著者
鈴木 一正 小島 勝 海辺 剛志 中村 海人 粕谷 忠道 山崎 健也 時永 耕太郎 田代 淳 木村 亮 野呂 昌弘 秋草 文四郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2417-2425, 2016
被引用文献数
2

<p>41歳,男性.発熱,著明な浸出性胸腹水,全身のリンパ節腫脹,CRP高値を認め,原因不明の重症漿膜炎として大量ステロイド,シクロスポリンを投与するも無効.その後,シクロフォスファミド大量静注療法(intravenous cyclophosphamide:IVCY)を追加したところ,著効し,胸腹水は消失した.その後,リンパ節組織を再度検討し,臨床所見とあわせて,TAFRO症候群の診断に至った.本症例はIVCYがTAFRO症候群に有効である可能性を示唆する貴重な症例であると考える.</p>
著者
池田 佳生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1453-1456, 2018-08-10 (Released:2019-08-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
岡田 浩一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.901-906, 2019-05-10 (Released:2020-05-10)
参考文献数
10

近年,顕性アルブミン尿を伴わずに糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低下する非典型的な糖尿病関連腎症が増加しており,古典的な糖尿病性腎症を含む包括的な病名として,糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)が用いられるようになった.DKDの早期診断のためには,尿アルブミンとeGFR(estimated GFR)の測定が必要であり,適切な管理には,紹介基準に沿ったタイムリーな病診連携の開始が重要となる.
著者
一戸 辰夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2347-2355, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
15

獲得免疫系の主役をなす細胞群であるT細胞とB細胞は,抗原特異的な受容体として,それぞれT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)とB細胞受容体(B-cell receptor:BCR)を発現している.TCRとBCRの抗原結合部位は,遺伝子再構成により決定され,ヒトの体内では1010オーダーの多様性を獲得している.従来,これらの膨大な数に及ぶ抗原受容体のレパートリー(レパトア)の全容を知ることは困難であったが,核酸シークエンス技術の飛躍的発展により,所望の細胞集団に発現されているTCR・BCRの遺伝子配列を個々のクローンのレベルで同定することが可能となった.現在,このような網羅的免疫シークエンス技術が,免疫応答のin vivoモニタリングや抗体医薬品・ワクチン・細胞医薬品等の創薬に応用されつつあり,今後もさまざまな医療の領域に大きな革新をもたらすことが期待されている.
著者
岡村 輝彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.804-807, 1965

概要 リウマチ熱は再発の多い疾患である.リウマチ熱罹患者に対し経口ペニシリン(緩衝ピリミジンペニシリンまたはバイシリンV<sub>2</sub>)または持続作用性のサルファ薬(スルファジメトキシピリダジン)による化学予防を行なった. 1年以上追求した37例の成績はつぎのとおりであつた.全額公費負担による投与にもかゝわらず,充分に内服を行なつたものは全例の54%にすぎなかつた.定期的に咽頭における小林I型溶連菌を検索した成績では,充分に内服を励行した群において,その検出率の減少をみた.また再発率は年間5.7%におさえ得た.これは化学予防を行なわない場合の1/3である.特に弁膜症を遺した群においては再発率を1/5に減少させ得た.
著者
小野寺 翔 山本 智清 内坂 直樹 寺川 偉温
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.590-597, 2020

<p>長野県在住の40歳代女性が,1カ月間の増悪寛解を繰り返す発熱で受診した.血液培養からブルセラ属菌が検出されたが,このブルセラ属菌は既知のブルセラ属菌のいずれでもなく,2017年に同じく長野県内で発症した患者より分離されたブルセラ属菌と近縁であった.また,同様に発熱等を呈した家族も抗体検査で陽性を示し,ブルセラ属菌に感染していたことが判明した.長野県内に当該新規ブルセラ属菌の宿主動物の生息が推測される.</p>
著者
佐藤 聡 高島 秀敏 吉村 俊朗 迫 龍二 森 正孝 辻畑 光宏 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.39-42, 1984-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1年間にわたる抗生物質の長期投与で治癒した脳膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は55才,女性.昭和55年10月13日,右上下肢の脱力が出現, 15日からは発語障害も加わり, 19日には右完全片麻痺となり当科に入院した.入院時,右片麻痺,運動性失語を認めた. CT scanにて左頭頂葉に大きな等吸收を示すmassがあり,周囲に著明な脳浮腫を伴つていた. enhance CT scanでring enhancementを示した.脳膿瘍の診断のもとに,抗生物質,ステロイドホルモン,グリセオール,で治療を開始し, CT scanにて治療経過を経時的に観察した.経過中,臨床症状の増悪をきたし, CT scan上も病巣がさらに拡大しているのが認められたが,抗生物質の変更で,軽快し, 1年後,症状はほとんど消失,固定した. CT scan上もring enhancementが消失し小点状のenhancementのみとなつた時点で治療を中止したが現在まで再燃していない.従来,脳膿瘍の治療としては,外科治療の比重が大きかつたが, CT scanにて,病巣の状態を直接,経時的に観察できるようになつたため,治療の変更などがすみやかに行なえるようになり,内科的治療のみで治癒したとの報告がふえている.抗生物質の投与期間については,少なくとも症状がほとんど固定化し, CT scan上病巣がすみやかに縮小しており,脳浮腫が著明に減少または消失していることが条件と考えられた.ステロイドホルモンの投与は,脳浮腫の改善に有効であり,文献上も有効例が多く使用してさしつかえないと考えられた.
著者
山口 晴保 牧 陽子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.8, pp.2146-2152, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

認知症という困難を抱えて生きる人に対する全人的な支援であり,根本的治療薬を持たない薬物療法よりも大きな役割を持つ認知症の非薬物療法を,病期別に解説した.リハビリテーションでは,認知機能向上を目指した介入よりも,快刺激・役割を演じ・褒められ・会話を楽しむ脳活性化リハビリテーションで残存機能を引き出す介入が望まれる.患者への診察態度,言葉遣い,告知,家族指導なども全て非薬物療法の意味合いを持つ.
著者
鎌谷 直之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.598-604, 1993

近年,目ざましく進歩した遺伝子工学(分子生物学)技術は, 1980年代後半になって臨床応用の段階に入った.なかでも,注目されているのは遺伝子診断と遺伝子治療である.遺伝子診断が急速普及した背景にはPCR (polymerase chain reaction)技術の登場が大きく,遺伝病の確定診断,早期診断,保因者診断,出生前診断だけでなく,癌の診断や微少残留悪性細胞の検出などで威力を発揮している.さらには結核などの細菌感染症やHTLV-I,肝炎ウイルスによる感染症の診断の分野でもPCR技術を応用した微量病原体の検出が広く応用されている.遺伝子治療にはgermline遺伝子治療と体細胞遺伝子治療があり,後者のみが倫理的に許される.米国ではすでに遺伝病(ADA欠損症)と癌で体細胞遺伝子治療が実施され,遺伝病においてはその有効性が発表されている.他の国(中国,欧州の各国)もこれに続いており,我が国もようやく遺伝子治療の基準づくりへと動きだした.
著者
大月 道夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.674-680, 2018-04-10 (Released:2019-04-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

Cushing症候群(Cushing's syndrome:CS)は,慢性的なグルココルチコイド過剰状態により,特異的症候,糖・脂質・骨代謝異常,高血圧等の非特異的症候を呈する全身疾患である.まず,医原性Cushing症候群を除外し,次にACTH(adrenocorticotropic hormone)自律分泌の有無をチェックすることが重要である.また,副腎性subclinical Cushing症候群の新診断基準が作成された.治療抵抗性の合併症(高血圧,全身性肥満,耐糖能異常,骨密度低下,脂質異常症等)を有する場合は副腎腫瘍摘出を考慮する.
著者
堀田 饒
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.1100-1104, 2002-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1
著者
北中 明 下田 和哉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.1906-1912, 2012 (Released:2013-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

原発性骨髄線維症と,二次性骨髄線維症の原因となる真性多血症,本態性血小板血症の3疾患は,複数系統の血球増加,脾腫,髄外造血などの共通した臨床像を呈し,骨髄増殖性腫瘍に分類される.造血幹細胞の自己複製能を亢進させるTET2,EZH2変異と,サイトカイン非依存性の造血細胞の自律増殖を促すJAK2,MPL,C-CBL変異などが協調して発症する.一方,骨髄の線維化,骨硬化は骨髄間質細胞の反応性の変化であり,クローナルに増殖した造血細胞が産生するTGF-βが骨髄の線維化に,線維芽細胞から産生されるOPGが骨硬化に関与している.
著者
中島 昌弘 大塚 幸雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.107-112, 1965

血液凝固過程において,血小板が重要な役割を演ずることは周知の事実である.しかしそのざい,血小板が如何なる機序にまつて作用するやは現在なお充分には究明されていない.著者らはこの問題を形態学的な面から検索することを企て,多血小板血漿にカルシウムを再加して凝固を進展せしめ,経過を追つて血小板の微細構造を観察した.微細構造上著明な変化を示したのはgranulomer &alpha;およびミトコンドリアである.すなわち前者は初め膨大し,その数も増加し,後減少,消失する.ミトコンドリアも初め膨大し,後減少,消失する.かくて凝固の完結期には,血小板の多くは無構造様となる.右の事実からgranulomer &alpha;およびミトコンドリアに血小板凝血因子の生成或いは局在性が示唆されると思われる.凝固の終末段階になると凝塊中の血小板の膜が消失し,血小板としての形態が判別出来ないようになる。血餅退縮にかんする重要な問題の一つがこゝに伏在すると考えられる.なお血小板にトロンビンを作用させたさいにも, granulomer &alpha;およびミトニンドリアは前記したところと同様の変化を示すが,凝塊を作る血小板の膜は長く保全せられる.
著者
三井 亜希子 鶴岡 秀一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.103-109, 2018-01-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

これまで,薬剤性腎障害(drug-induced kidney injury:DKI)の定義とその予防や治療に関して明確なものはなく,発症頻度の詳細や病態の体系的理解に結び付く報告も少なかった.2016年,我が国で初めて「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」(日本医療研究開発機構 腎疾患実用化研究事業,2016年)が刊行され,具体的な概念の提唱と障害機序をもとに分類・診断する試みがなされた.薬剤性腎障害は,急激に腎機能が悪化する急性腎障害(acute kidney injury:AKI)だけでなく,慢性的に緩徐に腎機能が悪化する慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)やネフローゼを呈する場合もあり,症状・経過は多彩である.発症機序は,予測可能なものと予測不可能な特異体質によるものに大別され,特に前者では投与前にリスクファクターの評価と対策を講じることで発症を抑制できる可能性がある.また,DKIを疑った場合には,原因薬剤を可能な限り早期に同定・中止することが基本となる.今後は,データ集積,得られたエビデンスの検証,国際比較により薬剤性腎障害診療の確立が進むと考えられる.
著者
濱野 高行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.959-965, 2017-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
25

CKD-MBD(chronic kidney disease-mineral and bone disorder)の3要素,検査値異常,骨代謝異常,異所性石灰化のどれもが保存期に始まる.特に糖尿病では血管石灰化が保存期でも進展している.検査値異常に関しては,日本人では二次性副甲状腺機能亢進症の頻度は高いが,欧米人に比しリン値は低い.しかし,透析導入直前には高リン血症の頻度は高い.正常範囲の血清リン値に介入する必要はないが,高値になれば食事療法,それでも無理ならリン吸着薬は必要になる.保存期における尿中Ca排泄はほぼゼロであるため,Ca非含有リン吸着薬が推奨される.
著者
三浦 俊郎 松崎 益徳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.31-36, 1994

ベッドサイドで行いうる心機能評価と心不全重症度の評価には理学的所見をはじめ,心エコー図法,観血的なSwan-Ganzカテーテル法と種々あるが,簡便さと定量性では心エコー図法が最も有用な方法である.一方, Swan-Ganzカテーテル法は正確な肺動脈楔入圧,右房圧の測定や心拍出量の測定には不可欠であり,さらに中心静脈酸素飽和度を連続的にモニターすることにより呼吸,循環を含めた総合的な評価に役立つ.
著者
西 慎一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.1010-1015, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

微小変化型ネフローゼ症候群は,原発性糸球体腎炎の一つである.好発年齢は小児と若年者であるが,高齢者においても発症が認められる.ステロイド薬に対する初期反応性は良好である.しかし,再発率が高い点が問題であり,頻回再発型,ステロイド依存性の症例もある.通常,腎機能低下はみられないが,低蛋白血症が顕著であると循環血漿量が低下しているため急性腎不全を呈する場合もある.