- 著者
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赤沢 典子
鷹觜 テル
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.12, pp.846-853, 1984-12-20 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 22
タンパク質摂取量とVEの有無が生体, とくに肝機能に及ぼす影響を明らかにする目的で, 離乳直後の幼若ラットを用い, 4群に分けて, それぞれ (1) 20%カゼイン・VE添加群, (2) 20%カゼイン・VE欠乏群, (3) 10%カゼイン・VE添加群, (4) 10%カゼイン・VE欠乏群とし, 9~13週間飼育し, 溶血率, 血清中の過酸化脂質, トコフェロール, GOT, GPT, A/G比, CPKおよび尿中クレアチンを測定するとともに, 肝臓の組織学的検索を行い, 次の結果を得た.1) 10%カゼイン・VEを与えた群のラットの発育は著しく遅滞したが, 体重当りの組織重量には大きな変化は認められなかった.2) 10%カゼイン・VE欠乏群のラットは実験開始後5週ごろから急死するものが現れた.3) VE欠乏群では, 溶血率の上昇, 血清トコフェロールの著しい減少と血中および肝臓の過酸化脂質の著しい増加が認められた.摂取タンパク量の違いによる変化は少ないが, 低タンパク・VE欠乏群の死亡直前のラットではとくに高い値を示した.4) GOTおよびGPT値はVE欠乏群で高い値を示し, 低タンパク・VE欠乏群ではさらに増加した.A/G比は, VE欠乏群, 低タンパク群とも著しく低い値を示した.5) VE欠乏群の肝臓では, 肝細胞や星細胞にリポフスチンやライソゾームの蓄積が認められた.低タンパク群では肝細胞に著しい脂肪化が認められ, 高度の脂肪肝を呈した.低タンパク・VE欠乏群でに肝細胞の脂肪化と壊死が認められた.低タンパクとVE欠乏によって死亡したラットおよび死亡直前のラットでは, 肝臓に広範な壊死巣が認められた.したがって低タンパク・VE欠乏による死亡原因は広範な食餌性肝壊死によるものと考えられる.