著者
一瀬 太良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-106_1, 1959-06-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

タマナギンウワバ(オオワイキンモンウワバ)Plusia nigrisigna WALKERは本邦において最も普通の蔬菜害虫であるが,この種名は従来誤ってガマギンウワバP. (≠Phytometra) gamma L.として取り扱われてきたようである。この混同のいきさつや原因などを考察し,種名(属名を含む)の取り扱い方を論じた。タマナギンウワバについては従来あまり詳しい報告がない。よってその形態を述べ,あわせてガマギンウワバその他の近似種との比較を行った。
著者
大石 毅 本間 淳 日室 千尋 照屋 清仁
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
応動昆 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.123-126, 2018
被引用文献数
5

<p>To improve the larval artificial diet in a mass-rearing system of <i>Euscepes postfasciatus</i>(Fairmaire), we compared the yield and quality of weevils reared on artificial diets containing different types and amounts of commercial sweet potato powder, using their current diet as the control(made from peeled tubers). We compared a diet containing the same amount of an alternative sweet potato powder(made from the peel of tubers), a diet containing half the amount of the alternative sweet potato powder, and a diet containing no sweet potato powder. The resulting numbers of emerged adults, mean male mass, and rate of sexually matured females did not differ significantly between the diets. Moreover, the mass of females reared on a diet with half the amount of alternative sweet potato powder showed no significant difference from those reared on the control. However, the males reared on the control transferred significantly less sperm than those reared on the other diets. These results indicated that the diet with half the amount of alternative sweet potato powder was superior in terms of yield, quality, and production cost in the weevil mass-rearing system.</p>
著者
大津 正英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.25-30, 1973
被引用文献数
2 1

山形県の中央部に位置する白鷹山(海抜:992m)の東側山麓,標高500&sim;520mにおいて,互に隣合った落葉広葉樹林地,アカマツ造林地,スギ造林地および農耕地において,野ネズミが種類によりどのように移動しているのかについて1969年6月から1971年5月まで調査した。<br>1. ハタネズミは非常に定住性の強い種類で移動性個体は総個体の11.1%であった。また移動範囲は狭く移動する時期は4月から8月までであったが,その行動は2月から11月まで行なわれた。<br>2. ヤチネズミの移動性個体は本種の総個体の22.2%であった。またその移動範囲は狭く移動する時期は2月から11月までであった。<br>3. アカネズミは非常に移動性の強い種類で移動性個体は本種の総個体の36.7%であった。また移動する範囲は広かった。本種は食料の豊富な土地につぎつぎと移動し,その移動する時期は4月から11月までの無積雪期であった。<br>4. ヒメネズミの移動性個体は本種の総個体の20.5%であり,その移動する範囲は広かった。本種の移動は年間を通じて行なわれたが雄のみであった。<br>5. 野ネズミの種類ごとに捕獲された最長の期間は,ヒメネズミは11か月間,アカネズミは10か月間,ハタネズミは8か月間,ヤチネズミは4か月間であった。
著者
高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.71-76, 1991-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

ヌルデシロアブラムシの虫えいの発育と有翅虫の虫えいからの脱出について,京都の山地および圃場のヌルデで調査し,次の結果を得た。1) 虫えいは5月中旬から6月上旬に形成され,10月中旬から11月初めに裂開した。3個の虫えいについて,最大長・幅・高を定期的に測定した。その値から求めた「表面積指数」は,虫えい形成後9月初めまで指数的に上昇し,その後増加率はやや低下したが,9月末まで上昇をつづけた。10月にはいると発育は停止した。幹母(虫えい内第一世代)は6月下旬に,第二世代無翅胎生雌は7月末にそれぞれ産子を開始し,最終世代の有翅胎生雌は9月中旬に3齢幼虫になった。8月中に少なくとも1世代は経過すると思われるので,虫えい内では4世代を経ると考えられる。2) 10月に調査した15個の虫えいは,最少1,343匹,最多8,438匹の有翅虫を包含していた。観察した2個の虫えいから,有翅虫はそれぞれ11日,13日間にわたって脱出した。脱出は9∼17時に見られた。時間別脱出虫数は調査した6日のうち5日については,12∼13時をピークとする一山型の消長を示した。
著者
前田 太郎 坂本 佳子 岡部 貴美子 滝 久智 芳山 三喜雄 五箇 公一 木村 澄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.109-126, 2015
被引用文献数
4

2010年頃から,飛べないニホンミツバチApis cerana japonica Rad. が巣の周辺を這いまわり,多くのコロニーが消滅していく事例が日本各地で見られるようになった。その症状が,セイヨウミツバチAp. mellifera L. で報告されているアカリンダニ症と酷似していることから,原因としてミツバチに寄生するアカリンダニAcarapis woodi (Rennie)の寄生が疑われた。しかし,実際にアカリンダニの存在を確認した例は少なく,2013年3月までの公式報告はわずか4件のみであった(農林水産省,2014)。前田(2015)の2013年度の調査によると,すでに日本の広い範囲でニホンミツバチがアカリンダニに寄生されており,今後さらに寄生地域が拡大していくことが懸念される。アカリンダニの生態や防除法に関しては,ヨーロッパやアメリカを中心に,セイヨウミツバチを用いた研究調査が行われてきたが,日本ではアカリンダニについて正確な情報が十分知られておらず,現状の把握と対策が遅れている状況にある。
著者
浅野 昌司 宮本 和久
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.121-127, 2007-05-25
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

B剤の紫外線(UV)保護剤の効果を室内試験で評価する方法として、市販のUVランプ(東芝健康用蛍光ランプFL20S・E、波長270-370nm、ピーク波長:315mm)を照射光源に用い、照射後の生物活性をカイコ2齢幼虫に対する発育阻害活性をもとに評価する方法を検討した。市販のB剤(エスマルクDF水和剤)の1000ppm懸濁液を上記UVランプに1-4日間照射すると、照射日数に対応してカイコに対する発育阻害活性が低下し、4日間で照射前の活性の約1/200に低下した。これに酸化鉄を添加して同様にUVランプを照射すると添加濃度(0.01、0.03および0.1%)に対応したUV保護効果が見られた。酸化鉄0.01%を添加したB剤懸濁液の4日間照射による活性低下は無添加のそれに比べ約1/10に抑制できることが推定された。
著者
鷲塚 靖
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.205-210, 1980-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9

生態系のリンの循環で,昆虫類が果たす役割を明らかにする目的で,59種の昆虫類と,これらの一部についてはその食物に含まれるリンの含量を調べて,食性別および食物連鎖の栄養段階別に比較考察した。分析方法はリンをモリブデン酸アンモニウムと反応させて測定する間接原子吸光法を用いた。検体は野外採集によるものと室内飼育によるものとがあり,いずれも新鮮な材料を用いた。またオサムシ類にヨトウガ,ハスモンヨトウ,モンシロチョウ幼虫を捕食させた実験を行い,リンの含量の推移を調べた。その結果,リンの含量は食糞性昆虫が最も高く5.42(以下ppm),食肉性昆虫3.56,腐肉食性昆虫3.17の順であった。食植性昆虫では花蜜吸収性昆虫2.93,植物吸収性昆虫2.79,樹液吸収性昆虫2.14,食樹性昆虫2.06,食葉性昆虫2.04であった。その他,雑食性昆虫1.33でその値は低かった。いずれの場合も,食物より,それを摂食した昆虫の方がリンの含量が高かった例は本調査の94%を占めていた。また,オサムシ類の捕食実験の結果では,ハスモンヨトウを捕食したオオオサムシの場合を除いて,ヨトウガ,ハスモンヨトウ,モンシロチョウの各幼虫を捕食した場合,オサムシ類のリンの含量は高くなった。
著者
村越 重雄 上門 敏也 張 清芬 桜井 成 田村 三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.26-30, 1976
被引用文献数
2

葉を主体とした地上部のメタノール抽出物が,カイコの生育に悪影響を与えることを確認した4種類の植物に含まれる活性成分を単離し,それらの成分のカイコの生育におよぼす影響を調べた。<br>1. キバナオランダセンニチに含まれる活性成分はspilantholであった。spilantholを人工飼料中に200ppm添加すると,すべての幼虫は6日後までに死亡した。<br>2. ジギタリス中の活性成分はdigitoxinにdigitalinが加わったものであると推定された。digitoxinは25ppmで虫体を軟化させ,100ppmで6日後にすべての幼虫を死亡させた。digitalinでは100ppmで虫体の軟化が見られたが,400ppmでも死亡するものはなかった。<br>3. コブシの活性成分としてsesaminとkobusinが単離された。kobusinは新しく見い出された化合物で,400ppm添加飼料を与えると,幼虫に強い生育阻害が見られ,すべてのものが5日後に死亡した。sesaminはkobusinの約1/2の活性を示した。<br>4. キツネノマゴからは活性成分として,justicidin AとBが単離された。justicidin Aでは20ppm添加飼料を与えると6日後にすべての幼虫が,Bではほとんどの幼虫が死亡するという強い活性が認められた。
著者
大津 正英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.37-42, 1967-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

1963年9月から1966年4月まで,トウホクノウサギの毛色変化を起こす要因と,更にその要因の詳細を研究し,次の結果を得た。1) 白変期に入った動物に,蛍光燈を1日に12時間以上照射すると,白変がほとんど停止し,褐変期に入ろうとする動物を暗室に入れ,これに1日10時間蛍光燈を照射すると,褐変はほとんど進まない。2) 毛色変化の遅速は,蛍光燈の照射時間の長短とほぼ一致し,長いほど褐変を促進し,白変を抑制する。したがって毛色変化を起こす最も重要な要因は,日照時間とみられる。3) 毛色変化は,環境温度・周囲の白色または褐色にほとんど影響されない。
著者
鷲塚 靖 日巻 茂美 楠美 明男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.150-152, 1986

昆虫類58種(台湾産15種,日本産43種),土壌動物,小動物17種(台湾産8種,日本産8種,台湾・日本産1種)に含まれるカリウム,カルシウム,マグネシウム,ナトリウムの含量について調査した。その結果,4元素の含量と分布は昆虫の食性や系統分類学上における顕著な有意差がみられず,土壌動物,小動物のそれらについても同様な結果になった。また,これらの4元素の生態系における移動と分布はリン,窒素のそれらと著しく異なっていた。
著者
金子 武 一戸 稔
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.165-174, 1963-09-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

1. 茶樹に寄生する線虫の種類を,全国各地の茶園土壤について調査した。その結果つぎの7種がかぞえられ,各種類に対し形態的記載を与えた。Helicotylenchus dihystera Helicotylenchus erythrinae Hemicriconemoides kanayaensis Meloidogyne incognita var. acrita Paratylenchus curvitatus Pratylenchus loosi Tylenchorhynchus nudus2. 線虫の土壤中垂直分布は,Hemicriconemoides, Paratylenchusは比較的深部(30cm内外)に,Pratylenchus, Helicotylenchusは比較的上層(10cm内外)に多い。また,全般的に畦の西側では東側よりも生息数が多い。3. Hemicriconemoidesの寄生状況を観察した。Pratylenchusは根および根辺土壤の両者より検出される。4. Hemicriconemoidesの発生消長について調査した。土壤から検出されるHemicriconemoidesの大部分は雌成虫で,雄は年間を通じきわめて少ない。幼虫の占める割合は7月に最高となる。雌の蔵卵数は通常14∼15粒である。6∼7月の室内観察では,Hemicriconemoidesの卵期間は15∼20日である。またHemicriconemoidesの産卵状況を観察した。5. 窒素肥料を多用した園では,Hemicriconemoidesの密度が減少し,Paratylenchusの密度が増大する傾向がみられる。6. Hemicriconemoidesの天敵としての藻菌類の寄生状況について観察した。
著者
細田 昭男 浜 弘司 鈴木 健 安藤 幸夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.83-90, 1993
被引用文献数
1 8

1988∼1990年に広島県立農業技術センター(東広島市八本松町)内にアブラムシ類が移出・入のできない小型ハウスを組み立て,ナズナ,オオイヌノフグリとムクゲの3種の冬寄主植物上で越冬したワタアブラムシ個体群のナスとキュウリの夏寄主植物に対する選好性と各寄主植物上で増殖した個体群のフェニトロチオンに対する感受性を検討した。<br>1) ナズナ,オオイヌノフグリなどの冬寄主植物で越冬した個体群の中には,ナスを選好するタイプとキュウリを選好するタイプが存在し,地域や年次によって,一つのタイプが優占する場合と,二つのタイプが混在する場合が認められた。<br>2) ナスとキュウリに寄生した個体群をそれぞれナズナとオオイヌノフグリ上で越冬させると,翌春にはナス由来の個体群はナスを,キュウリ由来の個体群はキュウリを選好した。<br>3) 卵越冬すると考えられている越冬寄主植物のムクゲに寄生した個体群も,春にはナス由来の個体群はナスに,キュウリ由来の個体群はキュウリに選好性を示した。<br>4) ナス由来とキュウリ由来の個体群をそれぞれナズナ,オオイヌノフグリとムクゲの冬寄主植物で越冬させ,翌春ナスとキュウリ上で増殖した個体群のフェニトロチオンに対する感受性は,ナス個体群では高くキュウリ個体群は低く,両個体群間で薬剤感受性は異なった。<br>5) 以上の結果から,ワタアブラムシの中にはナスとキュウリをそれぞれ選好するタイプが存在し,越冬寄主植物上では二つのタイプが混在していても,春∼秋の間もそれぞれの寄主選好性は維持されることが示唆された。そして,このことがナス科とウリ科作物寄生個体群の有機リン剤感受性の差異を維持している大きな要因と考えられた。
著者
昆野 安彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2006-02-25
被引用文献数
1 3

大雪山国立公園の白雲岳(2,240m)高山帯においてウラジロナナカマド,ウコンウツギ,チシマノキンバイソウに訪花したハエ目とハチ目の多様性を調べた.その結果,全調査の合計で9科35種317個体のハエ目とハチ目が得られた.内訳はハナアブ科が21種204個体,オドリバエ科が1種7個体,クロバエ科が1種2個体,ハナバエ科が2種52個体,ヒメハナバチ科が2種5個体,コハナバチ科が1種19個体,ミツバチ科が3種17個体,ハバチ科が2種4個体,コンボウハバチ科が2種7個体で,人雪山高山帯では訪花昆虫としてハエ目が優占し,とくにハナアブ科が種数,個体数ともに優占していることが明らかになった.高山植物別に見ると,ウラジロナナカマドとウコンウツギではハナアブ科が優占していたが,チシマノキンバイソウではハナバエ科が優占していた.種多様度(1/D)はウコンウツギが9.7でもっとも高く,ウラジロナナカマドとチシマノキンバイソウではそれぞれ7.2と3.9であった.高山植物間の種構成の類似度指数(QS)はウラジロナナカマドとウコンウツギでは0.71と高い値を示したが,ウラジロナナカマドとチシマノキンバイソウでは0.28,ウコンウツギとチシマノキンバイソウでは0.32とそれぞれ低い値を示した.ウラジロナナカマドについては赤岳(2,078m)でも調査を行ったが,白雲岳との種構成の類似度QSは0.55であり,同種の花であっても調査地点が異なると訪花昆虫の種構成が異なることが明らかになった.大雪山高山帯への侵入が警戒されているセイヨウオオマルハナバチについては採集も目撃もできなかった.
著者
古 徳祥 伊藤 嘉昭
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.228-231, 1982
被引用文献数
1

名古屋大学構内の大型アミ室で集団マーキングによって,ツマグロヨコバイの雌成虫の寿命を調べた。第1世代の平均寿命は羽化からマークまでの期間(平均約2日)を除き,高田産9∼11日,筑後産5∼8日であり,第2世代の平均寿命は高田産18∼35日,筑後産15∼17日であった。地域による差は見られなかった。最長記録は第2世代の84日であった。両世代の成虫は40∼50日間にわたり共存した。
著者
潮 新一郎 吉岡 謙吾 中須 和俊 脇 慶三
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-9, 1982-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
21
被引用文献数
4 20

奄美群島のミカンコミバエの防除は,メチルオイゲノールを利用した雄除去法により,1968年に開始され,1974年から同群島全域の一斉防除を行った。防除は,テックス板,木綿ロープ,綿棒の素材にメチルオイゲノールと殺虫剤の混合剤をしみ込ませて,航空散布および地上吊り下げにより定期的に実施した。その結果,1976年以降発生はほとんど認められなくなったので,1977年から1979年まで根絶確認のための調査を実施した。本調査は,寄主果実に対する調査を主体とし,トラップ調査を補助的手段として行った。1977年には,喜界島および奄美大島について実施したが,わずかながら本種の発生が認められ,まだ根絶されていないことが判明した。1978年には,喜界島,奄美大島および徳之島について,30万個以上の果実調査と,118個のモニタリング・トラップによる14回の成虫回収調査を実施し,1979年には,沖永良部島および与論島について,83,000個の果実調査と,30個のトラップによる17回の成虫回収調査を実施した結果,ミカンコミバエは全く認められず,根絶を確認した。
著者
内藤 篤
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.159-165, 1960
被引用文献数
5

シロイチモジマダラメイガは広く世界の熱帯,亜熱帯,温帯地方に分布し,本邦では九州,四国および本州の中国,東海近畿,北陸,関東に分布し,一部は東北南部太平洋沿岸地帯にも及んでいる。しかし九州および西南暖地の平坦部を除いては発生が少ない。本種の分布北限帯は,仙台平野の南部太平洋岸に始まって海岸沿いを南下し,関東地方の北部山ろく地帯を通り,本州の中部山岳地帯をう回して北陸に達し,反転して富山平野の山沿いを東北に進み,越後平野の北部あたりから日本海に抜ける。<br>本邦におけるシロイチモジマダラメイガの分布北限界の指標として,年平均気温11.5∼12.5°C等温帯および夏期平均気温(5∼10月)18.5∼19.5°C等温帯をあげることができる。しかし分布限界を大陸にまで延長して考えるならば,後者のほうがより適合性が高いようである。<br>マメシンイガは極東地域の寒帯,亜寒帯および温帯に分布する。本邦では北海道,本州,四国の全域および九州の一部に分布し,北海道および本州の東北,北陸,関東東山,山陰地方では発生が多いが,それ以南の暖地の平坦部や九州では少ない。また種子島以南の諸島では本種の存在が確認されておらず,おそらく九州本島が南限のように思われる。<br>以上のような両種の発生分布の状態から,明らかにマメシンクイガを北方系,シロイチモジマダラメイガを南方系の害虫とみることができる。両種は東北の南部から九州に至る広範囲にわたって混在し,関東,東海近畿,山陽および四国地方では両種の勢力はほぼ等しい。しかし総体的にみた場合は,本邦においてはマメシンクイガのほうが優勢である。
著者
阿久津 喜作
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.56-62, 1971-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

1) 顆粒病ウイルスを散布したキャベツに産みつけられたモンシロチョウは,ふ化してから6日&8日後に2令または3令で最も多く死亡した。葉の表面に散布した場合よりも,表・裏両面に散布した場合に死亡する令が早かった。2) キャベツ畑に顆粒病ウイルスを散布してから6日後と12日後に調査したところ,モンシロチョウの虫数はり病虫発生のため激減し,被害度も無散布と比較して明らかな差が認められた。3) 顆粒病ウイルスとディプテレックス50%乳剤,エンドリン50%乳剤の混合散布では,殺虫剤の効力が失なわれた後でも,顆粒病ウイルスの感染力が保持されていて,虫の密度を低くおさえる効果があった。
著者
内山 徹 小澤 朗人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.109-117, 2017-05-25 (Released:2017-06-18)
参考文献数
45
被引用文献数
5

We investigated the inheritance of resistance to diamide insecticides, flubendiamide, and chlorantraniliprole in the smaller tea tortrix, Adoxophyes honmai Yasuda, using resistant(R)and susceptible(S)strains obtained from Shizuoka Prefecture, Japan. Lethal concentration 50(LC50)values for flubendiamide in the R and S strains were 129 and 3.26 ppm, respectively. LC50 values for chlorantraniliprole in the R and S strains were 48.2 and 1.33 ppm, respectively. The results of crossing experiments showed that resistance to the two diamides was an autosomal incompletely dominant trait controlled by polygenic factors.
著者
水田 国康
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.146-152, 1960-09-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
9 15

チャドクガもマイマイガも卵は卵塊として産付されるがその幼虫の習性は異なり,チャドクガの幼虫は終齢に達するまで密接に集合し集団的に行動するが,一方マイマイガはこのような集合性は示さない。両種の室内での飼育によると,チャドクガでは集団の個体数が少ないほど死亡率が高く,幼虫期間も長くなり,脱皮回数も多くなった。また集合飼育の幼虫を各齢期に1頭に分離した場合にも,早い齢期に隔離したものほど死亡率が高く,幼虫期間も増加する傾向があった。ことに若齢(1∼3齢)期に隔離したものは発育を完了することができなかった。しかしさなぎ期間,終齢幼虫の頭幅,さなぎ体重,蔵卵数については,集団の大小あるいは隔離齢期による差は認められなかった。マイマイガでは,幼虫期間,さなぎ期間,幼虫の頭幅,さなぎ体重および蔵卵数などは1頭区において最大になり,容器あたりの個体数が増加するにしたがいこれらは減少する傾向が認められた。しかし幼虫期間は中間区で最小となった。