著者
高岡 素子
出版者
神戸女学院大学
雑誌
神戸女学院大学論集 (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.157-165, 2014-12

京都にある精進料理店で提供しているメニューについて、日本人の食事摂取基準を参考に栄養解析を行い、精進料理の栄養学的な特徴を明らかにした。ビタミンでは、ビタミンB12およびビタミンDが不足していたが、ミネラル類、食物繊維などに関しては基準値を満たしており、栄養学的評価が高いことが認められた。しかしながら塩分については基準値を超え、過剰であった。また、エネルギー比率では、タンパク質および炭水化物は適正範囲内であったが、脂質エネルギーの比率が高い傾向が認められた。これらの結果から、精進料理店で一般の人に提供されている精進料理は、多くの栄養素の不足が報告されている修行僧の日常食とは異なっていることが明らかとなった。精進料理が我が国において、修行僧だけでなく一般人を対象として発達していく過程において、定められたきまりを守りつつ、よりおいしく、より満足感の得られる形に自然に変化していったと考えられる。
著者
高岡 素子 宮崎 博隆 別所 京子 松本 剛 佐々木 愛
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.44-49, 2008-06-30 (Released:2008-09-02)
参考文献数
18

We conducted a survey for students about lifestyle habitats such as eating habits and monitored skin conditions to study the effects of the eating habit on skin conditions. This eating habit survey showed that n-6/n-3 ratio is on the increase due to the excessive consumption of fat and the insufficient intake of fish. Furthermore, there was a trend that there was a lack of many nutrients. For the relationship between nutrient uptake and skin conditions, there was a significant positive correlation between the take of n-6/n-3 and transepidermal water loss (TEWL), and the consumption of alachidonic acid and icosatrienoic acid and the extent of the incidence of acne. These results suggested that nutrient component taken from eating affects skin conditions. In addition, it is indicated that n-3 or n-6 fatty acid is strongly related to the barrier function of the horny cell layer and the incidence of acne.
著者
鈴木 杏子 仲河 優里 西 まみか 野田 裕美子 高岡 素子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.95, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 精進料理とは禅寺で修行に励む僧侶たちが食べる、殺生を禁じた粗末な食事で、動物性の食材を一切使用しない伝統的な料理である。現在、「精進料理」には2つの側面があり、1つはお寺に伝承され、調理される修行僧の食事と法要後に食される料理であり、もう一つは禅寺の近くに精進料理専門店で発達している。本研究ではカロリー控えめでヘルシーであると思われている精進料理メニューの実態調査を行い、現代における精進料理の栄養について明らかにし、また精進料理の食味に及ぼす油の影響について調べた。 【方法】 1.京都の精進料理専門店3店を選び、1食分のメニューを合計5点注文し、各食材の質量を測定、汁物の塩分濃度を測定した。栄養摂取量は各食材の重量を基に栄養価計算ソフト(エクセル栄養君Ver.4.0)を用いて解析した。2. 油脂の使用が精進料理の食味に及ぼす影響を知るために、3種類のメニューについて油添加・油無添加で調理し、官能検査を行った。 【結果および考察】 1. 1食分を成人女性の昼食と見積もり、各成分について食事摂取基準量の30%を基準量とした。エネルギーは967kcalで基準量の約1.57倍、食塩は6.4gで基準量の2.67倍であり、高カロリー、高塩分であることが明らかとなった。しかしながらPFCバランスは良好であり、ほとんどのミネラルやビタミン、食物繊維は基準量以上摂取できていた。 2. けんちん汁ではほとんどの項目で油添加の方が好ましいという評価が得られた。油無添加では塩味が強く感じられ、油の使用により味がまろやかになることが示唆された。切干ダイコンでは、全ての項目で油添加の方が好ましいという評価であった。白和えは油の有無による顕著な違いは見られなかったが、油を加えることによって塩味が抑えられる点では同様な傾向を示した。
著者
笠松 千夏 高岡 素子 戸田 貞子 飯島 久美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.188, 2006 (Released:2008-02-28)

目的 精進料理は動物性食品を一切使用しないことから、カロリー控えめでヘルシーであると思われている。精進料理メニューの実態調査を行い、精進料理の栄養と食味の特徴を明らかにすることを目的とした。方法 鎌倉に店舗を構える精進料理専門店で季節のメニューを注文し、食品ごとの重量を測定した。栄養価計算はエクセル栄養君にて行い、50-69歳女性、身体活動レベルIIの1日の推奨量を基準に、各専門店の1食分のメニューの栄養バランスを検討した。また、白和え、きんぴらごぼうを”炒め”および”ゆで”の2通りで調製し、官能評価により香り、塩味、甘味の強さ、食感の好ましさについて比較した。結果 調査した専門料理店メニュー1食分のエネルギーは、876-1222kcalであり、エネルギー比率ではたんぱく質の割合が少なかった。不足している栄養素はビタミンDとビタミンB12であった。野菜の使用量は150-360gと多かった。白和えは具材を油で炒めることにより塩味を強く感じ、食感が好まれた。きんぴらごぼうは油で炒めた方が、甘味を強く感じた。精進料理メニューは食味の点で単調にならないよう、野菜類のうまみを存分に引き出すためにだしと油を効果的に使用した調理であることが確認できた。
著者
高岡 素子 京藤 智子 Motoko TAKAOKA Satoko KYODO
雑誌
女性学評論 = Women's Studies Forum
巻号頁・発行日
no.35, pp.21-37, 2021-03-20

月経前に現れる心身の不調は月経前症候群(premenstrual syndrome:以下PMS)と呼ばれている。PMS の特徴は月経前の黄体期後期に感情的症状や身体的症状の変化が出現し、月経開始とともにそれらの症状が減退、消失することである。PMS が重度の場合、生活の質を著しく低下させ、本人だけではなく彼女らの家族や仕事などの生活環境にも影響を及ぼすため社会的にも大きな問題であると考えられている。PMS の原因は過剰なエストロゲン、黄体ホルモンの欠乏またはエストロゲンと黄体ホルモンの比率の変化の関与が示唆されているが、PMSと性ホルモン濃度との関係については未だ解明されていない。よって本研究では、健常な女子大学生を対象にアンケートによりPMS 症状の程度を測定し、対象者の唾液から性ホルモンおよびストレス誘導ホルモンを解析し、PMS の程度と各種ホルモンとの関係について調べた。その結果、PMS 症状の強群は弱群と比較し、性周期を通して性ホルモンが高い値で推移し、とりわけ排卵期のテストステロンは強群で有意に高い値を示した。またストレス誘導ホルモンについては排卵期および黄体期で高い傾向を示した。これらのホルモンの動態が PMS 症状を重症化させる要因であると考えられた。