著者
山田 順子 鬼頭 美江 結城 雅樹
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.18-27, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
40
被引用文献数
1 11

本研究の目的は,友人関係および恋人関係における親密性の文化差の原因の検討である.近年の国際比較研究は,北米人の方が東アジア人よりも,対人関係のパートナーに対して感じる親密性が高いことを示してきた.本研究は,社会生態学的視点に基づき,この文化差をもたらす原因を,北米社会における対人関係選択の自由度,すなわち関係流動性の高さに求めた.この仮説を検討するため,日本人とカナダ人参加者を対象に,親友・恋人および最も親しい家族に対する親密性,また参加者を取り巻く身近な社会環境における関係流動性の認知を尋ねた.その結果,まず先行研究と一貫して,日本人よりもカナダ人の方が,親友や恋人に対してより強い親密性を感じていた.さらに,理論仮説と一貫して,親友に対する親密性の日加差は,対人関係選択の自由度によって有意に媒介され,自由度が高いほど親密性が高いことが示された.
著者
鬼頭 美江 前田 友吾
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20404, (Released:2021-11-30)
参考文献数
62
被引用文献数
2

In the first year of the pandemic, the number of COVID-19 cases per 100,000 population in Japan is not as high as in other countries. Among the factors that may be related to infection rates, we focus on a socioecological factor called relational mobility. In this article, we argue that while low relational mobility in Japan suppressed the spread of COVID-19 at the beginning of the outbreak, it could actually prevent the full containment of the virus. In low relational mobility societies (e.g., Japan), people can engage in physical distancing relatively easily and tend to “monitor” others’ compliance. These behaviors helped suppress the spread of COVID-19 in Japan during the outbreak. On the flip side, the emphasis on relationship harmony could prevent the virus from being fully contained in low relational mobility societies as people fear being identified and avoid taking a PCR test or cooperating in contact tracing. Thus, monitoring the behaviors of nonconformists by the public in low relational mobility societies could actually work against controlling the virus.
著者
鬼頭 美江 佐藤 剛介
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.187-194, 2017 (Released:2017-04-27)
参考文献数
43
被引用文献数
3 3

良好な恋愛関係や夫婦関係を築くことは,人々の幸福感や精神的・身体的健康に影響を与えることが示されており,こうした関係の良好さや満足感を高める要因の検討が,これまで多く行われてきた。その要因の一つとして,自己の社会的価値である自尊心が挙げられる。自尊心の高い人,および自尊心の高い恋人や配偶者を持つ人ほど,恋愛関係や夫婦関係により満足していることが示されている。しかし,これらの知見は主に個人主義が優勢である北米を中心に示されており,集団主義が優勢であるとされる日本においても再現されるかは自明ではない。そこで本研究では,日本人の夫婦107組に質問紙を配布し,個人の自尊心が自己および配偶者の夫婦関係満足感に与える影響について,APIMを用いて検証した。その結果,夫婦ともに自尊心が高い人ほど,夫婦関係に対してより高い満足度を感じていた。さらに,配偶者の自尊心が高い人ほど,自己の夫婦関係満足感が高かった。こうした自尊心と夫婦関係満足感との関連には,性別や年齢による有意な差異は見られなかった。したがって,日本においても,個々の自尊心は,自己の夫婦関係満足感だけでなく,配偶者の夫婦関係満足感にも影響を与えることが示された。