著者
本吉谷 二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.32-35, 2007-01-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

化学発光(ケミルミネッセンス)とは,化学反応によって高エネルギー状態(励起状態)の分子が生成し,これが光としてエネルギーを放出する現象である。これまで,ルミノールをはじめとする多様な有機化合物の化学発光が知られており,すでにケミカルライトや微量分析などにも応用されている。また,化学発光のしくみはホタルなどの生物発光と類似し,その研究の成果が生物発光のメカニズムの解明などに役立っている。本稿では生物発光との関連を意識しつつ有機化学発光のしくみについて解説する。
著者
長谷川 一希
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.524-527, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
3

苛性ソーダ (NaOH) および金属ナトリウム (Na) は,いずれも化学的に非常に活性なアルカリ金属の化合物および単体である。これら製品は,塩化ナトリウム (NaCl) を原料にして生産されて,幅広い産業分野の原料や反応剤などに利用されている。現在,NaOHとNaの生産には,電気分解法が用いられる。前者はNaClの水溶液,後者はその溶融塩を用いた電解法である。これら製造には電気分解という共通手法を適用するが,操業に対する取り組みは当然異なる。本稿では,NaOHとNaの製造法を解説する。
著者
榎本 俊樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.134-135, 2019-03-20 (Released:2020-03-01)
参考文献数
4

ハチミツはグルコースとフルクトースが主成分の,ミツバチにより花蜜から生産される天然の調味料である。また,ハチミツには,これらの糖以外に,多様なオリゴ糖やポリフェノール,遊離アミノ酸などが含まれているが,特にオリゴ糖については,不明な点が多い。本稿では,オリゴ糖を含むハチミツ成分について解説する。
著者
八木 一三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.456-459, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
5

我々の周辺には普段から光が満ちあふれている。太陽光や星明かりなどの自然光以外にも,白熱電球や蛍光灯,最近ではLEDなどからの光があり,これらがなければ現在のような生活は営めないだろう。自然光や身の周りの人工光源からの光は基本的にインコヒーレントな光であり,波長も位相もばらばらで,あまり遠くまでは届かない。一方,我々が手に入れたレーザーという新しい光源は,コヒーレントな光を発生し,その光は単色性・指向性に優れ,高輝度で,はるか遠くまで届く。これらの光はどのように生み出されるのだろうか? 本稿では,これらの物理発光デバイスの原理と利用について概略的に述べる。
著者
杉森 公一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.328-331, 2016-07-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
5
被引用文献数
5

アクティブ・ラーニングが求められる背景から,大学教育におけるアクティブ・ラーニング型授業の定義と意義,反転授業を用いた実践例について報告する。また,アクティブ・ラーニングの深化と充実に向けて,大学教育再生加速プログラム(AP)による組織的な取組事例を紹介する。大学教師に求められる教育能力の開発と相互の学び,学習支援環境の設計と整備によって,高校・大学から社会への教育接続の実現が期待される。生涯学び続ける自律した学習主体=「アクティブラーナー」として社会へとつながるために,個の学びを始点に,他者との対話・協同を通じて深い学びを目指す,学習の共同体としての大学教育の構築がなされつつある。
著者
岡野 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.548-551, 2017-11-20 (Released:2018-05-01)
参考文献数
3

ファラデーが発見し,ケクレが近代有機化学の出発点となる構造式を生み出した,ベンゼンを含む芳香族化合物は,他の不飽和有機化合物とは化学的性質が大きく異なり,特異的に安定であった。ヒュッケルにより量子力学に基づいて,その安定性の原因が芳香族性として,解き明かされた。芳香族性の概念はベンゼン構造と離れて,非ベンゼン系芳香族や芳香族複素環化合物に拡張されている。
著者
柳澤 秀樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.422-423, 2018-09-20 (Released:2019-09-01)
参考文献数
7

最近スーパーなどでセスキ炭酸ナトリウム(セスキ炭酸ソーダ)がよく見かけられるが,学校教育ではあまり扱われていない。しかし,セスキ炭酸ナトリウムは世界ではアンモニアソーダ法に代わる炭酸ナトリウムの原料であり,典型金属元素の単体と化合物の単元で扱う炭酸水素ナトリウムの熱分解反応や,酸と塩基の反応の単元で扱う炭酸ナトリウムの二段滴定法を組み合わせることで,その組成を知ることができる。一部の生徒が教師役となり,予備授業を通して授業を行っていく,生徒主導型授業(略称:PIE)から生徒がセスキ炭酸ナトリウムの組成を求めるのに適した実験方法を探りあてた。本稿ではその条件と筆者が追実験した結果を述べ,さらに,PIE当日の生徒の様子についても紹介する。
著者
杉田 和幸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.554-557, 2019-11-20 (Released:2020-11-01)
参考文献数
3

葉酸の合成を阻害することによって抗菌活性を示すサルファ剤に続いて,β-ラクタム系抗生物質のペニシリンが発見され,細菌による脅威から人類を守る手段が獲得され始めた。既存抗菌薬が無効な菌に対処するため,作用メカニズムの異なる抗菌薬を見出す努力を続ける中で,我々が新たに手にした新規抗菌薬の1つがキノロン系合成抗菌薬である。風邪を引いたときに,細菌による感染が疑われる場合,主として処方されるマクロライド系抗生物質およびセフェム系抗生物質と並ぶ,主要な経口抗菌薬の1つである。
著者
中谷 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.304-308, 1998-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

接着剤はなぜくっつくのか。なぜ, 接着剤には多くの種類が必要なのか, 一種類の接着剤ではだめなのか。という疑問に対し, 私達が日常無意識に接している接着の現象を題材に接着のメカニズムを紹介した。また, 家庭用接着剤の代表である瞬間接着剤を取り上げ, その化学構造と接着性能の関係を説明し, 今後の接着剤の技術開発動向を紹介した。接着剤は, 高分子化学と界面化学を基盤とする機能製品である。今後の化学の発展とともに益々発展することを期待したい。
著者
一木 博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.162-163, 2019-04-20 (Released:2020-04-01)
参考文献数
2

化学教育に携わる中で,「過マンガン酸カリウムの方が過酸化水素より強い酸化剤である」がかなり広く認識されていることを不安に感じ,なぜそのような認識になるのかについて,2017年度京都理化学協会研究会で発表した探究活動の授業実践例を紹介する。生徒自身がわからないことや疑問に思うこと,資料から読み取ったことに対しての探究活動を行い,段階的に仮説の検証を行った。実践内容,授業での考察および生徒の感想を記すことで,正しい「酸化力の決定」についての認識を広く伝えたいと考えている。
著者
井上 晴貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.210-211, 2006
参考文献数
3

日常生活の中で,化学の恩恵に出会うことは多い。しかし,市民から見た化学のイメージは,難しく,一部の科学者のものであるという意識もある。感受性豊かな時期に興味関心を持ち,多くの化学のおもしろさにふれながら「ふしぎ」を感じる心をもつことが大切である。その積み重ねが疑問を探究する姿勢に結びつき,新たな課題や独創性を生み出すことになる。今回,身近な生活の中にある現象「冷える」をテーマにした実験を紹介する。
著者
岡内 辰夫 北村 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.130-133, 2019

<p>2010年,「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリングの開発」に貢献した3人(Heck,根岸,鈴木)に,ノーベル化学賞が与えられた。そのうち2人が日本人であったため,マスコミで大きく取り上げられ,クロスカップリングという言葉が広く知られるようになった。受賞者の1人である北海道大学名誉教授の鈴木 章先生らのグループが開発した反応が,鈴木-宮浦クロスカップリングである。この反応は,有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物に対して,パラジウム触媒を作用させることで炭素-炭素結合が形成するというものである。この反応は,我々の身の回りの医薬品,農薬,液晶材料,EL材料などの開発・量産化に大いに貢献している。</p>