著者
安藤 秀哉 橋本 晃 政本 幸三 市橋 正光 三嶋 豊
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.415-423, 1993-12-16 (Released:2010-08-06)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

Linoleic acid has an inhibitory effect on melanogenesis in B16 mouse melanoma cells. Linoleic acid did not affect the expression level of tyrosinase mRNA and the pattern of tyrosinase glycosylation. The production of premelanosomes and the transfer of tyrosinase into them were also not affected by linoleic acid. The decrease of tyrosinase activity in golgi apparatus and the inhibition of melanin polymer formation within premelanosomes were found in linoleic acid-treated B16 cells.Using cultured normal human melanocytes, it was shown that linoleic acid inhibited melanogenesis as well as using B16 cells.We also report here the evidence that linoleic acid can diminish UVB-induced pigmentation. Linoleic acid was topically applied daily for one month after UVB-induced pigmentation was fully developed on the back of brownish guinea pigs, and resulted to marked depigmentation.
著者
宮本 敬子 李 金華 橋本 悟 正木 仁
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.41-45, 2012-03-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
6

近年,抗菌作用を有する成分に対する市場ニーズは高く,その開発が望まれている。本研究では,4種類の構造の異なるジメチロールアルカン酸アルキルエステルを合成し,その抗菌力について検討を行った。さらに,これら化合物の水溶液中における表面張力測定を行い,界面活性と抗菌作用とを比較した。その結果,ジメチロールプロピオン酸ヘキシルエステルに高い抗菌作用が認められた。また表面張力測定結果から,抗菌作用の高い成分は水溶液において界面への吸着傾向が高く,界面におけるパッキングが密であることが示唆された。抗菌力試験結果から算出した,抗菌パラメーターと界面活性パラメーターとの間に高い正の相関性が認められ,界面活性パラメーターが抗菌成分のスクリーニングパラメーターになり得る可能性が示唆された。
著者
田中 賢介
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.245-253, 1997-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
16

シャンプーは基剤となるアニオン界面活性剤がグラム陰性菌に対する抗菌活性が弱いため, 微生物汚染を受けやすい製剤であり, 市販品の微生物汚染調査でもPseudomonasなどのグラム陰性菌が検出される例がある。リンスは基剤となるカチオン界面活性剤の抗菌活性が比較的強いため, 発育できる菌はより限定される。またボディソープは脂肪酸塩の抗菌性により一般に防腐性が高い。これらの製品は入浴時に使用するものであり, 使用環境からの二次汚染に留意する必要がある。製剤の防腐設計を行うためには, 製剤自身の持つ自己防腐性を考慮した上で, 必要に応じて最適な防腐剤を用いる。この際, それぞれの防腐剤の特性を充分把握し, 有効に配合する事が重要である。さらに, 製品の製造時における微生物汚染防止には生産面での衛生管理が不可欠である。原料対策, 製造衛生管理, 適切な製造設備設計など, 微生物汚染防止を前提とした考え方で対応する事により, 効果的な品質管理が可能になる。
著者
松岡 桓準 平 徳久 中村 清香 勝山 雄志 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.200-207, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アスコルビン酸は生体にとって不可欠な成分であり,化粧品分野においても抗酸化作用をはじめとする様々な生理機能を求めて多くの製剤に配合されている。しかし,アスコルビン酸は非常に不安定な物質で,しばしば着色・着臭をはじめ乳化系の破壊や製剤の粘度低下の原因となる。今回われわれは,アスコルビン酸とグリセリンを結合させた2種類のグリセリル化アスコルビン酸を開発した。これらはB16細胞を用いたメラニン生成抑制試験において高いメラニン生成抑制効果を示した。また,in vivoの連用試験ではグリセリン由来の保湿効果を示し,肌表面の紋理を整え,乾燥による目尻の小じわを目立たなくした。さらに,水溶液や粘性製剤において高い安定性を示すことも確認された。これらの結果よりグリセリル化アスコルビン酸は既存の誘導体と同様の生理活性を有するだけでなく,化粧品市場に求められる付加的機能を併せ持った保湿型アスコルビン酸誘導体であることが確認された。
著者
新井 道子 森田 康治 矢作 和行 内藤 幸雄
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-132, 1995-09-10 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

The formation of split ends is one of the most important problems especially for women to present a good appearance. For the primary split ends care, the mechanical recovery of damaged hair fibers is of special importance since hair does not self-recover. In this work, the effects of cosmetic treatments on the generation of split ends have been investigated by auto-brushing machine as an accelerative method which is closer to the actual hair care process. These results strongly suggested that the important factor of the split ends formation was due to the structural changes of amorphous matrix proteins of hair fibers. We found that a diethylene glycol monoethylether (Ethyl Carbitol; EC) treatment was the most effective of all treatments we tested in inhibiting the split ends generation of permed hair, and EC treated permed hair behaved almost identically with untreated normal hair as far as the percentage of split ends generation was concerned.
著者
Mamoru Suzuki
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
Journal of Society of Cosmetic Chemists of Japan (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.103-108, 1988-07-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
37
被引用文献数
1

From archaeological evidences, many of authorities believe that the history of cosmetics can be traced back to 40, 000-50, 000 years ago. However, since ancient Egyptians and Mesopotamians protected their skins with cosmetics against scorching, I propose a hypothesis that the ancesters of Hominies had applied spontaneously a mass of mud or clay on their skins for protection, when their hairs had begun to degenerate from bodies.In this paper, I will discuss the hypothesis through following problems:1. Why the ancestors needed protection?2. Why had the body hairs degenerated and when it had occured?3. With regard to applying or wearing as the method for body protection, which took place first?4. What had they applied?
著者
互 恵子 高田 定樹
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.128-134, 2013-06-20 (Released:2015-08-25)
参考文献数
13

対人コミュニケーションの非言語行動は言語行動とともに,心理的意味を生じさせる。特に外見的特徴は第一印象の形成に影響する。店頭の対面場面を設定し,視線計測より,販売員の外見による顧客の印象形成を視覚的注意の応答から検討した。実験参加者は日本人や中国,北米,ドイツ等の出身者とした。販売員モデルの姿・形の外見を整えた場合と整えない場合のどちらも,顧客を想定した観察者の視線の停留の時間と回数は顔部分で最も大きく,印象評価より目線や表情が重要であった。外見を整えない場合はモデルの身体部分への注視が増加し,印象評価より姿勢や手の位置との関連が高かった。対面相手の顔は文脈の影響を受けないが,身体は文脈の影響を受け,非言語情報となることが示唆された。美容コンサルテーションの販売員と顧客の関係性では,文脈に合わせ,外見を整えることで,顧客の視線が商品に誘導されることが示され,販売につながることが予想された。
著者
林 照次 松木 智美 松江 浩二 新井 清一 福田 吉宏 米谷 融
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.355-373, 1993-12-16 (Released:2010-08-06)
参考文献数
19
被引用文献数
6 7

We measured changes in facial wrinkles and skin texture by aging, sunlight exposure and applicaion of cosmetics.With a replica photographing system and image analysis, we measured wrinkles for parameters of depth and the ratio of wrinkled area (RWA: showing amount of wrinkles). As for skin texture, we measured depth and distance of furrows, ratio of furrow depth (RFD: showing amount of skin texture) and anisotropy.As a result of measuring changes in wrinkles due to aging, it was found that the process of wrinkle formation was classified roughly into 2 stages. In the initial stage of wrinkles, RWA incseased greatly in the 30s, due to many fine wrinkles 0.15mm or less in depth. Then, the second stage showed the acceleration in the increase of wrinkle depth which seemed to be caused by a vicious circle in solar elastosis. It was also observed that, compared to the office workers, the outdoor workers showed higher values of RWA in the initial stage and of wrinkle depth in the second stage.The result of measuring changes of textures revealed that the amount of furrows decreased with aging and morphology after 60s differed from that of natural furrows and resembled to the morphology observed in the initial stage of wrinkles. As for the influence of sunlight exposure, the furrows in the outdoor workers of 30s and 40s became more indistinct in comparison to those of the office workers.Then, as a result of examining changes in wrinkles by the continuous application of moisturizing lotion and eye cream, relatively small wrinkles below 0.15mm depth decreased in both cases probably due to increase in hydration in the stratum corneum. We thought this effect reduced the degree of vicious circle in solor elastosis and delayed the appearances of deep wrinkles. From these results, it was thought that skin care around the age of 30s, when small wrinkles started to increase, was extremely important to control wrinkle appeararances.
著者
吉田 正人 鈴田 和之 上門 潤一郎 新井 幸三
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.190-199, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

化粧品分野では,毛髪の損傷低減,損傷した毛髪の修復などに様々なタイプのケラチンタンパク質が応用されている。側鎖に非対称性のジスルフィド基をもつ水溶性のS-カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチン (CMADK) タンパク質が,羊毛繊維のチオグリコール酸ナトリウム塩による還元処理と,それに続く過酸化水素による酸化処理により合成された。SDS-PAGE法により,この新しい誘導体化タンパク質の分子量は約64 kDaおよび48 kDaであることがわかった。また,CMADKタンパク質に含まれるジスルフィド基量は4.4×10-4 mol/gであった。非対称性のジスルフィド基をもつ水溶性タンパク質と毛髪中のフリーのチオール基とのSH/SS交換反応を通して共有結合しうるタンパク質による毛髪表面の修飾が期待された。毛髪のねじり応力評価法からCMADKタンパク質で処理した毛髪の剛性率は増加した。洗髪のシミュレーションモデルを用いた繰り返し処理を行っても,毛髪の剛性が維持されることがわかった。
著者
榊 教生
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.117-123, 1997

マスカラ・アイライナーを直接扱った文献は数が少なく, 技術動向を把握する手段としては特許を利用した。マスカラ・アイライナーの液状タイプのものには必ずと言って良い程樹脂が含まれているが, 樹脂と各種相互作用を理解することは重要であり, それに関する実験データを紹介した。樹脂を使用する液状タイプのマスカラ・アイライナーは目の周りに使用することもあり, 防腐系の確立が重要であり, その参考としてマスカラ・アイライナーに使用できる防腐剤・殺菌剤の一覧を載せた。また特にマスカラはブラシの使用性への影響が大きいため, その方面の研究にも触れた。
著者
奥山 雅樹
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.177-183, 2002

アイメーク化粧品, 特にマスカラ, アイライナーは, 目元や睫, 瞼に塗布することにより, 目元を際立たせ, 顔に表情を与え, 魅力的な容貌をつくりだすといったポイントメーク化粧品であり, 化粧の心理的要素をつかさどるアイテムのひとつである。本報では, アイメーク化粧品の有用性および最近の製品化技術について紹介する。
著者
征矢 智美 野村 美佳 林 照次 長谷川 敬
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-124, 2004-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

「肌の透明感」は女性の肌状態, 肌意識に関するアンケート調査や化粧品使用前後の指標に多く使用される重要なキーワードであるが, 「透明感」が具体的に肌のどのような状態を指すかについては明確ではない。そこで, 本研究では最初に若年層と中高年層を対象に「透明感のある肌」に対する重要度調査と他の肌表現語との関連度調査を行った。その結果, 「透明感のある肌」の重要度は, 若年層では最高位であるのに対し中高年層では肌荒れしていない等の肌悩みの方が重要視されていた。反面, 「透明感のある肌」は, 肌のキメや色, うるおいなどの三つの要素を基本要件とする複合概念であるという点で両年代に差異はなかった。次に, 両年代の評定者が同じ若年モデルを観察したときの「透明感」の主観判断とモデルの実際の皮膚生理的特性との関係を調べた。その結果, 若年層では肌色におけるbの色ムラ (標準偏差), 角層水分量, 皮膚表面形態 (皮溝深さ, 皮溝量), 中高年層では, 肌色におけるLおよびaの色ムラ (標準偏差) について有意な関係が認められた。これらの結果から, 「透明感」の言語的構造に年代差はないが, 判断の手がかりである皮膚の生理特性は異なると考えられた。
著者
赤塚 秀貴 菅 千帆子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.315-321, 2003-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
5

下肢部のムクミは, 女性にとって美容上大きな悩みの一つとなっている。近年, その悩みを解消する手段として, エステサロン等におけるマッサージが有用だと言われている。本報ではムクミ改善のためのセルフマッサージをより効果的にする手段を探索し, 化粧品剤型への展開を検討した。下肢部のムクミに関して自覚症状のあった健常女性10名で, ムクミを水置換法により評価したところ, 夕方にかけて2.5%の体積増加を示した。これら被験者で5分間のセルフマッサージ後に6分間の温冷処置を施した結果, 2.5%の体積減少を示したことから, この方法はムクミ改善に有効な手段であることがわかった。このような温冷処置を化粧品にて再現することを試みたところ, 従来のジェル剤型に液化石油ガス (LPG) を高濃度配合したクラッキングフォーム剤型は, 従来品よりもムクミ改善効果が高かった。
著者
互 恵子 両角 亮子 吉田 倫幸
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-14, 1991-07-10 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The present study examined the effect of self-administered facial massage (“Shiseido Home Massage”) on psychophysiological states. Twenty healthy females, age 19 to 48, served as subjects. Prior to the experiment, subjects learned the technique of self-administered facial massage by watching a video on skin care and by receiving direct instruction from a beauty specialist. To master the technique, subjects were asked to practice self-administered facial massage everyday for a two-week period. During the experiment, frontal EEG (Fz) was recorded during pre-rest, self-administered facial massage and post-rest conditions. Before and after recording in each condition, subjects estimated their own psychological states (mental arousal level and “feeling-refreshed” level). The frequency-fluctuation of α-waves in the EEG record was extracted using an F-V conversion system and analyzed using Fast Fourier Transform (FFT). Self-administered facial massage was found to increase the subjects' sence of well-being and the estimated level of feeling refreshed. In addition, self-administered facial massage was found to reduce mental arousal during post-rest in subjects who reported a high arousal level in the pre-rest condition, whereas it increased the arousal level during post-rest in subjects who initially reported low arousal. Also, the power spectrum of α-wave fluctuations during self-administered facial massage is of the 1/f type which can be described by a curve approximately inversely proportional to the frequency over the low frequency range. This powerspectrum relation did not hold for states of higher or lower arousal. The results suggest that the 1/f type of α-wave fluctuations in the frontal area are correlated with a feeling of wellbeing and mental arousal and that self-administered facial massage results in an improved self-assessment of psychophysiological states.
著者
屋敷(土肥) 圭子 木曽 昭典 周 艶陽 岩崎 大剛 神原 敏光 水谷 健二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.274-280, 2009-12-20 (Released:2011-12-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

皮膚組織における皮下脂肪の増加は,リンパ管や血管を圧迫し皮膚のたるみやむくみなどのトラブルを引き起こすだけではなく,ボディラインを崩すセルライトなどを形成する。われわれは,植物抽出物のさらなる応用を化粧品に広げるために,皮下由来の脂肪細胞に対する分化誘導抑制作用および脂肪分解促進作用について検討した。本研究では,ヒト皮下由来の前駆脂肪細胞を用いて,分化誘導抑制作用について数種類の植物抽出物をスクリーニングした結果,オウレン抽出物とその主成分であるベルベリンに作用があることを見出した。さらに,前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞へ分化するさいに関与する遺伝子発現を解析した結果,オウレン抽出物およびベルベリンにこれらの遺伝子を抑制する作用が認められた。また,オウレン抽出物およびベルベリンには,成熟脂肪細胞に対して脂肪分解作用および熱産生関連遺伝子の発現促進作用を有することが明らかになった。本研究においてわれわれが検討したオウレン抽出物およびその主成分ベルベリンは,中性脂肪を増やさず,すでに蓄積した脂肪を分解することが期待され,ボディケア製品やスリミング化粧品などへの応用が示唆された。
著者
菅 千帆子 木村 知史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.242-251, 1995-11-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

化粧行為, 例えばメークアップをしたり香水を使ったりすることの有用性は明白なことであるが, これらの有用性を定量することは容易ではない。というのは, これらが定義したり測定したりすることが困難である心理的・生理的性質を含んでいるからである。我々は, 化粧行為により得られる喜び (pleasure) とユーザーの健康 (well-being) との関係をしらべる過程で, 化粧品を使用することが免疫学的に有用であることを示唆する結果を得た。メークアップを行うことで思わず美しくなった自分をみたとき, それが予想できなかったときほど気分は高揚する。我々は, このような体験が身体の免疫系を活性化し, 同時に免疫抗体濃度を増加させることを発見した。また, 快適な香りを嗅いだときにも同様の免疫反応が起こることも発見した。免疫抗体濃度の変化の定量には, 被験者の唾液中に含まれる免疫抗体「分泌型イムノグロブリンA (S-IgA) を測定した。化粧品における精神神経免疫学的な有用性の発見は, 皮膚表面での機能的効果を越えた化粧品の新しい有用性の探索につながると考えられる。また本研究にて得られた結果は, 化粧品がユーザーの心と身体に有用であることの一つの証拠を示したと考えられる。
著者
西村 桂一 北田 好男 金田 泰雄 村松 宜江 小川 一 飯島 敬 高倉 伸有
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.169-175, 1996
被引用文献数
2

四季の変動が非常に大きいわが国において, 人の肌色は四季の変化に従って変動することが推定されるが, その変化が太陽光量の増減による皮膚メラニン量の変化によるものか, 温度変化による皮膚血流の変化によるものかは, 非常に興味深い点である。<br>ある種の生物では, 季節の変動を太陽光の量で認識して, 来たる季節に備えることが知られているが, 我々はヒトには太陽光の変化により, 来たる季節に向かって皮膚血流量が変動をきたす「季節先取りプログラム」ともいうべき働きの存在を想定し, それに伴って肌色が変化すると仮定した。<br>そこで今回, 太陽光の変化曲線と一致する「東洋の季節」に従った測定時期を設定し, 色彩色差計を用いて肌色の季節変動を測定した。<br>男性の通年測定データから, 肌色の色相が「東洋の季節」に於ける春夏と秋冬で二相性に変動するという結果が得られた。またその変曲点は立春, 立秋の頃と推定された。<br>興味あることに, この変動は, 顔面等の露出部位だけでなく, 前腕や上腕のような非露出部でも認められた。この結果から, 肌色の季節変動の主原因は生体側の血流動態の変化によるもので, 外部からの直接的な光刺激に伴う皮膚メラニンの増加ではないと考えられる。この事から, 長時間人工光環境にさらされているヒトにも, 太陽光の変化を感知し, 生理反応を示す「動物」としての季節対応システムが今なお残されていることが示唆された。<br>女性においては, 頬の色相変化は男性と同様の変化を示したが, 額部では夏から冬にかけて色相値の変動はほとんど見られなかった。この違いは, 女性の日焼け防止に対する意識や行動, 性周期に伴う肌色変動などが影響しているものと考えられる。<br>今回の実験結果を, 化粧品的な立場から考えた場合, 肌色は春分, 秋分にはすでに夏型, 冬型となっていることから, 季節によって変化する肌色に合わせたメーキャップを行うためには, 東洋の季節に合わせて, 現状よりも1-2ヵ月早めに, 色号数の取り替えを行うことを提案したいと考える。
著者
稲益 悟志 生山 玲奈 藤崎 裕子 杉本 憲一
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.29-33, 2010
被引用文献数
1

日本女性の髪型の歴史とヘアケア習慣を調査したところ,それらの間には深い関係がみられた。美しい髪はいつの時代でも人々の憧れであり,その実現のために工夫を凝らし,さまざまな天然由来成分の活用を試みてきた。そのなかでも平安時代の宮廷女性は身の丈余るすべらかし(垂髪)といわれる美しいロングヘアであり,毎日の櫛通しには〓(ゆする:米のとぎ汁)を使用していたと記録にある。古来より現代に至るまで,米は日本人にとって最も重要な食習慣と位置づけられ,これがヘアケアに応用されていたという歴史的事実は大変興味深い。そこでわれわれはゆするを用いた平安時代のお手入れ習慣に着目し,ヘアケア効果を検討した。ゆするには高いヘアケア効果がみられたが,処理により毛束表面に粉ふきがみられ,ゆするそのままでの応用は困難であると判断した。そこでゆする中のヘアケア効果の高い成分を取り出して応用することを検討した。その結果,ゆする抽出物に摩擦低減,弾性,ツヤ付与をすべて兼ね備える高いヘアケア効果を見出すことができた。即ち,ゆするのヘアケアへの新たな応用可能性を示すことができた。
著者
鎌田 美穂 辻 さやか 韓 立坤 藤原 信太郎 中川 泰治 高橋 宏輝 高瀬 嘉彦 岩永 哲朗
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.93-100, 2014

本研究では,ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)を用いて,バイコンティニュアス型マイクロエマルションからなるメイク落とし製剤の開発を行った。HLBの異なるPGFEを混合し,さらに水の一部をポリオールに置き換え,系の相対的なHLBを調整することによってマイクロエマルションを得ることができた。PGFEおよびポリオキシエチレン(POE)型非イオン界面活性剤の油/水系の相図を比較すると,PGFEは低濃度から広い温度範囲でI相領域を形成することがわかった。これは,POE型非イオン界面活性剤と異なり,PGFEのHLBは温度の影響を受けにくいことを示している。実使用試験では,バイコンティニュアス型マイクロエマルションを用いた製剤の特徴が評価された。メイク落としは目の周りにも使用されることを考慮し眼刺激性試験も行ったところ,安全性が高いことが示唆される結果が得られた。よって,PGFEを用いたことにより界面活性剤が低濃度においても温度依存性の少ないマイクロエマルションが得られ,高い機能性と使用性および安全性を兼ね備えた製剤を開発することができた。