著者
大依 仁
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.38-40, 2015-02-05 (Released:2017-06-12)

航空エンジン電動化システム(MEE:More Electric Engine)は次世代の航空機用エンジンへの適用をめざした制御コンセプトである.MEEには,航空機における電動化と連携した2つの役割があり,エンジンの燃費改善,整備性向上,より高い信頼性・安全性を目指すPropulsionとしてのMEEと電動化の大きな電力需要を担う,Power PlantとしてのMEEである.今回はこれらの役割を担うMEE研究の現状について紹介する。エンジンシステムの電動化によりシステムの無駄を省き,燃費や熱のマネジメントなどを改善する研究,電力需要の増加による発電抽出力とエンジン制御の最適化を目指す研究,統合化推進制御として,システム最適化に向けた,燃料,電力,制御システムと推進システムの統合化の調査研究である.まとめに,MEE実用化に向けた課題として,機体メーカの視点とエアラインの視点を紹介する.
著者
渡辺 一尊 鈴木 悠人 原田 裕子 齋藤 雅樹 上野 真史 森本 仁 上田 敦史
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.141-147, 2018-05-05 (Released:2018-05-05)
参考文献数
4

きぼうロボットアームは,親アーム,子アームから構成され,現在は曝露ペイロードの移設などすべてのアーム運用を地上からの遠隔操作で行っている.2015年5月のExHAM 1号機による初回ミッションでは,ExHAMをきぼうエアロックから船外へ搬出し,JEM曝露部上の電気箱Survival Power distribution Box(SPB)のハンドレールに,子アーム特有の力覚制御を使用した押し付け動作により取り付けた.この半年後の2015年11月には,ExHAM 2号機を同様のシーケンスで船外搬出し,JEM曝露部上Exposed Facility System Controller a(ESC a)のハンドレールへの初の取り付けに成功している.本稿では,Ex-HAM 1, 2号機のJEM曝露部への設置,船内回収を定期的に行ってきたきぼうロボットアームの運用実績について述べる.
著者
鈴木 亙 稲垣 健次郎 髙橋 賢一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.195-200, 2018-07-05 (Released:2018-07-05)

C-2輸送機の機体形状は,広い貨物室と大型貨物の搭載,投下を容易にする胴体及び主尾翼配置,高速長距離巡航を実現する主翼と双発ターボファン・エンジン,低速飛行を実現する高揚力装置等を特徴とする.また同時開発したP-1固定翼哨戒機と主尾翼等の一部を共用している点についても本機の特徴である.機体規模の策定段階では,C-2,P-1,双方の設計条件を同時に考慮して,主翼の面積とアスペクト比を決定した.主翼の翼型は超臨界翼型を採用した.高揚力装置は内舷がダブル・スロッテッド・フラップ,外舷がシングル・スロッテッド・フラップを採用し,推進部の配置や取付け角は飛行特性や機体への影響を考慮して決定した.本稿ではこれらの空力設計の概要を中心に,風洞試験等の成果も交えて紹介する.
著者
岡本 哲史 三栖 功
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.24, no.267, pp.187-193, 1976
被引用文献数
1

This paper presents an experimental study of reverse transition occurred in the boundary layer flow along a flat plate placed at the center of two-dimensional symmetrical contraction. The experiments were carried out in the contractions of three kinds: Cheers, cosine and WITOSZYNSKI types. the reverse transition was examined based on the velocity profile, thickness and turbulence of the boundary layer along the flat plate. The results were discussed in comparison with those of existing in vestigations.
著者
山田 和彦 鈴木 宏二郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.227-235, 2017

<p>近年,柔軟な展開構造物を大気圏突入機のエアロシェルとして利用する技術が注目を集めており,世界各国で盛んに研究開発が行われている.ロシアでは火星突入プローブとして,欧州ではISSからの帰還システムとして,米国では火星表面への大量輸送システムへの応用を想定した開発が行われているなど,多くのプロジェクトが進められている.一方,国内では,小型の惑星プローブや地球帰還システムへの応用を想定し,欧米とは一線を画した独自の展開型柔軟エアロシェル技術を成熟させてきた.展開型柔軟エアロシェルのメリットは,軽量かつ大型のエアロシェルを大気圏突入機に取り付け,機体の弾道係数を下げることで,空気力を効率よく利用し,低密度環境でも減速が可能になることである.そのため,大気圏突入機の最大の技術課題である空力加熱を低減することができ,同時に,終端速度も下げることができるため,軟着陸用のパラシュートを兼ねたシステムを実現できる.本稿では,国内における大気圏突入用の展開型柔軟エアロシェルの開発の経緯,および,その展開構造物としての技術的課題に対する取り組みについて報告する.</p>
著者
澤田 弘崇 森 治 白澤 洋次 津田 雄一 船瀬 龍 佐伯 孝尚 米倉 克英 川口 淳一郎 相馬 央令子
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.355-359, 2015

IKAROSとは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小型ソーラー電力セイル実証機であり,2010年5月21日に種子島宇宙センターよりH-IIAロケット17号機によって打ち上げられた.IKAROSは将来の外惑星領域探査ミッションを想定してソーラーセイルおよびソーラー電力セイルを世界で初めて実証した.2011年以降も運用を継続し,数多くの成果をあげている.IKAROSは小規模プロジェクトのため,広報活動に関して,予算をほとんど割くことができない状況であったが,チームメンバーが創意工夫を凝らし,精力的に活動を行った.特にツィッターやブログを通して開発・運用の現場の様子をタイムリーに発信したことで多くのファンを獲得できた.また,TPSにも発信してもらったことでIKAROSの成果が世界中に知れ渡ることとなった.さらに,はやぶさ地球帰還との相乗効果もあり,日本の探査技術が大きく取り上げられる機会となった.本稿では,我々が取り組んできたIKAROSの広報・アウトリーチ活動全般について報告する.
著者
芳崎 伸一 佐藤 淳造
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 = Journal of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.44, no.510, pp.442-448, 1996-07-05
参考文献数
5

The maximum range of a human-powered aircraft in steady descending flight is studied using the parabolic as well as the experimental drag-polar curves. The aircrafts assumed to have not enough power to sustain steady level flights and the results are compared with those of the powerless gliding flights. The effects of winds and the proximity to the ground surfaces on the maximum flight range are also discussed.
著者
麻生 茂 谷 泰寛
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.18-24, 2018-01-05 (Released:2018-01-05)
参考文献数
24

本稿では,エアタクシーやジェネラルアビエーションへの用途を目的として小型電動航空機の開発機運が急速に高まっていることを示し,現在,世界中で研究開発が始まっている電動航空機を紹介している.また,日本航空宇宙学会航空ビジョン委員会のグリーンイノベーションの提言として電動航空機が挙げられていることを示すとともに,著者らの小型電動航空機に対する研究開発の試みとして,小型電動航空機のコンセプト機の提案と1/10スケール機の試作に関する試み,EV車用などに開発された電気モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせた電動パワーユニットの開発とそれを小型機に搭載しての走行テスト,電動航空機用に特化した概念設計手法の開発を紹介している.最後に,高い利便性を有する小型電動航空機の出現が交通インフラに革命をもたらすことを述べている.