- 著者
-
澁谷 美紀
- 出版者
- 北海道農業研究センター総合研究部
- 雑誌
- 北海道農業研究センター農業経営研究 = National Agricultural Research Center for Hokkaido Region farm management research (ISSN:13471821)
- 巻号頁・発行日
- no.114, pp.1-21, 2015-10
酒造業者による輸出の取り組みは国内市場縮小下の市場対応であり,その取り組みには酒造業者の階層性が反映されていると考えられる。そこで本稿では,今日の清酒輸出の展開状況を踏まえて,清酒主産地以外の地域の地方酒造業者を対象に,階層性に着目しつつ輸出の現状と課題を明らかにする。そのために,第1に,貿易統計より清酒の総輸出額と総輸出量,平均価格の推移を把握し,清酒輸出の特徴を把握する。農林水産省では主要輸出品目を水産物,加工食品,コメ・コメ加工品,林産物,花き,青果物,牛肉,茶の8種類に括り,「農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略」を策定している。その中から清酒と対照的な輸出動向を示すリンゴ,醤油を取り上げ,これと清酒を比較することで特徴を明らかにする。第2に,販売量規模別に酒造業者の概況を集計した国税庁資料により,出荷量と未納税移出入数量の推移を明らかにすることで販売量の動きを把握する。これを踏まえて地方酒造業者を対象に,輸出の取り組みからみた階層性を分析し,3グループに分類する。第3に,積極的に輸出に取り組む地方酒造業者のうち各グループ2社,計6社を対象に,ヒアリング調査に基づいて輸出実態を整理し,課題を考察する。これら6社のうち5社は,米国輸出に比重を置き,継続的な輸出を行っている。後述の通り,米国は地方酒造業者の有力な輸出先の1つと思われることから,米国輸出に焦点をあて輸出の実態を整理する。また,輸出における課題解決の方途を探る参考として,地方酒造業者の輸出支援を行う新潟県酒造組合の取り組みを概観する。