著者
安田 啓司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.350-353, 2019-08-20 (Released:2020-08-01)
参考文献数
8

超音波によって,室温・大気圧で水中の汚染物質の分解,有価物質の分離をすることができる。汚染物質の分解は超音波キャビテーションに起因し,有機物質,高分子,病原菌などを熱やラジカルにより分解する。有価物質の分離では超音波霧化によりアルコール,界面活性剤,アミノ酸などを液滴中に濃縮する。本稿では,分解・分離のメカニズムと物質による挙動の違いについて概説する。
著者
永田 和宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.282-285, 2022-06-20 (Released:2023-06-01)

物質を構成する原子や分子は温度により多くの原子欠陥を生成する。この欠陥が増大すると固体から液体へ液体から気体に変態する。この物質の乱雑さの尺度がエントロピーである。この欠陥は外部からの熱の出入りにより変化する。この熱がエンタルピーであり,内部エネルギー変化と物質がする仕事に使われる。この熱で物質に流入するエントロピーより物質のエントロピー変化は常に大きい。その差はエントロピー生成といい,常に正で自然に起こる過程は不可逆である。エントロピー生成は熱や成分などの流れが生じると生成し非補償熱として散逸する。安定した定常状態ではエントロピー生成が極小であり,大きくなると他の定常状態に遷移することがある。
著者
寺田 昭彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.400-403, 2022-08-20 (Released:2023-08-01)
参考文献数
8

地球環境には数百万種といわれる肉眼で観察することができない生物が1030オーダーの細胞数で存在する。我々の社会と同様に,様々な環境で雑多な微生物が相互作用しながら炭素・窒素をはじめとする元素循環に関わっている。このような微生物の潜在能力を最大に引き出すノウハウを集約しているのが水処理技術である。本講座では微生物のライフサイクル(生活環)とエネルギー獲得手段を紹介する。さらに,微生物の機能を利用する水処理技術の基本操作を,活性汚泥法と生物学的窒素除去を例として説明する。
著者
清水 克哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.222-225, 2009-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

超伝導とは?金属の電気抵抗が温度を下げるにつれ次第に小さくなりやがてゼロになってしまう,といってしまうとその本質からはなれてしまう。10の23乗個といった莫大な数の電子の集団はその瞬間に驚くべき秩序をみせる。約100年前に発見された超伝導はいまだに研究者を魅了し続ける。
著者
山﨑 勝義
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.428-433, 2021-10-20 (Released:2022-10-01)
参考文献数
1

化学平衡や平衡定数を記述する上で,標準状態はきわめて重要である。本稿では,溶媒と溶質について,国際規準の標準状態に従って化学ポテンシャルを定式化し,正確な平衡定数の式を導出する。また,酸・塩基の電離定数,水のイオン積,溶解度積などの式に溶媒や固体の濃度を含めてしまう誤りが生じる原因を考察する。
著者
下山 晃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.14-18, 2002-01-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
21

隕石の中でも炭素質隕石は太陽系の原始物質であり, 有機物を含んでいる。隕石アミノ酸が地球起源でなく, 非生物起源であり, このため宇宙起源であることはマーチソン隕石の分析から判明した。同様な結果は南極隕石のアミノ酸分析からも判明し, その種類や存在量, また, 隕石有機物としての特徴もこれらの隕石では共通していた。その後の分析ではジカルボン酸もアミノ酸と類似した特徴をもつことが判明した。隕石有機物の起源については, これまで原始太陽系星雲中や隕石母天体上での成因が提案され, 議論されてきた。近年のH, C, Nの安定同位体比の研究は, 異常に高い同位体比を隕石有機物が示すことから, 先太陽系(つまり星間)での生成が議論され, 起源と成因について新しい展開が見られる。さらに, 個別の同位体比測定が可能になり, 分子の生成経路に関しても考察が可能となった。さらになお, 隕石有機物の化学進化はアミノ酸や核酸の塩基などの生成まで進んだことを示しており, 地球に次いで生体関連有機物が存在する天体が存在することが判明した。
著者
坪井 正道
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.322-325, 1994-05-20 (Released:2017-07-11)

「はってはがしてまたはれる」これはポスト・イットという付箋紙の宣伝文句であるが, 水素結合は化学の世界でこれに似た挙動にあずかっている。生物が遺伝情報を保存し, 複写し, 発現する過程, われわれの舌が砂糖の甘味を感じるメカニズム, などに多かれ少なかれ水素結合が関与している。水素結合を切るのに必要なエネルギーは20kJ/mole程度にすぎない。これは化学結合の結合エネルギーに比べて圧倒的に低い。たとえば, 水分子H_2OのO-Hを切るエネルギー490kJ/moleの25分の1である。したがってこれは常温で温和な条件下で進行する反応に重要な役割をもつ。以下どんな所にどのような水素結合があるのか当たってみよう。
著者
伊東 章
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.252-253, 2018-05-20 (Released:2019-05-01)
参考文献数
2

ポリエチレン,ポリプロピレンは生活に欠かせないプラスチックの代表である。これらは炭化水素ガスのエチレン,プロピレンを原料とし,ガスから直接固体のプラスチックがつくられる。この重合反応は新しい触媒の開発で可能となった。ポリエチレンの製造方法の歴史と現在のプロセスを解説する。
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.32-37, 2015-01-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

向流分配抽出法は,溶媒抽出(液-液抽出)を多段階で行うことで,1回の抽出では達成できない高度な分離を可能とする方法である。この方法はCraig(クレイグ)抽出として知られ,クロマトグラフィー確立以前の当時には困難であったペプチド類などの生体関連分子の相互分離を可能とし,その後の生化学・生命科学の発展に大きく貢献した。現在では,一部の用途を除いてその座を各種クロマトグラフィーに譲った感があるものの,その原理と巧妙な具現化の手法は今なお興味深い上,クロマトグラフィーにおける分離を理解するための近似モデルとして有用である。加えて近年では,従来のクロマトグラフィーにはない本法の優れた特徴を,巧みな手法で活かした「向流クロマトグラフィー」として再び注目されつつある。本稿では,高校化学で学習する溶媒抽出の原理をCraig抽出に発展させ,クロマトグラフィーの原理との対応に触れるとともに,向流クロマトグラフィーの近年の発展について述べる。
著者
山崎 淳司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.356-359, 2020-09-20 (Released:2021-09-01)
参考文献数
3

粘土鉱物は,基本的に天然に産する層状ケイ酸塩鉱物の一群であり,70種以上が知られている。その特徴的な結晶構造と,化学組成に起因する代表的な性質として,イオン・分子吸着性,溶媒中へ分散性と吸水による膨潤性,加熱変化および焼結性について紹介する。
著者
田村 真治 今中 信人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.376-377, 2011-07-20 (Released:2017-06-30)

電子ではなく,イオンが電気を運ぶ固体物質のことを固体電解質と呼び,固体電解質は現在,電池材料や化学センサのキーマテリアルとして注目を集めている。本稿では,固体電解質とは何か,また,その歴史および応用について極めて簡単に紹介する。
著者
中西 和樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.26-29, 2018-01-20 (Released:2019-01-01)
参考文献数
6

安価かつ安定で日常生活のあらゆるところに使われている二酸化ケイ素(シリカ)。鉱物結晶中での決まった組成・分子量をもつケイ酸塩とは異なり,水溶性のケイ酸・ケイ酸イオンを含む溶液中では,溶液濃度・pH・温度・共存物質などに依存して,微粒子やゲルを生じる様々な反応が起こる。シリカとケイ酸塩の基礎的なことがらを高等学校教科書の記述と対比して復習するとともに,水溶液系における反応の特徴を紹介する。また,シリカやケイ酸塩組成の材料がどのように作製され,どのような因子によって材料形態や物性の制御が可能になるのかを述べる。近年急速な発展を遂げた,高純度ケイ素から合成されるアルコキシシランを前駆体とする合成プロセス(ゾル-ゲル法)についても触れ,溶液中で成長する重合体の形態や性質を制御することによる液相反応法の可能性についても概観する。
著者
菅原 義之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.134-137, 2022-03-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
6

粉末X線回折分析は,広く化学研究に用いられていることから,理工系学部の化学系の学科では機器分析に関する学生実験で取り上げられることが多い。またブラッグの法則は,高校物理で学習する内容である。本講座では,結晶学の関連する内容を含め化学系の学科で学ぶX線およびX線回折に関する基礎的内容を概説するとともに,広く使われている粉末X線回折法について,原理とこの分析を用いる主な解析法について述べる。

1 0 0 0 OA 硫黄の同素体

著者
久保田 港
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.610-611, 2016-12-20 (Released:2017-06-01)
参考文献数
4