著者
阿部 寛 中西 紀元 三上 直子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.396-401, 1996
被引用文献数
1

石鹸は古来, その安価さと使用時の泡立ちの豊かさ, 洗い上がり時のさっぱり感から, もっとも手軽に用いられてきた身体洗浄料基材であった。しかしながら, 近年の素材のマイルド化の流れの中で, すすぎ時のきしみ感や洗い上がりのつっぱり感等が指摘されることもあった。<br>そこで石鹸の優れた特性を保ちつつ, マイルド感のある界面活性剤の探索を行ったところ, 脂肪酸のリジン塩が, 以下の特性を有する優れた洗浄料基材となることを見いだした。<br>(1) 皮膚一次刺激性, 眼粘膜一次刺激性ともに, 一般のマイルド系界面活性剤と同等以上の低刺激性である。<br>(2) 他の脂肪酸塩類に比べ速やかに生分解される。<br>(3) 低濃度から高濃度にいたるまで良好な起泡力を示し, また適合pH領域が広く, 弱アルカリ性でも使用可能である。<br>(4) 官能面では, 洗浄時には泡立ちの早さ, 泡量, 泡保ちに優れ, 使用後にはさっぱりしながら, しっとり, すべすべした感触を感じさせる。
著者
飯田 悟 一ノ瀬 昇 五味 哲夫 染矢 慶太 平野 幸治 小倉 実治 山崎 定彦 櫻井 和俊
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.195-201, 2003
被引用文献数
5

人々の清潔志向を背景に, 腋臭を中心とした体臭のデオドラントニーズは年々高まっている。われわれは, 官能評価および機器分析を用いてヒトの腋臭について研究した結果, 新たな臭気原因成分としてビニルケトン類 (1-octen-3-one, <i>cis</i>-1,5-octadien-3-one) を発見した。これらビニルケトン類のにおい閾値は非常に低く強烈な金属臭を有し, 腋臭に大きく寄与していることが示唆された。これら臭気は, 人体代謝物中の不飽和脂肪酸と鉄が接触して生成する酸化物であることをモデル実験によりつきとめ, におい発生のメカニズムを解明した。また, 植物抽出エキスの抗酸化作用により, ビニルケトン類の生成を抑制する方法を<i>in vitro</i>系にて検討し, 『クワエキス』に優れた生成抑制効果を見出した。

1 0 0 0 OA 乳化基礎理論

著者
堀内 照夫
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.2-22, 2010-03-20 (Released:2012-04-26)
参考文献数
55
被引用文献数
1

エマルション科学における重要な課題は乳化剤の選定ならびにエマルションの安定化である。HLB方式において,乳化剤の選定は被乳化油性基剤の性質に応じて,乳化剤を選定する必要がある。化粧品のエマルション製剤の油相は多数の油性成分より構成されている。安定なエマルションを調製するためには,物質/物質間の相溶性の理解と多数の乳化剤のなかから最適な乳化剤を選定する必要がある。本稿では相溶性の指標値として,HLB法,有機概念図法,溶解度パラメーターについて解説したのち,HLB方式による乳化剤の最適選定法について報告する。さらにエマルションの安定性促進試験法のなかで,高温および低温促進試験法について,エマルションの分散状態と安定性について解説する。
著者
村上 祐子 足立 浩章 坂井田 勉 田中 浩 八代 洋一 中田 悟
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.278-284, 2013-12-20 (Released:2015-12-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

真皮のコラーゲン線維はⅠ型およびⅢ型コラーゲンから構成されており,加齢とともにⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率が減少する。また,これが真皮の物性に影響を及ぼすと考えられている。コラーゲン分子は,線維芽細胞において,プロ体として合成,分泌されたのち,酵素によりN末端およびC末端のプロペプチドが切断されることで互いに会合し,コラーゲン線維を形成する。今回,コラーゲン線維におけるⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の加齢にともなう減少メカニズムを調べる目的で,Ⅰ型およびⅢ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素の加齢変化について検討した。また,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素であるmeprinに及ぼすスクシニルブリオノール酸2Kの効果についても検討した。その結果,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素meprinの発現は,Ⅰ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素BMP-1およびADAMTS-14よりも加齢とともに顕著に減少した。また,スクシニルブリオノール酸2Kは,meprinの発現を促進した。以上から,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素がⅠ型のそれよりも顕著に減少するということが,コラーゲン線維中のⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率を低下させる一因であると考えられた。また,スクシニルブリオノール酸2Kにmeprinを増加させる効果が認められたことから,加齢によるmeprinの減少を防ぐことでⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の減少を抑制し,真皮の物性変化を改善できると示唆された。
著者
森部 利江 青野 恵 由木 大 廣島 俊輔 柿澤 恭史 小出 操
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.98-103, 2016-06-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
5

加齢に伴い,シルエットから毛髪がはみ出す「見た目のパサツキ」に悩む女性が多く存在することから,われわれは見た目のパサツキ抑制技術の開発を目指した。見た目のパサツキ悩みがあるエイジング女性では,悩みがない若年層と比べ,毛髪内部のL-ヒスチジン(L-His),L-アルギニン(L-Arg)量が低下していることを液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)での検討により明らかとした。そこで,「見た目のパサツキ」抑制には,毛髪内部のL-His,L-Arg量を増加させることが有効であると考えた。これらのアミノ酸を毛髪内部に効率よく浸透・滞留させるために,促進剤に着目した。促進剤として,毛髪膨潤作用,または多重膜形成作用のある物質を検討した結果,多重膜形成作用のあるセラミド様物質に高いアミノ酸の浸透・滞留促進効果を見出した。また,安定同位元素イメージングによってコンディショナー製剤に添加したL-His,L-Argが毛髪内部に浸透していることが確認できた。本検討により,毛髪内部のL-His,L-Arg量と「見た目のパサツキ」の相関,および,L-His,L-Argによる毛髪補修効果に関する知見が得られた。
著者
近澤 正敏
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.103-118, 1993-09-16 (Released:2010-08-06)
参考文献数
37

In the cosmetic industry, many inorganic powders are used, and for their easy handling and improvement of functional properties of the powders, various things are demanded. Generally, powder characteristics and surface phenomena concerning the inorganic powders depend largly on their surface properties. Therefore, surface characterization of powder particles is very important to clarify the mechanisms of powder phenomena, and to use effecively the powders. At the surface of the powders, continuity of chemical bond disappears and the surface property becomes more active according to its unsaturate degree.In this paper, physical and chemical states of real surface, for examples surface conductivity, adhesion, acid-base, and oxidation-reduction properties are discussed in relation to the peculiar nature of the solid surface.
著者
山口 あゆみ 橋本 公男 松原 薫 蒔田 愛
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.24-30, 2019

<p>顔立ちや表情がその人の印象形成に影響することは当然ながら,われわれは顔の肌質感も印象を決める重要な要素と考えている。今回は,ミドルエイジ男性が年齢は相応でも若々しい印象に見られたい意識があることに着目し,若々しさ印象の要因を探ることを試みた。見た目年齢は「シワ」の評価スコアとの関連が確認できた一方,若々しい印象スコアは,「シミ」,「くすみ」,「血色」の評価スコアと関連することがわかった。さらに視線解析結果より,見た目年齢評価時に比べ若々しい印象評価時に視線滞在時間が最も長かった部位は,肌質が顕著に現れやすいほほの部分であった。モデル乳液を連用すると,肌をよく観察できる条件である近距離でのみ若々しい印象がアップした結果が得られた。若いときと比べて肌の変化が顕著に起こっているミドルエイジ男性にとって,日々のスキンケアは年齢相応でありながら若々しい印象を作り出せる有効な手段であるといえる。</p>
著者
度会 悦子 五十嵐 崇訓 渡邉 美香子 矢後 祐子 福田 啓一
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.218-225, 2015
被引用文献数
1

「化粧よれ」とは, ファンデーションがほうれい線や目元などのシワに経時で溜まる化粧崩れ現象である。化粧がよれると, シワが目立ち, 疲れまたは老けた印象を与える。ゆえに, 多くの研究が着目してきた皮脂による化粧崩れ現象だけでなく, 顔の動きによる化粧よれを防止する技術が必要となる。本研究では, 化粧よれ防止技術の開発を目的とし, 化粧よれの①メカニズム探索, ②定量的評価および, ③処方への応用を行った。その結果, 化粧よれは, ファンデーションの粉が皮脂に濡れて, シワが動くことにより, ファンデーションの粉が「とれ」および「凝集」を引き起こすことで生じることを見出した。さらに, メカニズムを基に化粧よれをモデル系で再現し, 再現した化粧よれの画像をヒストグラム解析することで, 化粧よれ(ファンデーションの「とれ」および「凝集」)の定量的評価方法を開発した。最後に, この評価方法を用いて化粧品原料をスクリーニングし, 弾性ポリマーと高重合シリコーンの組み合わせが化粧よれを防ぐことを見出した。この組み合わせを処方に応用することで, 化粧よれを防ぐ化粧下地の開発へ展開することができた。
著者
柿野 賢一 津崎 慎二 田中 克幸 服部 利光 松下 和弘 岡林 博文 正山 征洋
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.379-385, 1998-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
32

水をベースにした化粧品を考える上で, 水のクラスターが小さい水 (クラスター水) の挙動には非常に興味深いものがある。われわれは, 松下が提唱した水の17O核磁気共鳴 (17O-NMR) スペクトルの半値幅を求める方法により, クラスター水のクラスターの大きさを市販の精製水と比較した。クラスター水の半値幅は56.3Hz, 精製水のそれは142.4Hzであり, この事実からクラスター水が精製水に比較して平均的にクラスターのサイズが小さいことがわかった。さらに, クラスター水と精製水への油脂の分散性を1H核磁気共鳴 (1H-NMR) 分光法を用いて, 油脂の有するメチレン基のプロトンをもとに評価したところ, クラスター水への分散性は精製水と比較してよいことが確認された。また, モノオレインを用いたエマルジョン形成においても, クラスター水は精製水と比較して均一なエマルジョンを形成しているのが確認された。以上より, 水のクラスターの大きさ, 動的構造の差異が油脂の分散性に影響を及ぼすことが示された。
著者
津村 亜紗子 齋藤(大塚) 香織 藤井 範子 藤田 郁尚 久原 丈司 大野 健剛
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.33-40, 2016-03-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
8

整髪剤開発においてセット力およびその持続力は最も重要な特性であり,汗や湿度などの水分がそれらを低減させる最大の要因として認知されている。われわれはこれまで,「頭皮脂」が頭皮から毛髪に移行し,様々な剤型の整髪剤のセット力およびその持続力を低下させるという現象を見出した1)。本研究では,高湿度条件下における頭皮脂のセット力に与える影響,および頭皮脂の毛髪への移行挙動について検証を行った。その結果,高湿度条件下において頭皮脂の毛髪への移行が促進され,湿度によって低下したセット力が,頭皮脂によってさらに低下することが明らかとなった。これまで高湿度下において水分のみが整髪力低下の原因であると考えられてきたが,本研究により,水分と皮脂が共存することによって整髪剤のセット力をより低下させることが明らかになった。
著者
渡辺 真理奈 中田 功二 門司 和美 苗代 英一 牧野 武利
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.178-182, 1994-09-15 (Released:2010-08-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Recently, it was reported that the topical application of H2O extract of mugwort [Artemisia princeps P.] effectively prevents the itching and the inflammatory responses. However, its pharmacological mechanism is unclear. In order to clarify some of the active ingredients and their pharmacological effects, we examined in vitro and in vivo anti-inflammatory effects of the H2O extract and its fractionated parts of mugwort. The fractionation was carried out on a method of liquid-liquid partition with H2O-n-BuOH, and further reprecipitation on the concentrated H2O layer from H2O-EtOH. The fraction obtained as a precipitate significantly inhibited histamine release from rat peritoneal mast cells induced by compound 48/80. The topical application of this fraction also significantly inhibited (1) the hind paw edema induced by compound 48/80 and (2) the vascular permeability enhanced by the intradermal injection of histamine and serotonin. These results demonstrated that the anti-histamine components obtained in the fraction of water soluble and ethanol insoluble phase showed an anti-inflammatory effect.
著者
木曽 昭典 川嶋 善仁 大戸 信明 周 艶陽 屋敷(土肥) 圭子 村上 敏之 新穂 大介 神原 敏光 水谷 健二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.267-273, 2009-12-20 (Released:2011-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
2

皮膚の潤いを保つには,表皮の角層における水分保持機能およびバリア機能が不可欠である。これらの機能を発揮するため,セラミド,コレステロールおよび遊離脂肪酸から構成される角層細胞間脂質が重要な役割を果たしている。本研究では,セラミドの産生促進作用を指標にして,皮膚の潤いを保つのに有効な植物抽出物の検索を行った結果,甘草葉抽出物に表皮角化細胞においてセラミドの合成に関与する酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼおよびスフィンゴミエリナーゼの遺伝子発現を促進する作用,3次元培養皮膚モデルおよびヒト皮膚においてセラミド産生促進作用を見出した。さらに他の角層細胞間脂質であるコレステロール合成の律速酵素として知られるHMG-CoA還元酵素の遺伝子発現促進作用や表皮ヒアルロン酸の合成を促進する作用も認めた。また,甘草葉から単離した活性成分についても検討したところ,6-prenyl-naringeninが活性成分の一つであることが示唆された。これらの結果から甘草葉抽出物は,角層細胞間脂質や表皮ヒアルロン酸の合成を高め,多角的に皮膚機能を維持・改善するスキンケア素材である可能性が示唆された。
著者
松崎 文昭 吉野 修之 梁木 利男 松本 俊 中島 英夫 西山 聖二
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.291-298, 2000-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10

化粧品において皮膜剤として用いられてきたエチルセルロースについて, その両親媒性構造に着目し, 乳化剤としての可能性を検討した。種々の油分を用いて乳化を試みた結果, エチルセルロースが極性油をW/O乳化可能であることが見出された。蛍光ラベル化したエチルセルロースを用いた評価系の結果から, エチルセルロースは界面に吸着層を形成すると同時に連続相に構造体を形成することで, W/O型エマルションを安定化することが示唆された。このエチルセルロースを用いたW/O型エマルションは, イソステアリン酸とカルボキシメチルセルロースNaの添加によりさらに安定化し, 化粧品として要求されるレベルまで安定化できることがわかった。本基剤の特長は, 従来乳化が困難であった極性油を安定にW/O乳化できる点にあるため, サンスクリーン剤への応用を次に試みた。この結果, エチルセルロースは乳化剤として作用し, エマルションが調製されると同時に, 塗布後は皮膜剤として作用し, 高い耐水性を与えることが示された。
著者
中沢 陽介 馬 信貞 李 蕾 塚越 徳子 大坪 充恵 天野 聡 舛田 勇二 中山 泰一
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.197-200, 2009-09-20 (Released:2011-12-09)
参考文献数
6

中国人女性の多くは目まわりの美容意識が高く,目袋の目立ちに悩んでいる。本研究では,中国人女性における目袋の実態および目袋の皮膚生理学的な特徴を明らかにすることを目的とした。目袋に悩む中国人女性を対象とし,目の下のたるみ,くま,しわなどの程度を視感評価した。さらに,画像解析によるヘモグロビン量とメラニン量の定量およびCutometerによる皮膚粘弾性の計測を行った。視感判定での目袋の目立ちは,下瞼のたるみや硬さとの相関がみられた。ヘモグロビン量は頬部よりも目の下で多く,目袋部位がうっ血している可能性が示された。くま部位では頬部と比較してメラニン量が高値を示した。皮膚粘弾性は目の下で低く,皮膚のハリが失われている可能性が示された。以上の結果から,中国人女性における目袋の悩みは,目の下の皮膚が形態学的に弛む現象に加え,うっ血や色素沈着などが影響している可能性が示された。
著者
久留戸 真奈美 塩原 みゆき 菅沼 薫
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.211-216, 2006-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1

一般男性21名のヒゲ, および肌の状態を調査するとともに, 電動シェーバー3機種でヒゲを剃り, その性能と肌への影響を調査した。この結果, ヒゲが濃く, ヒゲ剃り時間が長い被験者ほど, 肌荒れや色素沈着が目立っていた。また, 機種によって, ヒゲ剃りの前後で, TEWLが大きく増加し, 赤みや出血が多く見られ, ヒゲ剃りで皮膚が傷ついていることが示された。また, 官能評価と計測判定の比較から, 官能評価でのシェーバーの「切れ味」や「深剃り感」は, TEWLの増加, 出血の多さ, 肌が赤くなることと同調する傾向があった。すなわち, 肌への負担が大きいことを, ヒゲ剃り性能が良いと誤解する傾向があった。男性の肌荒れは, ヒゲ剃りによる影響が非常に大きいと考えられ, より肌に負担をかけないヒゲ剃りとスキンケアの重要性が示された。
著者
森田 和良
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.124-137, 1997-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1

最近, 肌に優しい化粧品の開発が求められ, 微生物面からも考慮された化粧品の開発が望まれる。そのため, 化粧品の品質を保証する上で防腐剤の利用は避けがたいものではあるが, 防腐剤の可能な限りの低減化が望まれる。そこで化粧品処方全体の構成を再考してみる。その結果, 次の (1), (2), (3) の要素を総合的に構築することにより防腐剤を極力低減化した乳化系化粧品を開発する道が開かれると考えられた。即ち, (1) 非資化性原料の選択 (2) 抗微生物活性が温和な脂肪族化合物および精油の利用, それに加えて新規機能性原料の開発 (3) 防腐剤の油水分配に係わる理論の利用である。
著者
青池 広樹 渕上 幾太郎 上條 洋士 細川 博史 松下 戦具 森川 和則
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.105-110, 2018-06-20 (Released:2018-06-30)
参考文献数
7

毛髪は人の印象を決める要因の1つとされているが,毛髪にツヤがあることや明るさの違いによって生じる人への印象の変化についてはいまだ十分な研究がなされていない。本研究では,毛髪のツヤおよび明るさの度合いが人の印象に与える効果について25語の肯定的評定語を用いた実験を行い,得られた評点を2要因分散分析および因子分析を用いて分析した。その結果,毛髪のツヤが上がるとほとんどの評価語で得点が高くなり,明るさが上がるといくつかの印象語の得点が低下することが示された。また因子分析により示された4因子モデルではツヤは触覚的な質感語と女性らしさを感じさせる評定語を含む因子を,明るさは視覚的な質感語とフレッシュさを感じさせる評定語を含む因子を説明できた。毛髪のツヤおよび明るさが人の印象に与える効果を明確にしたことで,頭髪化粧品を消費者が望む容姿によりよく適合させることが期待できる。
著者
植田 有香 瀬川 昭博 吉岡 正人
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.15-21, 2004-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
12

現在まで, マイクロカプセルの製法や利用方法など数多くの研究が行われてきている。今回われわれは, 新たな壁材として, 「シリコーンレジン化ポリペプチド」を用いたマイクロカプセル化技術を開発した。この壁材を使用することにより, 90%もの高い内包率のマイクロカプセルを容易に調製することができた。また, このマイクロカプセルは平均粒径が約2μmと微細であるため, ホモミキサーの剪断力に対しても安定であり, 経時安定性も良好であるなどの知見が得られた。そこでわれわれは紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルを用いて化粧品への応用を検討した。その結果, これまで配合が困難であった水系の処方に界面活性剤を使用せずに, 油性である紫外線吸収剤を配合することを可能にし, 紫外線吸収剤特有の塗り感触の重たさや臭いなどを抑え, 配合量を向上させることができた。また, 無機紫外線防御剤と安定に併用することができるため, その配合量を抑えながら, 高いSPF値を化粧品製剤に付与することができた。このように, これまで有機系紫外線吸収剤の配合が困難であった処方系への応用を可能にした。
著者
今原 広次 伊東 泰美
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.10-14, 1982-08-15 (Released:2010-08-06)
参考文献数
16

Tyrosinase activity was manometrically assayed by measuring the rate of Oxygen consumption in dopa-substrate with Warburg's apparatus.The inhibitory effect to tyrosinase with Placenta Extract was tested through the above method and 20 percent to the original activity was inhibited by Placenta Extract.Furthermore, the activity of this enzyme was measured in tyrosin-substrate by the same method and at the initial step of the reaction, 60 Percent to the original activity was inhibited by Placenta Extract.From the above results, we recognized that the reaction processed from Tyrosin to Dopd was extremely inhibited by Placental Extract.
著者
渡辺 啓 大村 孝之 池田 智子 三木 絢子 勅使河原 喬史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.185-191, 2009-09-20 (Released:2011-12-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。