著者
相馬 敏彦 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-25, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
41
被引用文献数
4 2 1

本研究において我々は,排他的なサポート関係に影響する要因について検討した。 一般的信頼感(山岸,1998)と,進化論的な理論的枠組みとから,我々は次のように予測した。恋愛関係に所属する者は,個別的な信頼感の影響を統制しても,関係の外部からのサポート取得を抑制するだろう。また,これらの関連は,一般的信頼感の低い者に顕著に認められるだろう。 以上の仮説を検証するために,我々は136人の大学生を対象とした調査を行った。仮説は支持された。一般的信頼感の高い者は,個別的な信頼感を発展させた恋愛関係であっても,その外部にサポート取得することができた。同様の結果は,個別的な信頼感の高い,もしくは低い異性との友人関係では認められなかった。これらの結果は,一般的信頼感の低い者が,恋愛関係に所属したときに,多様なソーシャル・サポート・ネットワークを形成することが困難であることを示唆する。最後に,所属する関係によって,資源交換のされやすさが異なる可能性について考察された。
著者
相馬 敏彦 浦 光博
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.131-140, 2010

Romantic partners often consider their relationship to be distinct from their other relationships. Moreover, it has been shown that this perceived distinctiveness promotes cooperative orientation while individually suppressing uncooperative orientation. How does this perceived distinctiveness of romantic partners affect their adaptation? We conducted a panel survey on two hundred and eighty-five married and unmarried partners. Path analysis and supplemental analyses revealed the working of two independent processes. In one process, the more distinct romantic partners perceive their relationship to be, the more cooperative orientation they can have and the less they suffer violence at the hands of their partner. In the other process, it was found that the more distinct romantic partners perceive their relationship to be, the less uncooperative orientation they can have and the more they suffer violence at the hands of their partner. Further, from the results obtained from this study, we discuss the originality of this study and prevention policies related to domestic violence.
著者
相馬 敏彦 西村 太志 高垣 小夏
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-37, 2017-07-01 (Released:2017-04-10)
参考文献数
34

攻撃性の強い人はどのような相互作用状況でも攻撃的に振る舞うだろうか。先行研究は,親密な関係を対象に,攻撃性と攻撃行動との関連が,挑発的な行為がありかつ自己制御資源に乏しい場合に顕著となることを示している。そこで大学生64名を対象とする相互作用実験を行った。参加者は攻撃性に関するアンケートに回答後,協調的もしくは非協調的な相手とテレビゲームを行った。その後注意資源を要する計数課題を行い,最後にゲームの相手に与えられることになる嫌悪的飲料の個数を選択した。階層的二項ロジスティック回帰分析の結果,制御資源が枯渇しやすく(制御課題に時間を要し),かつ相手から挑発的行為(非協調的な相手)があった場合に,攻撃性は嫌悪的飲料の個数を予測した。これらの結果は,先行研究の知見が,親密な関係からそうでない関係へと一般化可能であることを示している。
著者
相馬 敏彦 礒部 智加衣
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.165-174, 2017 (Released:2017-04-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

二者関係の中で,接近動機をもつ個人は他者との相互作用にポジティブな結末を求め,回避動機をもつ個人はネガティブな結末を避けようとする。このような社会的動機が動機保持者のもつ関係評価や感情に影響することはこれまでに示されているが,相互作用相手の動機に影響するかどうかは未だ明らかではない。だが先行研究の知見は,接近動機の強い個人によって展開された相互作用が,相手の接近動機を同調させる可能性を示唆している。そこで我々は接近動機の強い個人が接近的相互作用を展開することで(個人内過程),相手もより強い接近動機をもつようになる(個人間過程)と予測した。2011年の4月と5月の二回にわたって日本人大学生を対象とするパネル調査を行った。経時的actor–partner相互作用モデルの結果は,接近動機における収束プロセスを明らかにした。このことは,親しい二者関係の相互依存プロセスが,動機の転換だけでなく動機の強化による可能性を示唆していた。
著者
相馬 敏彦 山内 隆久 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.75-84, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
36
被引用文献数
5 2

本研究では,恋愛・結婚関係における排他性が,そのパートナーとの葛藤時への対処行動選択に与える影響が検討された。我々は,恋愛・結婚関係における排他性の高さが,関係での葛藤時に,個人にとって適応的な対処行動の選択を抑制すると予測した。調査は,恋愛・結婚パートナーを有する社会人108名を対象に行われた。被験者は,パートナーとそれ以外の9の対象からの知覚されたサポート尺度と,パートナーとの葛藤時の対処行動尺度に回答した。分析の結果,予測通り,パートナー以外のサポート源からもサポートを知覚できた排他性の低い者は,交際期間の長い場合には建設的に対処し,一方排他性の高い者は,交際期間が長い場合に建設的な対処行動を抑制しやすいことが示された。この結果から,排他性がそのメンバーの不適応を導く可能性が論じられた。
著者
相馬 敏彦 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-16, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
2 1 2

本研究では,親密な関係における特別観が関係の相手に対する行動にどのような影響を及ぼすのかを検討した。大学生474名を対象とする調査研究を行った。親密な関係での特別観は関係内での協調的な志向性を高め,他方非協調的な志向性を抑制することが示された。さらに,特別観が協調的・非協調的志向性に及ぼす影響は,相互依存諸変数(代替肢の質,満足度,投資量,コミットメント)が志向性に及ぼす影響と独立したものであることも示された。これらの結果より,親密な関係に対して強い特別観をもつ者は非協調的な行動がとれないことが示唆された。親密な関係における特別観がその当事者に不適応を生じさせる可能性について議論した。
著者
相馬 敏彦 浦 光博
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-25, 2007
被引用文献数
2

本研究において我々は,排他的なサポート関係に影響する要因について検討した。<br> 一般的信頼感(山岸,1998)と,進化論的な理論的枠組みとから,我々は次のように予測した。恋愛関係に所属する者は,個別的な信頼感の影響を統制しても,関係の外部からのサポート取得を抑制するだろう。また,これらの関連は,一般的信頼感の低い者に顕著に認められるだろう。<br> 以上の仮説を検証するために,我々は136人の大学生を対象とした調査を行った。仮説は支持された。一般的信頼感の高い者は,個別的な信頼感を発展させた恋愛関係であっても,その外部にサポート取得することができた。同様の結果は,個別的な信頼感の高い,もしくは低い異性との友人関係では認められなかった。これらの結果は,一般的信頼感の低い者が,恋愛関係に所属したときに,多様なソーシャル・サポート・ネットワークを形成することが困難であることを示唆する。最後に,所属する関係によって,資源交換のされやすさが異なる可能性について考察された。<br>
著者
大上 麻海 相馬 敏彦
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.129-138, 2016 (Released:2019-08-05)

This study examined the moderating effect of outcome interdependence (individual or team rewards) on taking charge of prevention-focused employees. Employees focusing on prevention are relatively averse to taking charge because they are likely to be apprehensive about the risk involved in it. We hypothesized that even prevention-focused employees would engage in taking charge by working for team rewards, which would alleviate their anxiety about making mistakes. The following were the major findings: 1) When employees perceive the necessity for an organizational change due to a change in the external environment, those focused on prevention do not engage in taking charges; 2) However, if employees work toward team rewards, they do engage in taking charges. We discuss the implications of our research findings’ for the theory and practice of effective organizational management.
著者
相馬 敏彦 山内 隆久 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.75-84, 2003
被引用文献数
2

本研究では,恋愛・結婚関係における排他性が,そのパートナーとの葛藤時への対処行動選択に与える影響が検討された。我々は,恋愛・結婚関係における排他性の高さが,関係での葛藤時に,個人にとって適応的な対処行動の選択を抑制すると予測した。調査は,恋愛・結婚パートナーを有する社会人108名を対象に行われた。被験者は,パートナーとそれ以外の9の対象からの知覚されたサポート尺度と,パートナーとの葛藤時の対処行動尺度に回答した。分析の結果,予測通り,パートナー以外のサポート源からもサポートを知覚できた排他性の低い者は,交際期間の長い場合には建設的に対処し,一方排他性の高い者は,交際期間が長い場合に建設的な対処行動を抑制しやすいことが示された。この結果から,排他性がそのメンバーの不適応を導く可能性が論じられた。<br>