著者
上村 礼子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.552-555, 2015-11-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

化学基礎「物質の探究」では,ペーパークロマトグラフィーを用いた水性ペンや植物の緑葉の色素成分の分離を探究活動として取り扱っている教科書が多い。授業での学びを深め,課題研究などで,化合物の分離・定性・同定を行うにはペーパークロマトグラフィーより,シリカゲルを固定相として用いた液体クロマトグラフィーが適している。今回,高等学校でも活用しやすい薄層クロマトグラフィーの実験方法についても紹介する。
著者
須見 洋行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.358-359, 2015-07-20 (Released:2017-06-16)

「納豆」という言葉が初めて登場したのは平安時代であるが,現在の「糸引き納豆」が紹介されたのは江戸時代に入ってからで,最も古い食べ物の辞典ともいうべき「本朝食鑑」にも記載されている。この糸引き納豆は日本人の多くが好きである一方,特に外国ではニオイや粘りを嫌う人も多い。しかし,蒸した大豆よりも栄養価が高く,さらに納豆にしか含まれない血栓溶解酵素ナットウキナーゼをはじめ各種効能成分が含まれている。本稿では世界に誇る日本の糸引き納豆の魅力について紹介する。
著者
川島 慶子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.68-71, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)

キュリー夫人ことマリー・キュリーは「ラジウムの発見者」として有名だが,彼女が発見したのはラジウムだけではない。ポロニウムも発見しているし,トリウムの放射性を発見したのもマリーである。放射能という言葉を作り,この現象が当該元素の原子的性質であることを最初に見抜いた。それなのに,どうしてラジウムだけが有名なのだろう。そこにはマリーの生きた時代と切り離せない事情がある。ここでは,マリー・キュリーがいかにして,先の発見をなしとげたのか。特にラジウムは,一般にどのような発見だと受け止められたのかを見ていこう。
著者
太田 明廣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.297-300, 2002-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

天然物として不快臭源から芳香物質まで多様なにおい物質が知られている。不快臭源としては腐敗アミン, 含硫物質が代表的で, また, 最近では加齢臭も話題になっている。これら含硫物質や加齢臭源の化学構造について説明する。一方, 芳香物質としては精油, 動物性香料が知られている。特に植物の約80科に含まれる精油はその成分と共に薬剤, 食品, 化粧品などに広い用途が見られる。これら天然におい物質の生成についてふれ, 更に, 化学構造とにおいとの関係についても述べる。
著者
西脇 芳典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.494-495, 2017-10-20 (Released:2018-04-01)
参考文献数
3

近年,犯罪は複雑・巧妙化している。安全・安心な社会を実現するには,科学捜査技術の一層の高度化が求められている。犯罪は証拠によって明らかにされるので,化学は科学捜査において重要な役割を果たしている。その基礎は中・高校で習う化学である。覚せい剤などの乱用薬物,自動車塗膜片などの微細工業製品の鑑定の概念の一部は,高校までの化学で理解できる。学校で習う化学と関連付けて科学捜査研究の成果を紹介する。
著者
須川 哲夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.118-121, 2009-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

インビジブルインクとは特殊蛍光色素を用いて,通常の太陽光下では目に見えず,紫外線などを照射すると可視光を蛍光発光する特殊機能インクである。ここでは,特殊蛍光色素の発光原理とインクジェット技術への応用を解説したあと,区分管理・ディスプレー関連に展開されている事例を紹介する。
著者
桝 飛雄真
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.592-595, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
3

核磁気共鳴(NMR)の原理と,有機化合物の構造解析において重要な1H NMRスペクトルについて概説する。1H NMRスペクトルでは磁場中の試料に電磁波を照射し,水素原子による電磁波の吸収(共鳴)を測定することで有機化合物の構造に関する様々な情報(官能基の種類,水素原子の数,隣接する官能基の組み合わせなど)を得ることができる。また13C NMRや二次元NMRについても紹介する。
著者
五月女 宜裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.402-405, 2015-08-20 (Released:2017-06-16)

光学分割とは,2つのエナンチオマー(鏡像異性体)が1:1の比で混在するラセミ体から,一方のエナンチオマーを分離する方法である。19世紀中旬に,ルイ・パスツール(Louis Pasteur)が初めての光学分割を報告して以来,結晶法,HPLC法,速度論法に代表される様々な光学分割法が開発されてきた。これにより,医薬,農薬,香料や機能性材料の開発に欠かすことのできないキラル化合物のエナンチオマーを入手することが可能となった。本稿では,これらの光学分割法の歴史的な開発背景,光学分割法の原理,さらには特徴についても紹介する。
著者
川端 克彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.286-290, 1995
参考文献数
5

パソコンやワープロの普及により筆記具の需要が減るのではと危惧されたが, 顔料の微分散化技術が進み耐水性や耐光性の強い顔料インキが水性ボールペンにも使えるようになり, またカラフルな外観を持つボールペンやラインマーカーが開発され新しい需要層が増え, 逆に販売量も増えている。パソコンやワープロでは味わえない書くことの楽しさをユーザーがこれらの筆記具に感じているのではないか。またどこでも手軽にコピーできることから, ちょっと間違った箇所を簡単に修正できる修正液が大ヒットしている。これらのインキについて, 材料, 分散技術中心に紹介する。
著者
津越 敬寿
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.596-599, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
3
被引用文献数
1

質量分析と一口にいっても,実に多岐にわたる。検出器としての質量分析計でも大きく数種類挙げられるが,イオン化手法は10種を軽く超える。それぞれにユニークな特徴があり,様々な分析のニーズに応えることができる分析法といえる。
著者
石井 正樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.270-271, 2012-06-20 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
1

夏の暑い環境をより快適に過ごすために,冷涼感性や,皮膚からの汗をすばやく吸って,そして急速に乾燥させる吸汗速乾性を有する衣料は,近年夏物衣料としては必須アイテムになりつつある。本稿では人体から発生する水蒸気や汗の移動により,人体をより快適な状態に保つことを目的とした衣服における繊維素材の実例を紹介する。
著者
瀧本 真徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.30-33, 2014-01-20 (Released:2017-06-16)

硫黄(S)は火山周辺などの自然界から,単体としてほぼ純粋な形で得ることのできる元素の一つである。単体の硫黄は,古くより火薬の原料,マッチの着火燃焼剤,燻煙殺菌や皮膚軟膏の原料として用いられてきた。また,含硫黄有機化合物として,植物や我々の体内にも存在する。この,含硫黄有機化合物は現在の抗生物質が登場する以前には感染病の化学療法にも用いられていた。本稿では,硫黄の用途や,身の回りに存在する硫黄化合物について化学的な視点から紹介と解説を行う。
著者
臼田 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.220-223, 2019-05-20 (Released:2020-05-01)
参考文献数
4

計測はあらゆる通商,産業,科学の基盤である。計測の同等性を時代,地域によらず確保するためには単位の基準が不変であることが不可欠である。単位はかつて人間の体の部位にちなんだものを定義として,石や金属を使って形作られた。やがて計測精度への要求と科学技術の進歩に伴い,自然界の法則を定義にするなどの見直しが進んできた。2018年11月に開催された国際度量衡総会において,国際単位系(SI)の基本7単位のうち,4単位を改定することが決議された。そして2019年5月20日をもって定義改定が実施された。本稿では単位および単位系について基本と全体像を概説する。新旧の定義を対比し,その意図と利点,および改定がもたらす将来像について述べる。
著者
乃口 哲朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.294-297, 2019-07-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
2

香川県立観音寺第一高等学校における理数系課題研究の実践について報告する。先行して課題研究を実施していた理数科での指導・評価の方法,およびそれを応用しながら普通科へも拡大した過程,指導・評価方法の応用と改善,普通科で課題研究を実施した成果を報告する。
著者
平松 茂樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.396-399, 2017-08-20 (Released:2018-02-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

中学校理科および高等学校化学で扱われる「色の変化を伴う反応」の一つに,酸塩基指示薬の変色がある。本稿では,種々の酸塩基指示薬とそのpH変化に伴う色の変化,その際に起こっている構造の変化などについて解説する。あわせて,酸塩基指示薬と同じメカニズムで発色するキレート指示薬や,酸塩基指示薬として実験に使われることが多いアントシアニンをはじめとする天然色素についても,発色団の構造の変化について解説を試みた。