著者
須賀 隆章 スガ タカアキ SUGA Takaaki
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.259, pp.101-110, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第259集『空間と表象』上村清雄 編"Space and Representation" Report on the Research Projects No.259
著者
大須賀 隆子 Takako OSUGA
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 = Bulletin of Junior College of Shukutoku (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.127-149, 2012-02-25

「大地保育とは、太陽と水と土に象徴される自然を充分に取り入れる自由保育方式の総称」であり、「創美(創造美育協会)の精神から生まれたものだ」1)と塩川豊子注1)は述べている。本論文では、倉橋惣三が実践した保育論を基に自由保育について定義し、戦後日本において自由保育をタイトルとして書かれた4冊の書籍を概観することを通して、塩川豊子が実践した自由保育の特色が、「どろんこ保育」「自由画の指導」「食事場面と午睡場面の自己決定」にあると捉えた。この3つの保育実践が、戦後大きく影響を受けたと塩川豊子が言う創美とりわけ宮武辰夫、そして創美を通して学んだと言うホーマー・レインとA.S.ニイルの教育思想とどのように関連しているかを考察することによって、塩川豊子の自由保育の根幹にあるものを明かにしようと試みた。
著者
大須賀 隆子 Takako OOSUGA
出版者
淑徳短期大学紀要委員会
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
no.47, pp.35-61, 2008

「小1問題」を引き起こす遠因が1989年に改訂された「幼稚園教育要領」(「保育所保育指針」も基本的理念は同じ)にあるという言説がある。実際に、保育者から寄せられた新聞投書や小学校教諭へのインタビュー、さらに保育研究者らの論文を通して、1989年の「幼稚園教育要領」の改訂を機に「保育現場では混乱が生じた」との指摘を見出すことができる。この指摘に対して筆者は、いわゆる「自由保育」と呼ばれた1989年の「幼稚園教育要領」以来、指導に戸惑った保育者のもとで、実質的な主体性が獲得されないまま幼稚園(保育所)を卒園した子どもたちが小学校に入学して、「小1問題」が引き起こされたという側面もあるのではないかと考えた。このような状況を踏まえて、本論文は「自由保育」の理念を検討し、その方法を探ることを目的とした。はじめに、1989年の「幼稚園教育要領」の原案は、倉橋惣三(1934)が提唱した「自己発揮や自己充実を見守り援助する保育」にあり、これが「自由保育」であることを明らかにした。倉橋は、子どもが「自発的生活」を発揮し充実するための方法として、子ども同士の「相互的生活」を位置づけている。ここに「自由保育」が今日の「小1問題」を引き起こした遠因のひとつであると指摘されている、その源流があるのではないかと筆者は考え、倉橋の提唱した保育が今日のこの国の子ども達においても十全に活かされるために、倉橋の考えた自己の在り方について検討した。その結果、Piaget-Vygotsky論争(1934)、広松渉(1972)、Stern(1985)、鯨岡峻(2004)を通して、Sternの「自己感」を基底に据えた、「I as We、 We as I」としての自己形成が、とりわけ今日の「自由保育」によって目指されることが望まれる自己の在り方であり、かつ「幼・小移行期」を貫く自己の在り方であることを明らかにした。そのうえで、「I as We、 We as I」としての自己形成を促す方法としてSternの提唱する「情動調律」の有効性について検討した。
著者
須賀 隆章 小川 真実
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of studies on humanities and public affairs of Chiba University (ISSN:24332291)
巻号頁・発行日
no.36, pp.198-209, 2018-03

[要旨] 文化財の保全は財政難にあえぐ自治体にとって、悩ましい問題である。地方創生の時代を迎えて、文化財の積極的な活用を通じた「観光資源」の掘り起こしが提言されている。文化財を用いた「観光立国化」に向けて、文化庁は平成27年度より「日本遺産」の認定を進め、日本遺産魅力推進事業を推進している。同事業では点在している個々の文化財を、そこに共通する歴史や文化を語る「ストーリー」を通じてパッケージ化し、積極的な文化財の活用を図ることで、新たな観光客や訪問者の回遊性ある行動を促し、地域の活性化に結びつけることをめざすものである。本稿は、負の側面が強い地域の歴史的資源の活用法を見直すことによって、地方創生時代の新たな「まちづくり」のモデルを提唱する佐倉市の文化財行政の意義を明らかにするものである。
著者
大須賀 隆子
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.161-167, 2016-03-15

小学3 年から4 年にかけて話し言葉から書き言葉への転換が起こり「保存」や「系列化」の理解が深まってくる.学習内容に抽象的な概念が盛り込まれるようになり,児童によっては,低学年で学習した知識と比較するかたちや具体的に視覚化することによって新しい学習内容を取り込みやすくする「先行オーガナイザー」(Ausubel,1963)が有効になるだろう.「認知カウンセリング」(市川,2004)によって,4つの側面「動機づけ」「メタ認知」「知識構造」「必要知識」からつまずきの原因を探り,学習者が「認知的な学習スキル」を自立的に習得するような支援も望ましい.児童期は仲間の比重が大きくなり,10 歳ころから社会的比較を通して妬みなどのネガティヴな感情が生じる場合がある(澤田,2006)が,「関係性攻撃」行為につながらないように社会的スキルプログラムが必要であり(磯部,2011),日々の教育実践の中で心のパワーと社会性の育成を視野に入れた「開発的・予防的カウンセリング」が求められる(河村,2012).構成的グループエンカウンター(SGE)に継続的に取り組む学級や児童は,受容的で支持的な体験の中で自信や安定感を得,ネガティヴな感情を抱えた児童はSGE 実施の守られた時空間と課題設定の中で感情表出をすることが予測される.ソーシャルスキルトレーニング(SST)プログラムを行った後は,日常の教育活動の中にSST を盛り込む「般化」の機会と,グループアプローチのなかに埋もれがちな児童への個別配慮が求められる(飯田・石隈,2001).
著者
大須賀 隆子
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.143-150, 2016-03-15

ユニバーサルデザイン教育とは,視覚や触覚に訴える教室環境が準備され,児童同士の関係が支持的で間違いが許容される学級風土のなか,全ての児童が学びに参加できる,多様な学び方への柔軟な対応や必要な学習活動に十分に取り組める授業デザインをめざす教育である.学習障がい(LD),注意欠陥多動性障がい(ADHD),高機能自閉症などのある児童,すなわち軽度発達障がい児のかかわり方を,ユニバーサルデザイン教育の試みから見直し,具体的実践と課題について概観した.ユニバーサルな授業をデザインする際には,学級がどのような軽度発達障がい児やどのような傾向の学習困難感を抱える児童たちで構成されているのかを考慮して「わかる授業」を用意することが求められる.軽度発達障がいのある児童が最も敏感に反応する温かな人間関係と安定した学級風土をつくることが,ユニバーサルデザイン教育の土台づくりである.今後の課題は,従来の通常学級の論理と特別支援教育サイドからの発想とがより統合されていくような支援プランの追求や,いわゆる健常児にも軽度発達障がい児にも共通して見られる各教科の学習困難感に焦点を当てた,ユニバーサルデザイン教育の発想を生かした授業計画や授業方法の実践研究の積み重ねが求められる.
著者
大須賀 隆子 Takako OSUGA
出版者
淑徳短期大学紀要委員会
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
no.51, pp.127-149, 2012

「大地保育とは、太陽と水と土に象徴される自然を充分に取り入れる自由保育方式の総称」であり、「創美(創造美育協会)の精神から生まれたものだ」1)と塩川豊子注1)は述べている。本論文では、倉橋惣三が実践した保育論を基に自由保育について定義し、戦後日本において自由保育をタイトルとして書かれた4冊の書籍を概観することを通して、塩川豊子が実践した自由保育の特色が、「どろんこ保育」「自由画の指導」「食事場面と午睡場面の自己決定」にあると捉えた。この3つの保育実践が、戦後大きく影響を受けたと塩川豊子が言う創美とりわけ宮武辰夫、そして創美を通して学んだと言うホーマー・レインとA.S.ニイルの教育思想とどのように関連しているかを考察することによって、塩川豊子の自由保育の根幹にあるものを明かにしようと試みた。
著者
須賀 隆章
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は第一に、源平合戦図屏風の特色を整理し、戦国合戦図屏風を含めた江戸初期の合戦図屏風の表現の特徴を明らかにしようとした。そして第二に、屏風とは異なる媒体を含めた分析を行い、合戦を視覚化することの意味、歴史的実態との関係を見直す作業を進めた。第一の点に関して、源平合戦図屏風でも多くの作品の残る「一の谷・屋島合戦図屏風」の江戸初期の作品に中世の合戦絵巻からの引用と考えられる「首取り」の図像が共通して見られることを確認した。更にこの図像は、同時代の合戦を描く絵巻や戦国合戦図屏風にも見られることを指摘した。「首取り」の図像が繰り返し描かれた背景には、「自己」と結び付くかたちで武士を描かせる享受者の存在が関係している。源平合戦図では戦場における教訓として、戦国合戦図では自らまたは祖先の活躍を示し家の正統性を語るものとして、「首取り」の図像が享受されたことが想定される。第二の点に関して、「東照宮縁起絵巻」(日光東照宮蔵)に描かれた家康像、合戦像を分析した。まず家康は天海や家光の意向を反映して、仏道に発心し武人として成功を収める人物として造形されていることを明らかにした。そして、絵巻にのみ見られる合戦場面は「武」の威光を求める家光の当時の状況と関係していることを指摘し、中世絵巻の構図や図像を利用した上で、家康の合戦での勝利を強調していることを明らかにした。家康の勝利の演出は戦国合戦図屏風にも共通し、彼の勝利を演出する表現は媒体を超えて選択されたとも想定される。以上の分析に共通するのは、過去の作品のイメージをどのように利用したのかという問題である。この問題は他の絵画作品にも共通し、先行研究の蓄積も多い。しかし、本研究が対象とする合戦図屏風や合戦絵巻といった作品では、そのような研究が進んでいるとは言い難く、この問題の検討は武装した武士の姿を描く絵画を位置づける上で必要不可欠な作業である。
著者
池田 忍 柴 佳世乃 久保 勇 伊東 祐子 亀井 若菜 水野 僚子 土屋 貴裕 成原 有貴 メラニー トレーデ 須賀 隆章 中村 ひの
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本の中世の物語絵画、とりわけ多様な知識や情報を共有し伝達する媒体であった絵巻の描写を手がかりに、身分と階層を跨る絵巻制作者と享受者の重層的な世界観を明らかにしようとするものである。本研究では、中世の人々の日常生活、労働、信仰、行事、儀礼、合戦の他、異国や異域、神仏化現の舞台となる「場」(型)を抽出・収集し、そこに描かれた建築や環境、多様な「もの」に、身分差や階層差、ジェンダーの差異がどのように描き分けられ、関連付けられているかを具体的に検証し、物語絵画、とりわけ絵巻という媒体の歴史的特性を明らかにした。