著者
伊藤 清光
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.23-32, 2004-02-25
被引用文献数
8 19

北海道で最近作付けされている「ほしのゆめ」の割れ籾発生率は、これまでに割れ籾発生率が高いとされている「イシカリ」に次いで、場所・年次にかかわらず安定して高く、相対的に「きらら397」「ゆきのひかり」は低かった。また、「ほしのゆめ」と「きらら397」では、両品種とも穂首抽出3-4週間後(糊熟期以降)から割れ籾が発生し始め、発生率は5-7週間後に安定した。次いで、アカヒゲホソミドリカスミカメの袋かけ放飼試験の結果から、開穎のない正常籾では、斑点米の発生が開花-乳熟期あるいは乳熟期をピークとしてその後は減少すること、玄米上の斑紋の位置は大部分が頂部にあることが示された。一方、割れ籾では、登熟が進んでも斑点米発生の大きな低下は認められず、正常籾と比較して加害を受けやすいものと考えられた。また玄米上の斑紋の位置は大部分が側部であり、さらに開穎部から吸汁加害されることが示された。これらのことから本種は、籾の鉤合部(特に頂部の鉤合部)あるいは開穎部から吸汁加害し、籾の登熟に伴いしだいに加害が困難になってくること、割れ籾の場合には玄米が硬くなる黄熟期以降であっても加害できるものと考えられた。
著者
二宮 栄一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.119-124, 1957-06-30

Experiment was carried out to obtain specific data on the number of aphids destroyed by a single syrphid larva and on the rapidity of consumption of an aphid, with the following results. Table showing number of consumption of aphids. [table]Table showing average time required for consumption of an aphid.[table]
著者
井上 雅央
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.49-53, 1990-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
8 4

ハダニの歩行移動を防止することを目的として,いくつかのビニル障壁を作成し,壁面でのハダニの行動を観察した結果,ハダニはビニル壁面の上端を45°および30°の角度で襟状に折り返したいわゆる“ダニがえし”を乗り越えることができなかった。ダニがえしを装備した雨除け施設の周辺に,ハダニが多数寄生したホウレンソウ残渣を投棄したところ,施設内へのハダニの侵入が顕著に阻止された。また,この装置を逆に応用して,ダニがえしを装備した簡易残渣処理装置を作成して装置内へイチゴ残渣を投棄した場合,残渣からの離脱が阻止され,周辺雑草や隣接圃場へのハダニの移動が著しく抑制された。ダニがえしを装備しない雨除け施設へのハダニの侵入や,残渣を野積み投棄した場合の周辺雑草および隣接圃場へのハダニの移動は残渣投棄直後から数日以内に観察された。以上の結果から,ダニがえしは除草,下葉摘み,整枝,収穫終了時の圃場整備など日常の農作業で生じた作物残渣からのハダニの移動や施設への侵入を防止するための障壁として利用価値が高いと考える。
著者
梅谷 献二 加藤 利之 古茶 武男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.47-53, 1975-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
11 19

アカイロマメゾウムシCallosobruchus analisは,同属の他種と似た産卵習性を持ち,1粒のアズキに複数の卵を産むにもかかわらず,生育を完了して羽化脱出するのは1個体に限られるという特異的な現象がある。実験の結果,1粒のアズキは量的には複数個体を生育させるのに十分であり,共存個体の死亡要因は同一の豆の内部における幼虫の激しい攻撃に起因すると推定するに至った。すなわち,成虫脱出後の豆を解体調査したところ,本種の主要食害部は,豆の中央域に限られていることが明らかとなり,それによって生じた空洞部またはその一偶にぬり固められた摂食物残渣塊の中から主として3齢または4齢(終齢)幼虫の死体が見出された。そして,これらの死亡個体の体表から,他個体の攻撃によると思われる咬傷痕が発見された。さらには,この攻撃性に加えて主要食害部が,同属の他種においては豆の周縁部に多いのとは対象的に,本種の場合は中央域に限られるため,幼虫生育の中∼後期に相互の幼虫が遭遇することとなり,最終的には1個体を残して他は咬み殺されると推定するに至った。1粒の豆から2個体の成虫が羽化したまれな例の場合は,すべて豆の中央域に2つの食害部があり,その間は摂食物残渣塊で完全に隔離されていることがわかった。結局,このような偶然の隔離がない場合は,発育期間のいずれかの時期に,最終的には1個体しか残り得ないと解されたが,幼虫の形態には大腮を含めて攻撃的行動を特別に想起させる特徴は見出せなかった。なお,本種に見られたこのような攻撃性は,他の多化性のマメゾウムシ類では,従来知られていない。
著者
弘中 満太郎 針山 孝彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.135-145, 2009
被引用文献数
3

昆虫はその生活の中で、餌、交尾相手、巣、新たな生息場所など、様々な目標に向かって定位する。この行動を目標定位というが、なかでも視覚情報を用いるものを視覚定位と呼ぶ。視覚定位行動を引き起こすキュー(手がかり)は、昆虫の視覚器である複眼と単眼によって受容される。昆虫は周囲の環境にあるどのような視覚キューを受け取ることで、視覚定位を成り立たせているのだろうか。定位におけるキューの重要な要素の1つは、空間内における目標とキューとの位置関係である。また、視覚における色、形、光強度、偏光といった様々な感覚の質も、キューを特徴づける要素である。キューがどのような要素の集まりであるのかを分類することで、昆虫がどのようなメカニズムで視覚定位を成し遂げ、なぜそのキューを利用するのかを適応的な観点から理解することが可能になる。加えて、自然環境下で昆虫がなぜ人工光に誘引されたり人工光を忌避したりするのか、という応用的問題についても理解を進めることができるであろう。害虫の行動制御あるいは絶滅が危惧される昆虫の保全という観点から、人工光に対する昆虫の反応は近年注目を集めているが、その定位メカニズムや機能はよくわかっていない。現状は、光への誘引や忌避という現象の一部がクローズアップされているのみである。これは昆虫の光に対する定位行動がヒトのそれと異なり、また多様で複雑であることが原因なのかもしれない。本総説では、昆虫の視覚定位をキューの違いによって分類することで概観する。そしてその分類に立脚した視点から人工光への昆虫の定位反応をみることで、昆虫の視覚定位のメカニズムと機能の理解を深めたい。
著者
中石 一英 福井 康弘 荒川 良
出版者
JAPANESE SOCIETY OF APPLIED ENTOMOLOGY AND ZOOLOGY
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.199-205, 2011
被引用文献数
31 1

野外の餌動物がほとんど発生していないゴマにタバコカスミカメが大発生し世代交代することが観察されたことから,本種はゴマで増殖が可能と推測された.そこで,ゴマでタバコカスミカメは増殖が可能であるか否かを知るとともに,キュウリ,ナス,トマトおよびピーマンでの増殖についても検討した.餌にゴマ,キュウリ,ナス,トマトまたはピーマンの葉を与えた区,それとゴマの葉とともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えた区を設け,タバコカスミカメを飼育し,繁殖能力を比較した.タバコカスミカメの卵から成虫までの生存率はゴマでは59.3%あり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても生存率は有意に高まらなかった.このゴマでの生存率はキュウリを与えた場合と有意差はなかったが,ナスより有意に高かった.また,トマトおよびピーマンでは成虫まで発育した個体は見られなかった.卵から成虫までの発育日数はゴマでは29.0日と,キュウリおよびナスに比較して有意に短かったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると有意に短縮した.成虫の生存日数はゴマで雌が38.4日,雄が27.7日であり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても有意差は認められず,ゴマでの生存日数は他の植物と比較して有意に長かった.1雌当たり総産卵数はゴマでは63.6卵であったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると166.4卵と有意に増加した.ゴマ以外の植物での1雌当たり総産卵数は4卵以下で,ゴマと比較して有意に少なかった.ゴマだけを与えた飼育から求めた日当たり内的自然増加率および30日当たり増殖倍率は,それぞれ0.0465および4.0であり,ゴマとスジコナマダラメイガ解凍卵を与えて得た0.0865および13.4に比較して小さかった.しかし,ゴマでは動物質の餌がなくてもタバコカスミカメは増殖できることが明らかになったことから,ゴマはタバコカスミカメのインセクタリープランツとして利用できる可能性が示された.
著者
中村 寛志
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.137-144, 1980-08-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
12
被引用文献数
5 10

集合性昆虫の一種であるマツノキハバチの幼虫について集団サイズ別分離飼育を行い集合効果の検証をするとともに,幼虫集団の摂食過程と集合形態の調査を行った。1. 集団サイズ別分離飼育における令期間は1頭区の1, 2令期が他の集団サイズより長くなったが,繭重量に関しては差がみられなかった。また集団サイズと生存率の関係は1, 2, 3, 5頭区で55∼60%,7頭区で77%, 10, 20頭区ではほぼ100%であった。2. 不適な餌による集団サイズ別分離飼育においても10, 20頭区はほとんど死亡がみられず集団サイズが小さくなるにつれて死亡率が高くなった。3. 孵化幼虫はアカマツの枝の先端に集団を形成するが,1令幼虫では1葉につき約8頭の小集団に分かれて摂食した。また脱皮時には葉の基部に多くの個体が集まり密な集団を形成した。4. 以上のことから明らかになった本種幼虫の摂食集団と脱皮集団という2種類の集合形態の生態的意義を考察した。
著者
佐々木 正己
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-40, 1975
被引用文献数
3 3

12時間明,12時間暗の光周期,恒温条件下で,ウリキンウワバの諸行動にみられる日周期性の有無位相と強度を調べた。その結果,孵化と幼虫の摂食行動には周期性が認められず,4令から最終令への脱皮には弱い,蛹化と羽化には比較的強い日周期性が観察された。蛹化と羽化の位相は逆の関係にあり,蛹化が暗期の終り付近に,羽化は明期の終りにそのピークを示した。<br>成虫は顕著な3山型の夜間活動性を示した。雌雄共通の飛翔ピークが1日に2回,消灯後と点灯時にみられた。残るピークは消灯約7時間後に始まり,雌では3時間にわたって継続的に性フェロモンを放出,雄ではこれに同調して,しかし雌の性フェロモンの存在とは無関係に,1&sim;1.5時間の激しい飛翔ピークを示した。これらのリズムの生成は遺伝的に組み込まれたものである可能性が強い。
著者
昆野 安彦 松田 一寛 小西 和彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.182-184, 2002-08-25
被引用文献数
4

ウメエダシャクは北海道、本州、四国、九州、対馬に分布するシャクガ科シャクガ亜科の一種である。発生は年1回で幼虫はウメ、モモ、スモモ、ナシ、アンズ、リンゴなどのバラ科果樹類のほか、ニシキギ(ニシキギ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、ガマズミ(スイカズラ科)など、7科17種の葉を食害する多食性の蛾として知られている。また、多発生した場合はウメの害虫として認識されることもある。本種の寄生蜂に関する報告はこれまでないが、今回、蛹から羽化した寄生蜂を調査した結果、5科6種の寄生蜂を確認することができたのでここに報告する。
著者
近藤 章 田中 福三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.211-216, 1989-11-25
被引用文献数
5 4

実験室内においてスクミリンゴガイを餌として与えた場合のヘイケボタル幼虫の発育と捕食能力, および寄主選択性について検討した。1)スクミリンゴガイで飼育した場合のヘイケボタルの飼育開始79日後における供試卵数に対する全幼虫数の割合は63.4%で, カワニナの場合(86.3%)よりやや劣るものの, 幼虫はスクミリンゴガイで比較的良好に発育した。2)ヘイケボタル幼虫は全明・全暗条件にかかわらず, どの齢においてもスクミリンゴガイとカワニナを同程度に選択した。3)スクミリンゴガイの密度に対するヘイケボタル幼虫の捕食反応を, 幼虫の齢と貝の大きさを変えて調べたところ, 大部分の組合せで飽和型曲線を示した。幼虫の1頭1日当り最大捕食貝数は, ふ化数日後の貝では2齢幼虫で0.7頭, 3齢で2.3頭, 4齢で3.2頭であった。4)貝の大きさと4齢幼虫の最大捕食量との間には直線関係が認められ, 捕食可能な貝の最大殻高は1.1cmと推定された。
著者
石原 保
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.19-22, 1965-03-25 (Released:2009-02-12)
被引用文献数
3 7

琉球(沖繩本島および宮古島)で甘藷の天狗巣病の媒介者として記録されたクロマダラヨコバイおよび本州(山形県および長野県)で委縮病の著しい桑園に多発したヒシモンヨコバイ近似種の2種は,いずれも新種(後者は新属新種)と認むべきものであるため,本報で記載した。すなわち,両種ともにヨコバイ亜科Deltocephalinaeに所属する次の2種である。1. クロマダラヨコバイNesophrosyne ryukyuensis ISHIHARA分布:琉球(沖繩本島および宮古島)2. ヒシモンモドキ(新称)Hishimonoides sellatiformis ISHIHARA分布:本州(山形県および長野県)。
著者
中尾 弘志
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.193-200, 1984-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

キジバトは北海道では夏鳥で,長沼町での生息期間は3月下旬から11月下旬であった。調査期間中に,生息密度の大きな変動はなかった。繁殖期間は,4月上旬から10月下旬までであった。抱卵期間は14~17日(15.6±0.6日,n=126),育雛期間は14~19日(16.6±1.2日,n=126)であった。1978年までは,ダイズの発芽期と繁殖のピークがよく一致し,雛のいる巣が多く,ダイズの被害も多かった。しかし,ドイツトウヒの下枝の刈取りにより営巣環境が悪くなった1980年以後は,ダイズの発芽期に営巣数が少なく,雛のいる巣がほとんどなく,ダイズの被害は少なかった。孵化率は,8か年の平均で54%,巣立ち率は74%,繁殖成功率は40%であった。
著者
樋口 博也 高橋 明彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.113-118, 2005-08-25
被引用文献数
2 14

新潟県上越市のアカヒゲホソミドリカスミカメ個体群について, 野外雌産下卵の休眠卵率の季節的な推移を調査するとともに, 休眠卵産下を誘起する環境要因についても検討を行った.22℃, 25℃, 28℃, 31℃, 34℃の5段階の温度と, 9L-15L, 10L-14L, 11L-13D, 12L-12D, 13L-11D, 14L-10D, 15L-9D, 16L-8Dの8段階の光周期を組み合わせた条件下で卵から飼育し, 羽化した雌の産下卵の休眠卵率を調査した.卵からの飼育温度が25℃の場合, 本種が休眠卵を産下する臨界日長は13時間と14時間の間にあった.しかし, 飼育温度が28℃, 31℃, 34℃と高くなると, 短日条件であっても休眠卵率が低下した.したがって, 本種雌は幼虫期からの飼育温度が28℃以上の高温であれば, 短日であっても非休眠卵を産下するようになると結論できた.休眠卵を産下している雌を31℃, 11L-13D条件下で個体飼育すると, 飼育開始5日後から非休眠卵を産下する雌数が増加したことから, 本種雌は, 5日程度高温を経験すると非休眠卵を産下する個体も現れるようになると考えられた.1999年から3年間, 野外雌を定期的に採集し産下卵の休眠卵率を調査した.1999年, 2001年9月に採集した雌が産下する卵の休眠卵率は, 時間の経過とともに高くなったが, 2000年については, 20日に採集した雌の産下卵の休眠卵率は7.4%と極端に低下した.2000年9月の上越市の平均気温の推移を見ると, 13日から平均気温で25℃を越える暑い日が4日連続していた.20日に採集した雌が休眠卵を産下せずに非休眠卵を産下した要因の一つとして, この数日間にわたる高温が関与している可能性が考えられた.
著者
松沢 寛
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.251-256, 1964-09-25
被引用文献数
2

現行流下式塩田の流下盤内に無数の坑道を作って生息するオオツノハネカクシの甚大なる虫害は, 本邦製塩業上大きな問題となっているが, 1963年秋以来1年余りの間, 本種の生態について調査研究を行なった結果, 1年3回(時に一部は4回)の発生をなし, 一部はさなぎ, 大部分は成虫にて越冬することがわかった。産卵期は大まかには, 4月中旬〜5月下旬ないし6月上旬, 6月下旬〜7月中下旬, 8月下旬〜9月下旬の3期で, またその発育所要日数は, 卵14〜20日, 幼虫40〜50日, 前蛹2〜4日, さなぎ6〜8日であった。幼虫は5令の令期をもつようで, 卵から成虫までは, 普通70日内外であった。成虫の生存日数は, 越冬期は2〜4月またはそれ以上にもわたるが, 活動期には概して20〜40日ぐらいであった。また産卵は1粒ずつ坑道の壁の小孔中になされるが, 5〜10卵ずつ2〜3回産卵されるもののごとく思われた。流下盤での生息は, 給水樋に近い, 盤長の大体1/3〜2/3にあたる部分で, 無数に作られた坑道は, 垂直的なものがもっとも多く, 盤底までの貫通率もかなり高かった。成虫の青色螢光灯への飛来は非常に顕著で, この方法は, 本種防除の1策となりうると思われた。本種の分布は, 調査の結果, 愛知県以西の現行流下式塩田に例外なく分布することが明らかとなり, また旧入浜式塩田跡にも, ほとんどすべて生息するようであった。
著者
窪田 敬士 志賀 正和
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.51-58, 1995-02-25
参考文献数
20
被引用文献数
2 7

5種クサカゲロウ(ヤマトクサカゲロウ,<i>Mallada alcestes</i>,カオマダラクサカゲロウ,ヨツボシクサカゲロウ,クモンクサカゲロウ)のコクヌストモドキ卵を幼虫期の餌とする累代飼育法が確立した。成虫は,酵母自己消化物(Amber BYF Series 100<sup>®</sup>もしくはAY-65)と蜂蜜の2:3(重量比)混合物か,ジャガイモ芽だしに集らせたモモアカアブラムシを餌として使い,飼育・採卵できた。5種のうち,ヤマトクサカゲロウと<i>M. alcestes</i>がこの餌での大量増殖に適していると考えられた。飼育温度26±0.5°C,光周期16L-8D,幼虫期の餌がコクヌストモドキ卵,成虫期の餌がAmber BYF Series 100<sup>®</sup>と蜂蜜の混合物という同一条件で,ヤマトクサカゲロウと<i>M. alcestes</i>を飼育し,内的自然増加率を求めた。ヤマトクサカゲロウが<i>r<sub>m</sub></i>=0.12, <i>M. alcestes</i>が<i>r<sub>m</sub></i>=0.09であり,大差ではなかった。上述の酵母自己消化物(特にAY-65)と蜂蜜の混合物は,肉食性のヨツボシクサカゲロウ成虫の飼育・採卵用の餌としても有効であることがわかった。
著者
宮尾 嶽雄 北沢 徹郎 両角 源美
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.255-258, 1959-12-30
被引用文献数
1

ネズミ科およびキヌゲネズミ科に属する8種のネズミのせきつい骨数を算定した。結果は第1表および第1図に示すとおりである。<br>せきつい骨数はネズミ科に属する種で多く(平均61.08),キヌゲネズミ科に属する種で少ない(平均48.63)。この両科はせきつい骨数によっても明らかに群別される。<br><i>Rattus</i>属のドブネズミとクマネズミでは,前者でせきつい骨数が少なく,差は有意である。また<i>Apodemus</i>属のホンドアカネズミとホンドヒメネズミの両者にもせきつい骨数に有意の差がみられ,前者で少ない。
著者
大島 格
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.212-225, 1960-12-31
被引用文献数
2

1)1掃立て口の微粒子病のり病率は雌雄ともに発ガ日の遅れるにしたがって次第に低下する。2)したがって1掃立て口の病ガの分布は多くの場合二項分布もポアソン分布もしない。3)同一発ガ期日の微粒子病ガは二項分布をする。4)それゆえ, 1掃立て口は発ガ期日順にり病率の次第に少なくなる二項分布(またはポアソン分布)をする有限母集団の順列的に並んだ集合母集団である。5)以上の理由により, 冷蔵浸酸種や越年種の母ガの検定にはWALDの逐次抜き取り検査法やASTM品質管理法は適用できない。6)検査試料の抽出法は比例抽出法によらなければならない。7)即時浸酸種の母ガ検査は鏡検した試料が全ガ無病のときは以後に発ガした母ガの蚕種は全部無検査のままで合格させてよい。付記 : 第2報としては"ガの混和器についで", その次には暫定的に"現行母ガ検査法の改良"を発表し, これが終わったら私の主目的である病ガ早期多発の特性を導入した新しいガの微粒子病検査法の設定に対する必要な研究事項を逐次発表する予定である。しかし繰り返していうが, 検査試料抽出法だけを合理化したとてガの鏡検が正しく行なわれなければ役に立たない。母ガの磨砕液は生ガなら水か0.5%カ性カリ液1.5〜2ml, 乾燥ガなら2%カ性カリ液2mlと定められているにもかかわらず, 鏡検実務者の現状を見ると0.5mlもはいっているかどうかくらいのことがひん発するようである。あれでは組織もろくに溶かされず, まざり物が多くてとてもよく鏡検できない。見にくいため実務者は可検液層を薄くして見よくする目的でデッキの上からガーゼで押して液を吸い取って鏡検しているが, そうすると胞子は液とともにデッキのはしに流れ去る危険が多く, また1視野の胞子の数量もヘってしまう。まざり物の多い場合には胞子はまざり物にせき止められる機会も多いが, まざり物が余り多いとそれにじゃまされて見落としが多くなるであろう。またこれはまざり物が多い場合にはめったにないことであろうが, 標本がきれいな場合, デッキの上から押して液を吸い取ってしまうと胞子は光線の曲折率がうすくなり, 普通の胞子とは全く違った様相を呈するようになることも留意しなければならない。いずれにしてもガの検査の合理的経済化を計るにはまず蚕種製造当業者に対する十分な指導が大切であるが, 現状においてこれが可能であろうか, 私は不安にたえない。