著者
美崎 栄一郎 池田 浩 今井 健雄
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.108-112, 2014-06-20 (Released:2014-06-20)
参考文献数
2

われわれは専門家として,メイクやヘアメイクの仕上がりなど使用実態を調査している。その使用実態観察研究の一環として,本研究では観察者の視線の動きに着目した。化粧直後の仕上がり写真を刺激画像とし,それを観察する視線の動きを調べた。今回の検討により,化粧における専門家であるメイクアップアーティストは左右上下のバランスを測るように広い範囲に視線移動をし,仕上がりを短時間で評価していることがわかった。一般女性は顔の中心や個々のパーツなどの気になる部分に視線が片寄りがちになる傾向にあった。視線の移動を可視化することで,暗黙知として専門家がもっている美しい仕上がりへの知見を引き出せる可能性が示唆された。
著者
久留戸 真奈美 菅沼 薫
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.48-58, 2020-03-20 (Released:2020-03-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

男性の顔面皮膚は,皮脂量は多いものの同年代女性に比べてキメが粗く乾燥していることに加え,加齢とともに皮膚色が赤黒くなるという男性特有の加齢変化を示す。これは男性のヒゲ剃り習慣が大きく影響していると考えられる。そこで,本研究は,長期間電気シェーバーと安全カミソリのいずれかのみを毎日使用している20代と50 代の2つの世代の顔面皮膚を調査することで,ヒゲ剃り習慣による長期的な皮膚への影響を推測することを目指した。あわせて,被験者自身の肌状態,スキンケアなどのアンケート調査を実施し,男性の顔面皮膚の加齢と,ヒゲ剃り,スキンケア等の関連を考察した。調査の結果,20代と50代の肌を比べると,50代の肌は赤黒くなるだけでなく,頬からアゴ下にかけて多くの色素沈着が見られた。これは,ヒゲ剃りダメージの大きさを示している。一方,アンケート調査では,紫外線対策を含めてスキンケアを怠っている男性が多数であった。日本人男性の顔面皮膚は,「ヒゲ剃り習慣」と「スキンケアの怠り」が長期に渡った結果,男性特有の加齢変化を起こしていると考えられる。
著者
江浜 律子 島田 有紀 仲西 城太郎 萩原 基文 岩渕 徳郎
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-23, 2018-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
21

一般に健康な毛髪を育むには頭皮の健康が重要であると考えられているが,これまでに頭皮状態が毛髪物性に及ぼす影響を遺伝子レベルで検証した報告はない。本研究では,日本人女性101名の頭皮状態を観察し,頭皮トラブルの程度が高い被験者ほど皮脂量が多く,また毛髪のハリ・コシが弱いことを明らかにした。これらの結果から,皮脂由来の刺激物質が頭皮トラブルを引き起こし,それに伴い放出される炎症性因子を介して毛包細胞における毛形成を阻害するという仮説に基づき,培養実験モデルでの検証を試みた。外毛根鞘細胞に過酸化脂質を作用させると炎症性サイトカイン(IL-1,IL-8)の遺伝子発現が亢進し,器官培養毛においてこれらの炎症性サイトカインがキューティクル強度に寄与するKAP5.1の遺伝子発現を低下させた。さらに過酸化脂質等による炎症性サイトカインの遺伝子発現亢進を抑制する植物成分を見出した。以上より皮脂由来物質等に起因する頭皮トラブルに伴い炎症性因子が亢進し,毛髪形成が遺伝子レベルで阻害されて新たに作られる毛髪のハリ・コシなどが低下することが示唆され,また,それを防ぐ植物由来成分の可能性を提示した。
著者
立川 一義 大坊 郁夫
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.307-309, 2000-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

『コミュニケーションの円滑化をたすける香り』をテーマに創作した香水のパーソナルスペース (以後PSと略す) 減少効果を測定し興味深い結果を得た。大学生パネラー30名の協力を得て, 香りなし, 創作香水A, 創作香水B, の3条件で, 前後左右4方向について, ストップデイスタンス法によりPS計測を行った。その結果, 香りなしに比べ, 香水A, Bはそれぞれ面積比換算で50%, 20%のPS減少効果がみとめられた。PS減少の原因を子細に論ずることはできないが, 減少効果のより大きかった香水Aと小さかったBの香りの印象を比較してみた。すると, 香水Aは刺激的, 香水Bは親しみやすいという印象としてとらえられていた。この結果は「嗜好性の高い香りほどPS減少効果が大きいのではないか」という想像に反するもので興味深い。
著者
Takanori Matsubara Chinami Seki Hidekazu Yasunaga
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.130-140, 2022-06-20 (Released:2022-06-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

In this study, the authors investigated hair colouring by utilising chemical oxidation of biocatechols, which are obtained from organisms and have catechol (o-dihydroxybenzenes) groups such as (+)-catechin (Cat), (-)-epicatechin (EC), L-3,4-dihydroxyphenylalanine (DOPA), hematoxyline (HX), braziline (BZ), rosmarinic acid (RA), caffeic acid (CA) and chlorogenic acid (ChA). The three types of dyeing methods for the chemically decolourised white human hair were tried as follows: the dyeing by using the solution of the oxidised bio-catechols at 30 °C and pH = 7 (redissolution dyeing), the dyeing by using the oxidation solution of bio-catechol reacting at 30 °C and pH = 10.8 with the introduction of O2 gas continuously (simultaneous oxidation dyeing) and the oxidation by O2 at 30 °C and pH = 11.6 after the treatment of hair with the bio-catechol solution at 30 °C (post-oxidation dyeing). The order of the hair dyeability of the methods using Cat as the bio-catechol was found to be post-oxidation>redissolution>simultaneous oxidation dyeing. Moreover, the resulting colour of hair dyed with Cat by post-oxidation dyeing was reddish brown. The results demonstrate that EC, HX and BZ are also available for hair dyeing by using post-oxidation dyeing and the colours of the dyed hair are yellowish brown, deep brown and reddish brown, respectively. It was found that the bio-catechols having a chroman (3,4-dihydro-2H-1-benzopyran) structure with the catechol part work effectively as dye precursors for colouring hair by the post-oxidation dyeing technique.
著者
佐藤 千尋
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-99, 2013-06-20 (Released:2015-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3

水性洗顔料は主成分である脂肪酸セッケンや界面活性剤の作用により,時として洗顔によって皮膚に悪影響を及ぼす可能性がある。それを低減するため,これまで低刺激性界面活性剤開発など処方面での工夫が行われてきた。しかし,実際にその処方を使用してもらうと設計どおりの結果が得られない場合がある。水性洗顔料は他の化粧品と異なり,そのままの形態で使用するものではない。すなわち消費者自らが泡状に形態を変化させて (=泡立て) はじめて機能を発揮する製品である。そこで「泡立て」に着目し,「使用量」「濃度」「泡体積あたりの脂肪酸総量」をポイントに使用方法の実態を調査した。また,調査結果を基に行った実使用テストでは,「泡立て」の違いが肌状態に影響することを確認した。われわれメーカーは,水性洗顔料という製品を提供するのみでなく,使用方法のポイントすなわち「使用量」「泡立ての途中で水を加える」「空気を巻き込むように泡立てる」を消費者にわかりやすく伝え,適切な使用方法で使用してもらうことの重要性を啓蒙していく必要がある。
著者
久原 丈司 笠原 啓二 嶋田 格 松井 宏
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.33-40, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
8

デオドラント剤の防臭効果の持続性向上(ロングラスティング化)を目的として,臭いの原因となる皮膚常在菌の繁殖を抑えるために,デオドラント剤に配合されている殺菌剤4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)と2,4,4′-トリクロロ-2′-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)について,腋窩上での経時残存性を評価した結果,トリクロサンはIPMPよりも有意に経時残存性が高いことが示唆された。次に,殺菌剤の腋窩上での経時的な減少要因の解明として,殺菌剤の揮発性,皮膚内部への浸透性,皮膚表面での拡散性,衣服への移行性を評価した結果,皮膚内部への浸透および衣服への移行が主要因であることが示唆された。また,殺菌剤の腋窩での残存性を高める成分(デオドラントキーパー)の探索を行った結果,デオドラントキーパーの要件としては,皮膚内部への浸透を抑えるため分子量が大きいこと,耐水性が高い必要があるためオクタノール/水分配係数(Log P)が大きいこと,殺菌剤との親和性(結合性)が高いことが必要であり,今回評価したIPMPのデオドラントキーパーとしては,分極部位を有しIPMPと水素結合等の双極子相互作用を起こしやすい構造であることが,残存性向上に有利に働くことが見出された。
著者
沖山 夏子 津田 千春 森合 康朗 次田 哲也 南 浩治 佐藤 直紀
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.292-300, 2013-12-20 (Released:2015-12-21)
参考文献数
4
被引用文献数
1

ファンデーション (FD) ユーザーの多くが日常的に感じている「化粧のり」,すなわち化粧仕上がりが日によって異なる現象に着目し,同一人の肌で化粧仕上がりを毎日観察する調査を行った。化粧仕上がり変動の原因は,素肌の表面状態が日によって変動することによりFD の肌への付着状態が変化するため,という仮説を設けた。30代女性15名のパウダータイプFDユーザーを被験者とし,素肌の表面特性 (水分量,皮脂量,粘弾性) の測定と表面状態 (落屑,毛穴,ニキビ,色むら) の観察,化粧仕上がりの観察を1カ月間毎日実施した。その結果FDの仕上がりは,同一被験者が同じFDを使用していても日によって変動していた。変動の内容は「かさつき目立ち」が変動するタイプと「ムラづき」が変動するタイプの被験者に分類された。素肌状態も日により変動していた。FD仕上がりと素肌の変動の相関を被験者ごとに解析した結果,「かさつき目立ち」変動タイプでは落屑,ニキビの変動が,複数の被験者において仕上がり変動と相関が認められた。素肌の表面凹凸が日々変動することがFD付着性に影響を与え,化粧の「かさつき目立ち」の変動の原因となることが示唆された。
著者
紺野 義一 菅谷 良夫 広部 みどり 外尾 恵美
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.59-65, 1999
被引用文献数
1

転相温度乳化法は, ノニオン界面活性剤の温度による親水性・親油性のバランスの変化を利用した乳化法である。本研究では, 乳化剤としてテトラオレイン酸POE (<i>n</i>) ソルビット (<i>n</i>: 30, 60) およびPOE (20) 硬化ヒマシ油を用いて, 転相温度乳化法により各種油剤でエマルションを調製し, 粒子径の測定や経時安定性を評価した。実験の結果, 粒子径200nm以下の微細なエマルションを得るには, 乳化剤と油剤の組合せが重要であった。微細エマルションの安定性に関しては, POE硬化ヒマシ油で得られるエマルションは良好であるが, テトラオレイン酸POEソルビットでは油剤種により異なった。また, 上記二つの乳化剤を混合して用いれば, 各種油剤で経時安定性の良好な微細エマルションが得られる。
著者
藤井 敏弘 伊藤 弓子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.99-104, 2018-06-20 (Released:2018-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

光照射は活性酸素の生成を引き起こし,カルボニル化などのタンパク質修飾を誘発する。このカルボニル化タンパク質の形成は酸化ストレスのマーカーとして用いられてきている。ケラチンフィルムは日常生活レベルにおけるUV照射に起因するカルボニル化タンパク質を検出するための有効な生体材料であることが知られている。従来までは困難であった長波長UVA~高エネルギー可視光線(HEV)(380~530 nm)においてのカルボニル化タンパク質形成がこのフィルムの使用により確認でき,ソーラーシミュレータ(300~2500 nm)照射と比べて約40%もの生成量が認められた。代表的なUV吸収剤であるベンゾフェノン-3およびメトキシジベンゾイルメタンは,UVA~HEVによるカルボニル形成への阻害効果は低かった。可視光線の中で,ブルーライト/HEV(400~500 nm)が緑色光(500~550 nm)と赤色光(600~700 nm)照射と比べ,より高いカルボニル形成も引き起こすことが示された。
著者
西村 博睦 高須 賀豊 山本 めぐみ
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.88-94, 2006-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
3 2

日本では, 「美」を表現するとき, “みずみずしい”という言葉を使用する。この“みずみずしい”は, Youthful, Fresh, Watery, Dewy等, 種々の「生命感あふれる美」の要素を含む形容詞であり, 場面に応じて使い分けられる。「見た目にみずみずしい肌」とは, 水分を含み潤っているように見え, 美しいツヤのある肌のことを表す。しかし, われわれが実施したコルネオメーターによる角層水分量と視覚官能評価との対応に関する研究では, 「実際に角層に水分を多く含む肌」と「見た目のみずみずしい肌」には, 相関性がほとんどなかった。そこでわれわれは, 「見た目にみずみずしい肌」を解明し, 美の要素の一つとなる“みずみずしく見せる”機能を持ったメークアップ品の開発に挑戦した。このためには, まず何をもって「みずみずしく見えるのか」, また「見えないのか」を定義する必要があった. そこで100名の女性を対象とした官能評価を実施した。その結果, これらのパネラーは「みずみずしく見える肌: 25人」と「みずみずしく見えない肌: 75人」の2グループに分けることができた。さらに「みずみずしく見えない肌」の要因に着眼し官能評価をしたところ, 乾燥して見える肌と脂ぎって見える肌の2グループに分類できた。そして, この計3グループの肌の見え方の違いを, 特殊な条件で解析した光学特性値を用いることで定性的に分類することに成功した。さらに, 肌の光学特性値がこれらのグループをなぜ定性的に分類できるのかを探った結果, 表面の形態 (ミクロ的な均一性) と明らかな関連性があることが判明した。「みずみずしく見える肌」の光学特性の知見から, 「みずみずしく見える」機能を組み入れるメーク膜の設計を行い, ファンデーションを開発するに至った。
著者
松尾 真樹 川田 純平 作山 秀
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.15-25, 2020
被引用文献数
1

<p>女性の社会進出に伴いメイク落としにも簡便性が求められ,アウトバスで使用できるクレンジングローションが普及してきている。一方,ローション剤型はコットン使用による摩擦感を感じやすく,耐水性化粧料に対するクレンジング機能は他剤型ほど期待できなかった。本特性は界面活性剤の性能によるところが大きいため,クレンジング機能向上と摩擦低減を両立できる界面活性剤の設計が望まれた。そこでわれわれはポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)類に着目し,表面張力を指標としたPGFE 類のスクリーニング,製剤への安定配合およびその機能評価を行った。その結果,市場品で想定される配合量域において,PGFE の一種は従来の洗浄成分よりも低い表面張力を示し,さらに興味深いことに,スクリーニングにより得られた2 種のPGFE を特定の配合比率で併用した混合系は,単一成分系よりも低い表面張力を示した。また,PGFE の製剤安定化には,多価アルコールおよび補助界面活性剤の併用が有効であることがわかった。得られた製剤は従来製剤と比べてクレンジング機能が高く,摩擦感を低減でき,かつ保湿効果も高いことが確認された。</p>
著者
金子 勝之 山崎 亮太 藪 李仁 曽山 美和 熊野 可丸 金田 勇 梁木 利男
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.8-13, 2001-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

ポイントメーキャップにおいて爪化粧料は, 口紅に次いで主要なアイテムとして使用されている。さらに近年, ネールサロンやネールアートの台頭で, その使用者はますます増加し, 重要な化粧料に位置づけられてきている。このネールエナメルに求められる特性として, 「乾きが速い」「はがれにくい」「仕上がりが均一でつやに優れる」「爪に優しい」「つやや仕上がりの持続」等が挙げられ, その中で特に「乾きの速さ」に関する要望が強く, 常に求められる機能の上位に挙げられてきた。これに対し, 溶剤の揮散により被膜を形成する速乾性タイプのものが種々上市されてきたが, 塗布後の仕上がりの美しさが損われることから, これ以上の乾燥速度の短縮は困難とされていた。今回は「エナメルが乾く」という現象をまったく新しいユニークな発想で捉え, ネールエナメルの乾燥時間を飛躍的に短縮し, 超速乾性を実現した「水で乾かすエナメル」の技術開発を例に速乾性エナメルについて概説する。
著者
岩橋 弘恭 川嶋 善仁 村上 敏之 大戸 信明 屋敷 圭子 鳥家 圭悟 木曽 昭典
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.17-24, 2012

紫外線の暴露は皮膚に対してさまざまなダメージを与え,シミ,シワおよびたるみといった光老化を引き起こす原因となる。本研究では,UVBダメージ抑制作用を有するテンニンカ果実エキスの有効成分の探索と,新たな作用メカニズムの解明を試みた。テンニンカ果実から単離した成分であるピセアタンノールは,表皮角化細胞において細胞死抑制作用を示した。そのメカニズムの一つとしてDNA損傷抑制作用が認められ,代表的なDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジンダイマー減少作用およびヌクレオチド除去修復遺伝子の発現上昇抑制作用もしくは発現促進作用を示した。さらに抗酸化作用として,表皮角化細胞に対するグルタチオン合成促進作用を示し,抗炎症作用としてプロスタグランジンE2産生抑制作用を示すなど,テンニンカ果実エキスと同様の作用が認められたことから,ピセアタンノールが有効成分の一つと考えられた。また新たにテンニンカ果実エキスにインターロイキン-1<i>&beta;</i>分泌抑制作用を見出した。したがって,テンニンカ果実エキスおよび成分であるピセアタンノールは紫外線によるダメージを抑制し,抗老化作用が期待できる素材であると考えられた。
著者
高橋 功 根村 和宏 佐々木 泉
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.24-30, 2018-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
4

本研究では,肌質を問わず安全,簡便に使用できる無機紫外線散乱剤と,無機紫外線散乱剤を分散させる分散剤に着目してスクリーニングを行い,耐水性に優れ,かつ,一般的に入手可能な洗浄剤で容易に落とせるサンスクリーン製剤の開発を行った。無機紫外線散乱剤(IUVSAs)としてハイドロゲンジメチコン処理(IUVSAs-HD)品,およびステアロイルグルタミン酸2Na処理(IUVSAs-DSG)品と,それらの分散剤として種々の分散剤を組合せた単純処方分散体とW/Oサンスクリーン製剤を得た。得られた試料について,ブラックライト存在下,種々の洗浄剤とバイオプレートを用いて,洗浄性評価を行った。その結果,IUVSAs-HDはいずれの分散剤との組合せでも,洗浄剤の種類を問わず良好な洗浄性は得られなかった。一方,IUVSAs-DSGと特定の分散剤との組合せで,かつ,ラウリン酸カリウムを洗浄剤として用いた場合に,良好な洗浄性が得られた。
著者
池本 毅 岡部 文市 山本 直史 中津川 弘子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.229-237, 1999

香料による体臭のマスキング効果の持続性を高める方法として, 花香気成分の前駆体として知られる香気成分配糖体の応用について検討を行った。まず<i>in vitro</i>試験として香気成分配糖体を含む培地にてさまざまな種類の皮膚細菌を培養し, 生成した香気成分量と残存する配糖体量をGCおよびHPLC分析にて検討を行った。そして, 多くの皮膚細菌類が香気成分配糖体を代謝し香気成分を生成することを確認した。また, その生成量は菌種や配糖体の構造により代謝速度が大きく異なることも確認した。次に, 香気成分配糖体を身体に塗布したときの効果を確認する目的で, ヘッドスペースガス法を用いた<i>in situ</i>試験を行った。その結果, 香気成分配糖体を身体に塗布した場合にも香気成分が持続的に生成すること, その生成量は配糖体の構造や塗布部位において大きく異なることを確認した。さらに, eugenolを香気成分部とするeugenyl β-D-glucosideには持続性に優れたデオドラント作用のあることも官能試験により確認された。
著者
晴佐 久満 鍋嶋 詢三 石垣 薫 橋本 典子 豊田 由賀理
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.100-104, 1985
被引用文献数
8

Mutagenicities of the toothpaste ingredients, which were on the market, were investigated on salmonella typhimurium TA98 and TA100 by the Ames test.<br>The test samples used were four humectants, five binders, three foaming agents, two sweettening agents, four flavouring agents, four preservating agents, four abrasive agents, and ten medicinal ingredients, which were the materials for a toothpaste.<br>As a result of experiments, no mutagenic activity was shown with all samples studied.
著者
久留戸 真奈美 菅沼 薫 奥田 祥子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.340-344, 1996

MED (Minimal Erythema Dose) のaction spectrumに分光感度を合わせたUV-B放射計 (MS-210 D型, 英弘精機製, 携帯型試作品) を使用し, 身体の部位別に受ける紫外線量をスキー場と海浜他の場所で測定した。この結果, 部位別には, 海浜で頭頂部, 肩, 額と受光量が多く, 一方, スキー場では頭頂部より額や胸の受光量が多く, また頬やあごなども全体的に高レベルで, 反射が多量であることを示していた。また, 同時期夏の海浜と都心の公園の広場では, UV-B量の最大値は接近しており, 都心でも海浜同様に紫外線に注意しなければならないことが示唆される。<br>更に, 日光暴露実験の結果, スキー場, 海浜とも, 無塗布部位は日焼けを起こしたが, SPF28の紫外線防御用化粧品を塗布した部位は, 視覚的にはほとんど変わらなかった。日焼けからの回復速度にはモニター間で明らかな差があった。
著者
美崎 栄一郎 池田 浩 今井 健雄
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.108-112, 2014

われわれは専門家として,メイクやヘアメイクの仕上がりなど使用実態を調査している。その使用実態観察研究の一環として,本研究では観察者の視線の動きに着目した。化粧直後の仕上がり写真を刺激画像とし,それを観察する視線の動きを調べた。今回の検討により,化粧における専門家であるメイクアップアーティストは左右上下のバランスを測るように広い範囲に視線移動をし,仕上がりを短時間で評価していることがわかった。一般女性は顔の中心や個々のパーツなどの気になる部分に視線が片寄りがちになる傾向にあった。視線の移動を可視化することで,暗黙知として専門家がもっている美しい仕上がりへの知見を引き出せる可能性が示唆された。