著者
難波 孝志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.383-399, 2016 (Released:2018-03-31)
参考文献数
28

本稿の目的は, 沖縄の郷友会について概念的な再整理を行うこと, そしてこれまで扱われることが少なかった軍用地との関わりをもつ郷友会について, 軍用返還跡地再利用の過程を通してその現実と今後の行方を考察することにある. 2015年4月, 沖縄県北中城村にオープンした全国資本の巨大ショッピングモールは, 沖縄の軍用跡地再開発の最新の事例である. この事業に大きな役割を果たしたのが, この地区の地権者の多くが加入する郷友会であった. このように軍用地などの共有財産の管理のための地縁的組織を, ここではアソシエーション型郷友会と呼ぶことにする. これまでの沖縄における郷友会研究は, 社会学における都市移住者コミュニティ研究そのものであった. これに対してここで扱う郷友会とは, 利益集団であって, アソシエーションである. そして, アソシエーションであるからこそ, 社会学の研究対象になりにくかったといってもよい. ただ, 沖縄社会では, この両者が同じ「郷友会」というフォークタームで混同して使われているのも事実である. 本稿では, 巨大ショッピングモールの再開発を事例に, その経過を分析することによって, 軍用跡地利用の合意形成と沖縄社会の行動原理の根本ともいえる郷友会のシマ結合について考察した. 結果として, (1)経済的機能を失ったアソシエーション型郷友会の存続可能性, (2)経済的機能以外の他の機能の消滅への危惧, (3)郷友会解体過程におけるシマ結合のゆるぎない存続, などのポイントを摘出した.
著者
藤井 和佐 西村 雄郎 〓 理恵子 田中 里美 杉本 久未子 室井 研二 片岡 佳美 家中 茂 澁谷 美紀 佐藤 洋子 片岡 佳美 宮本 結佳 奥井 亜紗子 平井 順 黒宮 亜希子 大竹 晴佳 二階堂 裕子 中山 ちなみ 魁生 由美子 横田 尚俊 佐藤 洋子 難波 孝志 柏尾 珠紀 田村 雅夫 北村 光二 北川 博史 中谷 文美 高野 宏 小林 孝行 高野 宏 白石 絢也 周藤 辰也 塚本 遼平 町 聡志 佐々木 さつみ
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

研究課題に関する聞きとり調査、質問紙調査等から、地方社会における構造的格差を埋める可能性につながる主な条件として(1)地域住民の多様化の推進及び受容(2)生業基盤の維持(3)定住につながる「地域に対する誇り」が明らかとなった。過疎化・高齢化が、直線的に地域社会の衰退を招くわけではない。農林漁業といった生業基盤とムラ社会の開放性が住民に幸福感をもたらし、多様な生活者を地域社会に埋め込んでいくのである。