著者
金岡 祐一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.354-354, 2014 (Released:2016-06-01)

無限ともいえる生命科学の将来に対し「有機化学システム」応用の可能性も,限りなく有望である.最近のこの分野の代表例として,畑中保丸博士は「光アフィニティーラベリングの画期的高速化と生命科学上のブレークスルーへの応用」研究により,平成26年度日本薬学会賞を受賞された.心からお祝いするとともに,推薦者として同氏の業績と併せて,アメリカで生まれ日本で育った「光アフィニティーラベリング」を概説する.
著者
迫 和博
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.403-405, 2001-05-01
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.151-153, 2014

世の中,統計ブームである.2012年10月,トーマス・ダベンポートがハーバード・ビジネス・レビュー誌で「データサイエンティストは21世紀で最もセクシーな職業である(Data Scientist:The Sexiest Job of the 21st Century)」というセンセーショナルな記事を書いて以来,新聞やニュースを見てもビッグデータ,データサイエンティスト,統計(なかには,データねつ造,改ざんといった好ましくない報道もあるが)といった言葉を目にし,耳にしない日はないと言えるだろう.書店を覗いても,ビジネス誌で「統計」の特集が幾つも組まれているし,それまで一部の専門家だけのものであった「統計」の本がベストセラーになったりしている.ややブームが行き過ぎの感もあるが,データを扱う業務に携わっている立場からすると,脚光が当たるのは有難いことには違いない.こうやって見てみると,我々の身の回りには「統計」「データ」に関する情報が満ち溢れている.しかし,多くの人がそれらの言葉や情報を正しく理解できているとは言い難い.ビッグデータは無限の可能性を持った宝の山であるかのようにもてはやされ,データサイエンティストはハリー・ポッターのように玉石混交の巨大データから,いとも簡単にダイヤモンドのように有用な情報を掘り出すことができるかのような漠然とした幻想が世の中に充満している.もちろん,マスコミの情報操作も(意図するか否かは別として)多分にあるし,不親切な公的統計の提供方法などにも問題があることは確かである.なお,府・行政の名誉のため一言申し添えるならば,安倍内閣の日本再興計画(2013年6月14日公表)の1項目であるIT戦略で,一般国民が公的統計データをより使いやすくするための取り組み(どんな情報がどこにあるかというインデックス作りと検索窓口の一本化)を始めており,2014年度からはそれが実現化しはじめるはずである.常に物事を悲観的に見る必要はないが,楽観的に見すぎることも危険なことである.正しい統計リテラシーを身に付け,マスメディアに流れるデータや情報を冷静に客観的に見つめ分析することは,現代に生きる我々には必要不可欠な常識といってもよいのかもしれない.このたび縁あって,ファルマシア誌から「6 回の予定で,気楽に読める統計に関する話題提供を」ということで依頼を受けた.本誌を目にされる大方の読者は統計にはあまり馴染みがなく,数式アレルギーの方も少なくないと拝察する.著者自身も正直なところ,好きか嫌いかと問われれば,数式は苦手な方である.そのため,タイトルも「数式なしの統計のお話」とし,データを見る目を養うヒントや,統計にかかわりを持った人物のお話などを中心に紹介することにした.本誌の専門記事に目を通したあとで気分転換の気軽な気持ちで読んでいただき,多少でも統計に興味を抱いていただければ望外の喜びである.
著者
上田 浩
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.575, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
2

後天性免疫不全症候群(AIDS)は,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされる.HIVへの感染により免疫不全が生じ,その結果,日和見感染やがんなどを発症して最終的には死に至る.AIDSの発見当初から現在に至るまで,様々な治療が試みられてきたが,いまだ根本的治療法の開発には至っていない.その理由として,一般的に知られている他のウイルスとは異なり,HIVが細胞性および液性免疫を担うヘルパーT細胞に感染し,免疫系を破壊するウイルスであること,またワクチンとして使用されるようなウイルス表面に存在する表面抗原の構造変化が,他のウイルスに比べて著しく速いスピードで起こるため,効果的な抗体を作ることが難しいことなどが挙げられる.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Picker L. J., Deeks S. G., Nature, 503, 207-208 (2013).2) Brauch D. H. et al., Nature, 503, 224-228 (2013).
著者
比多岡 清司
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.446, 2014 (Released:2016-06-21)
参考文献数
1

インシリコ創薬は,従来の実験を主体とした手法に理論・計算化学に基づく分子科学計算を応用した創薬手法である.近年の飛躍的なコンピュータの演算能力の向上も相俟って,従来の試行錯誤的なアプローチをより効率化・迅速化させることが期待されている.例えば,インシリコ技術を活用してタンパク質に対する薬物(リガンド)の結合親和性を評価する場合,ドッキングや古典的な結合自由エネルギー評価法(molecular mechanics/Poisson-Boltzmann surface area:MM/PBSA)などのポストドッキング解析は,実用的かつ簡便な手法であると考えられる.一方,その精度についてはどうであろう.本稿では,ドッキングやMM/PBSAの解析において,リガンドとタンパク質の結合を媒介する水分子(架橋水)や電子分極効果の重要性ならびに,これらが予測精度に与える影響を議論・検討したLiuらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Liu J. et al., J. Chem. Inf. Model., 53, 1306-1314 (2013).
著者
奥野 恭史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.433-437, 2014 (Released:2016-06-21)
参考文献数
4

第1の科学的手法である「経験科学(実験)」,第2の科学的手法である「理論科学」に加え,近年新たな潮流として,第3の科学的手法である「計算科学(シミュレーション科学)」と第4の科学的手法である「データ科学(data centric science)」が注目を浴びている.実際,2013年のノーベル化学賞は,ハーバード大学のカープラス教授らが,創薬計算などにも貢献している計算化学の基盤研究で受賞するなど,生命科学分野における「シミュレーション科学」の重要性は高まる一方である.また,近年のハイスループット技術やオミクス計測技術の著しい進展に伴い,生命科学分野においてもデータ爆発が起こり,「ビッグデータ科学」の研究開発が急務とされている.スーパーコンピュータ「京」は,こうした時代の要請に応えるべく2012年9月末より共用利用が開始された.筆者は,製薬企業,IT企業と共にコンソーシアムを設立し,「京」を用いた創薬応用計算に取り組んできた.この約1年間の取り組みの中で見えてきた,モンスターマシン「京」の驚異的パフォーマンスとそれによる創薬計算の展望を紹介する.
著者
阪下 日登志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.408-412, 2014 (Released:2016-06-21)

筆者は,学生時代に構造生物学を学び,製薬会社の研究員として長年初期創薬研究に携わってきた.その立場と視点で表題について紹介したい.本号は「使おう! 構造生物学」の特集とのことなので,特にハイスループットX線構造解析に重点を置く.構造生物学と創薬研究というと,多くの方がSBDDという言葉を連想するだろう.薬剤がタンパク質に結合している状態の立体構造を見て次の合成方針を考えるのは,教科書的で当たり前のように思うかもしれない.しかし,製薬企業内での研究スピードに合わせて構造情報を提示しながらテーマを進めるためには,構造解析に相当する速さが必要となる.以前は構造解析ができたころには化合物のステージが進んでおり,「後付け」と揶揄されたり意味がないといわれることがほとんどであった.筆者はこの流れを断ち切るため,速さと測定数の増加を両立させるハイスループット(HT)型のX線構造解析を目指した.速い構造解析とは,薬理評価と同等の速さ,つまり,化合物を得てから1週間程度で立体構造を提示する位の速さを実現することを示す.また,HTSヒットの解析や後ほど詳しく説明するfragment based drug discovery(FBDD)を可能とするためには,数多くのタンパク質/化合物複合体構造解析ができる必要がある.本稿では,当社のHT-X線構造解析の紹介と,これを利用したFBDDである「fragment evolution(FE)」を概説することによって,製薬企業内の初期創薬研究を解説する.
著者
藪田 直希
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.577, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
4

シスプラチン(cisplatin:CDDP)は,多くの固形がんに用いられる抗腫瘍性白金錯体だが,腎障害によって減量や休薬を余儀なくされる.代表的な腎障害防止策である輸液による水分負荷を行っても,3分の1の患者で腎障害が起こることが知られており,CDDPの腎毒性軽減のための新たな対策が望まれている.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Filipski K. K. et al., Clin. Pharmcol. Ther., 86, 396-402 (2009).2) Ciarimboli G. et al., Am. J. Pathol., 176, 1169-1180 (2010).3) Sprowl J. A. et al., Clin. Pharmcol. Ther., 94, 585-592 (2013).4) Franke R. M. et al., Clin. Cancer. Res., 16, 4198-4206 (2010).

1 0 0 0 OA 第13回 浅田飴

著者
岡戸 達佳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.560-561, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
1

効能効果:せき,たん,のどの炎症による声がれ・のどのあれ・のどの不快感・のどの痛み・のどのはれ成分分量:(36g中)キキョウ根エキス216mg,トコンエキス36mg,マオウエキス108mg,ニンジンエキス108mg,カッコンエキス108mg用法用量:大人(15才以上)12g,11才以上15才未満8g,7才以上11才未満6g,3才以上7才未満4g,1才以上3才未満3gを,1日3回,口中に含み,ゆっくり溶かして服用
著者
鈴木 匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.548-552, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
3

6年制薬学教育を卒業した学生達が社会で活躍を始めている.社会が薬剤師に求めるニーズも大きく変化し,臨床現場で積極的にチーム医療や地域医療に参画できる能力が求められ,その能力習得のための薬剤師研修を大学が積極的にプロデュースする必要性が高まっている.特に,6年制薬学部で実施されている実習・演習を主体とした問題解決型学習(problem based learning:PBL)を現場の薬剤師に活用した研修が注目されている.チーム医療参画への実践的能力取得を目的として,薬学部が医療系学部と連携して行っている新しい薬剤師生涯研鑽の試みについて報告する.
著者
佐々木 弥生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.135-139, 2014 (Released:2016-04-05)

私が当財団とかかわることとなったのは,1998年に厚生省医政局研究開発振興課に在籍し,当財団の所管課の担当者の1人であったこと,1999年度補正予算において創薬知的基盤施設・設備整備事業(現在は医薬基盤研究所(以下,基盤研)難病・疾患資源研究部泉南資源研究施設)を当財団の事業として実施することとなったことに始まる.その後,公益法人制度の見直し,厚生労働省の事業仕分けなど目まぐるしい環境の変化があったが,本稿では当財団が創立時から継続してきた厚生労働省関係の国立研究機関との官民共同研究事業,創薬にかかわる調査事業,技術移転事業,動物実験実施施設認証事業を中心に紹介する.
著者
佐藤 文治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.127-131, 2014 (Released:2016-04-05)
参考文献数
5

次世代天然物化学技術研究組合(略称:天然物組合)では,天然物,特に微生物産物からの創薬を長年にわたって手がけてきた大手製薬企業等の組合員企業が,自社で所有している天然物ライブラリーの組合員企業間での相互利用およびアカデミアへの普及拡大(以下,総称して「天然物ライブラリーの相互利用」という)を行い,創薬の研究開発効率を上げようという取り組みを行っている.ライブラリーの作成と維持のような人手と手間がかかる創薬基盤的な技術開発を各社で協力して行い,日本では縮小傾向にある天然物からの創薬を再度活性化させたいという狙いがある.本稿では,主に天然物組合におけるライブラリーの相互利用について述べる.