著者
萬代 大樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.434-434, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
3

近年,有機分子触媒の分野は著しい発展を遂げており,遷移金属触媒と並ぶ重要な研究分野となっている.しかし,高いターンオーバー数(TON)あるいはターンオーバー頻度(TOF)を示す高活性有機分子触媒はいまだ報告例が少ないのが実情である.Songらは,100ppm(=0.01mol%)以下の触媒量でもシリル化による第二級アルコールの速度論的光学分割反応が円滑に進行することを見いだしたので,本稿で紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Müller C. E., Schreiner P. R., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 50, 6012-6042 (2011).2) Park S. Y. et al., Nat. Commun., online 18 Jun. 2015, doi : 10.1038/ncomms8512.3) Zhao Y. et al., Nature, 443, 67-70 (2006).
著者
吉永 智一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.565-569, 2017 (Released:2017-06-01)
参考文献数
15

エイズはHIVが感染することにより引き起こされる疾患であり、未だ世界的に深刻な感染症である。我々はインテグラーゼ阻害剤として世界で最初に臨床試験に進んだS-1360を創製したが、ヒトでの代謝が早く、薬効を確認できなかった。しかし、その過程で学びがあり、特に、「2メタル結合ファーマコフォアモデル」を見出し、多種多様な化合物をデザインし、GSKとの共同研究の中でドルテグラビルを創製した。本稿では、ドルテグラビル創製までの苦難の道のりを振り返りたい。
著者
吉永 智一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.565-569, 2017

エイズはHIVが感染することにより引き起こされる疾患であり、未だ世界的に深刻な感染症である。我々はインテグラーゼ阻害剤として世界で最初に臨床試験に進んだS-1360を創製したが、ヒトでの代謝が早く、薬効を確認できなかった。しかし、その過程で学びがあり、特に、「2メタル結合ファーマコフォアモデル」を見出し、多種多様な化合物をデザインし、GSKとの共同研究の中でドルテグラビルを創製した。本稿では、ドルテグラビル創製までの苦難の道のりを振り返りたい。
著者
今野 博行
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.452-452, 2014

天然物由来の医薬品リード化合物が枯渇していると言われて久しい.重要な標的の1つであるケモカインレセプター阻害剤に限ると,天然物由来阻害剤は海綿由来異常アミノ酸含有デプシペプチド(エステル結合を持つぺプチド)類,アニバミン類のみではないだろうか.しかし,その阻害能は強力であり,これらの全合成,構造活性相関研究は,いまだ魅力的である.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Pelay-Gimeno M. et al., Marine drugs., 11, 1693-1717 (2013).2) Zhang F. et al., J. Org. Chem., 76, 7945-7952 (2011).3) Albericio F. et al., Nature Commun., 4, 2352 (2013).4) Coellp L. et al., Int. Appl. Pat., WO2010/070078A1 (2010).
著者
笠松 真吾 守田 匡伸 赤池 孝章
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.210-214, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
23

活性酸素種(ROS)は、非特異的化学修飾をもたらす毒性因子としての側面の他に、生理的な細胞内シグナル(レドックスシグナル)分子としての機能を持つ。ROS・レドックスシグナルはその下流で生じる親電子物質を介して巧妙に制御されている。最近、新規レドックスシグナル制御因子として活性イオウ分子種が同定された。活性イオウ分子種によるレドックスシグナル制御機構の解析は、酸化ストレスの関わる疾病の新規予防・治療戦略の開発に寄与すると期待される。
著者
湯本 史明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.442_3-442_3, 2014 (Released:2016-06-21)

生体分子を急速に凍結させ,低温に保ったまま電子顕微鏡で解析する手法のことである.染色や固定をするわけではないことから,生体分子をそのまま観察することが可能となる.ここ最近は,検出量子効率の高い検出器やソフトウェアの開発をはじめとした解析技術の発展が相まって,比較的短期間に高分解能で単粒子構造解析を行った例が次々に報告されてきている.
著者
藤ノ木 政勝
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.470-470, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
5

約20年前にDevelopment誌に掲載されたViscontiらによる報告で,精子受精能獲得に伴って様々な精子タンパク質がチロシンリン酸化を受けること,そして受精能獲得とチロシンリン酸化は重炭酸イオン(ある種のアデニル酸シクラーゼを活性化してcAMPを産生させる)およびCa2+による調節を受けることが示された.この報告をきっかけに,チロシンリン酸化は受精能獲得の唯一の生化学マーカーとして広く利用され,受精能獲得の阻害や惹起・促進に応じてリン酸化レベルが変わることから精子受精能獲得のkey eventとされるようになった.受精能獲得(capacitation)とは,狭義にはほ乳類の精子のみに認められる現象で,精液中の精子は卵子とただ共培養しても受精できないが,交尾後に雌性生殖器内より採取した精子は受精可能であるという観察結果をもとに1950年代初頭に提唱された. 重炭酸イオン刺激等により,精子の受精能獲得がin vitroで誘導可能になって以来,その具体的な責任応答が探索され,①精子頭部で起こる先体反応,②尾部で起こる超活性化,③精子細胞膜からのコレステロールの流出と流動性の増加,④精子タンパク質のチロシンリン酸化などが発見されたが,単独因子で十分なのか,全てが必要であるかについては議論がある.チロシンリン酸化は受精能獲得のkey eventであるとされながらも,これを起こす責任酵素はこれまで分かっていなかった.最近,Viscontiのグループは,本現象の責任酵素がFERとよばれる非受容体型チロシンキナーゼの精巣特異的アイソフォーム,FERTであることを発見した.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Visconti P. E. et al., Development, 121, 1129–1137(1995).2) Visconti P. E. et al., Asian J Androl., 13, 395-405(2011).3) Alvau A. et al., Development, 143, 2325–2333(2016).4) Chung J. J. et al., Cell, 157, 808-822(2014).5) Tateno H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 110, 18543-18548(2013).
著者
岩村 武勇
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.217-220, 1972-04-15
著者
宗像 達夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.436-436, 2016

梅雨の季節も近づく中,青や赤といった様々な色彩で私たちの心をそっと和ませてくれる身近な花といえば,アジサイ(Hydrangea macrophylla)だろう.アジサイの色は自生している土壌の酸性度によって変化するが,これは酸性土壌において土壌中にアルミニウムイオン(Al3+)が溶け出し,それが根から吸収されることに起因する.またアジサイの様々な色彩はアントシアンに由来するものであるが,赤色色素としては着色料などに広く利用されているものの,青色色素としては安定性の問題もあり使用が限定的である.本稿では,アジサイの青色色素の多様性の解明について積極的に取り組んでいるOyamaらの研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Oyama H. et al., J. Agri. Food Chem., 63, 7630-7635 (2015).2) Takeda K. et al., Phytochemistry, 24, 1207-1209 (1985).3) Takeda K. et al., Phytochemistry, 24, 2251-2254 (1985).