著者
高橋 伸幸 長谷川 裕彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.161-171, 2003-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

北アルプス南部に位置する常念乗越(鞍部)の標高2465m地点において1997年10月~1998年10月の期間で気温観測を行った.その結果,年平均気温は3.9°Cであったが,アメダスデータとの対応で推定される平年値は2.7°Cとなる.また,温量指数の平年値(27.2°C・月)は,常念乗越が亜高山帯に位置付けられることを示しており,温量指数15°C・月により推定される森林限界高度は標高2833mとなる.しかし,実際には西寄りの冬季卓越風により森林の成立が阻まれ,常念乗越頂部から西向き斜面の風衝地を中心に周氷河環境が出現している.年間の凍結・融解出現日数は,72日に及んだ.この値は高山帯周氷河地域における凍結・融解出現日数を凌ぐものである.常念乗越における凍結・融解の出現時期は10~4月であり,3~6月と9~11月に出現時期が二分される高山帯周氷河地域とは明らかに異なる.
著者
長谷川 裕彦 高橋 伸幸 山縣 耕太郎 水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

ボリビアアンデス,チャルキニ峰西カールにおいて地形調査を実施した。その結果,先行研究により明らかにされていたM1~M10の小氷期堆石の分布を追認し,M10以降に形成されたM11・M12・M13の分布を確認した。M13の形成期は,構成層の特徴などから1980年代の初頭であると考えられる。
著者
長谷川 裕彦 山縣 耕太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

ボリビアアンデス,チャルキニ峰(5392m)西カールに分布する小氷期堆石群は,構成物質の特徴,堆積構造,微地形等の観察結果から,その大部分がプッシュモレーンとして形成されたことが明らかとなった。
著者
山縣 耕太郎 長谷川 裕彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本研究では,ボリビアアンデス,チャルキニ峰において,完新世以降の温暖化に伴い縮小した氷河前面における土壌の生成過程を検討する.氷河前面では,氷河から解放された時点から土壌の生成が開始する.このため異なる時代に解放された地点の土壌を比較することによって,土壌の発達過程を検討することができる.また,土壌は,その生成過程において,気候ばかりではなく,地形や地質,植生,水分条件など,様々な環境因子の影響を受ける.こうした地表面環境と土壌発達過程の関係について検討する.<br> チャルキニ峰(5392m)は,東コルディレラ山系レアル山脈の南部に位置し,山頂周辺には5つの小規模な氷河とカール地形が確認される.このうち,西カールを調査対象地とした.調査地域の年降水量は800~1000mmで,植生は,高山草原から高山荒原となっている. 西カールは,長さ約5㎞,幅約3㎞の広がりを持ち,カール底には,複数列のモレーン群が発達している.これらのモレーンは,完新世初頭のモレーン(OM),小氷期のモレーン(M1~M10)および,1980年代初頭に形成されたモレーン(M11)に区分される(Rabatel&nbsp;<i>et.al.</i><i>,</i>2005;長谷川ほか,2013).&nbsp;<br> チャルキニ峰西氷河の前面において,地形単位ごとにピットを作成して,土壌断面の観察を行った.モレーン間の平坦部分は,地表面の形態と構成物から,さらに氷河底ティル堆積面,氷河上ティル堆積面,氷河底流路,氷河前面アウトウォッシュに区分し,各地形単位毎に断面を観察した.&nbsp;<br>その結果,ほぼ同じ時代に形成されたと考えられる隣接した地形単位間でも土壌発達の違いが認められた.特に,凸状の部分に比べて,凹状の部分で土壌の発達が良い.その要因として,凸状地においては,より物質移動が活発で浸食が生じていることが考えられる.浸食作用としては,霜柱の影響が大きいようである.また,リャマおよびアルパカの放牧も影響していると予想される.一方で凹部では,物質移動で細粒物が集積して土壌の成長が進んでいるものと思われる.<br> 各地形単位について,異なる時代に形成された地点の土壌断面を比較すると,完新世初頭に形成された地点と小氷期の地点の間では明瞭な土壌層厚の違いが認められる.小氷期モレーンの中でも,モレーン間の平坦部では,時代とともに土壌層厚が厚くなる傾向が認められた.一方で,ターミナルモレーンの頂部ではこうした傾向が認められない.これは,先述したように凸部では侵食の影響が大きいからであろう.
著者
岩田 修二 白石 和行 海老名 頼利 松岡 憲知 豊島 剛志 大和田 正明 長谷川 裕彦 Decleir Hugo Pattyn Frank
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.355-401, 1991-11

第32次南極地域観測隊(JARE-32)夏隊のセールロンダーネ山地地学調査隊は, 1990年12月24日あすか観測拠点を出発し, 1991年2月7日に再び「あすか」に帰り着くまでセールロンダーネ山地中央部で, 地形・地質・雪氷調査を行い測地作業も実施した。雪上車とスノーモービルを利用してキャンプを移動しながら調査するという従来と同じ行動様式をとったため, 設営面でもおおかたはこれまでの方式と同じである。地学調査は, 地形では, 野外実験地の撤収, 岩石の風化の調査, モレーン・ティルのマッピング, 地質では, 構成岩石の形成順序の解明, 構造地質学的・構造岩石学的そして地球化学的研究のためのサンプリング, 測地では, 重力測量, 地磁気測量, GPSによる基準点測量が行われた。ベルギーからの交換科学者は氷河流動・氷厚などを測定した。
著者
岩田 修二 白石 和行 海老名 頼利 松岡 憲知 豊島 剛志 大和田 正明 長谷川 裕彦 Decleir Hugo Pattyn Shuji Iwata Kazuyuki Shiraishi Yoritoshi Ebina Norikazu Matsuoka Tsuyoshi Toyoshima Masaaki Owada Hirohiko Hasegawa Hugo Decleir Frank Pattyn
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.355-401, 1991-11

第32次南極地域観測隊(JARE-32)夏隊のセールロンダーネ山地地学調査隊は, 1990年12月24日あすか観測拠点を出発し, 1991年2月7日に再び「あすか」に帰り着くまでセールロンダーネ山地中央部で, 地形・地質・雪氷調査を行い測地作業も実施した。雪上車とスノーモービルを利用してキャンプを移動しながら調査するという従来と同じ行動様式をとったため, 設営面でもおおかたはこれまでの方式と同じである。地学調査は, 地形では, 野外実験地の撤収, 岩石の風化の調査, モレーン・ティルのマッピング, 地質では, 構成岩石の形成順序の解明, 構造地質学的・構造岩石学的そして地球化学的研究のためのサンプリング, 測地では, 重力測量, 地磁気測量, GPSによる基準点測量が行われた。ベルギーからの交換科学者は氷河流動・氷厚などを測定した。The Sor Rondane field party as part of the summer party of the 32nd Japanese Antarctic Research Expedition (JARE-32) carried out geomorphological, geological, geodetic, and glaciological fieldworks in the central area of the Sor Rondane Mountains for 45 days from December 24,1990 to February 7,1991. The field trip was conducted by two parties, consisting of 9 persons, traveling from mountains to mountains to shift tented camps using 4 snow vehicles towing their equipments on sledges behind. Nine snowmobiles (motor toboggans) were used for their field researches on glaciers. Geomorphologists carried out measurements in the periglacial field experimental sites, observations of rock weathering, and mapping of chronological sequence of tills and moraines. Geologists studied chronological sequence of rock formation and collected rock specimens for structural, petrological, and chemical analyses. A surveyor set up geodetic control stations using GPS satellite positioning system and made gravity surveys on glaciers as well as at some control stations. Two Belgian glaciologists took part in the fieldwork as exchange scientists and studied dynamics of glacier movement and ice thickness.