向がある。これは、説経や古浄瑠璃を題材とした絵巻・絵入り写本の制作意図を把握する貴重な例である。次に諸本を比較してみると、個人蔵本には、従来知られてきた与七郎本系統とは異なる、独自本文が確認できる。また物語にとって重要な場面である天王寺が、個人蔵本では北野天満宮に置き換えられている。この点に着目し、中世末、近世初期に北野天満宮の境内が芸能者の参集する場であったという先行論をふまえつつ、『しゆつせ物語』に当時の北野社の繁栄が投影されていることを指摘した。Sekkyō and early jōruri are types of oral storytelling that flourished at the end of the middle ages and the beginning of the early modern period in Japan, before the time of Chikamatsu Monzaemon. Textual research on sekkyō and early jōruri has focused on half-ream-size (hanshibon) early moveable-type editions (kokatsujiban), that is, on printed chapbooks. However, sekkyō and early jōruri libretti also survive in the form of hand-written picture scrolls and picture books with many illustrations. I believe these represent a valuable body of material on par with printed chanter's proofs (shōhon) which hold many possibilities such as the reconstruction of chanter's proofs that are no longer extant. Nevertheless, intensive research on these manuscript sources lags far behind that on contemporary performing arts like the noh and kyōgen theatres and kōwaka ballads. In this paper I discuss the particularities of a copy of Shusse monogatari in a private collection, as an example of the importance of picture books and scrolls of sekkyō and early jōruri.
著者
粂 汐里
出版者
立教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

研究実施計画に記した二つの柱は以下の通りである。項目ごとに記しておく。1、藤沢市内の関連寺院調査・研究(1)西富(時宗総本山遊行寺長生院小栗堂)…平成23年度に調査した文書のうち、縁起を対象に本文の内容解明に取り組んだ。本山の日鑑類から縁起の成立時期を絞り、他の時宗の勧進活動の様子と比較検討した結果、近世期の時宗寺院では地誌や当代の文芸を巧みに縁起に取り込み、人々への喧伝に利用していたことが判明した。以上は平成24年9月に行われた仏教文学会で発表した。(2)辻堂(石井家辻堂茂兵衛資料館)…資料の翻刻の第二弾を学内の紀要に掲載した。2、説経関連の絵巻・絵入り写本の調査・研究調査予定であった(1)天理大学附属図書館(2)栃木県立図書館、二か所の研究機関の調査に取り組んだ。(1)天理大学附属図書館…1968年に上梓された『説経正本集』所収された貴重資料の現状を調査カードに記録。平成25年度完成予定の説経正本の系統図・年表作成の充実を図った。(2)栃木県立図書館…調査した資料のうちの一本が、岩佐又兵衛古浄瑠璃絵巻群としても知られる『堀江物語』の異本であることが明らかとなった。関連資料が集中して伝来する、栃木県矢板市を訪れ現地調査を行った結果、問題の異本が矢板市を中心とする塩谷郡一帯で多数見つかり、村落で書写され伝わってきたものであることが分かった。これらの伝本は民間での語り物の実態を示す資料として貴重であり、平成24年11月の伝承文学研究会東京例会でその重要性を報告した。資料の解題・翻刻とともに平成25年6月発行予定の『伝承文学研究会』第61号に掲載する(掲載確定)。