- 著者
-
青野 正太
- 出版者
- 一般社団法人 情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.6, pp.191, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
今月号は,「インフォプロの認定制度」と題してお届けします。昨今,図書館においては職員の非正規率の増加が指摘され,日本図書館協会図書館政策企画委員会専門職制度検討チームから「専門職制度検討チーム報告~非正規雇用職員が職員数の多くを占める時代における職員制度のあり方について~」(2019年3月)という報告が出されました1)。さらに,日本私立大学連盟が提言した「ポストコロナ時代の大学のあり方~デジタルを活用した新しい学びの実現~」(2021年8月)においては,“基準で想定されている専門的職員(第38条3)である司書は図書館機能の多様化に伴って,図書館職員に求められる能力も多様化したため,形骸化している”と指摘されています2)3)。このように,図書館司書をはじめとするインフォプロの働く環境は厳しい状況にあります。そうした中で,認定制度はスキルや経験を証明することにつながるとともに,キャリア形成を支援する手段となることが期待されます。そこで本特集では,インフォプロの認定制度について経緯を含めて解説し,その意義や今後果たしうる役割を明らかにしたいと考えています。まず,総論として,相模女子大学学芸学部の宮原志津子様には,専門職の質保証として機能している海外の図書館情報学専門職資格の事例を取り上げ,日本の司書資格における課題を示していただきました。次に各論として,3種類の認定制度について,制度運営に携わっている方に,制度づくりの背景から今後の課題に至るまで解説していただきました。青山学院大学コミュニティ人間科学部の大谷康晴様には,日本図書館協会が2010年に創設した認定司書制度についてご解説いただいた上で,専門性評価の必要性と制度化における課題についても触れていただきました。東京慈恵医科大学学術情報センターの北川正路様には,日本医学図書館協会が2004年に創設したヘルスサイエンス情報専門員制度についてご解説いただきました。岐阜女子大学文化創造学部の井上透様には,2006年に始められた日本デジタル・アーキビスト資格認定機構によるデジタル・アーキビスト認定を中心とする人材育成制度についてご解説いただきました。最後に,認定制度の活用事例として,認定司書,ヘルスサイエンス情報専門員として活躍されているインフォプロの方に取組内容をお寄せいただきました。日本図書館協会認定司書第1060号である砂生絵里奈様には,ご自身の認定司書としての活動についてご解説いただきました。ヘルスサイエンス情報専門員(上級)である牛澤典子様には,ご自身のヘルスサイエンス情報専門員としての活動についてご解説いただきました。読者の皆様におかれましては,本特集記事を通して認定制度の現状を理解していただくとともに,制度の活用についても知っていただき,インフォプロのキャリア形成について考えるきっかけとなれば幸甚です。なお,情報科学技術協会で実施している検索技術者検定もインフォプロの能力を認定する制度といえるものですが,別稿で扱う予定のため,今回は取り上げていません。(会誌編集担当委員:青野正太(主査),安達修介,長谷川智,長谷川幸代)1) 専門職制度検討チーム報告:非正規雇用職員が職員数の多くを占める時代における職員制度のあり方について.日本図書館協会図書館政策企画委員会専門職制度検討チーム.2019,34p.http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/senmonshokuseido.pdf, (参照2022-04-26)2) ポストコロナ時代の大学のあり方:デジタルを活用した新しい学びの実現.日本私立大学連盟.2021,23p.https://www.shidairen.or.jp/files/user/20200803postcorona.pdf, (参照2022-04-26)3) なお,日本私立大学連盟は2021年10月21日に“ポストコロナ時代に向け,図書館という場の機能は高度化・多様化する極めて重要な存在”であり,“その機能と合わせ司書の役割は,専門職員として更に大きな意味を持つものであるにも関わらず,現行の大学設置基準の条文では不十分であり,改めてその役割を再定義する必要がある”旨を説明するページを公開しています。“提言「ポストコロナ時代の大学のあり方」における図書館等の記述について”日本私立大学連盟.https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=3412, (参照2022-04-26)