著者
小林 誠 北川 隆夫 藤下 雅敏 吉本 静雄 久保西 一郎 新谷 憲治 田口 博国 三好 勇夫 園部 宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1384-1390, 1983
被引用文献数
2

Pneumocystis carinii(Pc)肺炎は専ら免疫不全状態にある患者に発症する.最近CMV感染あるいは麻薬の常用が,同性愛の男性の免疫不全の原因となる可能性が指摘されている.我々は異常な性習慣や麻薬歴のない健康成人女性に発症したPc肺炎の1例を報告する.症例は37才の女性で,主訴は労作時呼吸困難.両側性びまん性胸部陰影の精査のため入院した.患者は10年間縫製業に従事しており,入院5ヵ月前の胸部X線像は正常であつた.入院第10病日に高熱が出没するようになり,次第に低酸素血症と胸部陰影が増強したため,経気管支肺生検を施行した.メテナミン銀染色で肺胞腔内に充満するPcの虫体を認めたので, TMP-SMZの内服を開始した.投与後5日目に下熱し,その後8週間で胸部陰影は全く消失し, Po<sub>2</sub>も正常化した.入院後間もなく患者は腋窩部と下腹部を中心に疥癬に罹患していることが判明し,皮膚病変は成人ではまれとされる皮下トンネルの形成が著明であつた.血清学的にCMVに対する抗体は陰性で,末梢血リンパ球数, T細胞数, B細胞数, PHAとPWMに対するリンパ球幼若化反応,末梢血単球と好中球の貧食能,免疫globulin値はすべて正常であつたが, PPD皮内反応は陰性であつた.細胞性ならびに液性免疫能が正常でかつ基礎疾患のない婦人にPc肺炎が発症した理由は明らかでないが,トンネル形成が著明な疥癬が合併したことを考えると,本例に何らかの免疫不全が存在したことは否定できない.
著者
三森 経世
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1943-1947, 1994-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

肥大性骨関節症は,手指および足趾のばち指,長管骨の骨膜炎,関節炎を主症状とする症候群である.本症は胸部の悪性腫瘍や感染症,心疾患,消化器疾患など様々な基礎疾患に合併して起こり,ぼち指の存在が隠れた重篤な疾患を発見するきっかけになることも少なくない.肥大性骨関節症は,隠された治療可能な疾患の診断に特徴的な症状が役に立つ最も良い例といえる.
著者
橋詰 直孝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1857-1861, 1997-10-10
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

患者6252名中Mg異常は1246名(19.9%)と多く,低Mg血症の最も多い臨床症状は人格の変化で,高Mg血症の最も多い臨床症状は排尿障害であった.アルコール常用者には多数の低Mg血症を認めた.アルコール離脱症候群の症候の中にはMg異常による臨床症状と類似している.また骨代謝にもMgは関連している. Mg異常は見落とす可能性があるので臨床家はMg代謝異常にもっと注意を向ける必要がある.
著者
菅谷 憲夫
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2393-2399, 2007-11-10
参考文献数
8
被引用文献数
1

日本の新型インフルエンザ対策では,抗ウイルス薬の備蓄不足やワクチン供給の遅れなど重要な課題が未解決のまま残されている.十分量のノイラミニダーゼ阻害薬を確保し,迅速なワクチン生産体制を整備すべきである.外出禁止や食糧備蓄等の感染拡大防止策はコストが高く,一方,有効性は証明されていない.<br>
著者
庭本 崇史 江村 正仁 中村 敬哉 林 孝徳 小林 祐介 五十嵐 修太 野村 奈都子 太田 登博 吉岡 秀敏 西川 圭美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.1020-1025, 2016-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
10

約3年前に成人発症Still病(adult onset Still’s disease:AOSD)と診断された65歳の女性.23価肺炎球菌ワクチンを接種後に血球貪食症候群を併発した.ステロイド増量とガンマグロブリンの投与にて病勢の改善を得た.しかし,二次感染予防目的のST合剤の開始翌日から関節痛が増悪し,AOSDの再増悪を疑いシクロスポリンを投与した.その後,良好な経過を辿った.AOSDのコントロール不良例では,免疫抑制薬の併用が有用であると考えた.
著者
岡田 靖 山口 武典 田代 幹雄 峰松 一夫 緒方 絢
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1294-1299, 1987

36才,男性.頭痛,発熱,意識障害,けいれんで発症し,入院時(8病日),体温38.2&deg;C,傾眠状態,顔貌無欲状,項部硬直あり. CT上,両側側頭葉に不整形の低吸収域を呈し,血清抗体価(CF法)も有意の上昇(4&rarr;512倍)を示し,単純ヘルペス脳炎(HSE)と診断した.昏迷状態から約4カ月間,ほとんど無言無動状態で経過した.しかし, 120病日前後より発語がみられ,経口摂取,四肢麻痺の軽減など著しい改善とともに,口唇傾向,食行動異常,性欲亢進,情緒変化がみられ, Kl&uuml;ver-Bucy症候群(KBS)を呈した. HSE生存患者の長期的観察および看護の重要性を強調するとともに, HSEに合併したKBSについて文献的考察を加えた.
著者
行本 敦 橋本 悠 花山 雅一 小幡 善保 谷平 哲哉 清家 裕貴 岡本 傳男 市川 幹郎 寺岡 正人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1460-1463, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

症例は81歳,女性.呼吸困難感を主訴に来院した.来院時,舌の著明な腫大がみられた.高血圧に対し,エナラプリルマレイン酸を内服していた.同薬による血管性浮腫を疑い,同薬を中止し,入院とした.喉頭の浮腫は軽度であったため,7 Fr経鼻エアウェイを挿入し,気管切開は行わず,経過観察とした.72時間後には舌の腫大は改善し,発語も明瞭であった.同薬を中止し,経過をみているが,再燃はみられていない.

1 0 0 0 OA 11.中毒性腎症

著者
細谷 龍男 大野 岩男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1508-1512, 2002-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20
著者
向山 政志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1486-1494, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
15

腎臓は内分泌臓器の1つであり,また種々のホルモンの標的臓器として極めて重要であると同時に,多くの内分泌機能調節の鍵を握っている.したがって,腎臓の内分泌機能の異常,あるいはホルモン受容・情報伝達機構の異常に伴い,様々な疾患が生じる.一方,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に代表される腎障害の際には,他臓器におけるホルモンの産生・分泌・代謝・情報伝達のあらゆる面においてしばしば異常がもたらされる.これらの病態を理解することは,内分泌代謝学の面からも腎臓病学の面からもともに重要である.本稿では,腎疾患と内分泌異常について,代表的な疾患を中心に概説する.
著者
木嶋 祥麿 小沢 潔 桜井 俊一朗 仲山 勲 東海林 隆男 笹岡 拓雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.986-994, 1984

ビタミンKが欠乏すると,肝での血液凝固因子の活性化が阻害されるため出血症状が出てくるが,臨床的には新生児にしばしばみられる.成人においてはまれであるが,最近とくに乳児期にみられるビタミンK欠乏症が注目されている.一方,腎不全患者ではしばしば皮下や消化管などに出血がみられ,血小板機能・凝固困子活性の異常などが指摘されている.しかしビタミンK欠乏症の併発はあまり知られていない.最近われわれが経験した出血ないし凝固異常を呈した患者14例を検討したところ,慢性腎不全8例,急性腎不全(手術後4例,激症型皮膚筋炎・脳出血後感染症合併それぞれ1例)6例であり,このうち4例は検査結果から消耗性血管内凝固症候群(DIC)であつた.ほかの10例では肝機能異常はなく, DICの所見とも異つており,プロトロンビン時間・部分トロンボプラスチン時間の延長,第II, VII, IX, X因子活性の低下,異常な第II因子分子の出現などの所見が認められ,ビタミンK投与で改善を認めたことからビタミンK欠乏症と診断した.本症10例の臨床所見は高令の女性患者が多く,食事摂取は著しく不良で,重症感染症および手術後のため抗生物質が投与されており, DICの背景因子と共通点が多い.このような悪条件をもつ腎不全患者ではビタミンKが枯渇しやすいと考えられるので,非経口的に予防投与しておく必要がある.
著者
祖父江 元 渡辺 宏久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.1804-1809, 2018-09-10 (Released:2019-09-10)
参考文献数
10
著者
朝倉 英策
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.9, pp.2010-2017, 2017-09-10 (Released:2018-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
岡田 浩一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.8, pp.1658-1664, 2015-08-10 (Released:2016-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

腎線維化は慢性腎不全に対応する尿細管の萎縮と間質の線維化を主体とした組織変化であり,末期腎不全への進行を阻止するための良い治療標的と考えられる.腎線維化の進展には蛋白尿や虚血・低酸素による尿細管上皮細胞の病的な活性化が関与しており,NFκB経路などの細胞内情報伝達系を介して,TGF-β1などの線維化促進性のメディエーターが産生・放出され,間質領域に線維芽細胞が誘導されて病巣が形成される.治療介入のポイントとしては,線維化抑制性のメディエーター産生を誘導する細胞内情報伝達系の賦活化(例:bardoxolone methylによるNrf2経路の活性化)や線維化促進性メディエーターの作用阻害(例:pirfenidoneによるTGF-β1作用の阻害)などが想定され,様々な基礎・臨床研究が進行中である.腎線維化の進展・消褪を定量的に評価するためには,現状では腎生検が必須であるが,今後はより低侵襲性の画像検査(例:機能的MRI)やバイオマーカーによる評価が期待されている.
著者
中里 雅光
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.445-450, 2020-03-10 (Released:2021-03-10)
参考文献数
16
著者
松尾 清一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1600-1610, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1