著者
徳田 誠 湯川 淳一 井村 岳男 阿部 芳久 Keith M. Harris
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.185-188, 2009-11-25 (Released:2009-12-16)
参考文献数
26
被引用文献数
5 8

In June 2005, an unidentified species of Dasineura (Diptera: Cecidomyiidae) that induced leaf-fold galls on cultivated roses was found in a greenhouse in Heguri, Nara Prefecture, Japan. Similar Dasineura species have been known to occur in Japan on two wild roses, Rosa multifolia and R. rugosa. In Europe, rose leaf midge, Dasineura rosae, induces leaf-fold galls on both cultivated and wild roses. In order to confirm the phylogenetic relationship among Rosa-associated Dasineura species, we analyzed a partial region of the mitochondrial DNA cytochrome oxidase subunit I (676 bp) gene. The nucleotide sequence of the Dasineura species collected from cultivated roses in Nara was identical to that of gall midges that induced leaf-fold galls on wild R. multiflora in Nara and Kyoto Prefectures, Japan. However, D. rosae and Dasineura sp., which are associated with R. rugosa, were phylogenetically distinct from them. This indicates that the Dasineura sp. associated with wild R. multiflora has invaded the greenhouse in Nara Prefecture and infested the cultivated roses.
著者
片井 祐介 石川 隆輔 土井 誠 増井 伸一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-6, 2015
被引用文献数
13

温室メロン栽培の重要害虫であるミナミキイロアザミウマに対して,メロンの播種直後からLED電球による赤色光(波長620-630nm)を1×10 18photons・m-2・s-1の光強度で照射したところ,成幼虫数は24時間連続照射区および昼間12時間照射区で無照射区と比較して有意に少なかった。また,ガラス温室において定植後のメロン株に赤色光(同上)を光強度4.7×10 18photons・m-2・s-1の光強度で照射したところ,成幼虫数は赤色照射区が無照射区より有意に少なかった。また,ビニールハウスにおいて定植後のメロン株に赤色光(同上)を1×10 18photons・m-2・s-1で照射したところ,成幼虫数は赤色照射区が無照射区より有意に少なかった。これらのことから,温室メロン栽培において,赤色LED光の照射はミナミキイロアザミウマの防除に有効であると考えられた。
著者
棚原 朗 桐原 成元 垣花 廣幸
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.245-250, 1994-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
12

To evaluate the effect of chilling on mass-reared melon fly, Bactrocera cucurbitae COQ., groups of adult flies were exposed to 3, 0.5, -2.2 and -3.5°C for 6, 12, 24 and 48h. The recovery and longevity of adult chilled for less than 24h at about 0.5°C was not adversely affected. A special container for chilled flies, which was able to keep the temperature below 10°C for 4h, was designed for their long-distance transport. The longevities of flies using aerial distribution by helicopter and hand release on the ground using the chilled transport container were compared with direct release from an emergence box without chilling at Miyagi Island in Okinawa Prefecture. There were no significant differences in longevity between the three release methods.
著者
内田 一秀 後藤 千枝 務川 重之 光永 貴之 鈴木 芳人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.157-164, 2009-11-25 (Released:2009-12-16)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The relationship between larval instar and head-capsule width in Helicoverpa armigera (Hübner) was examined in laboratory-reared and field-collected insects from Ibaraki and Yamanashi in eastern Japan. Each of the first three and each of the last three instars could reliably be distinguished using head-capsule width for both strains fed on an artificial diet. In the laboratory, 91.8% of larvae from Ibaraki had five instars, and 8.2% had six or seven instars, while 36.1% of the larvae from Yamanashi had five instars, and the rest had six instars. Pupation occurred when the larval head-capsule width reached about 2.6 mm, and the development time for each instar was independent of the total number of instars. Consequently, head-capsules were typically larger at each instar for larvae with fewer instars. The distribution of head-capsule widths in larvae obtained from sunflowers in Ibaraki showed peaks corresponding to the first, penultimate, and ultimate instars of laboratory-reared larvae. However, the widths supposedly representing the second and third instars were smaller than those found in the laboratory, suggesting that H. armigera larvae molt more times in the field than in the laboratory and require a longer time to complete development on sunflowers. These results may enable improvement of H. armigera forecasting and insecticide bioassay tests.
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.221-226, 1993-11-25
被引用文献数
1 2

1) ウリキンウワバ幼虫のトレンチ行動を野外および室内で観察し,ククルビタシン,師管液,隠蔽との関連性について検討した。<br>2) 幼虫のトレンチ部位は,発育に伴って葉端から葉脈基部へ変化した。<br>3) 寄主植物に対する人為的な処理がトレンチ率へ与える影響を調べた結果,野外の自然状態の葉に対し,茎を切って水差し状態にした無傷の葉ではトレンチ率は低かった。<br>4) 師管液の量は野外状態の葉で多く,また茎を切って水差し状態にした無傷の葉では切断からの放置時間が長いほど少なかった。<br>5) 葉の表に細く切った紙を貼り,葉の強度を増した条件でのトレンチ率を調べたところ野外状態では100%のトレンチ率を示したが,室内において切断から2時間経った葉ではトレンチを描かずに摂食した。<br>6) ウリキンウワバ幼虫のトレンチ行動は,ウリ科植物の師管液に対する適応的行動である可能性が示唆されたが,師管液説,ククルビタシン説のいずれかに断定することはできなかった。
著者
杉本 渥
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.60-67, 1978-05-25
被引用文献数
3 12

久米島での不妊虫放飼実験のためのウリミバエ大量飼育法を設定するため,大量採卵法を検討した。<br>飼育個体群のとう汰を避けることに留意したが,野生の成虫は産卵開始が緩漫で,採卵能率上,とう汰して産卵前期間を短縮させることはやむを得なかった。しかし,従来は人工採卵器に適応させるためのとう汰も必要としたと考えられるが,筆者の採卵器はカボチャ果汁で濡らしたちり紙で内張りし,産卵孔を潤すことによって野生の成虫からもよく採卵できた。なお,この採卵器は内張り材料をポリエチレン網に変えることによって,使用方法を簡易化することができた。<br>成虫の飼料は蔗糖とたん白質加水分解物を分別給与するよりも,混合して与えるのが良いことを認めた。飼料のたん白分および飼育箱の収容虫数を多くすることは,成虫の排泄物による箱内の汚れを増して長期間の飼育採卵を困難にするが,短期間に多量に採卵する上には得策と考えられた。<br>試作大型飼育箱による採卵実験によって大量採卵の可能性を確認するとともに,小型飼育箱との比較から,飼育箱の成虫収容能力は箱の容積よりも内壁面積に比例すると推測した。この結果に基き,週450万個を採卵する方法を計画し,そのための成虫飼育箱を設計した。<br>今後の課題として能率面での改良のほか,個体群とう汰軽減の見地から成虫の液状飼料の使用方法を再検討すること,飼育個体群への野生虫の遺伝形質の補給手段,大量採卵用とは別に遺伝形質・習性保持のための飼育システムを設けることなどが重要と考えた。
著者
中尾 弘志
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.125-130, 1984-08-25
被引用文献数
1 3

北海道では,毎年約5%のダイズがハトによる被害を受けた。ダイズの栽培面積と被害面積率との間には負の相関(<i>r</i>=-0.256<sup>*</sup>, <i>n</i>=91)が,被害面積率とダイズ食害率との間には正の相関(<i>r</i>=0.390<sup>***</sup>, <i>n</i>=91)が認められた。加害の主体はキジバトであった。<br>播種時期別の被害調査(5∼6月)では,いずれも食害率が高かった。<br>畑へのハトの飛来は早朝と夕刻に多かった。<br>キジバト,ドバトとも主として植物質を餌とし,ダイズ,アズキ,コムギ,トウモロコシ,イネなどの農作物を多くとっていた。コムギは利用可能な期間が7∼9月と長く,栽培面積が急増しているために,餌としての重要性が高くなってきたと考えられる。
著者
青木 淳一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.136-137, 1960-06-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
4
著者
若村 定男 北村 実彬 高橋 正三
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.227-231, 1975-12-25
被引用文献数
1

透明プラスチックの箱(容積46.7<i>l</i>)に,20個のフェロモンホルダーをとりつけ,それぞれに,合成性フェロモン<i>cis</i>-9, <i>trans</i>-12-tetradecadien-1-ol acetateを350μgずつ浸み込ませ,羽化後間もないスジマダラメイガ(<i>Cadra cautella</i> WALKER)成虫を2対入れ,配偶行動の観察と,産卵数の調査を行なった。フェロモンを供試しなかった対照区では,第2夜までに,すべての雌に交尾が観察されたのに対し,フェロモン処理区では,第4夜まで観察を続けたが,交尾は1例も認められなかった。また,ホルダーあたりの供試量を35μg, 3.5×10<sup>-2</sup>μgと減ずるに従って,交尾は,より早い時期に高いひん度で観察され,3.5×10<sup>-4</sup>μgの場合には,対照区とほとんど差がなくなった。したがって,スジマダラメイガの密度が十分に低い条件では,多量の合成フェロモンにより,交尾が阻害されることが確認された。また,交尾阻害の程度は,合成フェロモン供試量と依存関係にあることも示された。<br>同様の実験を,性フェロモン類縁化合物の一つである<i>cis</i>-9-tetradecen-1-ol acetate (<i>c</i>-9-TDA)についても行った。<i>c</i>-9-TDAは,スジマダラメイガの雄に対し,性フェロモンの10<sup>4</sup>倍の量を供試すると,同程度の性フェロモン活性を示す。しかし,実験の結果<i>c</i>-9-TDAは合成性フェロモンと同程度の交尾阻害力を有することが確認された。
著者
金児 靖二 井野 正興 高見澤 雄一郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.65-73, 1995-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

手術を施して活動量の低下したゴキブリ用のアクトグラフを3種類考案した。つるした円環状の容器中を昆虫が歩くトラックとし,歩行による揺れを検出する「浮き輪型」,昆虫の歩行により生じるアルミ箔の振動を検出する「振動型」,そして従来の回転輪装置を改良して微少な回転をも検出する「新回転輪型」の性能を比較した。記録方式はイベントレコーダによらず,アクトグラフ出力を電子回路を介してパーソナルコンピュータに直接入力し,自動的かつ定量的にデータ処理ができるようにした。いずれも正常個体,手術個体(断頭個体)に対して感度の高い,良好な記録が得られた。「浮き輪型」は一番感度が高かった。そのためノイズ的活動もピックアップするが,手術後の活動の特徴を捉える事ができた。「振動型」ではゴキブリに正帰還作用によるストレスの働かない,比較的自然な活動が記録できると思われた。「新回転輪型」はノイズが少なくリズムを明瞭に記録できた。またこれは3タイプのうちで測定の定量性が一番保証されるので,手術前後の活動量が比較できるという長所をもっていた。これらのアクトグラフは,他の昆虫の活動記録にも利用できるであろう。
著者
杉山 章平
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-46, 1971-03-25
著者
桑山 覺
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.115-120, 1971-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 6

1) 本報には,わが国において桑樹主要害虫の一つとして知られたクワキジラミAnomoneura mori SCHWARZ (1896)の生態,ならびにその寄生がカイコの発育に及ぼす影響について,調査した結果の大要を報告した。2) 本種は年1回の発生で,成虫態で越年し,北海道では5月下旬頃,新葉の開く直前の桑樹に来り,葉の開展を待って産卵する。産卵は主として葉裏になされ,発生の多いときは1葉数百粒に及ぶことがある。卵期およそ18日,ふ化した仔虫は葉裏にあって汁液を吸収し,腹端より細長い糸状の白色ろう質物をラセン状または屈曲して分泌する。このため葉裏は一面に白綿にて覆われた観を呈する。仔虫期間およそ22日,この間4回脱皮し,5令を経て成虫となる。1雌の産卵数は平均440粒。3) 成虫の色彩は羽化後間もない期間と,越年したものとの間では大いに異なる。羽化後間もないものは全体淡青緑色で,前翅もほとんど透明であるが,羽化後時間の経過と共に色彩を変へ,体は暗褐色となり,前翅には多数の黒褐色小点紋を密布する。仔虫は令を加えるごとに触角の節数を増加する。すなわち第1令から第5令に至る触角節数は3:3:4:8:10である。翅芽は第1令の未期から認められる。4) 桑葉に付着しているキジラミの卵および第1∼第3令までの仔虫をカイコに給与するときは,第3令以後のカイコは,それらを嫌忌することなく,桑葉と共に咬食嚥下する。5) カイコがキジラミ卵ならびに仔虫を摂食するときは,発育に障害があるもののようで,上簇をおくらせ,繭重を減じ,繭形を小さくする。また疾病に対する抵抗力を減じへい死率を増加する。それより羽化した成虫は生存期間を短縮する傾向がある。このことはキジラミ卵ならびに仔虫そのものによる中毒などのような直接の影響とするよりも,それらを摂食することにより栄養不良を惹起しそれに伴う間接の影響と見るべきもののようである。
著者
守谷 茂雄 前田 洋一 米久保 智得 浅川 浩一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.220-226, 1977-12-25
被引用文献数
1

いもち病防除剤であるイソプロチオランの水溶液にイネの幼苗を浸根処理し,処理苗にトビイロウンカを放飼してウンカの生育,産卵などに及ぼす影響を調べた。<br>40ppm処理苗で連続飼育した成虫は寿命が短くなり,特に雄において影響が著しかった。生存1雌1日当りの産卵数は減少し,卵のふ化率も低下した。しかし,処理苗で短期間飼育した成虫の産下卵は正常にふ化し,ふ化幼虫を無処理苗で飼育した場合には正常に生育した。<br>ふ化直後から処理苗を与えた幼虫は徐々に死亡し,40ppm処理では羽化までにほとんどが死亡したが,死亡虫の中には脱皮途中で死亡する個体もみられた。5ppm処理苗を全幼虫期間与えたトビイロウンカは羽化後死亡する個体が多く,羽化成虫は寿命が明らかに短くなり,産卵数も少なくなる傾向を示した。<br>イソプロチオランはイネに産下されたウンカ類の卵にほとんど影響せず,処理卵からふ化した幼虫の生育,羽化,羽化成虫の産卵にも大きな影響は認められなかった。
著者
大津 正英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.75-78, 1972-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 6

越後山系の飯豊山の北側と,朝日岳の東側,すなわち山形県側の山麓地帯で,1968年12月から,1971年2月までの3猟期(12月1日から翌年2月15日まで)内に捕獲したテン51個体の,胃の内容物を調査した。その結果,胃の内容物は,鳥類が3種類,哺乳類が3種類,および植物の漿果が2種類であった。胃の内容物で,多くみられたのは,ヤマドリとトウホクノウサギであり,それぞれ,全体の25%と35%の個体にみられ,その重量は,それぞれ,47%と30%であった。植物では,カキの実が,より多く,全体の11%の個体にみられ,その重量は,全体の8%であった。なお,テンの生息密度は,農林省の狩猟統計書の捕獲数から,漸時減少の傾向がみられる。
著者
角田 隆 森 樊須 島田 公夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-4, 1992-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinus (TROUESSART)の耐寒性について調べた。雌成虫の過冷却点(SCP)の平均は摂食中で-22.7±1.25 (mean±S.D.)°Cだった。光学顕微鏡の冷却チャンバー内でSCP以下にダニを冷却したとき,体内に氷晶が形成されるのが観察された。氷晶形成後に再び室温に戻しても蘇生する個体はなかった。絶食によってSCPは低下したことから,消化管の内容物が氷晶核として作用していると考えられる。SCPより高い温度でも冷却期間を長くすると死亡率は高くなった。この場合の死亡要因は代謝系の異常か乾燥によると考えられる。
著者
村井 保 石井 卓爾
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.149-154, 1982-08-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
31 49 8

ヒラズハナアザミウマの飼育法を検討した結果,以下のことが明らかとなった。1) ヒラズハナアザミウマは薄膜(シーロンフィルム)を通して液体飼料を吸汁でき,この薄膜を通して液中によく産卵することがわかった。2) ヒラズハナアザミウマは,蜂蜜液だけでは発育,産卵できなかったが,チャ,ナシ,イチゴ,チューリップ,マツなどの花粉と蜂蜜液の組み合わせでは,餌を交換しなくても幼虫が発育し,85∼90%の高率で羽化成虫を得ることができた。さらに,この方法により産卵も促進した。3) ハナアザミウマも花粉と蜂蜜液で飼育できることがわかり,訪花性アザミウマ類の簡易大量飼育の可能性が示唆された。4) 本法による発育調査の結果,ヒラズハナアザミウマ,ハナアザミウマとも,羽化までの発育は揃い,成虫の生存期間は長く,産卵数は極めて多いことがわかり,訪花性アザミウマ類にとって,本飼育法は,葉や果実を用いる飼育よりも本来の餌条件に適合していることがわかった。