著者
阪井 康友 上田 眞太郎 永田 博司 大越 教夫
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-57, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
10

マウス腓腹筋の腱束および腱膜部における筋腱移行部の微細構造について検索を行った。腱東部の筋原線維と膠原線維の間には指状陥入構造による連結の形態を特徴とした。膠原線維側には基底膜を,筋原線維側には筋形質膜を認め,筋節の末端(Z線)のアクチンフィラメントが筋形質膜に接合していた。腱膜部では突起状の腱束が腱膜より鋭角に出現し,腱東部と同様の連結構造を示した。筋線維は筋の長軸方向に対し多様な角度で斜走し,腱束の接合がみられ,腓腹筋は抗重力筋として筋の収縮変位に乏しいが,最大張力発生に有利な筋デザインであることを示唆した。
著者
岩井浩一 滝澤恵美 阪井康友 山田哲 佐藤たか子 木村知美 豊田和典 山本健太 冨田和秀 大瀬弘高 居村茂幸
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.141-148, 2009-03

茨城県常陸大宮市において、平成19年度の介護予備事業としてバランスアップ教室を実施した。教室の開始時および終了時には体力測定を実施し、参加者の体力の変化について検討したが、今年度は併せて呼吸機能の検査を実施した。高齢化の進展に伴って、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率も増加することが懸念されており、住民の呼吸機能の現状を把握するとともに、運動指導によって呼吸機能がどの程度改善するかについて検討した。バランスアップ教室には55名が参加し、平成19年5月から11月までの6ヶ月間、市内の3つの会場でインストラクターの指導のもと、1回60分の教室を月3回の頻度で実施した。教室開始時の呼吸機能検査において、1秒率(FEV1.0%)が70%以下で、COPD疑いと判定された者は3名であった。呼吸機能検査結果と体力測定結果との関連では、FVCは、身長、体重、および反復横跳びの成績と有意な正の相関が見られた。V50/V25は、上体起こし、シャトルラン、立ち幅跳び、および得点合計と有意な負の相関がみられ、体力年齢と正の相関が見られた。V25は、立ち幅跳び、得点合計、および体力年齢と有意な相関がみられた。また、バランスアップ教室の開始時と終了時における測定値の変化は、介入の前後で平均値に有意な差が見られ測定項目はなかったが、多くの測定項目で成績向上の傾向がみられた。教室開始時にCOPD疑いと判定された者は、教室終了時に全員1秒率が70%を超え、呼吸機能の改善がみられた。
著者
冨田 和秀 阪井 康友 門間 正彦 大瀬 寛高 居村 茂幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.237-243, 2004 (Released:2004-08-30)
参考文献数
13
被引用文献数
5 3

本研究の目的は,dynamic MRIを用いて,健常者の安静呼吸と最大深呼吸における横隔膜運動の差異を定量的に解析すること,最大深呼吸における全横隔膜運動とBMI,肺活量(VC)や胸郭拡張差との相関関係について検証することである。その結果,横隔膜の頭尾方向への運動距離の平均は,安静呼吸時,腹側部14 mm,中央部20 mm,背側部27 mmであり,最大深呼吸時,腹側部41 mm,中央部64~67 mm,背側部74 mmであった。また,全横隔膜運動とBMI,VC,胸郭拡張差との間には,相関関係は認められなかった。
著者
川北 大 飯田 修平 内藤 秋光 藤田 拓也 小瀧 敬久 佐藤 絵美 岡田 雄大 池田 喜久子 玉利 光太郎 阪井 康友
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.56-62, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
28

〔目的〕回復期の片麻痺患者に対してロボット型短下肢装具(R-AFO)を用いたリハビリの効果を検討すること.〔対象と方法〕対象は24名の脳血管障害片麻痺患者.介入期間は10日間で,評価は介入前,介入後の2回実施した.R-AFO群は,通常の理学療法練習60分と,R-AFOを使用した起立や歩行練習を20分の計80分間,非実施群は,通常の理学療法練習を80分間行った.〔結果〕通常群よりもR-AFO群で有意に効果が認められた項目は,歩行速度,麻痺側片脚支持時間,片脚支持時間の左右対称性割合,機能的自立度評価法(FIM)であった.〔結語〕R-AFO装着下での麻痺側に荷重を促す歩行訓練を反復して行ったことで,麻痺側片脚支持時間の割合の増大による,歩行左右対称性の改善効果を有する可能性を示唆した.
著者
飯田 修平 加藤 勝行 徳田 良英 窪川 徹 阪井 康友
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.635-641, 2022 (Released:2022-12-15)
参考文献数
15

〔目的〕新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い,学外での見学実習が不可能となったため,緊急措置として実施した学内の代替実習の教育効果を検証した.〔対象と方法〕理学療法学科1年生102名,臨床実習指導者の外部講師8名を対象に,主観的学習達成度と習得内容をアンケート調査した.〔結果〕情意領域,認知領域,技能領域での主観的学習達成度は,全て肯定的回答であった.得られた経験は,情意領域全般,幅広い分野の業務内容,動画を通した患者の接し方,症状,理学療法であった.得られなかった経験は,実際の患者とのコミュニケーション,現場実習の緊張感や雰囲気,詳細な患者状態であった.〔結語〕臨床実習を想定した学内での教育の質を向上させることが重要である.
著者
佐藤 哲哉 阪井 康友 福原 奈津子 上田 眞太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.23-28, 1997 (Released:2007-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

パーキンソニズムの姿勢反応障害は日常生活(ADL)の障害をきたし,転倒の誘因ともなっている。そこで我々はパーキンソニズムの立位姿勢反応障害の推定とその特徴の検討を目的に,後方外乱によるPostural Stress Testを施行した。後方外乱刺激には,1.0%体重量による60cmの落下エネルギーを用い,刺激直後の前後重心動揺を経時的に測定を行った。加えて,20秒間の静止立位の重心動揺測定も行った。対象はパーキンソニズム10例および健常者10例で,結果はパーキンソニズムのADL障害の重度化に伴って,後方外乱刺激から平衡反応までの潜時時間は遅延し,この時の後方重心移動距離も延長した。パーキンソニズムの姿勢反応障害の特徴は,静止時のS.D-Areaでなく,後方外乱によるPostural Stress Testに対しての反応を示唆し,臨床評価にその有用性を明らかにした。
著者
阪井 康友 門間 正彦 山田 哲
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-24, 2007-03

脳卒中運動麻痺の回復機序は,神経系リハビリテーションの中で関心を持たれる課題の一つである。本研究は,運動の学習過程に伴う小脳の賦活状況の把握を目的にした。研究方法は,健常者5名を対象に正弦波の手指トラッキング・タスクを連続6日間行った。そのタスクのデータから正確度を算出し,タスク遂行中にfunctional MRIを用いて大脳皮質と小脳の賦活状態を経時的(1,2,5,6日目)に測定した。結果は,全例において,タスク正確度(運動学習)は徐々に高まる傾向を示した。小脳領域の賦活(横断面積)については2日目で急速に賦活部位は縮小し,6日目まで賦活部位の面積は維持されていた。一方,大脳皮質における感覚,感覚連合,運動,運動前,視覚の領域の賦活状態は,1日目より2日目は賦活部位が収縮しており,手指トラッキング運動の学習過程に大脳皮質とともに小脳の関与も考えられた。