著者
稲益 悟志 生山 玲奈 藤崎 裕子 杉本 憲一
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.29-33, 2010
被引用文献数
1

日本女性の髪型の歴史とヘアケア習慣を調査したところ,それらの間には深い関係がみられた。美しい髪はいつの時代でも人々の憧れであり,その実現のために工夫を凝らし,さまざまな天然由来成分の活用を試みてきた。そのなかでも平安時代の宮廷女性は身の丈余るすべらかし(垂髪)といわれる美しいロングヘアであり,毎日の櫛通しには〓(ゆする:米のとぎ汁)を使用していたと記録にある。古来より現代に至るまで,米は日本人にとって最も重要な食習慣と位置づけられ,これがヘアケアに応用されていたという歴史的事実は大変興味深い。そこでわれわれはゆするを用いた平安時代のお手入れ習慣に着目し,ヘアケア効果を検討した。ゆするには高いヘアケア効果がみられたが,処理により毛束表面に粉ふきがみられ,ゆするそのままでの応用は困難であると判断した。そこでゆする中のヘアケア効果の高い成分を取り出して応用することを検討した。その結果,ゆする抽出物に摩擦低減,弾性,ツヤ付与をすべて兼ね備える高いヘアケア効果を見出すことができた。即ち,ゆするのヘアケアへの新たな応用可能性を示すことができた。
著者
鎌田 美穂 辻 さやか 韓 立坤 藤原 信太郎 中川 泰治 高橋 宏輝 高瀬 嘉彦 岩永 哲朗
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.93-100, 2014

本研究では,ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)を用いて,バイコンティニュアス型マイクロエマルションからなるメイク落とし製剤の開発を行った。HLBの異なるPGFEを混合し,さらに水の一部をポリオールに置き換え,系の相対的なHLBを調整することによってマイクロエマルションを得ることができた。PGFEおよびポリオキシエチレン(POE)型非イオン界面活性剤の油/水系の相図を比較すると,PGFEは低濃度から広い温度範囲でI相領域を形成することがわかった。これは,POE型非イオン界面活性剤と異なり,PGFEのHLBは温度の影響を受けにくいことを示している。実使用試験では,バイコンティニュアス型マイクロエマルションを用いた製剤の特徴が評価された。メイク落としは目の周りにも使用されることを考慮し眼刺激性試験も行ったところ,安全性が高いことが示唆される結果が得られた。よって,PGFEを用いたことにより界面活性剤が低濃度においても温度依存性の少ないマイクロエマルションが得られ,高い機能性と使用性および安全性を兼ね備えた製剤を開発することができた。
著者
妹尾 正巳
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.291-296, 2011-12-20 (Released:2013-12-20)
参考文献数
8
被引用文献数
2

感性を感動を測る尺度と考えると,感性工学実現への道筋が見えるかもしれない。感性が尺度であるならば,その感性尺度で感性品質を測ることができ,その感性品質の程度量で感性価値が決まることになる。このように考えると,感性品質を高めることで感性価値の高い商品を作り出すことができることになる。現在,われわれが着目している感性品質の一つに高級感がある。高級感は量的変数としての性格が強いため計測しやすいというのがその理由である。ここでは,スキンケア化粧品の使用感と,パンフレットの文章を対象とした高級感測定の例を紹介する。
著者
岩井 一郎 桑原 智祐 平尾 哲二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-21, 2008-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

近年, カルボニル化と呼ばれるタンパク質の変性が角層で知られるようになったが, 肌への影響は不明だった。本研究では「角層の透明度」に焦点を当て, 角層タンパク質カルボニル化の影響とその対応法について検討した。まず粘着テープで採取した角層タンパク質のカルボニル基を蛍光標識し, 画像解析により数値化する方法を開発し, 外界の影響を受けやすい露光部 (顔面) 角層, 角層表層部で角層カルボニル化レベルが高いこと, in vitro UV照射により角層タンパク質がカルボニル化することを示した。さらに, 頬部角層カルボニル化レベルの高い女性では, 視感判定による透明感が低いことを示した。これらより, 外界の影響による角層のカルボニル化が透明感低下の一因と考えられた。実際に角層をin vitroでカルボニル化処理すると角層は不透明に白濁した。さらにアミノ酸L-リジンは角層カルボニル化を抑制し, ヒト皮膚においてもカルボニル化による透明感の低下を抑制した。これらより, 外界の悪影響による角層タンパク質のカルボニル化をL-リジンによって防ぐことで, 角層透明度を保ち, 肌の透明感を向上させることができると考えられた。
著者
豊田 智規 倉島 巧 藤山 泰三 佐々木 泉 宮沢 和之 清水 秀樹 松村 正人 古田 拓也
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.108-113, 2011

ヘアスタイリング剤は,その時代の髪型やファッションの流行に合わせ,さまざまな剤型の変遷をたどってきた。これらヘアスタイリング剤は一般的に固定力とアレンジ力の2軸で評価されるが,この2つの因子は背反事象であり,両立は難しい。われわれはこの課題を解決するため,粘着性を特徴とするポリアクリレートクロスポリマー-3 (Polyacrylate Crosspolymer-3)を開発した。ビニル系,アクリル系のポリマーに代表される従来のヘアスタイリング剤用のポリマーは,スタイルを保持することを目的として設計したため,固定には長けているが,アレンジや再整髪が難しい。そこでわれわれは,従来ヘアスタイリング剤で「べたつき」として認識されてきた「粘着性」をあえて発現させることで,1 つのポリマーでアレンジ力と固定力との両立を試みた。ポリマーのガラス転移点 (Tg)を低く設計すること,架橋部位を導入することにより,粘着性を発現させることができた。このポリマーを用いることで,新しいスタイリング剤の開発が可能となった。