著者
向山 麻衣
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.154-158, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)

近年,AIなどの新技術の登場により新たなサービスや機能が多数リリースされており,特許調査の業界においても,ツールを取捨選択し,どう使いこなすかが重要になっている。また,ツールに淘汰されないようなサーチャーになるためには,自身の調査スキルを常に磨き続けることが必要となってくる。2013年より工業所有権協力センターが主催している特許検索競技大会は,実務者が上記のような動向の中でも必要となる知識・技能のスキルアップを支援する取り組みである。本稿では,大会の概要,及びAIツールとの関係について紹介,考察する。
著者
小嶋 悦子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.140-145, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)

特別コレクションのデジタル化や維持管理には予算が必要となり,その一つの手段に外部資金の利用がある。名古屋大学附属図書館では,基金の設置や2回にわたるクラウドファンディングへの挑戦を経て,外部資金による所蔵コレクションの保存活用事業を行っている。本稿では,当館の所蔵コレクションの概要と外部資金獲得の取り組み,とくに2020年に実施した「高木家文書」の絵図修復のためのクラウドファンディングの取り組みを中心に,寄附募集活動,返礼と広報活動,外部資金によるコレクションの修復,デジタル化事業の概要などについて紹介する。
著者
時実 象一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.435-441, 2014-10-01 (Released:2017-04-13)

この記事は,ここ数年のオープンアクセスの動向について詳述するもので,前後編に分かれる。この後編では,PLOS ONEの成功によってもたらされた,新しいオープンアクセス・ビジネスについて,PLOS ONE型メガジャーナル,カスケード型雑誌の2種類について,実例を挙げて解説した。また,人文・社会科学分野のオープンアクセス雑誌,学位論文のオープンアクセスの動きについて述べた。最後に,最近進みつつあるデータのオープンアクセスとそのリポジトリについて述べた。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.75, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)

今回は「テレワークとサイバーセキュリティ」に関する特集を企画しました。まずは松下慶太氏(関西大学)に,コロナ禍による労働環境の変化と,そこで利用されているツールについて論じて頂きました。今まさに生じている私達の労働環境の変化について,メタな視点で理解できるとともに,多様なツールが導入されている現状や,新しいツールの可能性について理解を深められるかと思います。業務環境の変化や新しいツールは業務を良い方向へ変革する一方で,セキュリティの観点からは攻撃の機会を増やすことに繋がりかねません。そこで池上雅人氏(キヤノンITソリューションズ)に,最近のサイバー攻撃の動向と対策についてご紹介いただきました。特にランサムウェアとEmotetに焦点を当てた記事となっております。国内でも2022年10月に那覇市立図書館がランサムウェアに感染し,貸出停止などサービス提供に多大な影響を受けた事例1)は読者の皆様の記憶に新しいかと思います。このような被害を出さないよう,最近の攻撃方法や防御方法について理解を深めたいものです。さて,最近の防御方法,つまりサイバーセキュリティについて理解を深めるにあたりキーワードとなってくるのが「ゼロトラスト」という概念です。本特集を検討する際,境界防御型からゼロトラストへ移行する方針を示す例を確認しております2)3)。ただ,組織のネットワーク基盤構成に関する話題であるため,情報システム部門でないとなかなか知る機会がありません。そこで井本直樹氏(インターネットイニシアティブ)に,これらがどのようなものなのかをご解説頂きました。最後に,実際にゼロトラスト導入に関与された木村映善氏(愛媛大学)および,山北英司氏(同志社大学)に,ご経験より得られた知見を共有して頂きました。図書館をはじめとする情報サービス部門では,情報システム部門とは別に独自のシステム調達を行うこともあると思います。木村氏の記事にある「5.これから取るべき方策」は,そういった部署の方々に是非読んで頂きたい内容です。また,ゼロトラストへ移行した場合の研究活動への影響について,山北氏の記事の「5.ゼロトラストへの更なる取り組み」はたいへん示唆に富む内容となっております。特に電子ジャーナルサイトで一般的なIPアドレス認証とゼロトラストとの関係については,どの組織でも必ず問題になるはずです。ゼロトラストへの移行は徐々に進んでおります。読者の皆様の職場が,ゼロトラストへ移行する時に慌てることが無いよう,今回の特集をお役立ていただけますと幸いです。(会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),安達修介,鈴木遼香,長谷川智史)1) 銘苅一哲,玉那覇長輝.“本の貸し出しを全館で再開 サイバー攻撃を受けた那覇市立図書館”.沖縄タイムス.2022-10-26.https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1046798, (参照 2023-01-26).2) “総合情報環構想2022”.熊本大学.2022-03-24.https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/katudou/johokankoso/johokankoso_file/johokankoso2022.pdf, (参照 2023-01-26).“学校法人北里研究所報”.北里研究所.2022-01.https://www.kitasato.ac.jp/jp/albums/abm.php?f=abm00036714.pdf&n=%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%8C%97%E9%87%8C%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E5%A0%B1%E6%96%B0%E5%B9%B4%E5%8F%B7%EF%BC%882022%E5%B9%B41%E6%9C%88%EF%BC%89.pdf, (参照 2023-01-26).
著者
松下 慶太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.76-80, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)

コロナ禍を経てニューノーマルな労働環境が形成されつつある。それらはWFH(Work from Home)からWFX(Work from X)への移行と呼べる。それに伴ってこうしたニューノーマルのワークスタイルを支えるツール群も拡大・充実しつつある。自社でのWFXの環境,また異なる会社・組織,フリーランスとの協働が増えるなかでゼロトラストセキュリティを実現するテクノロジー・サービスの展開が期待される。その上で,位置情報や個人認証など管理社会を支えるテクノロジー(Technologies of Control)とどのように個人,会社・組織,社会が向き合うのかは今後のワークスタイルを考える上で重要な視点となる。
著者
井本 直樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.87-94, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)

昨今のテレワークの急速な導入により,「全て信頼できない」ことを前提にするセキュリティモデルが注目を集めている。本論では,従来の境界防御型及びゼロトラストのそれぞれについて,セキュリティ構成とその中でテレワークを実現する代表的な実装手段について解説する。また,「ゼロトラスト」をキーワードとして製品・ソリューションが多数出ているが,代表的なゼロトラストの実装手段の特徴を具体的に述べた上で,「働き方」の変化を踏まえたデジタルワークプレースにより実装するゼロトラストについても解説し,ゼロトラストそのものの理解だけでなく,どのように活用すべきかについても示唆する。
著者
木村 映善
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.95-99, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)

サイバー攻撃が激化しつつある一方で,高度情報化社会にむけた要請として,外部システムとの連携の必要性は高まりを見せている。これまでのような閉鎖的な情報空間に安全性の根拠を置く境界型防御の考え方は通用しなくなりつつある。境界型防御の課題を克服するゼロトラストモデルは,ネットワークの安全性ではなく,強固なアクセスの認証,認可,暗号化された通信の強制に信頼の基盤を置く。最も留意すべきリスクとゼロトラストがそのリスクについてどのように対処するかを解説する。そして,これまでのシステムをゼロトラストモデルに適合させるために必要な手続きについて取り組めるような視点を提供する。
著者
徳野 肇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.65-69, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)

新たな発明と思われる発明についての明細書を書くためには,あるいは従来にない最先の技術であることの確認のためには,従来の発明についての調査をしてその技術分野の既存の特許の有無及びその内容について確かめることが有効な方法である。日本特許の調査の手法及び留意点については,多くの関係組織・部署からその関連の本が出版され,また講習会が開かれており,検索式作成の考え方,分類・キーワードの選定等について述べられている。しかしながら,どの項目を対象に調査を行ったらよいかについては,著者あるいは講師の経験に基づくものが多く,エビデンスに基づく説明はなされていないと思われる。本稿では,高分子の素材関連分野の特許約3.4万件について,非必須項目の出現頻度を公報種別別及び出願年別(2013年,2016年及び2019年)に調査した結果を示す。本稿のデータが,関連技術分野の特許調査を実施する方々の検索式を作成する上でのヒントとなれば幸いである。
著者
森本 康彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.38-44, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)

2020年,COVID-19の流行に伴い,多くの大学等でオンライン授業が実施され,文部科学省は翌年に,教育DXを推し進める一環として「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)」を打ち出した。本論文では,教育DXにより,高等教育における学修者の学びがどのようにチェンジしたのか,機関はどう支援しようとしているかについて整理し明らかにした。その結果,学修者の学びの記録であるeポートフォリオ/学習データをエビデンスとし,そのデータを教育AIで分析して可視化するラーニングアナリティクスを駆使することで,学修者の学びの支援を行い,そのための環境づくりを行っていることがわかった。
著者
水野 澄子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.37, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)

今月はDXについて考えてみたいと思います。皆様もご存じのように,いろいろな分野に広くDXが進められてきています。世の中の変革がコロナ渦の影響もあり急速に求められている現在,最近よく目にするDX(Digital Transformation)について何故求められているのか学術分野の状況を紹介しながら検証してみたいと思います。Transformationは「変容」,DXを直訳すると「デジタルによる変容」とのことからデジタル技術を用いることで,生活やビジネスが変容して行くことを一般的に示します。DXに関する厳密な定義があるわけでないですが,経済産業省では,「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を作成しています。DXが広まっている分野は多岐にわたり,提供企業,利用企業,大学,教育機関,種々のご案内を頂戴する表題にも各種利用されています。例えば,営業DX,ファションDX,現場DX,製造DX,ペーパーレスからはじめるDX,経理DX,教育DX,DXの教科書,経営DX推進,計算物質科学とマテリアル(DX)などの表現がみられます。これほど多くの分野を網羅して,急速に動きが見られるのも,珍しい事とも感じられます。コロナの影響もあり,早い速度で,ある意味全分野において急速に進められています。今回は,その中から学術分野に特化して事例を集めてみました。この記事のまとめ開始の頃からも速度が急速に増している事もご理解下さいませ。これらを紹介し,さらに,これらを統合し,よりよい社会の実現に際し,将来の在り方を考察したい。まずは森本康彦氏(東京学芸大学)に「教育DXによる学修者本位の教育の実現と学びの質向上の取組~eポートフォリオとラーニングアナリティクスによる学びの支援~」という標題で教育DXにより,高等教育における学修者の学びがどのようにチェンジし,機関はどう支援しようとしているかについて整理し,明らかにして下さいました。つぎに竹内比呂也氏(千葉大学)「大学図書館のデジタル・トランスフォーメーションに向けて」という標題で大学図書館におけるこれまでのデジタル化,学術コミュニケーションの動向や教育研究のデジタル化の動向など踏まえながら,DXに向かう道筋を述べて下さいました。さらに関口兼司氏(神戸大学)「大学医学部におけるDX」という標題にて,大学医学部では,大学病院として診療面で,大学院医学研究科として研究面で,医学部医学科として教育面で,それぞれコロナ禍の影響を著しく受け少なからずデジタル化の変化について述べて下さいました。最後に山口滋氏(理化学研究所環境資源科学研究センター)「有機合成分野のDXは必要か?」という標題にて,医農薬品やプラスチック等,私たちの身の回りの化学品の多くは有機分子から作られている。目的の有機分子を作るために不可欠な手段として,有機合成がある。「DX」の潮流における触媒反応開発分野の変化と今後について概観して下さいました。最近考えてしまいます。情報技術も発達し,また,人の知識,知恵の発見もDXという高度な概念まで至る状況ではありますが,一方で世界情勢に目を向ければ,武力や暴力で主義・主張を通そうとする,知性や論理,道徳を軽んじる動きが依然として存在しています。研究や社会変容が進み,DXによりこの流れを何とか止められないかと思ってしまいます。人間の高い知識や叡智を駆使したいものです。本特集が皆様のお役に立てましたら大変嬉しく存じます。(会誌編集担当委員:水野澄子(主査),今満亨崇,青野正太,海老澤直美)