著者
佐々木 弥生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.135-139, 2014 (Released:2016-04-05)

私が当財団とかかわることとなったのは,1998年に厚生省医政局研究開発振興課に在籍し,当財団の所管課の担当者の1人であったこと,1999年度補正予算において創薬知的基盤施設・設備整備事業(現在は医薬基盤研究所(以下,基盤研)難病・疾患資源研究部泉南資源研究施設)を当財団の事業として実施することとなったことに始まる.その後,公益法人制度の見直し,厚生労働省の事業仕分けなど目まぐるしい環境の変化があったが,本稿では当財団が創立時から継続してきた厚生労働省関係の国立研究機関との官民共同研究事業,創薬にかかわる調査事業,技術移転事業,動物実験実施施設認証事業を中心に紹介する.
著者
佐藤 文治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.127-131, 2014 (Released:2016-04-05)
参考文献数
5

次世代天然物化学技術研究組合(略称:天然物組合)では,天然物,特に微生物産物からの創薬を長年にわたって手がけてきた大手製薬企業等の組合員企業が,自社で所有している天然物ライブラリーの組合員企業間での相互利用およびアカデミアへの普及拡大(以下,総称して「天然物ライブラリーの相互利用」という)を行い,創薬の研究開発効率を上げようという取り組みを行っている.ライブラリーの作成と維持のような人手と手間がかかる創薬基盤的な技術開発を各社で協力して行い,日本では縮小傾向にある天然物からの創薬を再度活性化させたいという狙いがある.本稿では,主に天然物組合におけるライブラリーの相互利用について述べる.
著者
飯倉 仁
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.34-38, 2014 (Released:2016-02-01)
参考文献数
14

低分子医薬品に求められる性質として,薬効,物理化学的性質(physicochemical property:PCP,水溶性や膜透過性,代謝安定性などの経口投与のために必要な性質群),安全性(変異原性,CYP阻害,一般毒性など)などが挙げられる.これらの性質のうち1つでも基準値に満たないと,医薬品として世に出ることは難しい.低分子創薬の医薬品最適化では,化学修飾を施して1つの性質を改良させると他の性質が悪化して基準値を下回ってしまうことが頻繁に起こる.創薬化学者は多くの時間を,あと一歩のところで臨床開発に値する化合物創出に至らないジレンマとの格闘に費やしている.このようなジレンマを解決する手法として,リード化合物の構造変化を最小限に留める化学修飾の価値は高い.構造変化が小さいため,特定の性質が改良された際の,残りの性質への影響が小さくなる可能性が高いからである.フッ素置換(炭素―水素結合の炭素―フッ素結合への置き換え)は,導入するフッ素原子の近傍に存在する官能基(例えばアミノ基)との相互作用を無視できる場合には,リード化合物の立体的構造変化を最小に留めると同時に,分子全体の極性変化も限定された化学修飾である.本稿では,この長所を活用する手法として,簡便なフッ素スキャン法※1の開発を述べる.本法では,リード化合物の様々な位置にランダムにフッ素原子を導入して最適位置を容易に探索することが可能になる.また,フッ素原子導入の効果を述べるとともに,窒素置換(炭素原子の窒素原子への置き換え)をランダムに行った窒素スキャンとの効果の対比を述べる.窒素置換は立体的な構造変化が小さい点でフッ素置換と類似する一方で,分子全体の極性変化がより大きい点でフッ素置換と対照的である.我々は,フッ素スキャンと窒素スキャンの2つの化学修飾を軸にして,臨床開発化合物1(CH5126766/RO5126766)を創出した.本化合物は,500種類存在するキナーゼの中から,Raf/Ras/MEK/ERK経路を構成する2つのキナーゼであるRafとMEKの機能を特異的に阻害する.
著者
尾島 巌
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.11-13, 2014 (Released:2016-02-01)

ファルマシア委員会より本特集号のコラム「挑戦者からのメッセージ」に執筆して欲しいとの依頼があった.このコラムの前例を幾つか送っていただいたが,どうも定年退官時の著名教授あるいは功成り名遂げた社長が研究人生を振り返って,若い世代に激励のメッセージを送るという趣旨のようである.私は68歳になったが,米国の大学には定年がないので完全に現役で,大学院生,博士研究員達と研究教育に励んでいる.しかし考えてみれば,私も若い世代に何かメッセージを残す歳になったのかもしれない.今春米国化学会のフッ素化学賞を受賞したので,この特集号のコラムにちょうどよいと考えられたのであろう.どの程度お役に立つかは分からないが,まず有機フッ素化学のバイオメディカル分野での現状について簡単に述べ,その後,30年以上にわたる私とフッ素化学との触れ合い,研究テーマ,研究戦略の変遷等について述べたい.
著者
阿部 郁朗
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.509-511, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
5

今後の医薬資源の開発について考えた場合,多様性に富む化合物群をいかに効率よく生産し,創薬シードとして提供できるかが鍵になる.学生時代,モルヒネやペニシリンなどの薬用天然物に魅せられて以来30年,一貫して天然物の生合成研究に取り組んできた.生物がどのようにしてあの複雑で多様な二次代謝産物の構造を作り上げるのか? 生物のものづくりの仕組みを解き明かし,更に利用,改変することで創薬に生かすことができれば,との思いからである.
著者
村上 隆 佐野 元治
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.1087-1092, 1980-11-01

"プロパー"と言えば, 薬の売り込み要員としての印象が強かった.開業医さんのもろもろの御用聞きやゴルフのお相手なども仕事の大事な部分であった.今や, 医薬品の有効性・安全性の確保の第一線におけるにない手として, "医薬情報担当者"という名に変った.西ドイツにおいてはその資格化が行われた.現在わが国では, このような業務にたずさわる薬学出身者は全体の25%を占めるにすぎない.本来このような仕事は, 薬学領域の中で極めて重要な位置にあること, それにふさわしい人材を養成することは薬学の使命であることなどをよく考えてみたい.

1 0 0 0 OA 結膜炎

著者
内尾 英一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.196-200, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
2

結膜(conjunctiva)は眼表面を覆う粘膜組織で,角膜以外の部分を指す.球結膜(bulbar conjunctiva)と瞼結膜(palpebral conjunctiva),その移行部である結膜円蓋(conjunctival fornix)から成っている.表面は涙液で保護されている重層扁平上皮組織であり,上皮には結膜上皮細胞以外に粘液を分泌する杯細胞がある.上皮下には血管や各種の細胞が豊富に存在する.眼球とは疎に結合し,眼球を保護し滑らかに運動させる機能がある(図1).結膜は眼表面(ocular surface)を形成し,外界に直接接している部位である.そのため感染症やアレルギーなどの炎症を生じやすい特徴があり,臨床所見は様々である.本来動物は海の中で進化していたが,両生類以降陸上で生活をするようになると,眼表面の乾燥を防ぐために涙液を持つようになり,さらに眼瞼も陸上生活に対応して備わった.魚類には眼瞼はない.瞬目(まばたき)をすることにより乾燥を防ぎ,涙液を行き渡らせることができるが,これは進化の結果として獲得したものである.しかし現代の生活では様々な要因で乾燥しがちであり,ドライアイも増加している.結膜炎は結膜の炎症性疾患であるが,原因によりアレルギー性結膜疾患と感染性結膜炎とに大別される.すなわち,非感染性結膜炎と感染性結膜炎である.
著者
小泉 裕久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.246-247, 2016

キャベツ汁中から発見されたメチルメチオニンスルホニウムクロリド(MMSC)を配合した総合胃腸薬「キャベジンコーワ」は、1960年2月の発売から55年が経ち、現在では8代目となる「キャベジンコーワα」を販売するに至った。古くて新しい胃腸薬として、これからも生活者の皆さまの期待に応えていきたい。