著者
仙石 学 松本 充豊 井上 睦 馬場 香織 油本 真理 磯崎 典世 横田 正顕 出岡 直也 小森 宏美 中田 瑞穂 上谷 直克
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題「政党政治の変動と社会政策の変容の連関:新興民主主義国の比較」は、世界金融危機の発生以後の新興民主主義国(主に東欧・南欧・ラテンアメリカ・東アジア)における社会政策・福祉枠組みの変容について、危機後の政治経済状況の変化に起因する「政党政治の変動」を軸に検討していくことを目的とする。特に世界金融危機の後に生じた既存政党の弱体化とポピュリスト系を中心とする新興政党の台頭が、危機以前に存在していた社会政策や福祉のあり方をどのように変革させたかという点に注目し、各国ごとの政党政治と制度変容の展開を検討すると同時に、これを体系的な形で比較分析を行うことを進めることとする。
著者
馬場 香織
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.2_104-2_136, 2021 (Released:2022-12-15)
参考文献数
53

本稿は、メキシコの政党システムの変容がなぜ起こり、それがいかなる性格のものであるかを明らかにすることを目的とする。従来メキシコの政党システムは、ラテンアメリカ地域のなかでも比較的安定的で、制度化のレベルが高いとされてきた。しかし、新興左派政党Morenaの登場を受けて、2015年から2021年現在にかけてのメキシコの政党システムは大きな変容を経験した。本稿では、システム変容の実態を、政党と有権者との編成に基づくパターンに照らして明らかにしたうえで、システム変容を理解するうえで重要な3つの分析視角に基づき、2018年選挙における政党支持の要因を検討する。分析の結果、メキシコの政党システム変容のメカニズムには、既存政党に対する不満の受け皿として登場した新党への支持という、ラテンアメリカの脱編成事例との共通点がみられる一方、旧来の左派政党であるPRDとMorenaの置き換わりが進む形で左派再編が進んでいることも確認された。この結果は、メキシコの政党システム変容を 「完全な脱編成」 として捉えるのではなく、「突然の再編成」 として捉える見方の有用性を示唆する。また本稿では、組織犯罪に関連する暴力が政党支持に与える影響についても考察する。
著者
馬場 香織
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度4月から9月までは,制度的変化と発展に関する理論を勉強する一方で,全世界における年金改革の状況を特に民営化を焦点に量的分析を行ない,第二世代改革を説明するにあたって制度的要因に注目することの妥当性を示すことができた。平成22年10月からは約1ヶ月間メキシコシティに滞在し,米州社会保障研究所図書館などで関連資料の収集を行ない,また,同研究所教育担当長のアントニオ・ルエスガ氏へのインタビューを行なった。11月末からはアルゼンチンに移り,連邦社会保障庁(ANSES)資料室での一次資料収集および各界関係者へのインタビューを行なった。インタビュイーは元ANSES高官ミゲル・フェルナンデス氏,元民間年金基金運用会社監視局高官ラウラ・ポサーダ氏,元民間年金基金運用会社組合長オラシオ・ロペス氏,アルゼンチン労働センター社会保障担当局長リディア・メサ氏,年金問題専門弁護士アレハンドロ・シベッティ氏などである。これらの資料やインタビューを通じて,アルゼンチンにおける年金制度第二世代改革についての各方面からの見方を知ることができ,こうしたデータを理論にフィードバックすることで,理論の精緻化も可能となった。第二世代改革がなぜ起こり,そしてなぜ各国間で違いが見られるかについて,短期的要因と長期的要因を複合的に見る必要がある。とりわけ,長期的要因,すなわち制度的発展の様態・第一世代改革におけるveto構造・財政的移行コストという,制度的・構造的要因を詳しく明らかにすることは,ラテンアメリカ年金制度改革に関する研究においても新しい視点であり,これを政治・経済状況といった短期的要因と組み合わせてみることで,より高い説明力をもった理論枠組みを期待できる。