著者
長野 広之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1984-1993, 2020-10-10

総論 神経炎は単神経炎(mononeuropathy),多発単神経炎(mononeuritis multiplex),多発神経炎(polyneuropathy)に分かれます.末梢神経の局在に沿っていれば単神経炎を,それが複数存在すれば多発単神経炎を,遠位優位の靴下・手袋型では多発神経炎を考えます.多発神経炎はまず足先から始まり,膝くらいまで広がったあたりで上肢にも指先から症状が出現し,重度の場合,臍部付近にも出現します. 多発神経炎は一般人口の2〜3%,55歳以上では8%に認める高頻度な症候です1).原因としては台湾の520例の多発神経炎の報告が参考になります(図1)2).個人的な経験ではビタミンB12/B1欠乏(本研究では栄養障害に含まれる)がもう少し多い印象があります.
著者
山中 学
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1018-1020, 1966-07-10

この二つの測定は,出血性素因検査のなかで,もっとも基本的なものであるが,耳朶などの皮膚を刺して,湧出する血液が自然に止まるまでの時間である出血時間と,静脈穿刺により得た血液が,試験管内で自然に凝固するまでの凝固時間(正確には全血凝固時間)とは,まつたくべつのものである。通常生体において,出血が止まるためには,(1)傷害された血管壁に血小板がついて,いわゆる血小板血栓をつくる。(2)傷害血管壁が収縮する。(3)血液凝固反応が開始されてフィブリンを析出することが必要であるが,出血時間測定のごとく,毛細血管を傷つけた場合には,傷害部の皮膚組織の性状,血管壁の状態と,血小板の機能,とくに粘着凝集力に左右され,血液凝固因子はほとんど関与しない。血液凝固過程におけるフィブリン網の最初の析出まで,出血時間の正常値である3分以上を必要とすること,凝固時間の著明な延長を示す血友病で,出血時間は正常範囲にあり,逆に出血時間の長い血小板減少性紫斑病で,凝固時間はほとんど正常値を示すことからも,容易に理解されよう。
著者
菅原 明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.2117-2120, 2016-12-10

ポイント●低血糖や低Na血症の患者を見つけた場合は,積極的に汎下垂体機能低下症を疑う.●慢性的に経過するが,ACTH分泌低下を有する場合はストレス・侵襲により症状が急激に悪化する場合がある.●Sheehan症候群は,分娩直後のみならず分娩後長い期間を経てから発症する場合もある.●原因が腫瘍による圧迫か下垂体前葉炎かにより,低下するホルモン(の頻度・順番)が異なる.●二次性の甲状腺機能低下症と副腎皮質機能低下症を併発した場合は,必ず副腎皮質ステロイド薬の補充から開始する.
著者
龍華 章裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1054-1058, 2018-06-10

Point◎Mg濃度異常は注目される機会が非常に少ないが,近年,低Mg血症が慢性腎疾患(CKD)患者における予後悪化因子であることやプロトンポンプ阻害薬(PPI)内服により低Mg血症を発症することが次々と報告されており,今後も重要度が認識されていくと思われる.◎低Ca血症および低K血症が存在するときは,低Mg血症を疑う.
著者
大西 尚昭 中川 義久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.654-656, 2016-04-10

ポイント●巣状興奮タイプ(異所性)の心房頻拍の場合は,12誘導心電図でのP波の極性から頻拍の起源を推定することができる.●左房起源か右房起源か,高位起源か低位起源かで大別して考えると理解しやすい.●嚥下誘発性心房頻拍は稀な疾患ではあるが,ときおり臨床現場で認める.薬剤が無効な場合でもカテーテルアブレーションが奏功することもある.

1 0 0 0 抗RNP抗体

著者
小池 竜司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.572-573, 1999-10-30

異常値の出るメカニズムと臨床的意義 いわゆる抗核抗体の抗原を検索する過程で,核成分抽出物の可溶性分画はENA(extractable nuclear antigen)と呼ばれた(→「抗ENA抗体」の項参照).そのうち,リボヌクレアーゼで処理すると患者血清との反応性が消失する抗原に反応する抗体(RNase感受性抗ENA抗体)のかなりの部分は,抗RNP抗体に相当する.RNP(ribonuclear protein)とは,mRNA,rRNA,tRNA以外に細胞内に大量に存在する低分子RNAと蛋白の複合体を指すが,そのうちのU1RNPという複合体を構成する蛋白(8サブユニット存在する)のうち3種類を抗原とする自己抗体が狭義の(一般的に用いる)抗RNP抗体に相当する.最近では定義を厳密にするために抗U1RNP抗体とも呼ばれる. 抗RNP抗体は混合性結合組織病(MCTD)の診断に必須とされているが,SLEをはじめとするその他の自己免疫疾患でも検出される.その存在はさほど特異的なものではないが,臨床像と照合するとある種の症候と相関していることを示唆する報告もいくつか存在し,興味深い点もある.
著者
野溝 崇史 和足 孝之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.501-502, 2020-03-10

患者 85歳,女性主訴 嘔気/食思不振,頻尿
著者
黒木 優一郎 上原 なつみ 中西 徹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.53-54, 2017-04-01

56歳の男性.現病歴 2か月前から1日数行の下痢としぶり腹とが出現した.発熱や食欲低下はなく様子をみていたが,3週前からときどき血便が混じるため来院した.
著者
萩野 昇
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1007-1010, 1968-08-10

症例1M.K.44歳,農家主婦(会社員の家族,兼農業) 家族歴 同胞6名,2名健在,4名は戦死,肺炎その他で死亡,実母は昭和14年イタイイタイ病にて死亡,姑も昭和19年イタイイタイ病にて死亡している.
著者
青木 眞
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1939, 2010-11-10

本書は『感染症外来の帰還』と文学的なタイトルがついているが,優れた内科・小児科領域の感染症に関する外来診療マニュアルである. 自分が80年代前半に渡米し,内科専門のプログラムでインターンとして働き始めたとき,仲間が「メドゥピーズ」(英語でMed-Pedsと書く)という聞き慣れないプログラムの研修医であると聞いた.Med-Pedsとは,内科と小児科の両者の訓練を受け,2つの領域の専門医資格を4年間で取得するというプログラムである.都市部における外来診療の核となるべき2つの専門性を一度に短期間で取得できるということで,特に将来開業をめざす医師たちに人気が高い競争の激しいプログラムであった.内科と小児科,両専門領域の感染症をカバーする本書も外来の実態に即した,現場のニードにマッチした本である.
著者
倉田 義之 髙松 純樹
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.874-877, 2003-05-10

ポイント ・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と血友病で,止血対応は全く異なる. ・ITPの出血で出血斑が散在する程度では,治療を開始しない.鼻出血や口腔内血腫など粘膜出血出現時には,治療を開始する. ・止血は局所の圧迫が基本.下血など重篤な出血時には,血小板輸血,ガンマグロブリン大量療法も必要. ・血友病での出血時は,欠乏している因子の補充が原則.出血の部位により必要血中レベルは異なる. ・凝固因子に対する抗体が生じているインヒビター症例は,速やかに血友病専門医への紹介が必要.
著者
多田 啓也
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.1996-1997, 1988-09-30

■疾患概念 ビタミン依存症とは,十分量のビタミンを食品から摂取しており生理的意味でのビタミン欠乏はないにもかかわらず,ビタミンの多量(生理的需要量をはるかに越えた量)の投与により臨床症状の改善がみられ,投与を中止すると再び悪化するという一連の疾患の存在が知られ,ビタミン依存症Vitamin dependencyという概念が提示された. 現在までに知られているビタミン依存症を病因論的に分類すると, 1)アポ酵素の構造異常によるもの 酵素の質的変異によって補酵素との親和性が低下し,通常の濃度では反応せず多量のビタミンの存在を必要とするもの. 例えば,ビタミンB6依存症.
著者
赤松 浩彦
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1006-1007, 2003-06-10

ポイント ・副腎皮質ホルモンの全身投与により生ずる. ・投与2~3週後より発生することが多い. ・顔面および前胸部などに赤色丘疹,膿疱が認められる. ・副腎皮質ホルモンの投与中止により自然に消退する.
著者
横堀 將司 金谷 貴大 横田 裕行
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1991-1996, 2017-11-10

Point◎意識障害患者において,脳波異常がみられるてんかん患者が稀ならず存在する.◎最近のガイドラインでは「可視的な症状(発作)の有無によらず,臨床的あるいは電気的(脳波で確認できる)てんかん活動が少なくとも5分以上続く場合,あるいはてんかん活動が回復なく反復し,5分以上続く場合」をてんかん重積状態(SE)と定義している.◎SEは,全身痙攣が主体の痙攣性てんかん重積状態(CSE)と,痙攣を伴わない非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)に分類される.また,抗てんかん薬2剤により適切に治療してもてんかん発作が治まらないSEを難治性てんかん重積状態(RSE)と分類する.◎持続脳波モニタリングは,集中治療中においても脳波異常の確認からNCSEの診断と治療に有用である.
著者
徳田 安春 矢吹 拓 青木 洋介 綿貫 聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.576-583, 2019-04-10

日常診療においてすべての患者の診断が適切になされることが期待されますが,実際の医療現場では常にそうとは限りません.診断のプロセスにおいてさまざまなエラーが生じ,診断の遅れや誤りが治療や患者アウトカムに影響することもあります.今回は診断エラーの全体像やエラーに関係する認知バイアスについて議論を深めつつ,最終的にどのように診断エラーを克服していくか,エキスパートの先生方と熱くディスカッションしていきたいと思います.(矢吹)
著者
上野 文昭
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.1066-1067, 1989-06-10

慢性肝疾患は数ある慢性疾患の中でも最も経過の長い疾患の1つです.慢性非活動性肝炎はもちろんのこと,最も重篤とされている肝硬変症にしても突発的なことが起こらない限り長い経過をたどるのが普通です.腹水,黄疸,脳症を呈しているような非代償性肝硬変症にしても例外ではなく,適切なマネージメントがなされていれば,そうやたらに急変はしません.このような非代償性肝硬変症の患者が急速に悪化してきたようなとき,すなわち腹水が増加し,黄疸が増強し,意識レベルも低下し,肝機能検査も増悪してきた場合には,どのような原因が考えられるでしょうか.しばらく時間をさいて可能性のある原因を頭に思い浮かべて下さい.
著者
牧原 優
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.436-440, 2018-03-10

抗不整脈薬によるイオンチャネルの遮断作用を理解するためには,心筋細胞の電気活動について知る必要がある.図1は,心筋(心室筋)細胞個々の電気活動を示した活動電位波形と呼ばれるものである. きわめて簡略化してあるため詳細は成書を参照いただきたいが,心筋細胞の活動電位波形は第0〜4相に分けられる.心筋細胞は,Na-Kポンプ,Na-Caポンプ,Kイオンの移動により静止膜電位と呼ばれる負電位で電気的平衡状態となっており,Naは細胞外に,Kは細胞内に多い.第0相でNaチャネルが開放されると,Naイオンが細胞内に流入し,脱分極を起こす.次に,一過性にKチャネルが開放され第1相となった後,Caチャネルを介してCa2+が流入することで,第2相のプラトー相が形成される.さらに,第3相でCaチャネルの閉鎖とKチャネルの開放により再分極が進み,第4相で静止膜電位に戻る.活動電位波形は図1のように心電図波形に対応する.
著者
野村 文夫
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.195-196, 2015-04-01

検査の概要 aspartate aminotransferase(AST)とalanine aminotransferase(ALT)は,それぞれaspartic acidとalanineのα-アミノ基をケトグルタール酸のα-ケト基に転移する酵素であり,トランスアミナーゼと総称される.以前はASTはGOT,ALTはGPTと呼ばれていた. 両酵素ともきわめて多くの臓器に存在するが,組織中のAST濃度が最も高いのは肝臓であり,次いで心臓,骨格筋,腎,脳,膵,肺,白血球,赤血球の順である.ALT濃度も肝臓で最も高く,肝特異性はALTのほうがASTよりも高い.肝胆道疾患のスクリーニングや経過観察の目的で用いられることが多いが,特にASTは心疾患,筋疾患,溶血性疾患においても上昇する.ASTは肝細胞では細胞質(sAST)とミトコンドリア(mAST)に存在する.健常人血中では大部分がsASTであり,通常はmASTが上昇するのは重度の肝障害の場合である.
著者
雨宮 哲郎
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1606-1609, 2018-09-10

Point◎ICUにおける深在性真菌症は,カンジダ血流感染症と侵襲性肺アスペルギルス症が多い.◎ガンジダ血流感染症,侵襲性肺アスペルギルス症は特有のリスク因子をもつ患者に生じる.◎深在性真菌感染症の診断は血清学的検査に依存せず,可能な限り微生物学的に証明する.