著者
Heinrich Patrick
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.112-118, 2011-10

日本語研究の一環ではない、独自の分野としての琉球言語学は、最近になって生まれたばかりだ。そのため、琉球社会言語学のスタートも遅れたことは否めない。これまでの研究対象は、主に言語危機度の測定、言語シフト、および琉球諸島の言語編制の変化に限られる。よって、未だに研究されていない重要な分野が多数あると言える。琉球諸語の維持と復興のためには、琉球社会言語学のさらなる展開が急務であり、そのためには記述言語学と言語維持運動が、より密接な協力体制を築いていくことが不可欠である。
著者
原 聖 藤井 毅 大黒 俊二 高田 博行 寺尾 智史 三ツ井 崇 名和 克郎 包 聯群 石部 尚登 HEINRICH Patrick 荒木 典子 岩月 純一 バヤルメンド クルマス フロリアン デフラーフ チアド 黄 行 フフバートル カムセラ トマシュ 中江 加津彦 落合 守和 オストラー ニコラス プルブジャブ スマックマン ディック 田中 克彦 許 峰 徐 大明 珠 麗 彭 韃茹翠
出版者
女子美術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本科研の重要な成果は、(1)書き言葉生成時にある程度の標準化が行われている、(2)欧州の初期標準規範においては、①文字化と②詩歌など韻律規則を伴う書記規範の生成の2段階を経る、(3)ラテン語文化圏でも漢字文化圏でも、権威をもつ文字をそのまま採用する場合と、その変種的な創作を行う場合がある、(4)欧州における新文字の生成は紀元前1千年紀から紀元後1千年紀であり、(5)漢字文化圏における漢字に類する新文字の生成は、やや遅れ、紀元後5世紀以降、表音文字の中東からの流入以降、中央集権の力が比較的弱まる宋王朝(10-12世紀)にかけてである。
著者
石原 昌英 HEINRICH Patrick
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

ハインリヒは与那国島における危機言語記録保存のためのフィールドワークを2回実施した。1回目は祖納集落において農業と祭に関する言語生態、2回目は同集落において自然に関する言語生態、久部良集落において漁業に関する言語生態を記録した。また、ハインリヒ・石原で記録されたビデオを分析し、それに基づいてハインリヒが祖納集落に於いて研究協力者(インフォーマント)と一緒に編集・注釈作業を行った。記録保存はほぼ終了し、マックスプランク研究所での公開に向けての編集・注釈作業を本格化させている。これらの作業と並行して、石原とハインリヒは、与那国島における言語の存続性と危機度に関するアンケート調査を実施した。調査データは、ユネスコの危機言語保護プログラムに関する専門家部会が2003年に提唱した評価基準を参考にハインリヒが分析し、2010年3月5日に東京外国語大学で開催された第2回琉球継承言語研究に関するワークショップでハインリヒが「与那国語の存続性と危機度」を発表した。なお、石原は「国頭譜の存続性と危機度」を発表した。ハインリヒと石原は言語生態、言語政策、危機言語に関する発表を複数の学会・研究会等で行った。ハインリヒが杉田優子と共著で『社会言語科学』第11巻第2号(2009年2月)に発表した「危機言語記録保存と言語復興の統合へ向けて」が社会言語科学会の徳川宗賢賞優秀賞を受賞し、2010年3月の同学会で受賞記念講演を行った。石原・ハインリヒはこれまでの研究成果を地域に還元する目的でワークショップ「しまくとぅばと経済」を企画し、言語生態を維持するために地域言語を積極的に活用する方策を議論する機会を提供した。