著者
伊藤 史彦 長澤 良太 日置 佳之
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-17, 2012-06-22 (Released:2012-07-28)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

野生生物の適切な生息地保全のためには,現に生息地が確認された場所だけではなくランドスケープレベルの視点から見た潜在的な生息地も考慮に入れることが重要である.本研究では,環境省版レッドデータブックに絶滅危惧IB類に登録され,生息数の減少が懸念されている大型猛禽類のクマタカ(Spizaetus nipalensis)を対象種とし,GISを用いた空間データに基づく多変量解析手法によるハビタットモデルの構築を行い,潜在的な生息地を推定した.3次メッシュ単位でデータベース化された環境指標を独立変数とし,クマタカの目撃情報の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,目撃情報データの64.1%を説明し得るハビタットモデルを構築することができた.さらに,このモデルを用いて作成したクマタカの潜在的生息地図を用いたGap分析や計画道路との関係解析の結果,鳥取県におけるクマタカの潜在的生息地の脆弱な地域を抽出することができた.本研究で得られた潜在的生息地を参考に,今後は,営巣,ハンティング等クマタカの各行動別に利用環境を解析し,クマタカの生息に極めて重要な地域の抽出を行うことで,適切な保護施策を策定していく必要があると考える.
著者
伊藤 史彦 長澤 良太 日置 佳之
出版者
Japan Association for Landscape Ecology
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-17, 2012
被引用文献数
3

野生生物の適切な生息地保全のためには,現に生息地が確認された場所だけではなくランドスケープレベルの視点から見た潜在的な生息地も考慮に入れることが重要である.本研究では,環境省版レッドデータブックに絶滅危惧IB類に登録され,生息数の減少が懸念されている大型猛禽類のクマタカ(<i>Spizaetus nipalensis</i>)を対象種とし,GISを用いた空間データに基づく多変量解析手法によるハビタットモデルの構築を行い,潜在的な生息地を推定した.3次メッシュ単位でデータベース化された環境指標を独立変数とし,クマタカの目撃情報の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,目撃情報データの64.1%を説明し得るハビタットモデルを構築することができた.さらに,このモデルを用いて作成したクマタカの潜在的生息地図を用いたGap分析や計画道路との関係解析の結果,鳥取県におけるクマタカの潜在的生息地の脆弱な地域を抽出することができた.本研究で得られた潜在的生息地を参考に,今後は,営巣,ハンティング等クマタカの各行動別に利用環境を解析し,クマタカの生息に極めて重要な地域の抽出を行うことで,適切な保護施策を策定していく必要があると考える.
著者
HUONG Do Thi Viet 長澤 良太 筒井 一伸
出版者
The Japanese Agricultural Systems Society
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.123-134, 2013-07-10 (Released:2015-06-04)
参考文献数
22

洪水は、世界の各地において頻繁に発生し、且つ広域に及んで災害リスクをもたらす現象である。洪水危険地域への都市の拡大や気候変動による洪水のリスクの増大は、今後一層高まることが危惧される。ヴェトナム中部に位置するダナン市は、近年同国において最も都市化が著しい地域のひとつである。ダナン市では過去10 年間に数回洪水災害を経験し、人命、農業生産、社会基盤が甚大な被害を受け経済活動は混沌たるものになった。そこで、本研究ではリモートセンシングと地理情報システムの手法を用いて、都市の拡大と洪水リスクの関係について検討を行った。まず、時系列のLandsat TM/ETM 画像と多季節で取得したALOS 画像の解析によって1990 年、2001 年、2007年および2010 年の土地利用・被覆分類図を作成し、都市の拡大過程を明らかにした。次に、ASTER GDEM(30 m解像度)を用いて流向特性を図化するとともに、ALOS PALSAR 画像から過去の洪水氾濫の範囲を復原し、それらを統合することで潜在的な洪水ハザードの度合いを解析した。最終的な洪水リスクは、こうして得られた洪水ハザード危険度と人口データに基づいた洪水脆弱性との重ね合わせによって解析した。その結果、ダナン市では過去20 年間に都市域が約220%の割合で増加し、その拡大方向は特に既成市街地から西部、北西部、南部および海岸線に沿って顕著であった。洪水リスク危険度の相対的に高い地域は、河川の堤防沿いや低地のなかに存在する凹地地形に多く見られた。過去20 年間(1990 年~2010 年)に拡大した都市域と洪水リスク危険地域を重ね合わせた結果、より危険度の高い個所に都市化が進行している個所が確認された。こうした洪水リスクの高い地域への都市の拡大は1990年~2001 年間の1.9 %から2007 年~2010 年間の3.5 %へ2 倍近く増加していることが明らかにされた。
著者
岡本 有希子 長澤 良太 今里 悟之 久武 哲也 小林 茂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.10, 2007

<BR> 日本軍は,1928年以降空中写真による地図作製を本格的に開始し,第二次大戦中も各地でこれを実施した.これらの写真は,かなりが終戦時に焼却されたが,2002年9月アメリカ議会図書館で発見された.翌2003年には,このうち標定が可能と思われるもの723枚をスキャンして持ち帰り,この一部について中国製衛星写真と比較対照しつつ標定に成功し(安徽省五河付近),すでに分析がこころみられている(長澤ほか, 2005, 岡本勝男, 2007).本発表は、さらに残されていた空中写真について、とくにその方法と撮影地域を報告する.<BR><B>1. 標定の方法</B><BR> 空中写真に付された地名はごく簡略なため,地名辞典によりまず関係する地域を特定した.スキャンした空中写真をプリントし,これを飛行コース(東西方向)ごとにはりあわせて特徴的な地形を観察してから,Google Earthによって類似のものを探した.拡大縮小が容易なGoogle Earthでは能率的に作業を進めることができ,ひとまとまりの飛行コースの標定はほぼ一日で終了した. <BR><B>2. 撮影場所</B><BR> 図1にそれぞれの位置,表1にひとまとまりの飛行コースの北西・南西・北東・南東隅の緯度経度を示す.緯度経度は暫定的にGoogle Earthにより読み取ったもので,今後の本格的な標定の参考にするものである.撮影地域は農村部にかぎられ,特徴的な農地パターンがみられた.またGoogle Earthにみられる湖岸線や農地パターンと比較すると,大きな変化がみとめられ,解放後の中国における土地開発の進行がうかがわれた.今後は本格的な標定をおこなうとともに,オルソ化などもすすめたい.
著者
YAYUSMAN Lissa Fajri 長澤 良太
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.27-40, 2015

近年、オイルパーム油に対する高い需要は世界各地でオイルパーム園の拡大を引き起こしている。その傾向はインドネシアでも顕著であり、同国の国民所得の増大、代替エネルギーの開発に大きく貢献した一方、さまざまな生態環境や土地管理上の諸問題をもたらしている。オイルパーム園の拡大が環境に与える影響を定量的に評価する試みはこれまでにも多くみられるが、近年特に小規模農家による経営規模の小さいオイルパーム園が各地で分散的に拡大し、現象を一層複雑で困難な問題としている。インドネシアの南スマトラに位置するMesuji地区は小規模オイルパーム園が急速に拡大している地域であり、周辺の土地利用、土地管理に対する影響が危惧されている。そこで、本研究では陸域観測技術衛星(ALOS)によって取得されたマルチセンサー、マルチスケールの画像データを利用することによって、同地区の小規模オイルパーム園を正確に抽出する手法の検討を行った。結果として、SAR画像に表されたオイルパーム園の特徴的な形状をテクスチュア解析によって的確に抽出できることがわかった。すなわち、ALOS PALSAR画像の11 x 11ピクセルの moving windowサイズで統計値mean-varianceのテクスチュア特性を抽出し、さらにALOS AVINIR-2の全バンドのマルチスペクトル特性をデータ統合することにより、小規模オイルパーム園を最も良い精度で抽出できた。精度評価の結果、成熟したパームオイルの場合、プロデューサー精度で92.45%、ユーザー精度で66.75%の値、また成長段階にある若いオイルパームではプロデューサー精度で64.44%、ユーザー精度で63.04%の分類精度を得ることができた。
著者
小荒井 衛 吉田 剛司 長澤 良太 中埜 貴元 乙井 康成 日置 佳之 山下 亜紀郎 佐藤 浩 司馬 愛美子 中山 詩織 西 謙一
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.3_16-3_31, 2012 (Released:2015-11-07)
参考文献数
29

This study develops the way to produce landscape ecological map for estimation of biodiversity using the airborne laser survey (LiDAR survey) data. We produce the landscape ecological map consists of three dimensional vegetation structure and micro topography under the forest using LiDAR. Two study areas were selected. One is the Shiretoko Peninsula (Mt. Rausu and Shiretoko Corp), Hokkaido Island as World Natural Heritage Area of Japan. Another is the Chugoku Mountains (north foots of Mt. Dogo) which are many historical iron sand mining sites (Kanna-Nagashi) as Satoyama Region (secondary forest area).Basic legend of landscape-ecological map consists of ecotopes which are the combination of vegetation classification and landform classification. Vegetation classification is three dimensional vegetation structure classification using high density random points data, detailed DSM (Digital Surface Model) and detailed DEM (Digital Elevation Model) by LiDAR data. Landform classification is micro landform classification using detailed DEM by LiDAR data.Using LiDAR data in summer and autumn seasons, 0.5m grid DSM and DEM in summer and 1 or 2m grid DSM and DEM in autumn are obtained. Vegetation classification has been down using three dimensional vegetation structure detected by the difference between LiDAR data in two seasons. The legend of three dimensional vegetation structure maps consists of the combination of vegetation height, thickness of crown and difference in two seasons (deciduous dingle layer tree, deciduous multi layer tree and evergreen tree). Landform classification has been done by automatic landform classification method combined three categories, such as slope degree, texture (roughness) and convexity of autumn DEM. The results of overlay analysis between vegetation classification and landform classification are as follows: On Shiretoko Peninsula, three dimensional vegetation structures are dominated by site elevation compared with micro landform classification. On Chugoku Mountains, some early deciduous high think crown trees (a kind of nut) are located in historical mining sites (Kanna-Nagashi) with following micro landform categories such as gentle slope, concave and rough texture.Grid size of landscape ecological maps is 4m, because the grid size is corresponding on tree crown size. At first, we produced 1m grid vegetation maps and automated landform classification maps, and then we resampled 4m grid data from 1m grid data. These maps would be introduced as example of LiDAR application for ecological field.
著者
山本 福壽 崎尾 均 長澤 良太
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ハリケーンの高潮により、湿地林では在来樹種のヌマスギやヌマミズキ林が被害を受け、外来のナンキンハゼとセンダンが繁茂していた。時空間的解析、現地調査、および生理的実験からナンキンハゼの耐水性、耐塩性は在来樹種に拮抗することを確認した。この結果ミシシッピ氾濫原では、大規模攪乱によりナンキンハゼは急速に分布域を拡大する可能性が示唆された。センダンは耐水・耐塩性は小さいが、局所的に純林を形成していた。