著者
中畑 雅行 鈴木 洋一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.171-179, 2002-03-05 (Released:2011-02-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

「観測された太陽ニュートリノ強度が標準太陽モデルからの予想値に比べて有意に小さい」という「太陽ニュートリノ問題」は, 30年以上もの間, 議論されてきた. 最近, スーパーカミオカンデとカナダのSNO (サドバリーニュートリノ観測) 実験との観測により, この太陽ニュートリノ問題の解は, 「ニュートリノ振動」という現象が原因であることがはっきりした. また, 電子ニュートリノを質量の固有状態に分解すると質量の異なる状態が大きく混合しているらしいことも分かってきた, この解説では, 最新の太陽ニュートリノ実験の結果を踏まえて, ニュートリノの素粒子的性質, 今後の太陽ニュートリノ研究の進展にっいて述べる.
著者
中村 健蔵
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.214-217, 2016-04-05 (Released:2016-06-03)
参考文献数
3
被引用文献数
1

ニュートリノ振動の物理を簡単に解説した後,カミオカンデとスーパーカミオカンデの建設のいきさつと研究の歴史など,および主な研究成果の概要を紹介する.
著者
中村 勝弘 馬 駿
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.233-242, 2001-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
26

ケルヴィン卿の歴史的講演に初登場した古典ビリアードから,ナノテクノロジーにより出現した量子ビリアードの最前線までを簡単にレヴューする.考察の主な対象は,ビリアード壁との衝突を繰り返す電子のカオス運動である.ニュートンカ学に従う粒子と異なり,電子は干渉,回折などの量子効果を示す.その結果現れてくるカオスの量子論的兆候を量子カオスと呼ぶ.ここでは,電子のドブロイ波長がビリアードの特徴的長さ(サブミクロンスケール)より十分小さい場合,つまり,半古典領域の電子の量子カオスを取り上げる.本稿では非線形動力学,統計力学との関係で将来性のある問題(軌道分岐,周期倍加現象,アーノルド拡散とそれらの半古典理論)をわかりやすく解説する.最後に,量子カオスの将来(未来?)に言及する.
著者
山地 洋平
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.506, 2019-07-05 (Released:2019-12-13)

新著紹介物性物理のための場の理論・グリーン関数;量子多体系をどう解くか?
著者
佐藤 卓
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.869, 2019-12-05 (Released:2020-05-15)

追悼蔡安邦先生を偲んで

1 0 0 0 編集後記

著者
稲葉 肇
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.406-407, 2022-06-05 (Released:2022-06-05)

編集後記
著者
中野 祐司 榎本 嘉範 東 俊行
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.346-354, 2022-06-05 (Released:2022-06-05)
参考文献数
75

80–90年代に加速器施設に建設された原子分子物理用のイオン蓄積リングは,重イオン物理や分子科学において多大な成果をあげてきた.近年,これらのリングの多くが当初の役割を終え,姿を変えて第二の生涯を歩み始めている.その背景には,原子分子物理の研究の場が,高エネルギー(MeV~GeV)の磁場型リングから低エネルギー(keV)の静電型リングへ移り変わってきたことがある.原子分子の反応は素粒子や核物理のように高エネルギーを必要としないのでビームのエネルギーはkeV領域で十分であり,この程度のエネルギーであれば電場で制御することができる.磁場型リングではイオン質量に応じて磁場を強くする必要があったのに対し,静電型リングで必要な電場強度はイオン質量に依存しないため,多様なイオンビームを蓄積することが可能である.さらに電磁石が不要なため装置を実験室サイズに小型化することができる.大型の国際計画へと巨大化していく加速器や宇宙科学とは好対照に,大型加速器から生まれた蓄積リングの技術が多様化と小型化を遂げた結果,世界各所でバラエティ豊かな研究が展開されるようになった.原子,分子に関する基礎研究をはじめ,クラスターや生体分子を対象としたダイナミクス研究,星間分子反応の実験研究など,様々な研究分野にまたがる新しい発見がたくさん得られた.このようななか,電子,振動,回転状態がいずれも基底状態に冷却された「単一量子状態の分子イオン」による新しい物理の探索を目指して次世代リングの検討が始まり,3つの拠点で極低温静電型イオン蓄積リングDESIREE(Stockholm大学),CSR(Max Planck原子核研究所),RICE(理化学研究所)の開発が進められてきた.いずれのリング開発も真空容器そのものを10 K以下にまで冷却することで熱輻射を遮断し,さらに10-10 Pa以下の極高真空を実現して長時間のイオン蓄積を実現しようとする野心的な計画であった.各リングとも5~10年にわたる開発期間を経て,2010年代に入って装置温度10 K以下を達成し,数100秒以上の長時間にわたる分子イオンの安定蓄積に成功した.2017年,極低温リング内での分子の冷却が初めて観測された.DESIREEとCSRのグループは,蓄積したOH-分子イオンの光電子脱離スペクトルから振動回転状態の占有率を見積もり,最大で99%以上もの分子イオンが基底状態に冷却される様子を捉えた.我々の開発した極低温リングRICEでは3原子分子イオンN2O+の高分解能分光によって,孤立分子の状態分布が刻々と変化する過程を追跡することに成功した.極低温リングの登場によってこれまで見ることのできなかった孤立分子の冷却ダイナミクスが明らかになってきたとともに,冷却分子イオンビームを利用した実験研究が現実のものとなった.冷却分子およびその量子制御を利用した研究展開として,RICEでは中性原子ビーム,DESIREEでは負イオンビームとの相互作用を観測するためのセットアップが進行中である.CSRでは冷却分子と電子の衝突実験が行われ,初期宇宙の原子分子過程として重要なHeH+の解離性再結合反応および回転状態依存性が初めて観測されるなど,重要なマイルストーンが達成された.
著者
小田 竜樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.35-39, 2005-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
18

新規物質の探索,設計,物性解析に不可欠とされている第一原理分子動力学であるが,磁性物質への適用に一歩踏み込んだ研究手法,ノンコリニアー磁性の第一原理分子動力学を紹介する.許される磁気構造の範囲が,コリニアー構造からノンコリニアー構造へ拡大されたことで,磁性体への応用が進むであろう.本稿では,ノンコリニアー磁気構造の鉄クラスターと液体酸素のシミュレーンョン結果を通して,計算手法の特徴を述べる.
著者
宇田川 猛
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.933-939, 2006-12-05 (Released:2022-05-31)
参考文献数
56

湯川は中間子論の提唱によって,また朝永は場の量子論の困難を救うくりこみ理論によって,素粒子物理の発展に欠かすことのできない重要な貢献をされた.湯川の予言した中間子の交換で生ずる核力は,そのまま現在につながり原子核物理の根幹をなすもので,その意味で湯川は原子核物理の礎を築いたものと言える.朝永は後年,多粒子系の集団運動の理論など,原子核物理に直接関わる仕事もされた.二人はまた,基礎物理学研究所と原子核研究所の設立に深く関わり,それを通じて原子核物理の発展に計り知れない貢献をされた.二人の貢献をこの文章で語り尽くすことは不可能であるが,筆者の個人的体験を交えながら振り返ってみたい.
著者
田口 善弘
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.212, 2017-03-05 (Released:2018-03-05)

会員の声その人事公募,公平ですか?
著者
北村 泰一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.778-785, 1992-10-05 (Released:2008-04-14)

極夜に輝くオーロラに伴って発生し地表に伝播すると考えられているPi2と呼ばれる磁気流体波動は, 従来横波だとばかり考えていた. 極地に関する限りそれは正しいが, 地球全体を考えるとそれでは納得できない事実がいくつもあった. そうした考えに疑いをもった筆者が, 研究室挙げて計測機器を開発し, 地球をとりまく赤道諸国にそれらを設置し, ついに疑問を解決したのが本稿の内容である. いうなれば, 高緯度から赤道まで地球規模で計測機器を設置し, 地球磁場の磁気圏波動に対するスペクトロスコピー作用を確かめた壮大な実験の話である.
著者
周藤 瞳美
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.313-314, 2022-05-05 (Released:2022-05-07)

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