著者
阿形 清和 野地 澄晴 梅園 良彦 横山 仁 遠藤 哲也 柴田 典人
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新学術領域研究『再生原理』では、日本の看板研究の一つであった<再生研究>の成果をもとに、3次元構造をもった指や器官の再生を目指す-新しい再生医療をめざす研究領域を作るために本領域を立ち上げた。そして、再生原理を明らかにすることで、再生できない動物に3次元構造をもった指や器官の再生を引き起こすことを目指した研究を展開した。その結果、プラナリアやイモリで再生原理を明らかにしたことで、尾部からは頭部を再生できないプラナリアを遺伝子操作によって再生できるように成功し(Umesono et al., Nature, 2013)、また関節を再生できないと考えられていたカエルに関節を再生させることに成功した(Tsutsumi et al., Regeneration, 2015, 2016)。これらの画期的な研究成果をより広く世界中の研究者、一般の方々、再生医療関係者に広めていくのに、それらの成果を海外ジャーナルに出版するとともに、国内新聞やEurekAlertなどの国際科学Webサイトを使って広報した。英語での論文出版と、海外向けの広報活動などについてはElizabeth Nakajimaさんを雇用できたことでスムーズに展開することができた。この1年でカエルの関節再生を含め重要な論文を8報、英文誌に出版することができた。また、高校生向けとしては、京都市立西京高校、愛知県立一宮高校、明和高校、宝塚北高校、広島ノートルダム清心女子高校などに出張講義あるいは大学での実習を行った。一般向けとしては、東京で公開講演会を行うとともに、ABC放送、BSフジの『ガリレオX』などで本研究の成果は紹介された。このように、5年間にわたる本研究成果を、国内外に積極的に広報することに成功した。そして、最後に5年間にそれらの成果を冊子体としてまとめて報告書とした。
著者
長谷部 光泰 倉谷 滋 嶋田 透 藤原 晴彦 川口 正代司 深津 武馬 西山 智明 岡田 典弘 阿形 清和 河田 雅圭 郷 通子 豊田 敦 藤山 秋佐夫 望月 敦史 矢原 徹一
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本領域の目的である、多様な研究から「複合適応形質進化の共通メカニズム」を推定するという総合的研究を展開する、進化生物学とゲノム生物学を融合させる、を実現するため総括班を有機的に組織し、下記の活動を行い、効率的に連携できた。(1)領域会議を年2回、インフォマティクス情報交換会を5年で18回、ニュースレターを5年で63号発行し、領域内での情報共有、共通意識形成を行った。(2)ゲノム支援活動として実験方法のアドバイス、ゲノム配列決定支援、外部委託についてのアドバイス、各班のインフォマティクス担当者などに指導を行った。(3)形質転換実験技術支援を行った。(4)国内、国際シンポジウムをほぼ毎年開催した。
著者
阿形 清和 中村 輝
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本研究では、全能性・多能性をもつ幹細胞や生殖細胞の制御にRNAがどのように関わっているのかを明らかにすることを目標としている。特に、幹細胞や生殖細胞の細胞質に、なぜ巨大なRNA-タンパク質複合体があるのか、その必然性と生物学的な意味について明らかにすることを目標とした。近年の研究は、それらの巨大RNA-タンパク質複合体が翻訳制御に関与している可能性と、核内のクロマチン構造を制御している可能性の2つを示唆している。共同研究者である中村らは、ショウジョウバエを使って生殖細胞における翻訳制御の重要性を遺伝学的・生化学的に示すことに成功した。一方、プラナリアにおいては、幹細胞で発現しているRNA結合タンパク質について網羅的に調べたところ、細胞質に存在するものと核内に分布するものの両方があり、それらをRNAi法で機能解析したところ、他の遺伝子の発現に影響を与えるものや、幹細胞そのものが消失するものが得られた。これらの結果は、幹細胞の制御にRNAが多岐にわたってダイナミックに関わっていることを示唆しており、今後は生化学的なアプローチを組み入れて解析していくことが必要であることが明らかとなった。