著者
野淵 輝
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.294-296, 1981 (Released:2011-03-05)
著者
森川 修
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-5, 1964-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
7

殺線虫剤,ethylene dibromide (EDB), 1, 2-dibro-mo-3-chloropropane (DBCP)およびcis-1, 3-di-chloropropene (cis-D)の作用機構を知るため,これら薬剤のワモンゴキブリ雄成虫に対する毒性および中毒症状についてしらべた。薬剤のアセトン溶液をゴキブリの腹腔内に注射し,72時間後のLD-50を求めると,EDB 0.398μg, DBCP 0.955μg, cis-D 0.059μgであった。中毒症状を直接観察した結果,EDB処理では麻痺に落ち入り死亡するのに対し,DBCPやcis-Dを処理したものでは,興奮,麻痺,死亡の順に症状が現われることが明らかになった。また,処理薬量を2倍にしても発現する症状は変らなかった。Entomographyを行なったところ,EDBを処理した昆虫ではけいれんのみが現われるのに対し,DBCPやcis-D処理の昆虫では,興奮とけいれんが同時に起こることが明らかになった。
著者
杖田 浩二
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.155-162, 2019-11-25 (Released:2019-12-01)
参考文献数
34

The sweetpotato whitefly, Bemisia tabaci(Gennadius)(Hemiptera: Aleyrodidae), is a notorious agricultural pest worldwide. In this study, the inhibitory activities of several spiracle-blocking insecticides on its orientation and courtship were investigated to identify an effective control agent against this pest. The numbers of orientated adults, courting pairs, and eggs were found to decrease on tomato plants that had been sprayed with decanoyloctanoylglycerol, safflower and cotton oil, or rape seed oil. Furthermore, when virgin female and male adults were released on tomato plants, the progeny sex ratio was higher(i.e., a higher percentage of males)on the plants that had been sprayed with decanoyloctanoylglycerol or safflower and cotton oil than on the corresponding control plants. Under greenhouse conditions, a cohort of tomato plants that had been sprayed with 500-fold diluted decanoyloctanoylglycerol four times every 10 days had fewer whitefly adults, lower numbers of eggs and larvae, and a higher sex ratio than the control plants. These results indicate that spiracle-blocking insecticides containing liquid oil, decanoyloctanoylglycerol, safflower and cotton oil, and rape seed oil can inhibit orientation and courtship in B. tabaci and allow this pest species to be maintained at a low density.
著者
正木 進三 境 隆
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.191-205, 1965-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
21
被引用文献数
22 30

ヨウトガの生活史と休眠については,すでにかなりの知見がある。それらを検討してみると,本州以南の個体群においては,休眠性を左右する光周期反応の分析結果と生活史の野外観察の結果との間に一致しない点がある。これは春夏世代のさなぎの特性-夏眠-についての理解が不充分なためであると考えられるので,弘前産のヨトウガを用いて夏眠と環境条件との関係を分析し,また北海道や本州南部からえた材料と比較した。その結果,ヨトウガのさなぎの発育には,不休眠,夏型休眠,冬型休眠の3様式があることが確かめられた。幼虫期の短日処理によって冬型休眠がえられるが,長日処理をうけると不休眠あるいは夏型休眠のいずれかの発育様式をとる。長日下に生じたさなぎの夏眠率と夏眠の長さは環境および遺伝的要因によって支配されている。高温では夏眠率も夏眠期間もともに増加するが,温度の低下につれて夏眠は弱まり,ある限界温度以下になるとまったく消失してしまう。また北の系統は夏眠の遺伝的能力が低いが,南下するにつれて個体群の性質は夏眠強化の傾向を示す。夏眠に対する幼虫期の環境の影響は未知の点が多いが,一応以上の知見にもとづいて,日本列島におけるヨトウガの生活史の地理的勾配変異の様相を模式的に描いた。
著者
宗林 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-44_2, 1960-03-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
7 7

25属34種のアブラムシについて口針が植物組織にそう入される状態を観察した。その結果の果要は次のとおりである。1) 口針を表皮組織にそう入する際,ほとんどすべての種類では,表皮細胞間または細胞内を貫通するが,あるものは気孔からそう入し,同一種でも一定しない。しかし,カンショワタアブラムシCeratovacuna lanigera ZEHNTNER(ススキ)およびマツノハアブラムシSchizolachnus orientalis TAKAHASHI(アカマツ)の2種は常に気孔からのみそう入する。2) 口針が植物組織内に進入するときには一般に細胞間を通るが,細胞内を貫通することもしばしばあり,結晶体を含む細胞も容易に貫通する。厚膜組織では細胞内を貫通することはまれで,細胞間のみを通るか,あるいはこの組織を避けて柔組織を通る場合が多い。しかしマツノハアブラムシSchizolachnus orientalis TAKAHASHIでは,常にアカマツ針葉組織細胞内のみを貫通する。3) 口針しょうは細胞間を通過する部分よりも細胞内を貫通した部分に顕著で,また表皮と口ふんの先端との間,あるいは葉しょうと茎との間の空気中にも形成される。口針しょうは口針内の気密を保つためにも役だつものと思われる。4) 口針の先端はほとんど常にし部細胞内,特にし管内にそう入される。皮層細胞内にそう入されたものは見られなかったが,まれに木部あるいは管束しょうにそう入されていた個体も見られた。また口針はそう入部から最も近いし部に達するとはかぎらず,皮層を遠回りし,あるいは髄線を経て髄にはいりし部に達するもの,あるいはし部または木部のみを通過することがある。また口針はし部で同一細胞からのみ吸汁するものではなく,たびたび新しい細胞に刺し変えるため口針こん跡の分枝したものが多数みられた。
著者
竹内 正彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.187-196, 2007 (Released:2007-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

An invasion prevention plan against wild badgers (Meles meles) was designed for a field of cultivated strawberries. Badgers climbed nets using their claws and caused damage in the object field in Fukuyama City, Hiroshima Prefecture, in 2003. After the invasions recurred in 2004, the animal was judged to have been a badger. Subsequently, appropriate netting material that corresponded to the badger's invasion behavior was selected and a method of constructing a defense net was devised: a corrugated plate was placed in the ground of the strawberry field. No invasions occurred during the fruiting period in May 2005, suggesting that this net system was an effective countermeasure. The system completely prevented agricultural damage. Defensive measures against damage by meso-carnivores such as badgers include those that protect against digging animals, climbing animals, and scrambling animals. Against the former, the corrugated plate was effective. Against the latter two, slippery netting material was effective.
著者
矢野 宏二 三宅 敏郎 浜崎 詔三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-40, 1982-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2

1. 1980年6月山口市でコメツブウマゴヤシ上で発生増殖しているTherioaphis trifolii (MONELL)s. lat.アルファルファアブラムシ個体群を採集,続いて山口県美東町ですくい取りにより有翅胎生雌虫1個体を採集した。翌1981年6月には山口県下各地および福岡市郊外における分布が判明,寄主植物としてさらにウマゴヤシとアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)が確認された。一方,1944年5月福岡市でMedicago sp.から採集された標本も調査し,日本での発生を確認した。日本の個体群は既知の2型,trifolii s. str.とmaculataの中間的な形態を示すが,maculataにやや近い。2. 山口市では6月にのみ発生がみられ,現在判明した主要寄主植物コメツブウマゴヤシの地上部の消滅に応じてみられなくなり,その前後の生態はわかっていない。予想される生活環の内,寄主植物上での通年増殖ないし胎生雌虫あるいは卵による越冬の可能性は少ない。暖地からの飛来有翅虫による1年毎の発生をすることも考えられるが,ウマゴヤシ類より移動した他の植物上における胎生雌虫,あるいは卵による越冬が可能性としては大である。3. 山口市における発生期間が限られている原因は上記とも関連するが明らかでない。多雨など物理的要因以外に寄主植物の適否も含めた生物的要因の存在が考えられる。
著者
杉浦 清彦 高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-14, 1998-02-25
参考文献数
25
被引用文献数
1 23

ダンダラテントウ(以下ダンダラと略記)の被食者としての適性を,ワタアブラムシ,マメアブラムシ,モモアカアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシおよびエンドウヒゲナガアブラムシの7種について,15L-9D, 18&deg;Cにおける産卵から羽化までの発育期間と生存率,蛹重,産卵前期間ならびに羽化後10日間の産卵数を指標として検討した.比較対象としてナミテントウ(以下ナミと略記)を用いた.<br>ヘクソカズラヒゲナガアブラムシでは,ダンダラ,ナミともに,供試したすべての個体が1齢幼虫期に死亡した.ダンダラについては,発育期間はマメアブラムシ(18.0日)で最も短く,モモアカアブラムシ(18.7日)を除く他の4種アブラムシ(20.1&sim;20.9日)との差は有意であった.生存率は6種(70.3&sim;91.3%)間に有意差はなかった.雌の蛹重はモモアカアブラムシとジャガイモヒゲナガアブラムシ(18.4&sim;18.5mg)において,エンドウヒゲナガアブラムシ(16.0mg)あるいはムギヒゲナガアブラムシ(15.2mg)より有意に重かった.雄の蛹重は6種(12.2&sim;15.6mg)間に有意差はなかった.産卵前期間はマメアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシおよびモモアカアブラムシ(7.3&sim;8.0日)において,ワタアブラムシ(11.6日)より有意に短かった.産卵数はマメアブラムシ(172.5個)において,ワタアブラムシ(98.8個)より有意に多かった.<br>これらの結果を総合的に判断して,ダンダラの被食者としての適性は,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシを除く6種については,マメアブラムシとモモアカアブラムシで最も高く,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシ,エンドウヒゲナガアブラムシがこれらに次ぎ,ワタアブラムシで最も低いと評価した.各指標(発育期間と産卵前期間は発育率に換算)について,最大値を1としたときの相対値平均は最高のマメアブラムシで0.97,最低のワタアブラムシで0.78であるので,6種アブラムシ間の被食者としての適性の差異は比較的小さいと考えられる.ナミについても,被食者としての適性はマメアブラムシとモモアカアブラムシで高く,ワタアブラムシで比較的低いと評価でき,ダンダラと顕著な差異は認められなかった.

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出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-105, 2015-05-25 (Released:2015-07-23)
著者
植松 秀男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.145-150, 2006-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
3

シロヘリクチブトカメムシはさまざまな鱗翅目幼虫の捕食性天敵である.筆者は本種の天敵としての特性を評価するため,ハスモンヨトウ幼虫を餌として25℃,14L10Dの恒温器内で発育日数,生存率,産卵数,捕食数を調べた.卵~成虫の発育期間は雌雄に差はなく約32日であった.卵の孵化率は93.9%であった.若虫期(1齢~5齢)の累積死亡率は33%であった.産卵前期間は7~8日であった.卵は卵塊として2~3日に一度産下された.卵塊当たり平均卵粒数は75.4であった.一雌が産下した総産卵数の平均値は499個であった.本種の一世代当たり純繁殖率は153.8,一世代の平均時間は49.8日,内的自然増加率は0.101/日/雌と推定された.10頭の若虫集団は3~5齢のハスモンヨトウ幼虫を日当たり4~8頭捕殺した.雌雄1対の成虫は5齢(450~550mg)の幼虫を日当たり3~5頭捕殺した.これらの結果はシロヘリクチブトカメムシが有望な多食性土着天敵として働き得ることを示唆した.######The pentatomid bug, Andrallus spinidens (F.), is a polyphagous predator on lepidopteran larvae in crop fields in southern Japan. The basic life history biology of the bug was studied using a laboratory incubator with temperatureset at 25°C. The nymphs were reared in Petri dishes in groups of 10 and were fed on the 3rd-5th instar Spodoptera litura larvae. The mean development period from egg to adult was 32 d. The pre-oviposition period lasted 7 to 8 d, after which eggs were laid in batches every 2-3 d. The mean number of eggs per mass was 75.4 and the mean total number of eggs laid by each female was 499. The net reproductive-rate (Ro), mean generation time (T) and intrinsic rate of natural increase (r) were 153.8,49.8 d and 0.101/d/female, respectively. Groups of 10 nymphs attacked 4-8 of the 3rd-5th instar S. litura larvae per day. Pairs of adult pentatomids killed 3-5 of the 5th instar S. litura larvae weighing 450-550 mg each day. This study provides important life history information for using the predator A. spinidens as a possible biological control agent.
著者
矢野 栄二
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-11, 2018-02-25 (Released:2018-05-20)
参考文献数
78
被引用文献数
2 6
著者
松本 由記子 若桑 基博 行弘 文子 蟻川 謙太郎 野田 博明
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.111-118, 2014-05-25 (Released:2014-11-15)
参考文献数
19
被引用文献数
4 11

イネ害虫トビイロウンカの光応答とそれに関連する分子に関する基礎的な知見を得るために,フォトン数を合わせられるLEDを用いての誘引実験,オプシン遺伝子同定および複眼の構造解析を行った.暗箱内での粘着板を用いた実験では,一方向からの光照射の場合は365–735 nmの広い波長範囲でトビイロウンカの誘引が見られた.また,両方向から等フォトンの光を照射した場合,選好性は 365 nm=385 nm>470 nm=525 nm>白色LED=590 nm>660 nm>735 nm>850 nm の順に有意に高かった.トビイロウンカ複眼の分光感度は520 nmに高いピークと360 nm にそれより低いピークが見られ,660 nm以上の長波長に対しての光受容感度は非常に低かった.トビイロウンカの光受容遺伝子は,長波長オプシン1種とUVオプシン遺伝子2種が見つかった.長波長オプシンは複眼の全体と単眼で,UVオプシン1は触角周縁部の下側で,UVオプシン2は複眼の全体で発現していた.ウンカ複眼の個眼は少なくとも8個の視細胞からなっていた.
著者
安藤 健 井上 良平 前藤 薫 藤條 純夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.201-210, 2006-08-25
参考文献数
13
被引用文献数
1 10

ハスモンサムライコマユバチMicropliis manilaeは熱帯・亜熱帯に広く分布するものの国内では未記録種であったが、著者らは本種が沖縄本島でハスモンヨトウ幼虫に寄生していることを見いだした。本種が単寄生性の内部寄生蜂であることを確認した上で、産卵一発育に及ぼす温度の影響を検討した。本種は、ハスモンヨトウの1-4齢には寄生し、幼虫の摂食を大幅に抑制したが、卵、終齢前齢(5齢)および終齢幼虫にはほとんど寄生できなかった。15℃から30℃までの恒温条件下での発育比較から、本種の卵から羽化までの発育零点は11.5℃、有効積算温度は217.4日度と算出された。産卵と寄生成功は15℃の恒温下では大幅に低下したが、1日の内8時間あるいは12時間を10あるいは15℃にしても、日平均温度が15℃になるように飼育すれば、そのような支障は消失した。1頭の雌成虫は、20-30℃では、2週間に渡って300個以上の卵を産み、産卵させなければ、15℃では60日間生存した。温度に対する本種の発育や増殖能力への影響を、ハスモンヨトウの幼虫寄生蜂であるギンケハラボソコマユバチと比較した。
著者
比留間 潔
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.161-169, 2018 (Released:2018-10-18)
著者
本間 健平
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.305-309, 1988-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

1) キボシマルトビムシ(Bourletiella hortensis FITCH)の食性をテンサイ7品種と他の植物12種に対する摂食試験および顕微鏡による消化管の観察によって検討した。2) 本種はキウリの子葉には多数の食痕をつけ,コマツナ,ハツカダイコン,スカシタゴボウ,ハコベはわずかに食害したが,テンサイの稚苗はほとんど食害せず,ホウレンソウ,ニンジン,シュンギク,レッドクローバ,タニソバはまったく摂食しなかった。3) 消化管の観察の結果,本種の食物の範囲はかなり広く,顕花植物の稚苗の他に,花粉,菌糸,菌の胞子,蘚類などを含むことが判明した。4) 以上の結果から,本種はウリ類やアブラナ科野菜の害虫になる可能性はある。しかしテンサイに対しては,他の害虫による食痕を拡大するような二次的な加害を除いては,健全な組織を積極的に食害する可能性は少ないのではないかと考察した。
著者
北岡 茂男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.161-167, 1971-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

マダニ類のマダニ科成ダニの吸血成長過程,またはヒメダニ科の若・成ダニの吸血時における体液浸透圧調節機能の違いを明らかにするため,主要陰イオン成分であるCl-につき宿主血液,ダニ体液,唾液,基節液,尿,体内での各含有量を比較し,その値の浸透圧調節機能における意義につき検討した。1) マダニ科のフタトゲチマダニ,オウシマダニはその吸血過程を通じ,またヒメダニ科のツバメヒメダニ,O. moubataはそれらの発育段階や吸血条件などの著しい相違にもかかわらず,宿主のそれより常に高い100∼160meq/lのほぼ恒常の体液Cl-濃度値を保った。2) 唾液Cl-濃度は以上の種類と条件下において体液のCl-濃度に依存しほぼ同等か,それよりわずかに高めの値であった。3) マダニ類におけるマルピギー管は,昆虫類と比較してCl平衡の上では二次的器官であると言える。4) 体液浸透圧の恒常性を保つための余剰水分と塩分の処理は,マダニ科ダニでは主として唾液分泌による宿主への還元により,ヒメダニ科ダニでは基節器官からの分泌により行なっており,吸血期間の長短を主とする吸血習性や吸血機構の相違と明らかに関連性があるものと考えられる。