著者
粟屋 敏雄 長谷部 直幸 梶野 浩樹 石谷 麻里子 山田 武宏 小野 尚志 大滝 康一 山下 恭範 三好 敏之 田崎 嘉一 松原 和夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.615-621, 2009 (Released:2011-01-14)
参考文献数
11

After an overdosing incident at our hospital,we developed an upper limit alert system that checks doses of injection drugs for individual patients as the physician uses the computerized order entry system.Based on each patient’s converted body surface area (BSA),the upper limit for an injection is estimated through comparison with the standard upper limit in a patient with a BSA of 1.6 m2.This is done automatically in accordance with a compensation formula provided by our hospital’s safety committee.Standard upper limits for each injection are based on past records of actual injection dosages administered in our hospital and discussion with clinical departments.When a physician tries to enter an order for an injection at a dose over the upper limit,the computer system issues the alert“non-enterable”and the order cannot be placed.In the case of a regimen for which there is a legitimate reason for using a dose higher than the upper limit,the physician must explain this to the pharmacist who will then unlock the alert system using a secret password that he or she has designated.Passwords are only valid for one day.As far as we know,this is the first computerized injection dosage upper limit alert system in the world.On doing a search of our database,we found that there had been 742 overdose alerts (0.47% of all injection prescriptions) during the 3 months following its introduction.Owing to the alerts,physicians altered 155 prescriptions (21.1% of all alerts).Our computerized alert system for checking injection dosages has proved to be very necessary in ensuring medication safety.
著者
小川 晋平 名取 俊介 野村 智昭 芳賀 智顕 羽根田 俊 長谷部 直幸
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.S2_157-S2_157, 2010

症例は63歳, 男性. 高血圧, 高尿酸血症にて近医通院中だったが, 内服中のCa拮抗薬を数日間自己中断していた. 2009年3月上旬, 12時30分頃から前胸部痛が出現し近医を受診. 13時頃, 心電図を記録中に心肺停止状態となり, そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始, 救急隊到着時の意識状態はJCS III-300, 自発呼吸は認めず. 自動体外除細動器で心室細動と診断され, DC 360J×1回で心拍再開後, 前医に搬送された. 13時20分, 前医到着時の意識は清明, 自発呼吸も認められており, 心電図も近医で認められたST上昇は回復していた. 冠攣縮性狭心症, 致死性不整脈の疑いで当院に再搬送となった. 硝酸薬の点滴, Ca拮抗薬の再開で入院後は胸痛発作は認めず, 不整脈も出現しなかった. 内服継続下でのAch負荷試験, 心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり, 今回は植込み型除細動器の使用は見送った. 冠攣縮自然発作の心電図が記録されている稀な心室細動からの救命例であり報告する.
著者
名取 俊介 小川 晋平 野村 智昭 芳賀 智顕 羽根田 俊 ターリブ アリー 坂本 央 竹内 利治 長谷部 直幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.807-812, 2010 (Released:2012-02-28)
参考文献数
28

症例は63歳,男性.高血圧,高尿酸血症にて近医通院中だったが内服中のカルシウム拮抗薬を数日間自己中断していた.2009年3月上旬,12時30分ころから前胸部痛が出現し近医を受診した.13時ころ心電図記録中にST上昇とともに心肺停止状態となり,そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始,救急隊到着時の意識状態はJCS III-300,自発呼吸はなかった.自動体外除細動器で心室細動を確認しDC360J×1回で除細動され心拍再開後,前医に搬送された.13時20分,前医到着時は意識清明,自発呼吸も回復しており,心電図のST上昇も消失していた.冠攣縮性狭心症,致死性不整脈疑いで当院に再搬送された.硝酸薬の点滴,カルシウム拮抗薬再開で入院経過中に胸痛発作はなく不整脈も出現しなかった.内服継続下での冠動脈造影,アセチルコリン負荷試験,心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり,植込み型除細動器の植え込みは見送った.冠攣縮自然発作の心電図記録直後に心肺停止となり,bystander(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生と,救急隊による除細動の連携により合併症なく,心室細動から蘇生した稀な症例である.
著者
下岡 良典 牧口 展子 成田 浩二 福澤 純 鶴巻 文生 菅原 寛之 長谷部 直幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.284-291, 2017-03-15 (Released:2018-03-15)
参考文献数
17

無症候の60歳代男性.健診で高血圧と心雑音を指摘され,2010年10月に当院を初診した.聴診で拡張期雑音を聴取し,経胸壁心エコー検査で中程度の大動脈弁逆流症と大動脈四尖弁を認め,精査目的で当科へ入院となった.入院時の左室駆出率は62%であった.経食道心エコー検査,心臓CT検査から2つのlarger cuspと2つのsmaller cuspから構成される大動脈四尖弁を認めた.自覚症状がなく,左室拡張末期径も60 mm以下であったことから経過観察の方針とし,高血圧に対する内服治療を開始し退院となった.初診から5年間の経過観察期間内で明らかな臨床症状は出現しなかった.降圧管理と利尿薬の内服により,経胸壁心エコー検査では大動脈弁逆流症の進行もみられず,左室拡張末期径,左室駆出率の増悪はみられなかった.また大動脈径や弁基部の拡大も認めなかった.大動脈四尖弁は稀な疾患であり,臨床経過についてはほとんど報告がない.これまでの報告から四尖弁に起因する大動脈弁逆流症は比較的早期に外科的修復を要することが多いとされる.われわれの経験した症例から無症候性の大動脈弁逆流症と診断された症例においては,早期に内科的管理を行うことで外科的修復を回避ないし延期することの可能性が示唆され,修復時期の延期は修復方法の選択肢を広げ得る可能性も期待できる.
著者
安孫子 亜津子 磯江 つばさ 宮内 和誠 本庄 潤 上堀 勢位嗣 滝山 由美 伊藤 博史 長谷部 直幸 羽田 勝計
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.197-202, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は73歳男性で糖尿病罹病期間は約30年.1999年から尿タンパク陽性を指摘.2002年1月に尿中アルブミン1604 mg/gCreであり,その後他院の腎臓内科に下腿浮腫で入院時,尿蛋白1.2 g/日,24 hrCcr 68 ml/分であった.血糖は経口薬内服するもコントロール不良,血圧もアンジオテンシン受容体拮抗薬でコントロール不良であり,同年10月当院を紹介される.このとき随時尿の尿中アルブミンは773 mg/gCre, 神経障害,増殖網膜症も合併.2003年5月急性心筋梗塞発症.入院時,尿中アルブミン167 mg/gCre, 24 hrCcr 71 ml/分.インスリン治療を導入し,降圧薬の増量,抗血小板薬やスタチンも開始となる.退院後,血糖コントロールはHbA1c 7%前後で経過.1年後に尿中アルブミンは約50 mg/gCre, 2年後には12 mg/gCreに減少した.糖尿病罹病期間が長く,その他の合併症があっても,集学的治療で腎症の3期から1期への寛解がみられた.
著者
齋藤 司 相澤 仁志 澤田 潤 油川 陽子 片山 隆行 長谷部 直幸 林 恵充 安栄 良悟 佐藤 正夫 程塚 明
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.133-137, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
6 1

【背景・目的】小脳梗塞の臨床的特徴を検討し,初期診療上の問題点を明らかにする.【方法】2006年1月1日から2008年12月31日までの3年間に,旭川医大病院Stroke teamが診療した脳卒中患者514例のうちの小脳梗塞患者22例(4.3%)を対象とした.【結果】典型的な小脳症状を全く呈さない症例,あるいは一つのみ呈する症例が8例(36.4%)見られた.3例が救急車を利用し発症後3時間以内に受診したにもかかわらず,当初小脳梗塞と診断されず神経内科や脳神経外科以外の病棟に入院した.その3例はいずれもめまいを主訴とし,構音障害と歩行障害が見られなかった.その他2例を合わせ全体の22.7% にあたる5例が,Stroke teamによる初期の診察を受けておらず,それが当初小脳梗塞と診断されなかった要因の一つと考えられた.【結論】めまいや嘔吐を主訴とする場合は,常に小脳梗塞である可能性を考慮する必要がある.Stroke teamによる早期の正確な神経学的診察が重要である.