著者
中崎 隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.552-558, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

従来,日本においてデータ戦略が語られる中で,法務の重要性に焦点があてられることは少なかった。しかし,データ戦略の基礎である顧客・取引関係者との信頼関係を構築するためには,法令等遵守が必要であり,法務的観点が重要となる。組織的目標を達成するためにデータを有効・適切に活用するためにも,法制度の調査・対応が不可欠である。また,データ戦略策定の前提としてデータを適切に管理するために,企業グループ単位で事後検証のための内部統制システムを構築する必要がある。データプロ業務等に従事する方々にとっても,データ戦略構築において法務部門との連携を強化するために,法務的観点に関する土地勘を持つことをお勧めする。
著者
市毛 由美子 濱中 利奈
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.540-545, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

本稿は,従来のウォーターフォール型ソフトウェア開発における契約の在り方と,これに対する平成29年改正後の民法(一部の規定を除き本年4月1日から施行)の影響,そしてそれを踏まえて,昨今注目されている非ウォーターフォール型の典型であるアジャイル型ソフトウェア開発における契約の在り方について報告するものである。2020年は,新型コロナ禍で変容する社会,その中で企業が持続的に存在価値を実現するためには,環境変化に強いこと,すなわち環境に応じて「変革し続ける」ことが求められ,DX(デジタルトランスフォーメーション)が競争力の源泉たる経営課題として求められている。そこでは,ソフトウェア開発手法のみならず,その契約のあり方も変革が求められている。
著者
岩隈 道洋
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.534-539, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

法情報を的確に検索,収集するには,法制度の体系の概略と,法源(法学一次資料)という分野特有の情報源について知っておかないと,問題解決の方向性や根拠を見失ってしまう場合がある。しかし,法学を体系的に学習する機会がないとなかなかこの法体系や法源の仕組みを学ぶ機会というものは少ない。本項では,法学に親しんでいないが,法情報に触れることもあるインフォプロに向け,法体系と法情報の関係を掴むことができるような順序での導入解説と,アプローチしやすい法情報リソースの紹介に努めた。
著者
南山 泰之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.533, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

2020年11月号の特集は「DX時代の情報管理と法情報リテラシー」です。近年,データの持つ価値が資産として強く認識されるにつれ,情報管理に関わる法制度の整備も急速に進みつつあります。それに伴い,情報管理業務もこれまで以上に複雑化しており,従来までの知的財産の保護という観点のみならず,データを積極的に利活用する視点が強調されるようになってきました。しかしながら,従来インフォプロの業務とされてきた情報検索,情報管理業務を,どのように発展させていけばよいのか,どのような取り組みが求められるのか,については試行錯誤が繰り返されている段階と言えそうです。そこで,本特集では6名の専門家へご執筆をお願いし,具体例から関連する法制度を概観することで,今後のインフォプロ業務の方向性を考えるアプローチを企図しています。まず初めに,インフォプロが法情報を調べ,読み解くために必要な知識と手法を振り返る観点から,岩隈道洋氏(中央大学国際情報学部)に法情報リテラシーに関する詳細なご解説をいただきました。続いて,市毛由美子氏,濱中利奈氏(のぞみ総合法律事務所)からは,令和2年4月より本格的に施行された民法改正の影響を踏まえ,アジャイル型ソフトウェア開発における契約の在り方について詳細な解説と実践事例をご紹介いただきました。佐藤有紀氏(創・佐藤法律事務所 丸の内オフィス),砂田有史氏(創・佐藤法律事務所)からは,昨今注目を集めている情報銀行の概要,及び導入に当たり事業者視点での注意点を詳細にまとめていただきました。中崎隆氏(中崎・佐藤法律事務所)からは,企業におけるデータ戦略の構築の重要性と,法務的観点から見た留意点や具体的事例をご紹介いただきました。本特集が,情報管理における昨今の動向を把握し,今後インフォプロがどのように向き合っていくべきかを議論するための一助となることを期待します。(会誌編集担当委員:南山泰之(主査),海老澤直美,今満亨崇,野村紀匡,水野澄子,中川紗央里)
著者
永田 治樹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.352-361, 1994-07-01
参考文献数
40
被引用文献数
1

学術情報は急激に増大している。しかし大学図書館などの財政がそれに合わせて拡大するわけではないから,外部情報を入手するサービスの必要性が高まっている。他方,技術革新により情報システムは大きく進展しつつあり,最近雑誌目次情報データベース(TOC)や画像伝送システムの充実により,エレクトロニック・ドキュメント・デリバリーの展望も開けてきた。そこでILLを含むドキュメント・デリバリー・サービスの実態(用語の吟味や調査結果による把握,TOCの動向,及び大学図書館でのILL実績)を確認し,大学図書館における今後のエレクトロニック・ドキュメント・デリバリー・システムについて考えた。新たな情報ネットワーク環境において展開されるドキュメント・テリバリー・システムは,大学図書館にとって,情報の収集並びに提供の両面で不可欠な役割を果たすものとなるだろう。また,今や多様化する情報を迅速,簡便,かつ統合的に提供できるサービスが求められている。
著者
松井 くにお 難波 功 井形 伸之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.9-13, 2000
参考文献数
13
被引用文献数
1

全文検索技術は,統制語によるキーワード付けを行う方式と比較して,全処理を自動化できることによる低コスト性,検索量の増加による再現率の向上,という特徴を持つ。全文検索を実現するアルゴリズムには,文字列検索,シグネチャファイル,転置ファイルなどがある。日本語の全文検索システムでは特徴素の取り方として,形態素解析(単語)とN-gram(文字)があり,それぞれ得失がある。転置ファイルを用いた全文検索技術では,ランキング検索が用いられることが多いが,これには通常tf-idf法(文書中の単語頻度×文書DB中での単語の重要度)により関連度が計算される。
著者
野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.485, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)

今月号の特集は,「カスタマーハラスメントと情報」と題してお届けします。昨今,カスタマーハラスメントが社会問題化しつつあり,対応が急務となっています。2018年3月に厚生労働省が発表した「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書は,顧客や取引先からの著しい迷惑行為について「カスタマーハラスメント」という用語を紹介しました。同報告書はパワーハラスメントとカスタマーハラスメントとでは対応策が異なるとしながらも,労働者の安全への配慮という観点からは類似性があり,事業主のみならず社会全体でカスタマーハラスメントに対応する機運の醸成が必要である,との意見を示しています。図書館など情報に関わる業界においても,利用者と接する場面でカスタマーハラスメントにあたる事案が起こり,無視できない問題となっています。本特集では,カスタマーハラスメントが発生する背景やその事例と対策を「情報」という切り口から紹介します。はじめに池内裕美氏(関西大学)に,カスタマーハラスメントとそれをめぐる諸問題について,心理学の知見や関連分野の先行研究を踏まえて概説いただきました。田代光輝氏(慶應義塾大学)には,インターネットの普及とカスタマーハラスメントとの関連という観点から,これまで発生した問題の構造を分析いただくとともに,悪意ある攻撃への対応方法を,事例を交えて説明いただきました。梅谷智弘氏(甲南大学)には,情報技術をいかしたカスタマーハラスメント対策の一例として,大学図書館における遠隔対応ロボットの事例を,その開発や運用実験の経緯も含めて紹介いただきました。加藤俊徳氏(株式会社脳の学校)には,脳科学の観点からカスタマーハラスメントを起こしやすいカスタマーの脳とその仕組みを解説いただきました。本特集が,カスタマーハラスメントについての理解を深め,その現状や今後の対応について考える契機となれば幸いです。(会誌編集担当委員:野村紀匡(主査),青野正太,大橋拓真,寺島久美子,南雲修司)
著者
梅谷 智弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.499-504, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)

情報技術を生かしたカスタマーハラスメント対策として,大学図書館遠隔対応ロボットを例にして紹介する。レファレンスカウンター,ヘルプデスクなど専門知識を有する図書館職員が対応する場面においては,利用者への対応が重要な課題となっている。ヘルプデスク対応が行える職員は専門性が高く,書架,書庫や事務所など,受付から離れて業務を遂行することが多くある。そのため,受付は無人になることもあり利用者からの観点では機会損失につながり利便性を損なう。本稿では,現在大学図書館で稼働しているアンドロイド・ロボットを用いた遠隔対応システムを紹介する。長期間の運用実験による評価を通して本システムの有用性,本システム導入にあたっての受容性について述べる。
著者
田代 光輝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.493-498, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)

情報社会となり顧客の情報発信が容易となった。顧客の意見をあつめ商品開発やサービス改善につなげる企業が多くなる一方で,90年代後半の通称:東芝クレーマー事件を転機として,顧客と企業の関係が変化し,ネットは企業にとってリスクの1つとなっている。本稿では,デマの公式を利用して,関心の高さと曖昧さの観点から,過去のネットトラブルの構造を分析する。最近では新型コロナウイルス感染症に関連したトイレットペーパー不足のデマが蔓延したが,「不足はデマである」というニュースが社会全体の関心を高め,デマを余計に流布したという事例がある。また,悪意ある顧客の攻撃があった場合の対応方法などを紹介する。